ありふれていない『天の鎖』で世界最強   作:如月/Kisaragi

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お待たせいたしました。
今回の話は三人称視点になっています。

最近は長い話ばかりでしたが、この話はいつもと比べると短いかもしれません。ご了承ください。

ということで、本編をどうぞ。


Ep.14

天を舞う美しき銀の修道女。神々しい銀の羽と一対の大剣を持つ女は、その羽から、周りに浮かぶ魔法陣から、弾丸を射出していた。

銀の弾丸。魔力によって構成された、言うなれば魔弾の群れが飛び交う。

絶対的な神の使徒。宙に浮かぶ女性を表現するとするのならば、その言葉が正しく正しいものであった。殺人的な魔弾の群れ。流星群にもみえるその魔弾の中を潜り抜け、駆け抜けるようにして、独りの人間(泥人形)が駆け抜けていた。

 

緑髪の麗人。恐ろしいほどに中性的な顔立ちながら、その眼はまるで本当に人を殺すかのような鋭い眼光を蓄えている。

対する修道女は銀髪銀眼。身に纏いし戦装束も銀色の光を蓄えており、その神秘的な光のことごとくが緑髪の麗人に対して牙を向けていた。

 

両者――天臥久鎖李と神の使徒・ノイント――は、ハイリヒ王国の王都から離れ人気の少なくなった地にて戦っていた。

否、これはもはや戦いなどではなくなっていた。今彼らが行っていたのは、純粋な殺意だけで出来ている殺し合いであった。

銀弾が飛べば、鎖が落とす。

鎖が伸びれば、握られし大剣と銀弾によって切り落とされる。

殺意渦巻く戦場はすでに、地面に大量のクレーターと小高く盛り上がった山を構成するようなレベルの戦いにまで変貌を遂げていた。

 

「《民の叡智(エイジ・オブ・バビロン)》」

 

久鎖李が一瞬のうちに手を地面に付き、一言唱える。

すると地面から様々な武具が出現し、主の命令を待つ。一言唱えるだけで、英雄王に並ぶほどの弾幕を投射する準備を整えたのである。

 

創造の理念を鑑定し、

基本となる骨子を想定し、

構成された材質を複製し、

制作に及ぶ技術を模倣し、

成長に至る経験に共感し、

蓄積された年月を再現し、

あらゆる工程を凌駕し尽くし――――

ここに、幻想を結び剣と成す――――!

 

「ふっ!」

 

手を大きく一振り。そうすると、剣が、用意された武器が、意志を持ったかのように射出された。

襲い掛かってくる剣山。予測不能、回避不能に思われるほど早く、鋭く、繊細で、尚且つ複雑な投射は。

 

「――甘い」

 

刹那のうちの攻防で敗れ去っていった。

ノイントが大きく双大剣を振るう。すると、一瞬で周りに斬撃が展開され武具のことごとくが剣圧によって叩き壊されていった。

正しくこれは、八重樫雫や型月の剣豪たちが使っていた現象と確実に類似しているものであった。

多重次元屈折現象。武の高みに至りし者が振るう強者の力が、造られし幻想を地に墜とした。

 

しかし彼の本命はそれではない。

ノイントは空中にて、凄まじいものをその両目に捉えていた。

 

「それは、どうかな?」

 

空中を自在に飛び回り、接近してくる久鎖李の姿にノイントは感情を持たない身の筈なのに、僅かばかり驚愕する。

刹那の間にノイントは久鎖李の右手に握られている剣に気が付く。ノイントは瞬時に思考を元に戻して対応を仕掛けた。

 

久鎖李が袈裟掛けを仕掛けるのに合わせて、その軌道を読み剣を置いて得物を破壊しようとする。

計算され尽くしたその一閃を、ノイントは圧倒的な強さにおいて粉砕しようと剣筋に添わせるようにして自らの得物を構え、完璧なタイミングで攻撃をした。

 

その、瞬間の出来事であった。

 

ノイントは僅かばかりの違和感を覚えた。

自分は確かに相手の剣の軌道に合わせて、大剣を置き、その得物と担い手(久鎖李)に攻撃をしたはずであった。

なのに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

可笑しい。いくらなんでもでたらめであった。

剣圧を飛ばすことが出来る身であっても、この一撃は純粋にぶつける為に振るったはずだ。

なのになぜ、私は何の感覚も抱いていないのだ?

