ありふれていない『天の鎖』で世界最強   作:如月/Kisaragi

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Ep.3

ということでEp.3。

今回は前回みたいに長い文章にはならないはずです。

 

前回のあらすじ

・八重樫流門下生になった

・忍者の方々にボコボコにされた

・天之川、襲来。

 

そんなこんなで始まります。

あと、二次創作日間ルーキーランキング第6位、ありがとうございました。

 

 

 


 

 

 

正しく一触即発の状況になったその時、その人はやってきたのである。

その人は雫の父親であり、八重樫流の師範代。間違いなく道場の中で師範に次ぐ強さを持つ男。

 

それが目の前に立つ、八重樫虎一さんであった。

 

「さて。話は途中から聞かせてもらっていたよ」

 

緊張した空間の中で、彼は俺たちに向かってそう言ってきた。

途中から見ていたのなら止めてほしかったという気持ちを隠して、師範代の言うことに耳を傾ける。

 

「生き抜くために力を振るうことは多々あるはずだ。しかし、八重樫流の教えにもある通りだけど、その研ぎ澄ませてきた力を理不尽な暴力として振るうことは、決してならないことだよ。光輝くん、普通なら君は破門されてもおかしくないことを、今しでかそうとしていたんだ」

 

師範代の言ったことを理解したのか、光輝と呼ばれた男の顔が段々と青ざめていく。

きっと今になって冷静になり、自分のしたことの重大さに気づいたのだろう。

 

「しかし、君はこの道場で一番の実力者だ。それに地域の人たちからの信頼も厚い。だから君は、こちらから破門することができないんだよね。

そこで決闘だ。立会人は私が務めよう。そうだね……久鎖李くん、1つ実力を見せてみたらどうだい?」

 

そこで光輝と俺で決闘、という訳か。

なるほど、俺と光輝が決闘……か……

……え?

 

「虎一さん、馬鹿にしているんですか?こいつはどう見たって……」

「君の眼には、そう見えるのかい?……先に1つ忠告しておくよ。あまり相手を侮らない方がいい、とね」

 

馬鹿にされていることは置いておこう。

この際俺が決闘の相手に選ばれていることも置いておこう。

だがしかしである。虎一さん、何故貴方はそこでそうやって火に油を注ぐようなことをするのですか。

現に虎一さんの言葉を聞いた後、光輝の顔が赤くなっていた。自分が馬鹿にされたことによる怒りからか、それとも自分のことを正当に評価してくれていないと思ったことによる怒りからか。それはわからないが、そんなことは知ったものではないと言わんばかりの速さで、決闘の段取りが決められていった。

 

「そうだね。後、私一人だと立会人として不十分かもしれないね。そこの二人(香織、龍太郎)にもこの決闘に立ち会ってもらおう。後雫もね。光輝くん、これで言い逃れはできないよ。後は君たち二人がこの条件でも構わないというのなら決闘を始めようと思う。久鎖李くん、光輝くん。この条件で構わないかい?」

 

その問いかけに、俺は頷く。

そして視線を僅かに動かすと、ここまで俺たちの様子を傍観していた二人が顔を上下に振っていた。きっと了承の意を込めているのだろう。

俺としては別に立会人とか、そういうのは関係がないと思う。しかし、正式な試合にできない分こういうのが重要なのだろうと思って聞いていただけである。

そして俺は決闘を行うと決めたので、自らの竹刀を手に取った。そして防具は付けずに、静かに自らの開始位置に立って瞑目をした。

 

「光輝くん、君はやらないのかい?」

「っ!もちろんやります!というかお前!」

 

お前、とは俺の事なのだろうか。

こちらは集中しているというのに、何をいまさら話しかけてきたのだろうか。この男は。

 

「無視するんじゃない!話を聞け!」

「……はあ。君、忘れたのかい?僕は君に、名前を名乗ったはずだ。僕は決して『お前』なんて名前ではないよ。

僕の名前は天臥久鎖李だ。どうやら君が僕の名前を忘れているみたいだからね」

「失礼なことを言うんじゃない!俺をどこまで馬鹿にするんだ!というかお前、防具をつけろ!俺のことを舐めているのか!?」

 

まーたお前呼びかい。まあいいや、それに関しては言っても無駄だということが分かった分二度と指摘しない様にしよう。というか俺、多分原作に出てくるキャラクター達以上に嫌われたんじゃないかってくらい物凄い剣幕で怒鳴られていないか?

