馬太郎   作:おおおユウゴ

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 富、名声、力、この世の全てを手に入れたウマ娘“黄金船ゴールドシップ”
 彼女の死に際に放った一言は人々をバ場へ駆り立てた。
「アタシの財宝か?欲しけりゃくれてやる・・・。探せ!この世の全てをそこに置いてきた!」

 乙女達はゴールラインを目指し、夢を追い続ける・・・!

 世はまさに大競走時代!!

 テェレッテェツツッ〜〜【略】

 ──○NE PIECE!

(申し訳ないがそういう話ではありません)




初恋、偏愛になりけり。

 

 

  

 

 

「キショイわ、アンタ、それは キ・シ・ョ・イわよ」

 

 ボクが……、いや、俺がとある初恋紛いな思い出について語り終えたとき、それを語ってくれと自らせがんだ幼馴染みの反応はそんな手ひでえものだった。

 

「うるせぇ分かっとるがな、お前から聞いといてナンゾその言いざまは。しかもワザワザ2回も、区切るように強調して言う必要あった? や、ないよネ、……ないよね?」

 

「最後ちょっとマジで聞いてるの芝生えるんですけど。いやーキショイ、ナイわー。なに? 星空がキライなわけじゃない、自分も星空が好きな莫迦のひとりなのがイヤだー、なんてカッコつけたですって? ……うわー」

 

「ヤメテ()女子のそういう“ウワー”とか“キッショ”とかそういうのキライ」

 

「あれーっ、“ボク”じゃなかったんですかぁ?」

 

「コナクソ、このメスウマ……」

 

 ()はそう小声で愚痴るように言った。これは不覚であった。トレセン学園のカフェテリアにおいて、目の前の席に座るメスガキもといメスウマ娘(いやそもそも“ウマ()”なのだからオスかメスかなど言うまでもないね)にはこの俺の自制心というやつもすでに臨界突破していたのがマズかった。つまり俺はできるかぎり我慢して最善を尽くしていたので、悪くない。長男じゃないから多少我慢できなくとも仕方ない。

 

 だが俺のそんなつぶやき──人間には到底聞き取れまい呪詛紛いな響きをもった文句も、人間ではない存在たる彼女(ウマ娘)にはハッキリと聞き取れたようである。

 ピクリとその頭に生えた柔らかそうな、可愛らしいとでも言うべき形のよい耳が動き、その元より勝ち気な目がややつり上げられ、鮮やかな色合いの小振りでつやりとした唇が動き、言葉を発した──するどいナイフのような言葉であった。

 

「──なんですって? ジャック・トランスの偏執的な目つきをしているようなアンタに言われたくはないわね、ふん!!」

 

 ──その言い回し、英語の授業で習ったのであろうか? 一生使わないであろうに……、いや使ったな。覚えたのだろうか……もしや俺を罵るためだけに? 

 

 え、酷くね? ──そんな事を内心ふと思いつきながら、(確かに俺はそんな目をしているがね……)と認めつつ、その豊満なバストを組んだ腕にのせて支えるようにしながら恨みがまじい視線を俺へとむけてくる彼女に向き直って、言ってやるのだった。

 

「……もとはといえば、お前さんが聞きたがったから話してやっと言うに……、ダイワスカーレットよ、何だよカリカリして。(生理か?)」

 

 (なお)()(カッコ)内の言葉は心中の呟きである。死ぬほど言ってやりたくて堪らなかったが、ここはガマン以前にデリカシーというやつが適用されました。嘘です。言ったあとズタボロにされるのが目に見えていてコワイのでやめておいただけです。やりますよ、この(むすめ)はやります。普段の優等生ヅラをかなぐり捨てて、襲いかかってきます。コワイ。

 

 だが当のウマ娘こと、ダイワスカーレットはそうでなくともますます面白くなさそうに頬をムクーっとふくれさせ、見るからに不満げであった。

 テーブルにのしかかるように片肘(かたひじ)をつき、言った。

 

「アンタがいじけているふうにして、似合わない真面目な顔して珍しく悩んでるから、かまってやってんに決まってるでしょーが」

 

 彼女のもう片方の腕は組んだままであったから、肘をついた方の腕が受け持っていたほうの堂々たる乳房(ちぶさ)がしなだれ、そうしてテーブルの上にムニュンとつぶれ気味ながらもそのふくよかさを(あらわ)にしていた。いわゆるオッパイ枕というやつである──え? 知らない? 俺はガキの頃からよく見ていましたが……。あ、ダイワスカーレットと俺は従兄弟の仲であり、このダイワスカーレットという少女はついこの間までランドセルを背負っていたのであるという些事を付記しておきます。また彼女は昔から発育優等児であったこともお伝えしておきます。身長? 知らんな。

 

 ──ともかく、俺はその様子を、思慮深げに、物憂そうに目を伏せがちにしてみせたダイワスカーレットのその年齢不相応な(あや)しさをを秘めた姿とともに眺めざるをえなかった。今夜のオカズ№5、ゲットだぜ!! なお№4までは全部AV(アニマルビデオ)からであるからにして、俺は昔からの付き合いの少女をいつも性的な目で見ているわけではないということをここにお断りしておきます。ナニ? アニマルがウマ娘のことではないのかって? ──あ〜あ〜そういう旧世代的差別発言ヨクナイ(露骨な話題そらし)

