ありふれていない『天の鎖』で世界最強 作:如月/Kisaragi
初の連続投稿なので初投稿です。
ということでまだまだ続いて行きます。
前回に引き続き、感想と評価、並びにUAありがとうございました。
前回のあらすじ
・特訓パート予告
・道場の娘さんとエンカウント
・現代日本っぽい名前になる
・何故か道場の師範殿に警戒される
どうしてこうなったと心の中で頭を抱える、オリ主(天の鎖)の明日はどっちだ……!
ということで本編始まります。
目の前の八重樫流師範――八重樫鷲三さん――は、その眼光を鋭くさせて俺に問うてきた。
場を支配している威圧感によって空気がひりひりしているような錯覚を受ける。殺気のようにも思えてくるその気配は、正しく強者であることを示すかのように俺の身体に降りかかってきていた。
規格外の子、とは俺の事だろう。間違いない。
では何を以て規格外と言われたのか。そこが重要である気がする。
この受け答え次第によっては、俺がさらに強化される可能性があるかもしれないのだ。
というのも、ネット版のありふれで仄めかされていたように、八重樫家は忍者の家系である可能性があるのだ。というかほぼ確定で忍者の家系であろう。
此処で勘違いしてはいけないのが、決してニンジャではないということだろう。このネタはよく使った気がするのでこれ以上は触れないが。
話を戻して。表の八重樫流を剣術などのものだとするのなら、裏の八重樫流は正しく忍術の流派である。あくまでも個人的なありふれ考察ではあるが。
此処で忍術を会得して自らの糧にすることができたのならば、少なくともあの
もし無理だったとしてもこちらはただの一般人(前世)である。剣術で戦闘の立ち回りを学習することも重要なので、別に忍術を会得する必要なんてない。
ではなぜ受け答えが大事なのか。その答えは、忍術が重要だからである。
前の文章と矛盾しているように見えるが、決してジョークで言ったわけではない。
完全に会得する必要はないのだ。そう、
では会得するべき技術とは何ぞや、と思うであろう。
まず一つは気配遮断。これは重要である。その気になればエルキドゥのサーヴァントとしてのスキルを使ってそれに近しいことはできるのであろう。
しかし先にも述べたが、こちらは前世一般人――一般人とも言い難いが――である。そんな初心の素人が大層な気配遮断とかできるはずがない。
ゴリ押しでやることもできるが、やはりスマートさは重要だ。それが理由の一つである。
他にもあることにはあるのだが、長くなりそうだし心の中でモノローグを垂れ流しにするのも大変である。
そう思い、目の前の師範殿に目線を合わせ、答える。
「……まず規格外の子と僕のことを言っていたけど、僕はそのような名前ではないよ。僕の名前は天臥久鎖李。立派な名前がついているのさ。そしてもう1つ、ここに来た目的だよね?それは簡単だ。僕を強くしてほしい、それだけだ」
エルキドゥっぽい喋り方にしたつもりではあったが、きっと全然遠い話し方をしているのだろう。
エルキドゥなら年上相手であってもズバズバと切りかかりに行きそうだから、このような話し方はしないと思う。
因みになんでそんなことをしなかったのかというと、こっちがビビって尊大な態度を取れなかったからという理由である。
「強くしてほしい、か。なるほど……1つ聞こうか。
君は、いや、久鎖李君は」
その強さを、なぜ求める?