思考を回す。あの一閃は互いに回避不能、途中で軌道を変える事すらもできないほどの刹那の攻防であったはず。訳の分からない感覚に囚われてたノイントであったが、ここで一つの考えに至ったのだ。

 

――まさか、最初から攻撃すらもしていなかったのではないか――

 

怖気が走る。

だとすれば、この目が捉えていたのは……

 

「おや、案外早く気付いたみたいだね。これは想定外だとも……と言いたいところだったのだけど、全て読んでいたさ」

 

ノイントの仮説は半分当たっていた。ノイントはこの現象を高速移動による錯覚――所謂残像のこと――と読み、背後に視線を向けた。それが一番確実に相手の認識範囲外から殺すことが出来る方法であったから。その読みは半分が当たっていたのだ。

 

ならば対処は出来る。ノイントは瞬時に身体を回して右手の大剣を思い切り振りかぶり、久鎖李の頭に向かって一撃を叩き込んだ。

必殺にして、必至の攻撃。誰もがそう認識するほどに、完璧な一撃であった。

 

しかし、その攻撃すらも規格外の者(イレギュラー)である久鎖李には意味のないことであった。

 

「――かはっ」

 

声を上げて苦しんだのは、ノイントの方であった。

何故。彼は攻撃などしていないはずだ。

なのに、なのに何故。

 

――私はこうして、出血しているのだ――

 

激しい混乱に見舞われながらも、体勢を整えたノイントは一瞬のうちに距離を取った。

追撃を与えられて傷つくことを避けるためであった。

 

「不思議そうな顔をしているね。まるで、何で私は攻撃を喰らっているんだみたいな考えかな?」

 

内心を見透かしていく久鎖李。鋭い言葉の一つ一つがノイントのことを煽っていく。それに追随するかのように、心を持たないはずのノイントが表情を歪めていた。

 

「簡単なことだよ。それは偏に……」

 

――君が、見落としをしているからさ

 

まるで刑事ドラマの事件解決のシーンかの様に始まる、観客はおらず聞き手と話し手しかいない芝居。

その美しい緑髪を優雅にはためかせながら、久鎖李は一言一言"答え合わせ"を始めた。

 

「まず最初の勘違いから。あれは残像なんてものじゃない」

 

仮説を真っ向から挫き、認識の訂正を行う久鎖李。

その事実を告げるときに口の端を歪めながら相手のことを睥睨し、さらに得意げな様子で話を続けていく。

 

「あれは僕の技能――天の鎖の影。文字通り、自らの影さ」

 

そんなばかな、と思考するノイント。

高々影程度が、このような威力と複雑な動きをできるはずがない。そう考えたのは、自らが影程度の存在に虚仮にされたということが信じられない気持ちになったからであった。

 

「高々影ごとき、と僕のことを侮っているのかい?そうだとするのなら――」

 

――それが、君の敗因さ

 

その言葉が発せられた瞬間、辺りの空気が突然重くなった。並の人間では息を吸うことすら覚束なくなるほどに、濃密で、残酷な"死"の気配が辺り一帯を急速に包んでいた。

その元である威圧感とも、殺気とも取れるそれを発していたのは、言うまでもない。目の前にいる、端麗な顔を歪ませてこちらのことを睨みつけている戦乙女(ノイント)だ。

 

「決めました。本来であれば貴方のことを連れ帰るように命じられていましたが、貴方は我が主に不相応です。よって、ここで貴方のことを排除します」

 

