第9話 リールとエレナ学院
私の名前はリール。
ある魔女さんと一緒に暮らしていました。
魔女さんは今、家にいません。
ある人物が蘇ったと…それだけ言って魔女さんは遠くへ行きました。
1人になった私はこれからエレナ学院に通うことになります。
私の知らない魔法を学べるのは嬉しいのですが…
…嬉しいはずなのですが…何故でしょうか…
寂しさだけが…込み上げてきます。
嬉しさよりも何かがポッカリと無くなった喪失感の方が大きいです。
でも私は魔女さんと約束しました。
魔女さんよりもすごい魔女さんになると。
これからいつまで魔女さんと離れ離れになるのかは知りませんが、次会う時までにすごい魔女さんになって魔女さんを驚かせようと思っています。
…だから今は我慢します。
…次に会えるその時まで。
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場所…エレナ学院 (学院長室)
レヴィ「やぁ、リールさん」
リール「…」
私は今、エレナ学院の学院長室にいます。
レヴィ「事情は全部聞いたよ」
リール「…そうですか」
レヴィ「辛いだろうけど、頑張って魔法を覚えて魔女さんをビックリさせてみない?」
リール「…」
レヴィ「…君ならできるよ。リールさん」
リール「…そうですか」
ラーフ「…」
レヴィ「…不安ですか?」
リール「…いえ、不安ではないです」
レヴィ「じゃあどうしてそんな顔を?」
リール「…なんでもないです。私の教室はどこですか?」
レヴィ「…もう少し休んでもいいんですよ?」
リール「…いえ、魔女さんとの約束があるので」
レヴィ「…そっか。ラーフ」
ラーフ「はい」
レヴィ「リールさんを教室に案内してください」
ラーフ「…分かりました」
ラーフとリールは学院長室を出た。
レヴィ「…よっぽど尊敬できる人だったんですね。あの魔女さんは」
メリー「…えぇ。そうでしょうね」
レヴィ「…メリーさん」
メリー「はい」
レヴィ「あの家は…どうするおつもりですか?」
メリー「…私が管理します。親友の頼み事なので」
レヴィ「その頼み事…私も引き受けてもいいですか?」
メリー「どういう事ですか?」
レヴィ「私はあの人と同じ時を過ごしました。あの人が残したあの子を守るのが、弟としての責務だと思っています。そして、あの人が残したもうひとつのあの子の居場所…あの家を守るのも私の責務だと思っています。メリーさん」
メリー「…」
レヴィ「私にも…あの家を守らせてください」
メリー「!」
レヴィ「私は…あの魔女さんが残したものを失いたくない。何がなんでも残したいと思っています。なので」
メリー「あの…何故そこまでするんですか?」
レヴィ「…世間の魔女さんの評価は全くと言っていいほど良くありません。あの魔女さんの本当の姿を知るのはあなたを含め、ごく少数でしょう。私もその少数のうちの一人です。あの人の残したものを悪い評価とともに失うのは気が引けます。私は、あの魔女さんの力になりたいです。お願いしますメリーさん。私にもあの家を守らせてください」
レヴィ学院長はメリーに頭を下げた。
メリー「頭をあげてください学院長さん」
レヴィ「…」
メリー「あなたの気持ちは十分伝わりました」
レヴィ「では…」
メリー「はい。私が魔女さんから頼まれたこと…手伝ってください」
レヴィ「喜んで!」
メリー「ただし、条件があります」
レヴィ「な、何でしょうか」
メリー「私は家の中の管理をします。なのであなたは家の外…つまり、外敵からあの家を守ってください。あの家に一切の傷がつかないよう結界を展開してください」
レヴィ「分かりました。私の持つ知識の中で最も防御力の高い結界を展開します」
メリー「ありがとうございます」
スッ…
メリーは立ち上がった。
メリー「…それでは私は魔女さんとの約束を果たします」
レヴィ「分かりました。私も仕事が終わり次第あの家に行って結界を展開します」
メリー「分かりました。それでは…」
スタスタスタスタ
そしてメリーも学院長室を出た。
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場所…エレナ学院 (廊下)
ラーフ「リール様。あなたは今回、転入ということですので2学年の教室になります」
リール「2学年…それはどういったものを学ぶクラスですか」