静かに、但し荘厳に。道場の主たる師範は、俺に問うた。
その言葉には、重みがあった。万惑の思いがあった。優しさが、疑問が、そして悲しみが、その言葉にはあったのだ。
「それこそ簡単なことだよ。僕は無力だ。こんな弱い人間では、守るべき人ができた時に何もできない。何もすることができない。
――無力なままで、生きることを諦めたままでいるのは、嫌なんだよ」
だからこそ俺は、力強く言葉を発した。
無力なままで、生きることを諦めたままで、というのは前世の俺のことだ。
何もすることができずにただ死んでいく。それに俺は何も疑問を持ったことがなかった。
苦しみながら俺は死ぬのだと達観していたから。言い方を変えるのならば、生きることを諦めていたから。
しかしその考えは、死ぬ直前になって変わった。このまま死にたくないと。生きていたいと何度薄れゆく意識の中で思っただろうか。
後悔は二度としたくない。
決して最後まで、生きることを諦めたくはない。
そう心に強く刻んだからこそ、俺はこの言葉を言うことができた。
「だから僕は、力を望む。……鷲三さん。どうか僕を、弟子にしてください」
単純かもしれない。子供みたいで、何もわかっていない人間だからそのようなことが言えるのだと、そう思われているのかもしれない。
それでも僕は、進み続けることを決めたのだ。ただ、生きていることを誇りに思い、人生を駆け抜けていくために。
頭を床に付けて、手を前に出す。
俗に言う土下座だ。最大限の敬意を示し、鷲三さんに頼み込む。
「……君の意志は、しっかりと受け取った。訂正しよう、久鎖李君。君は規格外の子ではない。唯1人の、人間だ。
――ようこそ、八重樫流へ。歓迎しよう。さあ、顔を上げてくれ」
ゆっくりと顔を上げる。この胸の中は、感動と感謝、そして嬉しいという感情でいっぱいであった。
目から雫が零れそうになるのを抑え込み、鷲三さんに、いや。師範に向かって声を発する。
「ありがとうございます、鷲三さん。いや、師範」
そういうと師範は少し顔を綻ばせて笑った。
その微笑みはきっと常人では見ることができないほど微小な変化であった。現に俺にも、何も表情が変わったようには見えなかった。
しかし何故か、その顔が笑っているように俺には見えたのである。
兎にも角にも、俺はこうして八重樫流の門下生になることができたのである。
そして待ち受けていたのは途轍もなく大変な、茨の道であった。
朝早くから道場に通い、剣を振るう。俺の場合、師範に言われた通り午前3時には道場に向かうようにしていた。
しかし剣を振るうにも大変な仕掛けを用意しているのが八重樫流である。もちろん忍術コース同時受講のためである。
最近だと油の溜まっている落とし穴とかどんでん返しを使わないと竹刀を取れない様にしてあるとか、挙句の果てには門下生たちによる襲撃とかがあったりした。
特にヤバいなと思った時は空からタライがたくさん落ちてきた時であった。
たらいの一部に突起が付いており、刺さったら間違いなく致命傷レベルの攻撃が常に空から降り注ぐ状態で走り抜けるという地獄を味わった時は、「あ、俺、終わった」と思った。割と切実にである。
しかしそんな地獄も俺はこのハイスペックな躰とある癒しによって戦い抜くことができたのである。
癒しとは即ち、この道場の紅一点。八重樫雫の存在であった。
あれから呼び捨てで呼ぶように言われて彼女のことを呼び捨てで呼ぶようにした。それ以来何故か門下生と師範からの攻撃が強くなったが。
そして特訓が終わった後の俺をねぎらってくれるようになった。それ以来更に門下生と師範からの攻撃が強くなった。
そして今では俺のことを見つけるたびに彼女が喜ぶようになった。それ以来門下生と師範が殺す気で俺のことを攻撃するようになった。
常に俺の躰はボロボロであったが、そんな支えのおかげで何とかやっていけるようになっていた。
因みに俺は学校にしっかりと通いながらこのようなことをしていた。はっきり言ってめっちゃ疲れる。
そして最近更に俺の心労を加速させる原因が発生していた。それは即ち、一人の人間の存在であった。
始まりは雫から、友達を紹介したいと言われて連れて来てもらったことからであった。
純粋な興味と、予想している通りの人物なら良いのだけれどという希望的観測であった。
「お待たせ、久鎖李。連れてきたわ」
雫に連れられてきたのは、案の定というべき面子なのだった。
「わー、綺麗な髪の毛だね。あ、私は白崎香織!よろしくね、天臥くん」
「おう、お前が雫の友達か。初めまして、俺は坂上龍太郎ってんだ。宜しく頼むぜ」
ここまでは普通に良かった。将来病む予定の香織、脳筋になる予定の龍太郎。普通の面子だった。嫌悪の感じない、純粋な人間だった。
