私、魔女さんに拾われました。   作:バスタオル

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第73話 リノと消える2つの命

私の名前はリール。

今深淵にいます。

先程オード君が知らない人になってグラムさんと戦っていました。

オード君が出す魔法はどれも見たことがなくて驚きました。

しかもどの魔法も私より強かったです。

…でも何か違うなと思いました。

私がオード君の戦いを見ていて思いました。

私は一体何がしたいんだろう…と。

私は当然ドレインを外に出したくないと思っています。

必要なら戦います。

…でも、相手は私自身…レナさんは私と言っていました。

レナさんは私と同じ存在なので必然的にグラムさんも私と同じ存在ということになります。

…私は一体どうすればいいのでしょうか。

どうするのが正解なのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リール「…」

 

ザッザッザッ…

リールとオードはグラムのところに向かった。

 

リール「…」

オード「…」

グラム「…殺さないのですか」

リール「!」

 

グラムはゆっくりと目を開けた。

 

グラム「私はあなた…あなたは私…あなたの本体がそう教えたのではないですか」

リール「…」

グラム「私はこの先の未来…あなたの体から誕生します。あなたと全く同じ存在として」

リール「知ってます」

グラム「なら、今ここで私を始末しておくべきですよ。私は回復したらまたこの世界を攻撃します。…私の悲願のため」

リール「…私…少し考えてました」

グラム「!」

リール「何故あなたがここにいるのか、何故私とあなたが戦わなければならないのか、何故この世界にはドレインが存在するのか…など」

グラム「っ…」

リール「私は知りたいです。何故あなたがこの時代に来て暴れたのか」

グラム「……」

 

グラムは天井を見た。

 

グラム「…それは…この先のあなたがよく知っていますよ」

リール「!」

グラム「…私もあなたと同じくらいの時、そう言われました」

 

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グラムの回想

 

リール「私は知りたいです。何故あなたがこの時代に来て暴れたのか」

グラム「…それは…この先のあなたがよく知ってますよ」

リール「!」

 

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グラム「…あの時あの人がなんであんなことを言ったのかが少し分かりました。…私も当時はあなたと同じ "リール" という名前でしたから」

リール「!!」

グラム「ですが、今は本体と別々で行動しています。遥か先の未来で私の本体は生きていることでしょう」

リール「何故あなたはこの時代に来たのですか。なぜ本当の名前を隠しながら生きて、私の前に現れたのですか」

グラム「…過去と未来は回帰する」

リール「!」

グラム「過去で起こったことはこの先の未来でも同じことが起こる。あなたもいずれ分かりますよ。何故私がこうしたのかを "何故このような選択を取ったのか" を」

リール「…」

グラム「…大丈夫ですよ。あなたはこの先温かい未来が待っています。…禁忌に触れるまでは…」

リール「禁忌…」

グラム「…いえ、もう手遅れですね」

リール「!」

グラム「あなたはすでに禁忌に触れている」

リール「なっ…」

オード「おい!嘘ついてんじゃねぇよ!!」

グラム「…嘘ではないですよ。現にあなたはエレナさんの魔力を得ているはずです」

リール「!」

グラム「…あの人もやり手ですね。あなたに禁忌を付与して倒れるなんて…」

リール「そんな…私が…」

グラム「…あなたの持つ分裂の禁忌は発動まで長い時間を要します。…発動するまでの年月を…せいぜい…楽しんでくださいね…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

グラムの足が消え始めた。

 

リール「えっ…待って!まだ話したいことが!!」

グラム「…あなたは大丈夫ですよ。何だかんだであなたは強い人ですから」

リール「そんなっ…待って!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

グラムの足が消え、今度は胴体が消え始めた。

 

グラム「…身勝手な私でごめんなさい。でも…待ってますよ。この先の未来であなたの元から誕生することを…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

ついに胴体まで消えてしまった。

 

リール「ああっ…待って!待ってください!」

グラム「さような…」

 

ヒュゥゥゥゥゥゥゥ…

グラムは別れの言葉を言い切る前にその場から消え去ってしまった。

 

