ありふれていない『天の鎖』で世界最強   作:如月/Kisaragi

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待たせたな(二回目)

大方のテストが終わり、時間に大いなる余裕ができたため少しだけ投稿ペースが上がるかなと思います。
夏休み中はさらに偏差値を上げるために学校に通ってマンツーマンすることになりそうです。

ということでお待たせしましたEp.17です。
展開はほぼ決まったようなものです。ここからついに物語の核心が始まることになるんじゃないかなと思います。

てな感じで、本編をどうぞ。


Ep.17

王国図書館にて。ハジメは七大迷宮の一つとして知られている大迷宮、次の実戦訓練の舞台ともなるオルクス大迷宮についての情報を調べていた。

 

オルクス大迷宮。

それは、全百層からなるとされている大迷宮だ。先にも述べた通り七大迷宮の一つであり、RPGでお決まりの通り階層が深くなればなるほど魔物の強さが上がっていく他、強い魔物も出現する。

しかしその一方で冒険者、傭兵、新兵の訓練場として人気があるのだと司書の方が教えてくれた。階層式になっているが故に魔物の強さが測りやすいからというのと、出現する魔物が地上の魔物に比べ遥かに良質の魔石を蓄えているから、と理由まで懇切丁寧に教えて頂いた。ハジメはこの時、神の使徒パワーに感謝すると同時に司書さんにも深い感謝の念を抱いた。

 

因みに魔石とは魔物を魔物たらしめる力の核の事である。簡単に言えば強い魔物はこれが大きく質も良い魔石を持っている。そしてこの魔石は魔法陣を描くために必須になる材料でもある。粉末状にして使うよりも石のままとして使う方が効率もいい。魔力の通りが良いからである。

ちなみに、良質な魔石を持つ魔物ほど強力な固有魔法を使う。固有魔法とは、詠唱や魔法陣を使えないため魔力はあっても多彩な魔法を使えない魔物が使う唯一の魔法である。一種類しか使えない代わりに詠唱も魔法陣もなしに放つことができる。魔物が油断ならない最大の理由だ。

 

情報をある程度まとめ終わったハジメは、明日に迫った出発に思いを馳せる。明日に宿場町の【ホルアド】へと出発する。その次の日――今日から数えると明後日の事――から迷宮に挑戦だ。

天蓋付きのベッドの上で横になる。相方は何やら外の風を浴びてくると言って出ていっていた。行きたい気持ちもあったが、今は明後日のことで心がいっぱいであったので外にはいかなかった。夜の散歩も乙なものだな、とは思うが。

 

ふと気になって外を見てみる。空には、ただ一人きりの月が浮かんでいた。

くらい夜だというのに、その月はずっとキレイに輝いていた。そこは元の世界とは変わらないんだな、と思いつつ窓から星を見ることにした。

 

月を見て、思う。

この綺麗に輝いている月は、何かを暗示しているのかな?なんて意味もないことを思いながら、すぐにその思考を放棄した。

そんなはずはない。何かにおびえるようにしながら、ハジメは天体観察の続きを始めた。

 

空に雲はかかっていない。

月のそばには他と比べて見ると紅い星が浮かんでおり。

ハジメが横に顔を向けると、そこにいた蝙蝠が空へと飛び立っていた。

 

空に手を伸ばす。

見果てぬその先の彼方へと思いを馳せて、ハジメはゆっくりと手を伸ばした後、部屋の中へと戻っていった。星を観察する気分にもなれなかったからだ。

 

 

 


 

 

 

翌日の夜。ハジメやその他のクラスメイト達は、オルクス大迷宮の近くの宿場町【ホルアド】に到着していた。

久しぶりの普通のベッドを見て嬉しい気持ちになったハジメは早速そのベッドへとダイブした。

 

「元気だねえ。ここに来るまででもこっちは疲れてしまったよ」

「まだ体は万全じゃないの?」

「そうだね。多少の戦闘くらいは平気だけど」

 

ルームメイトの久鎖李が何やら呆れたような視線を向けてきているのも気にせずに、ハジメは普通のベッドの感触を楽しんでいた。

ああ、良きかな庶民のベッド、庶民の暮らし。天蓋付きも慣れれば平気なものであったが、やはり自分はこっちの方が好きだ。悟りを開いたハジメはそう確信していた。

 

「それじゃ、今日も外の空気を浴びてくるとしよう。ハジメ、また後でね」

 

ベッドに夢中になっているハジメを横目に見つつ、久鎖李はそう告げて外の空気を浴びに行った。またの名を恋人()とのデート(逢引きという名の散歩)とも言うが。それを知るのは野次馬根性のあるパパラッチ集団(同人誌のネタに飢えた狂戦士集団)といつものメンバーだけである。なおその後記憶の改ざんが行われて、そのことを覚えているパパラッチはいなくなったらしい。怖いね。

因みに最近王都では壁を叩く音に関する被害の報告が増えているらしい。あと路上に大量にばらまかれている白い粉末(砂糖)の撤去依頼もだが。もうお分かりだと思うが、犯人はもちろんこの2人(新婚熟年カップル)の事である。

