私、魔女さんに拾われました。   作:バスタオル

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ここでちょっとお知らせです。

今話で「私、魔女さんに拾われました。ー魔女さん編ー」が完結します。

でも、この物語が終わる訳ではありません。

新しい章になるだけです。

これからも「私、魔女さんに拾われました。」は投稿していきますので、読んでいただけたら幸いです。

お知らせは以上です。


第8話 魔女さんと別れと決断

私の名前はリール。

ある魔女さんと一緒に暮らしています。

昨日はエレナ学院の学院長さんが家に来ました。

私をエレナ学院に入学させるというお話でした。

魔女さんは入学させるのを反対していました。

学院長さんは何も言わずにそれに従ってくれました。

それよりも気がかりなのは噂のこと。

学院長さんが言ってた噂って何だろう…

今日は魔女さんにその事について聞こうと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リール「あの…魔女さん」

魔女さん「はい。何ですか?」

リール「ひとつ…聞いてもいいですか?」

魔女さん「はい。いいですよ」

リール「…昨日学院長さんが言ってた噂って…何ですか?」

魔女さん「!」

 

魔女さんはその事を聞かれて私の方を見た。

 

魔女さん「…気になりますか?」

リール「!」

 

魔女さんは一瞬だけ顔を曇らせた。

 

リール「…はい」

 

私がそう言うと魔女さんは話し始めました。

 

魔女さん「…ある魔女のお話です。昔、ある町に存在した魔女がある人物によってこの世を去りました。その魔女は当時の魔女や魔法使いの中でトップレベルの実力を持っていました。彼女はその力で敵国を焼き払い、他国を寄せつけないほどの強国に育て上げました」

リール「…」ゴクリ

魔女さん「その人は表では人に優しい頼られる人でした」

リール「表…」

魔女さん「はい。彼女は表向きは民を想う人でしたが、裏では他国を滅ぼし、自国を発展させようとする人でした」

リール「…」

魔女さん「リール」

リール「はい」

魔女さん「昨日の学院長さんが言った言葉を覚えていますか?」

リール「…?」

魔女さん「国を維持するための力」

リール「!」

魔女さん「そうです。当時強かったあの魔女と同じことを言っているのです」

リール「た、確かに…」

魔女さん「私はリールを物のように扱って欲しくないと思い、入学を拒否しました」

リール「そうですか…」

魔女さん「ですがリール。これから先、もしかするとあの学校に通ってもらうことになるかもしれません」

リール「!」

魔女さん「さっきまで話したその魔女には私も関わっています」

リール「え、魔女さんも…」

魔女さん「はい」

リール「なぜ…」

魔女さん「…それは言えません。ですが、これだけは言えます。その魔女は必ず私のところに来ます」

リール「!」

魔女さん「彼女は恐らく、当時関わった人たちを殺すつもりでしょう」

リール「え…殺すって…」

魔女さん「はい。彼女は遥か昔にこの世を去りました。ですが、最近どこかの国で蘇ったそうです」

リール「え…」

魔女さん「人の蘇生は重罪です。それに伴う代償も大きいでしょう。恐らく、その魔女を蘇らせた人は亡くなったでしょう」

リール「え…そうなんですか…」

魔女さん「はい。人の蘇生はこの世の理に反しますから。肉体を失うのは必然です」

リール「そんな…」

魔女さん「この世に蘇ったその魔女がいつここに来るか分かりません。なのでリール」

リール「はい」

魔女さん「…これからは属性魔法をここで習い、その他の魔法はエレナ学院で習ってください」

リール「え…なんでですか…」

魔女さん「…私は、リールが光属性魔法を覚えたらこの場を去ります」

リール「え…」

魔女さん「…」

リール「な…なんでですか…そんな…」

魔女さん「…分かってください。あなたを守るためです。関わりを持たないあなたが怪我をするところは見たくないです。もしあなたが怪我をしたらまた私は…」

リール「…」

魔女さん「…いえ、なんでもありません。とにかく、これからは光属性魔法に力を入れていきます」

 

ギュッ…

 

魔女さん「!」

 

リールは魔女さんに抱きついていた。

 