リール「えっ…そ…そんなっ…」

 

リールは動揺していた。

 

リール「ま…待って…まだ話したいことがあるのに…」

オード「…」

リール「オ…オード君…グラムさんが…グラムさんが…」

オード「っ…」

 

オードはとてもリールの顔を見れるような気分ではなかった。

 

リール「オード君!!…ねぇ…オード君…」

オード「っ…。リール…」

リール「…?」

オード「…もう…帰るぞ…」

リール「!」

オード「…少なくとも元凶は倒せた。…俺たちの勝ちだ」

リール「っ…」

 

ポタッ…ポタッ…

リールの目から涙が落ちた。

 

リール「なんでっ…こんな事に…なんで…」

 

リールは少しの間泣いた。オードはリールの傍で泣き止むのを待った。

 

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場所…エレナ(分身)が寝ている場所

 

エレナ(本体)「…終わりましたね」

エレナ(分身)「あぁ。終わったらしいな」

エレナ(本体)「あなたも…私たちの言うことを聞いてくれてありがとうございます」

エレナ(分身)「あんたのおかげでリールを連れてくることができた。…感謝する」

エレナ(分身)「…」

 

エレナの分身(リールを深淵に連れてきたエレナ)は未だに目を開けていない。

 

ディア「ん…」

 

ディアがゆっくりと目を開けた。

 

ディア「…あれ、ここは」

エレナ(本体)「起きましたか。ディア君」

ディア「あれ、エレナさん…ここは…」

エレナ(本体)「あなたがドレインと戦ってた場所から少し離れた所です。あなたたちを回復させるために一旦ここに集めました」

ディア「あなたたち…?」

 

ディアは周囲を見渡した。すると隣でノーラとスカーレットが眠っていた。

 

ディア「あっ!ノーラ。それに委員長まで…」

エレナ(本体)「2人はもう少しで起きると思いますよ」

ディア「そうですか」

 

ジリッ…

ディアはゆっくり立ち上がった。

 

ディア「…エレナさん」

 

ディアは立ち上がって周囲を見渡したあとにエレナを呼んだ。

 

エレナ(本体)「はい。何でしょうか」

ディア「…ドレインはどうなりましたか」

エレナ(本体)「!」

ディア「オードのやつは()()()()()()()()?」

エレナ(本体)「…」

エレナ(分身)「…」

 

2人のエレナは顔を見合わせて答えた。

 

エレナ(本体)「…はい。やり遂げましたよ」

ディア「……そうですか。それはよかったです」

 

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場所…リール&オード

 

リール「ぅっ…ひぐっ…」

 

リールはまだ泣いていた。

 

オード「…」

 

オードはそんなリールを抱きしめていた。

 

オード (…リール。今まで色々あったからなぁ…全部一気に起こったから耐えられなくなったんだな)

 

なでなで…なでなで…

オードはリールの頭を撫でた。

 

オード「リール」

リール「…?」

オード「…帰ったらリンゴ切ってやるからな」

リール「!!」

 

オードは恥ずかしそうにそう言った。

 

リール「リンゴ…ふふっ…リンゴかぁ…」

 

リールは顔と体を起こしてオードに密着するように抱きついた。そしてリールの唇がオードの頬に触れた。

 

オード「!?!?!?」

 

オードは何が起こったのか分からない顔をしていた。

 

リール「ふふっ…楽しみにしていますね。オード君」

 

そしてリールは再びオードを強く抱き締めた。

 

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それから数分が経った。オードとリールはエレナやディアたちがいる所へ戻った。

 

ディアはオードの顔を見た途端、笑顔で出迎えた。

 

その後、スカーレットやノーラも起きてみんなで談笑していた。

 

…しかし、そんな中、1人だけ目覚めない者がいた。

 