ラーフ「この学校では1学年で魔法の基礎を、2学年ではその実技を、3学年では遠征を行います。今は学年が変わって数日ですのでまだ2学年の人たちは魔法の実技をしていません。実技をする前の講習をしているくらいですね」
リール「そうですか」
ラーフ「なのでリール様でも追いつけると思いますよ」
リール「…」
そしてリールとラーフは教室に着いた。
ラーフ「ここがリール様の教室になります。ちょっと待っててくださいね」
コンコンコン
ラーフは教室の扉をノックした。すると、中から人が出てきた。
担任「あ、ラーフ先生。どうされましたか?」
ラーフ「先日話した子が今日から転入することになりました。まだ始まってすぐなので大丈夫だとは思いますが、どうでしょうか?」
担任「あー大丈夫ですよ!今はちょろっと話した程度なので!あ、じゃあみんなに言ってきましょうか?」
ラーフ「はい。お願いします」
するとその人は部屋に戻った。
リール「あの…あの人は…」
ラーフ「あの人はジーヴル先生です。あなたの担任の先生ですよ」
リール「ジーヴル…先生」
ラーフ「あの人は魔法の実技を担当している先生なので、分からないことはあの人に聞いてみてくださいね」
リール「…分かりました」
ガラッ
すると、扉が開いた。
ジーヴル先生「さ、えっと…」
リール「リールです」
ジーヴル先生「じゃあリールさん。みんなが待っていますよ。どうぞ」
リール「…」
リールはここでラーフを見た。
ラーフ「…大丈夫ですよ。あなたならできますよ」
リール「…」
私は不安に思いながらその教室に足を踏み入れた。
ラーフ (頑張ってくださいね。リール様)
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場所…教室
教室に入った私は教卓の前まで歩く。
男子「うわっ…めっちゃ可愛いじゃん」
女子「綺麗な髪〜」
女子「可愛い…」
男子「おいあいつめっちゃ可愛いな!」
男子「おうよ。女子最高」
女子「ちょっとそこ!何言ってるの!」
男子「おっとと…つい心の声が漏れちまった」
ジーヴル先生「よぉしみんなー!この子がさっき言った転入してきた子だ。名前はリールさんだ。みんな仲良くしてくれよ!」
男子「いい名前だな!」
男子「顔可愛い上に名前も可愛いのかよ!」
男子「俺あの子狙おっかな」
男子「バッカてめぇ!俺のもんだ!」
女子「あなたたちうるさいわよ!」
男子「全く委員長のやつ…」
女子「でもあの子ほんとに可愛いよね〜」
女子「だよね〜」
女子「髪もサラサラしてるし〜」
ジーヴル先生「じゃあリールさん。なにか一言ありますか?」
リール「えっと…リールです。よろしくお願いします」
男子たち「うおおおおおおおお!」
男子「先生!席は!席はどこにしますか!なんなら俺の隣にでも」
ジーヴル先生「いや、席はあっち。周りは男子より女子の方がいいだろ?」
男子「えー!」
男子「先生!そりゃねぇよ!」
ジーヴル先生「やかましい!お前らの近くに置いたらどうなるか分かったもんじゃねぇよ!」
男子「先生!俺なんもしねぇよ!」
ジーヴル先生「とにかく!リールさんはあっちの女の子が多い方の席に座ってもらう!いいな?」
男子「ぶー!先生のケチー!」
ジーヴル先生「さ、リールさん。あちらの席があなたの席ですよ」
リール「は、はい…分かりました」
リールは指定された席に行った。
スッ…
リールはその席に座った。
女子「あ、あの…」
リール「!」
女子「よ、よろしく…お願いします…」
リール「はい。よろしくお願いしますね」
女子「…///」
私の隣の子はいかにも物静かな子でした。女の私を相手にしてもこの感じ…恐らくそうなんだろうと、その時思いました。
リール「あの…お名前教えて頂けませんか?」
女子「えっと…アンナと言います…」
リール「アンナさんですね。これからよろしくお願いしますね」
アンナ「はい…」
ジーヴル先生「さて、リールさんが入ってきたところで授業再開するぞー」
男子「えー!」
ジーヴル先生「はいそこ!嫌とか思わない!まだ始まったばかりだぞー?」
男子「うぇー…」
そして、授業が始まった。
リール「あ、教科書…」
アンナ「あ、あの…これ使って…」
するとアンナが教科書を見せてくれた。
リール「あ、ありがとう」
アンナ「い、いえ…」