リール「…嫌です」

魔女さん「!」

リール「魔女さんと離れるのは…嫌です」

魔女さん「…」

リール「魔女さんは私のたった1人の家族です…そんな人を私は…」

魔女さん「リール」

リール「…」

魔女さん「…ありがとう。でも大丈夫。あなたが大きく育つまで見届けますから。あなたを残してなんか逝きませんから」

リール「…」

 

リールは魔女さんに抱きついたまま涙を流していた。

 

 

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それから色々あった。光属性魔法は特殊属性魔法に属されているため、並の魔法とは少し違う。扱いも難しく、慣れるのにもやっとだった。でも、魔女さんはずっと私に魔法を教えてくれた。自分の知識を私に継がせるかのように。

 

それから約1年が経過した。

 

 

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魔女さん「リール。随分大きくなりましたね」

リール「そうですか?」

魔女さん「はい。私の鼻くらいにまで大きくなりましたよ」

リール「えへへ〜」

魔女さん「さて、光属性魔法はこれで全部習いましたね」

リール「そうですね」

魔女さん「…どうしましたか?」

リール「…いえ、覚えてますよね。魔女さん。去年ここで言った言葉」

魔女さん「…」

リール「ねぇ魔女さん」

魔女さん「?」

リール「あなたは本当に…ここを離れるのですか?」

魔女さん「…はい」

リール「具体的にどれくらいですか?」

魔女さん「…あの魔女をどうにかするまでです。いつまでかかるかは分かりません」

リール「…そう…ですか…」

魔女さん「リール」

リール「?」

魔女さん「あなたなら大丈夫ですよ。私がいますから」

リール「…はい」

 

ガチャ…

突然家のドアが開いた。

 

メリー「やぁリールちゃん!久しぶり!」

リール「メリーさん」

メリー「大きくなったね!」

リール「ありがとうございます」

魔女さん「メリー。あれは持ってきた?」

メリー「大丈夫。持ってきたよ」

リール「持ってきたって何をですか?」

メリー「ん?入学届だよ」

リール「入学届?」

魔女さん「そうです。あなたはこれからエレナ学院に通ってもらいます。ここの管理はメリーに任せますので大丈夫ですよ」

リール「…そう…でしたね。忘れてました」

魔女さん「…」

リール「魔女さんと一緒に暮らせないとなると寂しくなりますね」

メリー「…」

魔女さん「リール。あなたは今いくつ?」

リール「えっと…17です」

魔女さん「なら大丈夫ですね。リールはもう大人の女性です」

リール「…」

魔女さん「あなたはもう、何者にも負けない強い女性です。私が保証します」

リール「ありがとうございます」

魔女さん「私とまた一緒に暮らしたいならもっと魔法を学んで強くなってください。そしてまた、私の前に現れてください」

リール「…はい」

魔女さん「じゃあメリー。あとはお願いね。レヴィには言ってあるから」

メリー「分かったわ」

魔女さん「リール。出発は明日です。今日は一日ずっといましょうね」

リール「…はい」

 

そして私は、その日ずっと魔女さんと一緒に時間を過ごしました。

 

 

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ー翌日ー

 

魔女さん「おはよう。リール」

リール「…おはようございます。魔女さん」

魔女さん「…寂しいですか?」

リール「…はい」

魔女さん「リール。私は少し離れるだけです。あなたと一生会えない訳ではありませんよ」

リール「…ですが」

魔女さん「あなたは何者にも負けない強い女性です。大丈夫ですよ」

リール「…はい」

 

ガチャ…

家のドアが開いた。

 

メリー「やぁ、2人とも」

リール「メリーさん…」

メリー「リールちゃん。これからはエレナ学院にある寮で生活することになるけど大丈夫?」

リール「…」

 

リールは何も言わなかった。

 

魔女さん「…」

メリー「…大丈夫じゃないみたいだね」

リール「…」コクッ

 

リールは小さく頷いた。

 

リール「魔女さんと離れたくないです」

魔女さん「リール…」

メリー「…私もそう思う」

リール「!」

メリー「でも友人の頼みだからね。聞き入れるしかなかったよ」

リール「…」

メリー「リールちゃん。2人で魔女さんを見送ろ?」

リール「…」

 

リールの目に涙が溢れていた。

 

リール「私は…私は…」

 

リールは震えていた。

ギュッ…

 

リール「!」

 

魔女さんはリールを抱きしめた。

 