そして防具をつけろ、という発言だが。俺は確かに今、防具を付けていない状態で待っているのだ。

それはなぜか。その答えは至って簡単なことであった。

 

「別に舐めているわけではないよ。だってこれが、僕が一番戦いやすいと思う状態だからね。……というより、君はその発言の一つ一つを一回見直した方がいいと思うよ。このままだといらないやっかみとか、他にもいろいろ苦労することになると思うよ」

 

純粋に動きやすいから。防具はなくても十分である。そして長々と言いたかったことを言ったが、果たしてそれが伝わるかどうかは別である。

個人的にはこれで改心してくれると良いのだけれど、ある意味でご都合主義の領域に達している彼の自分自身の正義を疑わない心は、治る可能性が限りなく少ないとは思っている。

一縷の望みにかけて言ってみたのだが、果たして声は届いただろうか。

 

「うるさい!お前にとやかく言われる筋合いはないんだ!」

 

やはり届いていなかった。俺の声は、やはり光輝の心に突き刺さらなかった。

これは無理だ、と判断し俺は光輝の矯正――というより改心――について考えることを辞めた。

今はただ、この決闘に全力になることにした。

 

「……おい、お前」

「だから僕の名前はお前ではないと何回言わせるつもりなんだい?」

「っ、うるさい!そんなことよりもここで誓え!」

「……一体、僕が君に何を誓えというんだい?何の権利を以て、何のために。それを教えてくれないかな?」

 

決闘が始まる寸前になって突然話しかけてくる光輝。

何回目になるかもわからないやり取りを経たのち、光輝が誓えと言ってくる。主語が足りていなさ過ぎて、何を言わんとしているのか全然わからなかったが。取り敢えず聞いてみようと思い、エルキドゥらしさのようなものを出しながら問うてみる。

さすがの彼でも、論理の破綻している滅茶苦茶なことは言わないだろう。そう思っていたのが、思えば慢心だったのである。

 

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その言葉を聞いた瞬間、俺の中で何かが切れるような音がした。

 

 

 


 

 

 

<三人称>

 

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その言葉が男――天之川光輝――から発された瞬間、光輝の前に立つ緑の髪を靡かせている男――天臥久鎖李――が、目に分かるようにその顔を歪ませた。

顔からは怒りの感情がありありと浮かんでいた。その顔の歪み方からして、相当に怒っているということが予想できた。

 

一方、その様子を見ていた八重樫雫は光輝のあまりに勝手な物言いすら忘れて、久鎖李が顔を歪ませているということに驚いていた。

 

雫の知る天臥久鎖李という男は、基本その端麗な顔を怒りで歪ませることなどない。

寧ろ何を言われても、飄々としているようにしか見えないほど彼の表情は変わることがないのだ。

怒っているときも、基本的には笑顔で口撃してくるだけ。故に、あのように誰にもわかるように顔を歪ませている久鎖李の姿に驚いていたのである。

 

「……黙って話を聞いていれば。君、どうやらよっぽどの馬鹿らしいね。それともあれかな、君は人を怒らせることがとても得意なのかな?いやはや、そうだとしたら恐れ入るね。君、そういう道で食っていった方がきっと生きやすいと思うよ」

 

これでもかという罵倒の数々が、光輝のことを襲っていく。光輝は既に、冷静さを失っていた。決闘はじめの声がかかった瞬間、手に持っている竹刀で久鎖李の身体を打ち付けようとしているのがはっきりとわかるほどに、今の光輝は冷静さを欠いていた。

 

「……それでは、始め!

 

立会人の虎一からの合図が出た瞬間、光輝は大きく前に出て竹刀を振り下ろしにかかった。

その剣は構えも何もない、ただ力任せに切りかかるという剣術であった。

いや、最早それは剣術とは形容することなどできないものであった。ただ剣を振りかぶり、振り下ろすだけ。攻撃にも見えないただの振り下ろしであった。

 

「……」

 

それを久鎖李は光輝とすれ違うようにして難なく回避する。

そしてすれ違いざまに竹刀を当てる――

 

「1回」

 

――ということもせずに、何かのカウントを貯めた。

自らの横を通られたことに腹が立ったのか、光輝は素早く反転し剣を上段に構える。そして、

 

「うおおおおおお!」

 

雄たけびとともに、剣をがむしゃらに振り始めた。

袈裟、左袈裟、左逆袈裟、左一文字、逆袈裟。ただがむしゃらに、剣を振るい、久鎖李の躰に当てようとする。

 