それから私はアンナに教科書を見せてもらいながら授業を受けました。
ジーヴル先生「じゃあみんなに質問な。基本属性魔法と特殊属性魔法の中でマナを必要としない属性魔法はなんだー?」
リール (あ、これ…魔女さんから習ったやつだ…)
アンナ「えーっと…えーっと…」
リール「!」
私は、隣で悩んでいるアンナに気がついた。
アンナ「えーっと…なんだっけー…」
ジーヴル先生「分かるやついるかー?」
誰も手を挙げなかった。
ジーヴル先生「うーんじゃあ…アンナ!」
アンナ「は、はい!」
リール (なんと運が悪い…こんな時に限って当ててくるんですね)
ジーヴル先生「マナを必要としない属性は?」
アンナ「えーっと…えーっと…」
男子「なんだ?答えないのか?」ヒソヒソ
リール「!」
私は端っこでヒソヒソと話している男子の声を聞いた。
男子「仕方ねぇよな。あいつ頭悪いし」ヒソヒソ
男子「結局ギリギリで1学年突破したしな」ヒソヒソ
リール「…」
私はその時、魔女さんの言葉を思い出した。
魔女さん (私よりもすごい魔女になってみんなを助けてあげて)
リール「…」
それを思い出したと同時に私の口が勝手に動いた。
リール「アンナ。アンナ」ヒソヒソ
アンナ「?」
リール「氷属性魔法ですよ」ヒソヒソ
アンナ (こ、氷属性魔法…)
ジーヴル先生「どうだ?分かるか?」
アンナ「あ、え、えっと…氷属性魔法…です…」
ジーヴル先生「正解だ!」
男子「!?」
ジーヴル先生「そう!氷属性魔法だけ例外だ!氷属性魔法は空気中の水分を使って…」
スッ…
アンナはホッとしたのかゆっくり座った。
リール「やりましたねアンナ」ヒソヒソ
アンナ「ありがとうリールさん…」ヒソヒソ
リール「リールでいいですよ」ヒソヒソ
アンナ「ありがとう…リール…」ヒソヒソ
リール「どういたしまして」ヒソヒソ
ジーヴル先生「だからみんなは氷属性魔法だけ一律して使うことができるんだ!」
男子「先生〜」
ジーヴル先生「ん?なんだ?」
男子「氷属性魔法以外はどうなるんですか?」
ジーヴル先生「その他の属性魔法は各属性魔法に適正がある人しか使うことができないんだ。この世界には基本属性魔法、特殊属性魔法、無属性魔法の3つが存在する。この内無属性魔法と基本属性魔法の氷属性魔法は誰にでも使える魔法だ。その他は人によって使える魔法が違うから注意な」
男子「それってどうやって適正って分かるんですか?」
ジーヴル先生「それは次の講義で全員分の適正魔法を見ようと思っている。これからはみんなの持つ適正魔法によって違う授業内容になるからな。2学年の最初のイベントは各々の適正魔法の見極めだ」
男子「よっしゃー!やっと魔法使いらしいことができるぜ!」
男子「この時を待ってた!」
男子「俺火属性魔法がいい!」
男子「俺は雷だ!」
女子「はぁ…全く男子は…」
リール「ねぇアンナ」
アンナ「な、なに?」
リール「この学院の人たちって自分の適正魔法を知るのはこの学年からなんですか?」
アンナ「うん。そうだよ。1学年は魔法の基礎を学ぶから実技が入る2学年の最初にみんなの適正魔法を調べるんだよ」
リール「へぇーそうなんですね」
アンナ「楽しみだね」
リール「そうですね。ちなみにアンナはどの属性魔法がいいんですか?」
アンナ「えっと私は…水…かな…」
リール「いいですね」
アンナ「リールは?」
リール「私ですか?私は…うーん…何でもいいかなぁ…」
私はここで自分の適正魔法を伏せておくことにした。
アンナ「そっかぁ…楽しみだね」
リール「えぇ。そうね」
ジーヴル先生「お前ら想像を膨らますのはいいけど自分の想像通りの属性魔法が使えるとは限らないからな」
男子「分かってるぜ先生!期待してるぜ!」
キーンコーンカーンコーン
すると、学院内でチャイムらしき音が鳴った。
ジーヴル先生「お、もう時間か。じゃあ次回は適正魔法を見るからな。一応ここで待っててくれ」
生徒「はーい!」
ジーヴル先生「それじゃあ解散!」
そしてその日の授業は終了した。
アンナ「ね、ねぇリールちゃん…」
リール「ん?」
アンナ「あの…一緒に寮に…」
男子「なーなーリールちゃん!」
アンナが何か言ったみたいだけど、男子のせいで全く聞こえなかった。
男子「これからどこか行かね?俺いいとこ知ってるんだよねー!」
男子「な、お前ずるいぞ!俺が連れてくんだ!」
男子「なにをー!」
