私、魔女さんに拾われました。   作:バスタオル

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第76話 リノと過去の出来事

私の名前はリール。

今辺り一面真っ白な空間にいます。

そこには私しかおらず、他には何もありません。

…いや、本当のことを言うとまだ一人います。

私と同じ髪色、目の色、魔力。

あらゆる点で私と合致している女性。

その人が私の目の前に立っています。

しかしその人は何故か俯いており、一向に私の顔を見ようとはしません。

でも私はすぐに分かった。

この人は私のお母さん。

みなさんがリノと呼ぶ人物。

魔女さんとエレナさんと同じくして禁忌に触れた人物。

本来ならここで倒すべきでしょうが、何故か手が動きません。

殺すべきではない…そう感じています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所…謎の白い空間

 

リール「…」

 

リールは白い空間に立っていた。さっき大きな黒い人の頭に攻撃した。しかしその瞬間、白い光に包まれて気づいたらこの場所にいた。不思議な空間だった。

 

???「…」

 

リールの目の前にとある女性が立っていた。彼女は下を向いており、顔を見ることができなかった。

 

リール「…あなたは」

 

???「…」

 

リールは話しかけたが、その人は答えない。

 

リール「…まさかあなたが…リノ…いや、私のお母さんですか」

 

???「!」

 

するとその人は初めて顔を上げた。リールと同じ髪色、同じ目の色、同じ魔力。ほぼ全てリールと同じだった。

 

リール「…なぜ…こんな事をしているんですか」

 

リノ「…」

 

しかしその人は答えようとしない。

 

リール「なぜあんな事をしたんですか!!」

 

リールは大きな声で言った。

 

リノ「…」

 

リノは一旦顔を下に向けてまた顔を上げた。

 

リノ「…私は…この世界に存在してはならない。私が存在するだけでこの世界に災厄を起こしてしまう」

 

リール「!」

 

リノ「…あの時…禁忌に触れたあの時…私たちはその力を行使してしまった。愚かだった。あの力を知っていたのに使ってしまった。その代償がこれ。私は異形な力を手に入れ、この世界に降誕した」

 

リール「開闢…」

 

リノ「…そう。新たな世界を作ることができる力。この私には過ぎた力だった」

 

リール「なんで…禁忌に触れたの」

 

リノ「…私がいた時代は魔女や魔法使いは戦争の道具でした。普通の人間から見れば魔法は異質な力。それを恐れた普通の人間たちは私たちを殺そうと計画していた」

 

リール「!」

 

リノ「私たちの国は魔女や魔法使いしかいなかった。普通の人間は誰一人いない。この国は普通の人間たちが襲うには十分な的だった」

 

リール「でも…」

 

リノ「…私たちは戦った。外から攻めてくる普通の人間が私たちを滅ぼそうとやって来たから。しかし、魔法を持つ私たちは外の人間たちの兵器に敵わないことが多々見られた。鉄の塊でできた動く物。遠距離から放たれ、地面に着地すれば爆発する物。鉄でできた武器や鎧。私たちの国では一切手に入らないもので作られているものもあった。私たちはその力で滅ぼされかけた」

 

リール「…」

 

リノ「…それを見かねた私たちはそれよりも前に手に入れた禁忌の力で人間を滅ぼした。私たちに歯向かう人間たちを次々に殺して回った」

 

リール「待って。それじゃあ禁忌に触れた理由になってない」

 

リノ「…」

 

リール「私が聞きたいのは禁忌に触れた理由。何もその時代の背景を聞きたいわけじゃない」

 

リノ「…」

 

リール「答えて。なんで禁忌に触れたの」

 

リノ「…あなたを守るためよ。レナ」

 

リール「!」

 

リノ「私は昔から体が弱かった。あなたが私の体に宿った時、私の体は限界だった。お医者様からは流産とまで言われた。でも、友人だったリーナからある話を聞いた」

 

リール「話…」

 

リノ「…この世界に無限に力を持つことができるものがあるらしいって」

 

リール「それが…」

 

リノ「…そう。それがこの世界で言われている禁忌と呼ばれているもの。私はあなたを産みたい一心でリーナとエレナの3人でその禁忌に触れた。リーナは無敵、エレナは分裂、私は開闢の力を得た」

 

リール「私を…産むため…」

 

リノ「…でも代償が大きかった。過ぎた力を持った私たちは死ねない呪いを受けることになった。禁忌に触れた罪を償うために」

 