 

 

 ──そうなのだ

(ところでウォッカはいずこだろう。ダイワスカーレットがここでたむろっているならいずれは寄ってくるはずだが……。コイツらレズだからな、間違いないコトである。ついでに言えば俺は多少ボーイッシュな女のコもイケますねぇ。男尊女卑反対! 俺は真の男女平等主義者なので男の子が女の子になっても、男の子みたいな女の子でも、生えている女の子でも生えてない男の子でも、男の娘になった女の子でもイケますねぇ──下半身に従え!、下半身でものを考えるんだ──Ecstary first, the rest nowhere「唯一ヌキん出て休むことなし」が俺の下半身にして()き様であるからにして……──【自重】)

 

 ──俺は決断せねばならないのだった

(むしろ幼馴染みでボーイッシュなら今頃俺のほうから告白しているまである。下半身はこう言っている──ン……? まてこの孤独なsilhouetteは……。俺はもしやウォッカのお兄ちゃんだった? ──どけ! 俺は【錯乱】)

 

 ──少女の純情を、真心を傷つけぬように。

(しかしながらツンデレロリ巨乳(きょぬー)もロマンですよ。はっ!? ダイワスカーレットとウォッカが“うまぴょい”して娘を産めば、ツンデレ髪型ロリ巨乳ボーイッシュにして己の身体に戸惑う、俺の求める究極の光源氏計画(テイオーステップ)が──【自重】)

 

 あのときの彼女に対して無自覚になしたような手酷い仕打ちを──ただ己の見栄だけのために何も考えずに何もかも拒否したような所業を繰り返さないために。

(──俺自身がロリ巨乳ボーイッシュウマ娘になればいいんだ、そうか、なんだ、こんなに簡単なことをだったんだ……)

 

 いやなんでふられたのかは未だにわかんなぃんですけどね。まあ、でもあの一言が不味かったのは、ハイ、お察しですな。

 

 ──いやそもそも俺は恋愛対象外であった可能性も微レ存? なら俺氏ここまで悩む必要ないし、もーいっそそうであってくれないかな〜。あーもーわっかんねーな。

 

 はーっ、と嘆息する。

 それを見てダイワスカーレットはまた眉をひそめてみせる。

 

「大体、そのウマ娘とのアレコレってのはアンタが小学生の頃の話なんでしょう? 相手の名前も覚えてないなんて……、なのにそれを今の今まで引きずって──、バッカみたい!! ほら言ってみなさいよ、アンタ今いくつだっていうのよ!」

 

「高校一年、さんさい」

 

「……莫迦?」

 

 まさに凍てつくような目で見てくるダイワスカーレット。あ〜コレコレ。実家じみた安心を覚えます。下半身のジョン万次郎もイケますねぇ! と喜んでおられる。なお万次郎の名の由来だがコレには深いワケがあって──【放送禁止】。

 

 というか、なんだ。

 

 確かに俺はここまで言っておいてなんだが、その星空の元で告白うんぬんの下りのときですらも、俺はかのウマ娘の名前は知らなかったのだ。それが彼女との約束だったのだ。

 

 ──嘘です。当時の俺が歳相応もなく、自分の知らない土地で純粋無垢な同年代の異性と一緒にアレコレする(もちろん健全です)ことに、なんか現地妻を娶るような罪悪感をいだいて相手がピュアな田舎娘なことにつけ込んで自分の名前を教えなかったからです。そしたら相手のウマ娘も

 

「へなまずりぃ!! いいふりこいてぇ、だば私の名前もすかふぇでけねし!」

 

……というもんだから、お互いに名前を知らないままなのです。

 

 さて、そんな今考えてみても保身ばかりしっかりしてるクソガキどころかクソオスな俺氏のそんな昔の、できればなかったことにしたい彼カノジョの関係的な出来事をこうも思い出さねばならず、そうしてそれはなぜにこうも物憂げなのか?

 

 それは俺のもつ骨董品そのものなガラケー……Wi-Fiすらも備えていない、使っている通信回線自体があと数年ほどで廃止されるような、なんで今でも使っているのかも分からない小学生からの付き合いなガラケーが受信した、一通のメールに起因するのだ。

 

 俺は観念しなくてはならない。

 そう腹をくくる思いで目の前の少女──ダイワスカーレットに俺は、女と話しているときには他の女の話をするなという父親の箴言を敢えて無視して(だいたい相談ついでになんでか俺の初恋話をしなければならなくなった時点でもうアレなのだ)ポケットからガラケーをだしてワンタッチボタンを押してひらき、(くだん)のメールを見せた。

 

 

保身だけはしっかりとしていたつもりなのだ。

 

名前すらも知らない仲なのだ。

 

ましてや、携帯の番号など。

 

 

 

 

【会いに行きます】

 

 

 

 

その一言が、古臭い液晶画面に浮かんでいた。

 

 

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