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アンナ「はぁ…よかったぁ…リールが無事で…」

オード「おいアンナ。俺も無事だったんだからな」

アンナ「分かってるよそれくらい。でも私はオード君よりもリールの方が大事だし」

オード「ひでぇ…」

ディア「まぁいいじゃねぇかオード。お前には俺たちがいるだろ?」

オード「そりゃそうだが…」

ノーラ「ここは素直になれよオード」

オード「はいはい…」

リール「あっそうだ。アンナ ちょっと離してくれませんか?」

アンナ「えっ…なんで…」

リール「エレナさんと話があるんです。お願いします」

アンナ「えっ…うん…」

 

アンナはリールから手を離した。

 

オード「あ〜あ。リールに嫌われてやんの」

アンナ「なっ!違うよ!エレナさんと話がしたいだけって言ってた!」

オード「あ〜あ。可哀想に…」

スカーレット「よしなさいオード君。みっともない」

オード「なんだよ委員長。あいつだって俺にひでぇ言い方したぜ?」

スカーレット「アンナもそうだけどあなたもよ。あなたはせめてしっかりしなさい」

オード「へいへい…」

アンナ「あれっ…私は?」

スカーレット「アンナは今のままでいなさい」

アンナ「??」

 

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場所…2人のエレナがいる場所

 

ザッザッザッ…

リールは2人のエレナが座っているところまで歩いてきた。

 

リール「あの、エレナさん」

エレナ(本体)「はい。何でしょうか?」

リール「!!」

 

エレナ(本体)が振り返るとリールはエレナたちの背後にあった人影に視線が向いた。

 

リール「えっ…魔女さん…」

 

そう。倒れていたのは魔女さんだった。その隣にはリールと一緒に深淵に入ったエレナ(分身)が横たわっていた。

 

エレナ(本体)「リーナはまだ目覚めませんよ」

リール「えっ…」

エレナ(分身)「損傷と消費が桁違いだからな。その分回復も遅いし目覚めるのも遅い」

リール「えっ…目覚め…ますよね…」

エレナ(本体)「はい。それは問題ありませんよ」

リール「ほっ…良かった…」

エレナ(分身)「…なぁ…あんた」

リール「はい!」

エレナ(分身)「…あいつを倒してくれてありがとうな」

リール「!」

エレナ(分身)「あいつは私たちが長年探してきた元凶。やつを葬ることが私たちの目的だった」

リール「!」

エレナ(分身)「リノを奪われてから数年が経過して原因があいつだと分かった。それからこの世界を探し回ったが一向に見つからず、諦めて次現れるときを待っていた」

リール「そうだったんですね…」

エレナ(分身)「あぁ。だが今回はやつを倒せた。私たちの代わりに倒してくれてありがとうな」

リール「…はい」

 

リールは魔女さんに目をやり、再びエレナたちに視線を向けた。

 

リール「…私たちはいつ地上へ帰ることになってますか?」

エレナ(本体)「…できればリーナが目覚めてからですが、しばらく目を覚まさないかと思うのでもう少しですね」

リール「そ、そうですか…」

 

リールは少し残念そうにした。

 

エレナ(本体)「早く目覚めてくれればいいんですが…何せ魔力が…」

リール「足りないんですか?」

エレナ(本体)「はい。今の私たちではリーナを目覚めさせるほどの魔力を持ち合わせておりません。故にリーナは自己回復で魔力の回復を行わなければなりません」

リール「えっ…」

エレナ(分身)「まぁせいぜいあと半日ってところだな」

エレナ(本体)「えぇ。私もそれくらいかと思います」

リール「そんな…」

 

リールが落胆しているとエレナ(分身)がとある提案をした。

 

エレナ(分身)「なぁ」

エレナ(本体)「はい」

エレナ(分身)「私たちの禁忌…分裂はもうリールに移ってるんだよな?」

エレナ(本体)「えっと…はい。同じ禁忌の気配がしますし…恐らくこの子が…」

 

そう言ってエレナ(本体)は横たわっているエレナ(分身)に目を向けた。

 

エレナ(分身)「…やっぱりそうなんだな。こいつが私たちの魔力の一部をリールに渡したんだな」

エレナ(本体)「…」

エレナ(分身)「なら話は早い」

 

スッ…

そう言うとエレナ(分身)は立ち上がってリールを見た。

 