女子「あなたたち!リールさんが困ってるでしょ!やめなさい!」
男子「な、委員長!」
男子たちを一声で止めたその人は身長が私よりも少し高く、目が鋭かった。
女子「あなたたちは早く帰って勉強しなさい!」
男子「ちっ…リールちゃん!またいつか一緒に行こうね!」
男子「その時は俺が連れてくよ!」
男子「バッカ俺が連れてくんだよ!」
男子「何を!」
女子「早く帰りなさい!」
男子「うぉー!委員長が怒ったー!」
すると男子たちは教室を出ていった。
女子「はぁ…全く。…大丈夫ですか?リールさん」
リール「え、えっと…はい…」
女子「私はこのクラスの委員長 スカーレットと言います。以後、お見知り置きを」
リール「は、はい…」
スカーレット「それでは…」
スタスタスタスタ
すると、スカーレットと言う名の委員長さんが教室を出ました。
リール「…あ」
私はここでアンナの存在に気づきました。
リール「あ、アンナ…大丈夫ですか?」
アンナ「は、はい…」
アンナは男子たちに押されて尻もちを着いていた。
アンナ「いたた…」
リール「立てますか?」
アンナ「はい…大丈夫です…」
アンナはゆっくりではあるが立ち上がった。
アンナ「あ、あの…リール…」
リール「?」
アンナ「一緒に寮に行きませんか?」
リール「あ、いいですよ」
アンナ「やった!じゃあ行こ!」
スタスタスタスタ
アンナは私の手を引いて寮に連れてってくれました。
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場所…寮 (アンナの部屋)
アンナ「さ、どうぞ」
リール「お、お邪魔します…」
そこには綺麗に整頓されていた空間があった。
リール「綺麗ですね」
アンナ「え!そうですか?」
リール「はい。綺麗に整頓されています」
アンナ「そ、そうですか…嬉しいです…」
リール「!」
私はここでアンナの部屋に2つベッドがあることに気づいた。
リール「ねぇアンナ」
アンナ「はい。何ですか?」
リール「ここベッドが2つありますが、この寮は2人でひとつの空間なんですか?」
アンナ「あ、そうなの!でも私は1人でこの部屋を使ってるんです!」
リール「他にいないんですか?」
アンナ「はい!このクラスは奇数なので1人余るんです!」
リール「…」
アンナ「でもリールが入ってきたので偶数です!」
リール「そう…ですか…」
コンコンコン
突然、部屋のドアがノックされた。
アンナ「だ、誰だろ…」
アンナはドアを開けに行った。
ガチャ…
ドアを開けるとそこにはラーフさんがいた。
アンナ「あ、ラーフ先生」
ラーフ「こんばんはアンナさん。実はあなたにお話したいことが…ってリールさん」
リール「あ、はい」
ラーフ「丁度いいです。アンナさん」
アンナ「はい」
ラーフ「これからあなたのルームメイトはリールさんになります。この部屋はお二人でお使いください」
アンナ「え…」
リール「え…」
アンナ「ええええええ!」
リール「ええええええ!」
なんとアンナのルームメイトは私だった。悪い気はしなかったので私はその話を承諾し、アンナはとても喜んでいた。
ラーフ「荷物は部屋に置いてあるので」
リール「あ、分かりました。ありがとうございます」
ラーフ「それではまた…」
ガチャ…
ラーフはドアを閉めてその場をあとにした。
アンナ「…」
リール「…」
アンナ「ま、まさかリールが私のルームメイトなんて…」
リール「あはは…驚きましたよ…」
アンナ「こ、これからよろしくお願いします!」
リール「私の方こそ、よろしくお願いしますね」
エレナ学院1日目 まさかの隣の子が私のルームメイトだった。気弱なのか声も小さく打たれ弱いけど私はそんな彼女が少し好きなのでこのお話は快諾できた。これから色々あると思うけどいい学院生活を送れそうです。
リール (魔女さん…私…頑張りますから)
〜物語メモ〜
ジーヴル先生
2学年担当の先生。
主に実技の授業を担当している。
生徒からは人気の先生だ。
アンナ
リールの隣の席の女の子。
1学年の時の成績は一番下でギリギリ1学年を突破できたほど。
気弱で声も小さく、他人と慣れるのに時間がかかる。
だが、リールだけは早くに打ち解けることができた。
スカーレット
リールのクラスの委員長。
目が鋭いため睨んでいるとよく言われる。
実際は睨んでないので誤解を与えることが多い。