 

そんなことは置いておいて。

 

ダイブしていた時のテンションが落ち着いてきたハジメは、改めて明日のことに関して考え始める。明日はお試しということで浅い層――具体的には二十層までしか下りないことが決まっていた。メルド団長から直々に期待の一言をいただいてもいる。期待なんてされても困ります、むしろ王都に置いて行ってください、と言えなかったのはハジメのヘタレさもあるが同時にこのままではだめだとなけなしの勇気を振り絞ったからでもあった。

 

借りてきた本を読もうか、と考えたハジメであったが明日は早いだろうと思い直し寝ることにした。ショートスリーパーなので夜更かしは大丈夫だとは思うのだが、明日集中力が切れました何もできませんじゃただの阿保だと思ったからであった。

逢引きに行った久鎖李が返ってくるのを待とうかとも思ったが、彼のことだし十分に楽しんでから帰ってくるだろうなと思い直すと目を瞑った。十分に楽しんで、とは言ったが流石に一線は超えてこないだろうと思いつつ。

直ぐにやってくる心地よい眠気。ぐんぐんと眠りに誘われていくその意識は、ドアがノックされる音によって瞬く間に覚めていった。

 

誰だ!誰だ!誰だ!なんて昭和のロボットアニメの曲を思い浮かべながら警戒を高める。深夜の訪問者にロクな奴はいない。実際これまでもそうだったからだ。これまでの偏見からそう判断したハジメは錬成の準備を整え始めた。

試験管(擬き)の中に入っている水銀の流体性を高める。水銀の破壊力はシャレにならないレベルで高い。それはFate/シリーズに出てくるアーチボルト家九代目当主の魔術礼装の強さからもわかることだろう。

ハジメはそれとなくアドバイスを渡してくれた久鎖李に言われた通りにこの技術を高めた。錬成特化であるハジメは魔法適正すら満足にないため、ただでさえ多い魔力を活かして錬成を使って戦うことにしたのである。

 

しかしその警戒は、杞憂であったとすぐに気づくことになった。

 

「南雲君、起きてる?白崎です。ちょっと、いいかな?」

 

訪ねてきたのはなんと、学園の美少女三柱の一角にして幼馴染グループの一人、白崎香織だったのだ。ハジメはなんですと、と内心困惑しながらもこの客人を招き入れることにした。紳士たるもの、常に余裕をもって優雅たれ。という久鎖李の教えを破ることなくハジメはこの招かれざる客人を部屋に入れるために、ドアの錠前を外してゆっくりと開いた。

 

そこに立っていたのは、間違いなく女神にして女神と言っても過言ではないほどの色気と美しさを内包していた香織だった。

純白のネグリジェに、薄手のカーディガン。限りなく薄着であり、肉体のラインが見えそうなほどに目の前に立っている女性は美しかった。一方でこんな格好をしてきたことに頭を抱えそうになった。これではまるで、自分が誘っているみたいに見えるし、意図していなくとも香織の方がハジメを誘惑しているようにも見えてしまったのだ。

 

これではいけない。即座にハジメは香織の手を取り、自室に招き入れた。

 

「……えっ?」

「しー。……さすがにその恰好はまずいでしょ」

「それは、どういう……こと……あっ」

 

手を握られ動揺しているところにその一言を告げられた香織は、誰が見ても恥ずかしがっていると思えるくらいに顔を赤らめさせていた。今になってこの恰好の無防備さと恥ずかしさに気づいたのだろう。穴があったら入りたいという気持ちがありありと伝わってくるのを感じながら、ハジメは香織が再起動するのを待つことにした。

 

その間に紅茶を淹れることにする。某刑事ドラマの和製シャーロック・ホームズに憧れて身につけた紅茶淹れの方法でお茶を入れる。

最近はこれを意識することなく出来るようになった。身に着けるまでに犠牲になったティーカップとポットの量は計り知れない金額にもなっているが。

 

ソーサーの上にカップを乗せて、いまだにショックから立ち直れていない香織の前にカップを置く。

カタン、という音に気づいたのか。香織は少し恥ずかしがりながらも「ありがとう」とつぶやき、口に一杯のお茶を含んでいた。

 

「それで、どうしたの?明日の打ち合わせとかかな?」

「それはね……」

 

話を振ってみると、香織の表情が少し暗くなる。地雷を踏みぬいたか、と少し身構える。自分が悪いことをしたのならその非を認めて謝罪するべきだと常に考えていたからだ。この時点でどこかのご都合勇者とは違う。

 

「明日の迷宮だけど……南雲くんには町で待っていて欲しいの。教官達やクラスの皆は私が必ず説得する。だから! お願い!」

 

放たれた言葉が意外なものであったハジメは少しばかり驚く。この世界のハジメは足手纏いである筈もない。むしろ主戦力レベルだ。なのに何故、ハジメはこんなことを言われているのか皆目見当が付いていなかった。

自分がいるとパーティー内に不和が起きているからだろうか?気の利く白崎さんならそこら辺の調整役を任されているかもしれないな。ハジメはそう考えたが、これは飽くまでも自分の感想だなと思い香織に向かって理由を聞くことにした。