リール「でも!過ぎた力だったとしてもこの世界を守るために使えば問題なかったじゃん!」

 

リノ「…それができていれば今頃私はあなたと一緒に暮らしていたでしょうね」

 

リール「!」

 

リノ「…禁忌は意識を持っています。かつて存在した魔女と魔法使いのものです。この世界ができ、この世界を統率するために生まれた者。私たちが触れるまではその人たちがこの世界を守ってきた。でも、私たちが触れたことによってこの世界を守る役目を私たちが背負うことになった。そして…死ねない呪いにかかった」

 

リール「それなのになんで…この街を…」

 

リノ「…私の開闢の禁忌を持っていた人がこの国に恨みを持っていたんでしょうね。今は私の制御下にありません。全てその禁忌が動かしています」

 

リール「でも禁忌は浄化したって…ルルとララが…」

 

リノ「死ねない呪いにかかっているんです。浄化なんてできませんよ。やるなら過去に遡って直接叩かないと」

 

リール「…」

 

リノ「…レナ」

 

リール「!」

 

リノ「私は愚か者です。己が身を守るためにあなたを捨てた。私とあの人の間に生まれた強大な力を持つあなた。あなたの力は本当にこの世界を壊しかねない。ひとつ間違えれば私たちの持つ禁忌の力ですら凌駕するほどです」

 

リール「!?」

 

リノ「あなたは持って生まれてしまった。この世界を存続させる力とこの世界を破壊する力。この双方の力を混ぜてあなたという存在が形成された」

 

リール「っ…」

 

リノ「レナ。あなたが何故魔法に才を持つのかは気にならなかったのですか」

 

リール「…気にならない。私は努力でここまで来たと思ってた」

 

リノ「…半分正解で半分不正解」

 

リール「…」

 

リノ「半分はあなたの努力。でも半分は禁忌の力。あなたはすでに禁忌に触れてしまっている。そして今は分裂の禁忌の欠片も持っている」

 

リール「!」

 

リノ「まだ他の2つの禁忌は持ってない…いや、正確にはあとひとつ。無敵の禁忌。これだけまだない。他の分裂と開闢は既に持っている」

 

リール「…私は禁忌の力を持っていてもこの世界の役に立つことに使う」

 

リノ「…そう。そうしてくれると助かるわ」

 

リール「…あの」

 

リノ「?」

 

リール「…この戦い…終わらせることはできないのかな」

 

リノ「…」

 

リール「私はこの先、みんなと平和に暮らしたい。戦争なんていらない。私は…この手で幸せになりたい」

 

リノ「…幸せ…抽象的なものですね」

 

リール「!」

 

リノ「私にも幸せはありましたよ。あの人と出会ってからずっと幸せでした。でも…その幸せも続かなかった」

 

リール「…」

 

リノ「私は…あの人から殺されかけました」

 

リール「!?」

 

リノ「当然です。禁忌に近い力を持つ赤子を宿していたんです。産めばどんな災厄が訪れるか分かったものじゃありません」

 

リール「それで…」

 

リノ「…私は彼を殺しました」

 

リール「!?」

 

リノ「…それからの生活はかなり荒れ果てていました。あなたを産んでからも」

 

リール「…」

 

リノ「限界が来た私は家を出るのと同時にあなたを森へ置いて逃げた。その頃にはあなたに強大な力があることも知ってたし、自分の身を隠すには囮が必要だった」

 

リール「それで…」

 

リノ「…あなたはリーナに拾われた」

 

リール「!!」

 

リノ「あの時代ではリーナは狂気の魔女と呼ばれていたわ。この国を破壊した張本人。それがあなたを見つけ、保護し、育てた。そして、魔法も教えていた」

 

リール「魔女さん…」

 

リノ「…私の意思はここにあります。今外で暴れているのは私が持つ禁忌の者。彼の意思です」

 

リール「…」

 

リノ「もしこの国を救いたいなら私を殺すのではなく、あなたが彼を取り込み、制御する必要があります」

 

リール「!!」

 

リノ「私は何十年も禁忌に縛られていたからもう魔力はありません。彼を制御できません。ですがあなたは違います。強大な力を持つあなたなら彼を淘汰できます」

 

リール「…」

 

リノ「…私はあなたに向けて手紙を書きました」

 

リール「!」

 

リノ「深淵で待っているという手紙を」

 

リール「…」

 