魔女さん「私もリールと離れたくないです。できるならこれからも一緒に時間を過ごしたいです。でもごめんなさい。あなたを守るためなんです」

リール「…知ってます。なのでもう…わがままは言いません…」

魔女さん「リール…」

リール「魔女さん」

魔女さん「何ですか?」

リール「最後に…強く抱きしめてください。魔女さんを忘れないように強く…」

魔女さん「…」

 

ギュゥゥゥゥゥ…

魔女さんはギュッと強く抱きしめた。

 

魔女さん「リール。強く…強く生きてください。生きていればいつかは会えます。なので、次に会う時までに私よりもすごい魔女になっててくださいね」

リール「…はい」

魔女さん「リール」

リール「…はい」

魔女さん「私はあなたの事を愛していますよ」

リール「…私も、魔女さんを愛してますよ…」

 

しばらく抱き合った後、リールは準備をし始めた。

 

メリー「…いいのかい?あんな悲しくなるようなこと言って」

魔女さん「いいんです。リールは強い子ですから」

メリー「…せめてあの子があなたよりもすごい魔女になるまで見届けてあげてほしいけど」

魔女さん「…それは、次に会う時です。弟子の成長が見られないのは心苦しいですが、ここで我慢しないとリールが怪我をします。そうなったら私は…あの時みたいに…」

メリー「…」

魔女さん「ごめんなさいね。こんな話」

メリー「いいよ。あんたの過去を知ってる人はそう多くない。真実を知る人は少ない方がいいよ」

魔女さん「…そう」

リール「メリーさん。準備できました」

メリー「そっか。じゃあ2人で魔女さんを見送ろっか」

リール「はい」

 

3人は外に出た。

 

魔女さん「それではメリー。この家の管理をお願いしますね」

メリー「任せて」

魔女さん「リール」

リール「はい」

魔女さん「…元気でね。私よりもすごい魔女になってみんなを助けてあげて」

リール「…はい」

魔女さん「…それでは行きますね」

メリー「行ってらっしゃい」

リール「…」

魔女さん「…」

 

魔女さんはリールからのいってらっしゃいを待ったが、リールは何も言わなかった。

 

ヒュッ…ヒュッ…ポンッ!

魔女さんは杖を振り、箒を出した。

 

魔女さん「よいしょっと」

 

魔女さんは箒に乗った。

 

リール「魔女さん!」

魔女さん「!」

 

タッタッタッ!

リールは魔女さんの所まで走った。

 

スッ…

それを見た魔女さんは箒から降りた。

 

ギュッ!

リールは魔女さんに抱きついた。

 

リール「魔女さん…私をここまで育ててくれて…ありがとうございました」

魔女さん「リール…私の方こそ。ありがとうございました。弟子の成長が見られないのは残念ですが、あなたが成長した姿を見てみたいです。次に私に会うまでに私よりもすごい魔女になってくださいね。約束です」

リール「はい…約束です…」

 

リールと魔女さんは小指を絡ませた。

 

魔女さん「…さ、それでは行きますね」

リール「はい…行ってらっしゃい…」

 

その後、箒に乗った魔女さんはどこか遠くへ飛んでいった。

 

メリー「…行っちゃったね。リールちゃん」

リール「…はい」

メリー「リールちゃんは魔女さんに言われた通り、すごい魔女さんにならないとね」

リール「…はい。私、次に魔女さんに会うまでに魔女さんよりもすごい魔女さんになります。魔女さんに負けないくらいの魔女さんになります」

メリー「その意気だよ。リールちゃん」

リール (魔女さん。私、頑張ります。魔女さんに習ったこと…忘れません!私はいつか…魔女さんに負けないくらいの魔女さんになります!応援しててくださいね。魔女さん)

メリー「…さ、行こっか」

リール「はい!」

 

こうして私は、魔女さんとの別れを告げ、スペルビアにあるエレナ学院に転入生として入学することとなりました。




〜物語メモ〜

これにて
「私、魔女さんに拾われました。ー魔女さん編ー」
が終了しました。

次回は
「私、魔女さんに拾われました。ーエレナ学院編ー」
になります。

この物語はいくつか章を作るつもりですので、良かったら最後まで読んでいただけると幸いです。
ではまた次回まで。


リールの年齢
リールと魔女さんが初めて会った時のリールの年齢は16。
それから1年が経って17となりました。
なので魔女さんとリールは1年と半年一緒に暮らしました。

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