しかし、最後に連れられてきた人が一番の問題であったのだ。
「お前、雫とどういう関係なんだ!答えろ!」
「光輝、それってどういうことよ……というかその前に自分の名前を言いなさいよ!」
「少し黙っていてくれ雫!俺はこいつに聞かないとといけないことがあるんだ!」
「光輝、落ち着けよ!俺でもその態度はダメだってわかるぜ?」
「そうだよ光輝君、一回落ち着きな?」
「みんなまでそういうことを言うのか!?おい、お前!何か言ったらどうなんだよ!」
……うん。
まさかこんな小学校低学年で偽善的な人間になっているとは俺も思わなかったよ。まさか初手でこんなに怒鳴り散らしてくるとは思いもしなかったし。
というか一回落ち着いたらいいのに。独りよがりなとことも自分に都合のいい様に解釈するのもきっと変わりないんだろうな。
そう思いながら、ゆっくりと口を開く。
「僕は雫の友達だ。後、僕にはきちんとした名前がある。天臥久鎖李っていうね。そんな話し方をしていたら、君はその内嫌われると思うけどね。注意した方がいいんじゃないのかい?」
これで落ち着いてくれたら良いのだけれどね。
まだこれで言葉に耳を傾けることができる状態なら、助けることができる。まだ、やり直すことができる。
「っ!お前、そんな口の利き方はないだろ!?雫、こんな奴と本当に友達なのか!?」
「ちょっと待ちなさいよ光輝!こんな奴って何よ!?」
「なんでそいつをかばうような真似をするんだ!そんな奴と一緒にいるとお前が傷つくことになるぞ!?」
……散々な言われようだな。こんなに言われることにはなるとは思ってもいなかったよ。
現に彼と友達である筈の2人は固まってるし。とりあえず2人と話すことにしようかな。
「うん?……彼って、いつもこんな感じなのかい?」
「え?……いや、全然違う。光輝はこんな奴じゃないんだ。いつもはもっと冷静に、俺たちの声を聞いてくれるのに。今日はなんかおかしいんだ、アイツ」
「うん。私も龍太郎君の言っている通りだと思うな。今日の光輝くんは何だか変だし……」
「そういえば……僕は彼のフルネームを知らなかったな。教えてくれるかい?」
何時にもまして彼はおかしいらしい。
なんでなんだろうか。俺は特に思い浮かぶこともないし、何か彼の気に障ることをしたわけでもない。なら何故、このようにバリバリに敵意を持たれているのだろうか。
フルネームを教えてほしいという内容に2人の会話の内容を誘導し、名前を聞き出そうとしたところで、とんでもない音が聞こえた。
パシィン!、と。
何かの音が響き渡った。
俺と龍太郎と香織の3人そろって目線を動かすと、竹刀が床に転がっていた。
雫が格闘技の構えを出しているところから察するに、竹刀を持って俺のことを叩こうとしていた彼のことを、雫が止めたのだろう。
雫は憤怒の表情を浮かべていた。
ただ純粋に、目の前の男に怒っていた。
「……光輝。私はね、自分が友人と思った人のことを馬鹿にされるのは気分が悪いと思う人間だし、自分の友人関係を壊そうとしてくる人間のことが、あまり好きではないの。でもね。それ以上に怒っていることがあるの」
空気が緊張する。
雫が静かなる怒りを、ゆっくりと炉にくべて燃やし始める。
瞬間、辺りに威圧感が飛び交った。
静かな圧迫が、ゆっくりと場を支配していった。さながら、波1つない水面の上に一滴の水が落ちた様に、威圧が場の雰囲気を覆っていった。
「道場に通っているあなたなら、きっと解っていた事とは思うのだけどね……竹刀は、
雫の一言一言は、正しく的を射ていた。
俺も師範――鷲三さん――からいの一番に習ったことである。
生き抜くためにこの力を使うことがあっても、それを理不尽な暴力として使うな、と。重ね重ね、聞かされた。
きっと雫は、その教えが破られたことに対して怒っている。そしてきっと、友人である俺に向かって暴力の矛先が向いたことにも怒ってくれているのだろう。
前者はともかくとして、後者の方は果たして真実かどうか確証が持てないが。
「……だけどっ!」
彼は何かを言わんとした。
がしかし。ここにもう一人の人間が、現れたのだ。
「ふむ。話は聞かさせてもらったよ」
何時も聞く師範の声よりも、若い声。
しかしその声は、この空間によく響き渡る、すがすがしい声であった。
「此処は1つ。――決闘ということで、どうだろうか」
彼――八重樫
ということで今日の投稿はここまでです。
感想は明日返信になると思います、ご了承ください。
基本的に書きだめせずに書き終わったら投稿していくスタイルですのでそこはよろしくお願いします。
ということで失踪します。