リールはスカーレットの家に行った時にとある手紙を見つけた。それは光属性魔法に適正がある人物に向けて書かれたものだった。リールは光属性魔法に適正があるため、その手紙を読むことができた。

 

リノ「あなたが光属性魔法に適正があることも知ってましたよ。だからリーナがあなたを見つけることができたのです。光属性魔法と闇属性魔法は互いに相手を引き寄せる力を持ちますから。リーナが拾うのはほぼ必然でしたよ」

 

リール「…」

 

リノ「私は子であるあなたに禁忌を背負わせたくありません。しかし、彼を制御しなければこの戦いは終わりません。彼はこの世界を破壊し続けるでしょう」

 

リール「…彼とは誰のことですか」

 

リノ「…あなたの父親であり、私が愛したただ一人の男性」

 

リール「!?」

 

リノ「名前をレギンス。かつて闇属性魔法を使っていた現在禁忌とされている魔法使いです」

 

リール「禁忌…」

 

リノ「…彼は私を恨んでいるでしょう。彼ではなく子であるあなたを選んだから」

 

リール「そんな…じゃあ…今この世界を壊しているのは私のお父さんで…今目の前にいるのはお母さん…」

 

リノ「…」

 

リール「そんな…私のお母さんはこんなんじゃない…お父さんなんて知らない…」

 

リノ「!」

 

リノはリールの頭上から降りてきている黒い何かに気づいた。

 

リノ「レナ!上!」

 

リール「私は…私は一体…何者なの…」

 

???「お前はこの世界の禁忌だ」

 

リール「!!」

 

リールは突然聞こえた声に反応した。

 

???「お前はこの世界を壊す兵器だ」

 

リール「兵器…」

 

???「お前はただ壊すだけの人形。お前はこの世界を深い闇に引きずり込むだけの存在。この世界を無きものにする者だ」

 

リール「私は…この世界を…破壊する…?」

 

リノ「やめなさいレギンス!!あなたの娘でしょう!?」

 

レギンス「…黙れ」

 

ヒュォォォォォォォォ…

レギンスは特異な気配を放った。

 

リノ「っ…」

 

レギンス「俺ではなく災厄を取ったお前が口を挟む時ではない」

 

リノ「あなたが子を殺そうとしたからでしょ!!いい加減にして!!」

 

レギンス「…うるさいやつだ。丁度いい。親子喧嘩でもするといい」

 

リノ「!!」

 

リール「…」

 

リールは黒いオーラを身に纏っていた。

 

リノ「レナ…」

 

リール「…」

 

レギンス「さぁ、殺し合いでもしてみなよ。これが俺よりもこいつを取ったお前の選択だ。お前が必死に守ってきた愛の結晶とやらだ」

 

リノ「っ…」

 

レギンス「後悔するなよ。お前が取ったんだ。お前が責任持てよ」

 

リール「…」

 

リールはリノに掌を向けた。

 

リノ「待ちなさいレナ!あなた!それでもいいの!?そんな禁忌に操られてもいいの!?」

 

リール「…」

 

リノ「レナ!聞こえないの!?レナ!!」

 

レギンス「聞こえねぇよ。こいつが今まで受けたものを全てこの身の外へ出している。声が届けばすぐに治るだろうよ」

 

リール「…」

 

リノ「レナ!返事をして!レナ!」

 

リール「…」

 

ジジジ…バリバリバリバリ!!

リールは魔力をこめ始めた。

 

リノ「っ!?」

 

レギンス「ハッハッハッ!いいザマだ!見てみろよ!こいつがお前が必死こいて守ってきたものだぜ?そんな奴に殺されるたぁいいなぁ!」

 

リノ「レギンス…」

 

レギンス「じゃあな!俺を取らなかったお前が悪い!」

 

リール「…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

するとリールの魔力が全て消えた。

 

リノ「!」

レギンス「!?」

 

リール「…私は…仲良くしたい」

 

リノ「っ!」

レギンス「!!」

 

リール「私は…みんなと一緒に…いたい…」

 

スゥ…

すると段々と黒いオーラが消えていった。

 

リール「ねぇお父さん」

 

レギンス「!」

 

リール「こんな事…やめて…?」

 

レギンス「!?」

 

リール「私…こんなお父さんとお母さんを見たくないよ」

 

レギンス「っ…」

 

リール「私…ずっと魔女さんといたから家族を知らない。もし、この先お父さんとお母さんと一緒に暮らせるなら私はこのままお父さんとお母さんと一緒にそっちにいくよ」

 