 

「……ええっと。突然言われても理由が分からなかったら僕としては納得がいかないからさ。理由を教えてほしいんだ」

「……それ、は……」

 

問うてみると、香織は少し怯えるかのような表情を浮かべながらハジメのことを見つめる。その目は、見えない恐怖――未来に怯える目であった。どうしてそんな目をするんだ、と問いたくなる気持ちを抑えつけ、ハジメは続きを促してみる。香織はそれに気づくと、小さく頷いて話し始めた。

 

「……あのね、なんだか凄く嫌な予感がするの。さっき少し眠ったんだけど……夢をみて……南雲くんが居たんだけど……声を掛けても全然気がついてくれなくて……走っても全然追いつけなくて……それで最後は……」

 

嫌な予感に取りつかれる。

一体自分の身に何が起きたのか。自分はどうなってしまったんだ、と声を高らかにして聞きたくなる気持ちをもねじ伏せたハジメは、静謐に香織に問うた。

 

「最後は?」

 

香織は今にも泣きだしそうな表情を浮かべながら、ぽつりと言葉を零す。

 

「……消えて、しまうの……」

「……そっか」

 

静謐な時間が始まる。

薄い緊張感と、未来への恐怖に包まれたこの部屋は、暗い雰囲気に包まれかけていた。

 

涙を零しそうになっている香織のことを見つめるハジメ。

 

確かに、不穏な夢だとは思う。しかしそれが現実に起こる確率なんて正直言ってないに等しい。それに、そんな不穏な夢を見たからと言って戦力として最高峰であるハジメが休んでいい理由にはならない。故に、たとえその先が地獄であるとしてもハジメは進むことしかできないのである。

 

「夢は夢だよ、白崎さん。それに、こんなところまで来て止まるわけにはいかないんだ。僕は、僕たちは、クラスメイト達の希望として戦っていかないといけない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ここまで来た以上は引き返せないんだ」

 

傍から見たら、とんだ思い込みの塊だと思う。

それでもこのようなことをいう理由は、自分自身が押しつぶされないようにするためのハジメの心の守りであった。

 

不安そうな表情で見つめてくる香織。こんなことを言うのは、正直柄じゃないのだが。ハジメは独り言ちながら、香織の目を見つめる。

 

「それでも、不安なら。僕のことを、守ってほしいな」

「……私が、南雲君のことを?」

 

慣れないことを言っているのは分かっている。自分にこういう役柄は似合っていない。

それでも、ここでこれを言わないといけないような。そんな気持ちに取りつかれたハジメはその一言を告げた。

 

「白崎さんは"治癒師"だよね?その力があれば、きっとみんなのことも、僕のことも守れると思うんだ。それがあるなら、きっと僕は大丈夫だから。白崎さんが……ううん。()()()、僕のことを守ってくれないかな?」

 

ハジメに名前で呼ばれたことに驚きながら、香織は笑った。昔から、何にも変わっていない南雲ハジメという初恋の人のことを見つめながら、香織は笑っていた。

 

「……うん。私が絶対に、南雲君のことを。ううん、()()()()のことを、守ってみせるよ」

「女性の人に守られるなんてプライド的にあれなんだけどね。……でも、そっか。香織が守ってくれるなら、安心かな」

 

そう言い終えると、どちらからかは分からないが互いが笑っていることに気づいた。

恥ずかしいセリフを連呼したことに気づいた時には時すでに遅しではあったが、その場は少し落ち着いた雰囲気に包まれていた。

 

それからしばらく雑談した後、香織は帰っていった。

初めて会った時にあったこと、皆と出会っていく中で変わっていった自分のこと、夏に久鎖李に呼び出されて駆け回り続けたあの夏の日(香織を純真無垢な女の子にする日々)の事を話していた。そこに重苦しい雰囲気はなく、あったのは優しく落ち着く風景なのであった。

 

 

 


 

 

 

――だが。いつの時代にも、お粗末な悪意は実在しているものである。

 

「……なんで、あいつなんかが香織と仲良くしているんだ……」

 

独りよがりな勇者は、また一歩足を踏み外した。

崩れていく正義。消えていく罪の意識。

 

そしてもう一人は、ただその両目に純粋な殺意を宿して、香織とハジメのことを見ていた。

 

「……くっはっはっはっはっは!これは面白い!これほどまでに面白いことが起ころうとはな!……さあ、見せてもらおうか規格外(イレギュラー)!貴様とその付属品どもたちによる、最高に面白い道化のショーをな!」

 

そして自らを絶対と信じてやまないクソ神(憐れで滑稽な道化)は、独り神殿にて高笑いする。

ただ自分の道楽のために、ここで彼は嗤っているのだ。

 

 

 


 

 

 

そして、今。

運命の日が、やってきた。




次回投稿は、ついに迷宮内の出来事です。
ここからペースを上げていきたい……!みんなー!俺に感想を投げてくれー!

という訳でまた今度。ばいばい。
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