リール「?」

エレナ(分身)「…私を使え」

エレナ(本体)「!?」

リール「!!」

エレナ(分身)「私がこの世界に存在する理由は元凶であるあいつの討伐。それが達成された今、私がこの世界に残る理由はない。加えて、リールの師匠である魔女さんを復活させられるなら死ぬ前にみんなの役に立ちたい」

エレナ(本体)「え、でもあなた…」

エレナ(分身)「いや、もういいよ。お願いだ。早くしてくれ。死ぬ時間が長ければ別れがその分辛くなる」

リール「ちょ、ちょっと待ってください…死ぬってどういう事ですか…」

エレナ(本体)「…彼女は自分の魔力をリーナに全て譲渡するつもりです」

リール「!?」

エレナ(本体)「私たち魔女や魔法使いにとって魔力は命と同じです。なので魔力を譲渡するということはそのまま死を意味するということです」

リール「えっ…」

エレナ(分身)「…それを言わなければすんなりと別れられたのに。余計なことを」

エレナ(本体)「でも…」

エレナ(分身)「早くしてくれ。さっきも言っただろ。死ぬ時間が長ければ別れが辛くなるって」

エレナ(本体)「でも…」

エレナ(分身)「あぁもう!!じれったいなぁ!!」

 

スッ…ドスッ!!

エレナ(分身)は自分の杖を胸に突き刺した。

 

エレナ(分身)「ぐっ…」

エレナ(本体)「!!」

リール「!?」

 

ポタッ…ポタッ…

エレナ(分身)の胸から杖を伝って血が流れてきた。

 

エレナ(本体)「ちょ!あなた何やってるんですか!!」

エレナ(分身)「はぁっ…はぁっ…何って…お前が早くしねぇからだろ…」

エレナ(本体)「だからって…」

エレナ(分身)「うるせぇ…最後くらい…ありがとうって…見送ってくれよ…」

エレナ(本体)「!!」

エレナ(分身)「なぁ…あんた…」

リール「!」

エレナ(分身)「こいつの事…頼んだぞ」

 

エレナ(分身)はそう言ってエレナ(本体)を指さした。

 

エレナ(分身)「こいつ…私がいねぇとしっかりしねぇからな…私が消えちまったら代わりがいねぇ…だが、私の目の前にはお前がいる…お前なら任せられる…頼む…こいつの事…よろしくやってくれ…」

リール「エレナさん…」

 

リールは少し考えたが、すぐに答えを出した。

 

リール「…はい!分かりました!」

エレナ(分身)「…へっ…お前よりいい返事じゃねぇか…なぁ…本体よ…」

エレナ(本体)「っ…」

エレナ(分身)「じゃ…別れだ。あいつらにも言っておいてくれ…」

リール「…はい」

エレナ(分身)「っ…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

エレナ(分身)は自分の血を魔力に変換して自分の体ごと魔女さんに譲渡した。

 

エレナ(本体)「なんで…あなたは…いつもそうなんですか…」

リール「!」

エレナ(本体)「私が一人だと何も出来ないの知ってるでしょう…」

リール「…」

エレナ(本体)「ほんと…意地悪な人ですね…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…

エレナ(分身)の全ての魔力が魔女さんに譲渡された。

 

魔女さん「っ…」

 

魔女さんはゆっくりと目を開いた。

 

魔女さん「あれ…ここは…」

リール「魔女さん!」

 

ギュッ!

リールは魔女さんに抱きついた。

 

魔女さん「リー…ル…?」

リール「はい!リールです魔女さん!」

 

ギュッ!

リールはさらに強く抱きしめた。

 

魔女さん「ぅっ…リール…痛いです…」

リール「あっ!すみません!」

 

リールはすぐに手を離した。

 

魔女さん「っ…」

 

魔女さんはゆっくりと体を起こした。

 

魔女さん「あれ…エレナ…」

エレナ「…お帰り。リーナ」

 

その後魔女さんは少しずつ体を動かせるようになった。これを機に地上に戻ることを決断したエレナはリールたちと一緒に地上に戻ることにした。




〜物語メモ〜

新情報がないので次回です。
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