彼女はそう告げると、先ほどまでとは比べ物にならないほどの速さでもって久鎖李へと襲い掛かった。

ここまでの彼女には、驕りがあった。高々ただの人間程度、と高を括って本来の力を全く使っていなかった。その驕りは今でも残っている。使えるべき主に言われた命令を独断で破り、目の前の男を謎の衝動で殺すことしか、今のノイントは考えていなかった。

 

大剣を振るう。自らの技巧に馬鹿みたいに高いステータスを乗せて、かするだけで肉体が吹き飛ぶくらいの威力を持つ一撃にまで昇華させて襲い掛かる。

対する久鎖李も負けてはいない。天の鎖の名に懸けて、ここで負けるわけにはいかないと固く決意すると、一振りの刀を取り出した。

 

鬩ぎあう両者。大剣を振るえばそれを流し、刀が振るわれればそれは大剣の腹で受け止められる。

埒が明かない。同じタイミングで、両者はそう判断した。

となれば、やることは明白であった。互いが互いの全力を武器に込め、ぶつけ合う。ソニックブームが吹き荒れ、両者が弾かれて距離を取る形になった。

 

距離を取ったことを確認した後、互いは全速力で次の一手を考え始める。

 

(――純粋な力の強さ、技術力ではあちらと同等。この身体についてきて、さらに全力の一歩手前まで力を出しても倒しきれない。

なら、ここからは手加減も、容赦もなし。我が主の脅威となる存在なら、ここで――)

(――ここまでとは。原作においても強キャラ扱いされてはいたが、強すぎる。……あんまりこの手は使いたくなかったけど、やるしかない。もう、引き返せないところまで物語は進んでいるんだ。俺が、ここで、お前のことを――)

 

「「……倒(しま)すよ」」

 

先手を取ったのは久鎖李の方だ。《星の執行者》のスキルを使用し、より深いところまで力を引き出し始める。

さらに強化を使い、能力値の底上げをする。二つ強化によって得られた倍率は――10倍。星の執行者によって素のステータスを5倍にまで大きく引き上げ、強化によってその力を2倍に増幅させる。

ノイントは自らの力の制限を撤廃させ、一気に久鎖李に向かって躍りかかった。

 

先ほどまでとは比べ物にならない攻防が始まる。

この世界の人間や神であっても、この攻防を肉眼でとらえることが出来なかった。

しかし戦っている当人たちは別であった。ノイントは、はっきりと自分が圧されているということを認識していた。

 

(――強すぎる。本当の全力を持ってしても、この人間に勝て、ない)

 

正しく規格外。正しく理不尽。世界を超えし天の鎖が、その圧倒的な力を発揮していた。

先程までとは比べ物にならない速度で振るわれる剣閃は、鋭さと重さ、そして速さが違い過ぎた。

さらに死角から襲い掛かってくる『天の鎖(エルキドゥ)』の制御能力も、また圧倒的なものになっていた。

少しずつ体力を削られていくノイント。()()()()()久鎖李の全力についてきているノイントもまた圧倒的であった。

もうだめか。ノイントはそう認識した瞬間、致命的な隙が生まれた。

 

(――申し訳ありません、我が主。私ではやはり、勝つことが出来なかった)

 

急速に迫ってくる死。それから逃げることは最早、できないことであると気付いていた。

目を閉じる。脳裏に思い浮かぶ記憶は何もない。ただ、主に仕えて神の使徒として暮らしていた記憶が残っているだけだった。

 

しかし何故か。

ノイントは思ってしまった。

 

――生きたい、と。

 

 

 


 

 

 

――ああ。何て、罪深い。




中途半端なところですがここで切ります。続きが気になるかい?俺も気になるところなんだよ。

書いてるのはおめーだろ、と思う方が多いでしょうがこの先の展開はもちろん決まっています。今日か明日のうちに出せたらなと思うのでお楽しみに。

試験コワイ……勉強コワイ……小説書くのたのちい……
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