リノ「っ!?」

レギンス「っ!?」

 

リール「お願い…喧嘩はやめて…私が原因なら私はここで死ぬよ。そうすればお父さんとお母さんはまた仲直りして一緒に暮らすんだよね…」

 

リノ「レナ…」

 

レギンス「お前…何言って…」

 

リール「お願い…もう人を殺すのは嫌なの。誰かが死ぬのも嫌なの。お父さんとお母さんが仲良くしてくれたらこの騒動は丸く収まるんだよ…お願い…もう殺さないで…もうやめて…」

 

リノ「レナ…」

 

レギンス「っ…」

 

リール「…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

するとリールの体が光り始めた。

 

リール「…」

リノ「!」

レギンス「!」

 

リール「もう…時間みたい…」

 

リノ「!」

 

リール「お父さん…お母さん…お願い…仲直り…して…」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

リールはその場から姿を消した。

 

リノ「…レナ…」

レギンス「…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国

 

リール「っ…」

 

リールは大きな黒い人の中から出てきた。

 

リール「!」

 

リールは周囲を見渡した。辺りは一面炎に包まれており、とても人が助かってそうな雰囲気ではなかった。

 

リール「くっ…」

 

リールは目の前にいる大きな黒い人を見た。そいつはずっと動かず、その場にとどまっていた。

 

リール「これで…終わるといいのですが…」

 

パキッ!パキパキッ!!

すると何かが割れるような音が聞こえた。

 

リール「!!」

 

リールはその音の場所をすぐに突き止めた。

 

パキッ!!パキッ!!パキパキッ!!

それは、リールの目の前にいる大きな黒い人の額からだった。

 

パリン!

すると段々と黒いものが剥がれ落ち、やがて全身崩れると、中から2人の人物が姿を現した。

 

リール「!!」

 

リノ「…」

レギンス「…」

 

その正体はリノとレギンスだった。

 

リール「お父さん…お母さん…」

 

リノ「レナ…ごめんね…」

レギンス「すまなかった。俺たちのせいで…」

 

リール「よかった…仲直り…したんだね…」

 

リノ「…えぇ」

レギンス「…あぁ」

 

リノ「今までごめんねレナ。これからはずっと一緒よ」

 

レギンス「もうこんな事はしない。人に迷惑がかかるからな」

 

リール「よかった…よかったぁ…」

 

レギンス「…なぁリノ」

 

リノ「何?」

 

レギンス「ここを直そう。元の状態に」

 

リノ「…えぇ」

 

パンッ!

レギンスとリノは両手を合わせてから掌を前方に向けた。

 

リノ「地寂占星!!」

レギンス「地寂占星!!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ!!

するとリノとレギンスの体から光が出てきてスペルビア王国全てを覆った。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国近くの湖

 

エレナ「!!」

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

エレナの頭上を白い光が通り過ぎた。

 

エレナ (何…今の魔法…尋常じゃない…)

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…深淵

 

イコイ「始まったよ。メイビス、メア」

 

メイビス「あぁ。そのようだな」

 

メア「…」

 

メイビス「メア。行くぞ」

 

メア「えぇ。では、禁忌を始末しに参りましょうか」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

場所…スペルビア王国

 

シュゥゥゥゥゥゥゥ…

リノとレギンスが放った光が全て消えた。それと同時にスペルビア王国は元の状態に戻り、大きな黒いものは消え去っていた。

 

リノ「…」

レギンス「…」

 

リール「も…戻った…戻ったよ…」

 

リールは元に戻ったスペルビア王国を見て泣きそうになった。

 

リール「よかった…よかったぁ…」

 

フワッ…

リールは緊張の糸が切れたのか、そのまま真っ逆さまに落ちていった。

 

リノ「レナ!!」

 

ガシッ!

だがレギンスがレナを受け止めた。

 

リノ「あなた…」

 

レギンス「…よくやった。そして本当にすまなかった。レナ」

 

リノとレギンスはリールを抱えたままエレナたちがいる所に移動した。

その後、リノとレギンスの手によって魔女さんが意識を取り戻し、魔女さんが傷だらけのリールを回復させた。




〜物語メモ〜

地寂占星
リノとレギンスが使った魔法。自分の力を代償に起こった事象を全て書き換えることができる魔法。次元魔法によく似ているが、本質的には少し違うため、扱いが難しい。
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