「……2回、3回……4回5回、そして6回」

 

それを冷静に、そして当たらない様に回避し続ける久鎖李。

謎のカウントは続行したまま、決闘が続いて行く。

 

踏み込みの音、空気が斬られる音。空気が斬られる度に増えていく数字の数々。

最早誰が見ても、この勝負で勝っているのが光輝であるとは言えなくなってきていた。

 

「……99、100回。さあ、ここで、問題、だともっ!」

 

100回のカウントが数えられた瞬間、久鎖李が言葉を発した。

その間も攻撃は続く。先に攻撃を当てたほうの勝ちだからである。

光輝は久鎖李の言葉に耳を傾けずにひたすら剣を振りかぶっては、振り下ろしていた。

 

「このカウントは、何を意味していたか、わかるかい?」

「うるさい!お前もまじめにやれ!なんで攻撃してこないんだ!」

 

繋がらない会話。それを聞き届けた久鎖李は、深くため息を吐き告げた。

 

「……そっか。それなら、これ以上長引かせるのも面倒だね。それなら正解発表といこう」

 

――その瞬間、久鎖李の纏っている雰囲気が急激に変化した。

何処までも鋭く、濃密に、そして静かに。久鎖李の纏う雰囲気が道場を覆っていった。

 

そして、その少し後の一瞬の時間の後。

 

ドォン!、と。鋭い踏み込みの音が、道場に響き渡った。

その場で見ていた全員――試合に出ている光輝も含めて――が、はっと意識を戻したころには。

 

久鎖李は、竹刀を振り下ろして残心の構えを取っていた。

並みの人間では見ることのできない圧倒的な速さの斬撃が振り下ろされていくのを知覚できたのは、雫と虎一の二人のみであった。

 

ではその斬撃はどのようにして繰り出されたのか。その答えは、神速の剣戟の最たるもの、抜刀術である。久鎖李はそれを使用していた。

 

遅れて、竹刀の音が響き渡る。

心地よい快音が道場の中に響いたのは、久鎖李が残心の構えを解き、剣先を床に向けた時であった。

 

神速の抜刀術をもろに喰らった光輝が、倒れ伏す。

骨は折れていないにしても、その一撃は体中に強い衝撃を残していた。

 

「このカウントはね。――君が、実際に真剣を使って戦った時に、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そっと竹刀を置き、光輝のそばに近寄っていく久鎖李の表情は、少し険が取れていた。

この決闘の最中で、久鎖李自身が抱える感情に変化があったのかもしれない。

そんな状況の中、久鎖李がゆっくりと光輝に近寄っていく。

 

「君はこの道場で一体何を習ったんだい?踏み込みも、斬撃も、構えも、何もかもが駄目だったよ。はっきりと言ってしまえば、初心者よりも、君は…………いや、ここで言葉を濁すのもよくないかな。敢えて断言させてもらうよ、光輝……君は、弱い」

 

弱い。

その一言が光輝の胸の中で反響していく。

 

「君は本当に何をしたかったんだい?僕には君が力を求めた理由も、僕に嫌悪を抱く理由もわからない。でもだ、光輝。君のしていたことは、間違いだったよ。なにせ君は、八重樫流に泥を塗ったのだからね」

 

賢い光輝には、その言葉の意味が理解できてしまった。

まず傷害未遂。次に相手の侮辱。これだけでもかなり泥を塗ったことになるというのに、光輝は更に八重樫流の教えを破ってしまっていた。

少しずつ、光輝の顔が青ざめていく。さすがの光輝でも、今回起こした行動が拙かったことだと気付いたのである。

 

「あ……ああ……」

「……決着はついたよね。それじゃあ今回は僕の勝ちってことで、いいかな?」

「うん。しっかりと見届けたよ」

「それじゃあ僕は帰っていいかい?やることは終わっただろう?」

 

久鎖李は静かに、目を瞑りながら言った。

その顔には達成感と、何かを祈るような、そんな表情が存在していた。

 

 

 


 

 

 

<久鎖李>

 

……もしかしなくてもやらかしましたね、これは。冷静になった俺が最初に考えたのはそんなことであった。

キレた理由は単純明快で、雫……まあ、言うなれば『友人』との関係を無理やり断ち切られそうになったからである。

前世で持っていた体質のせいで友人ができたことが俺にはなかった。故にきっと、俺は今世でできた友人を馬鹿にされたりその関係性を断ち切られそうになると分かると冷静でいられなくなるのだろうと考えられた。

……まあそんなことよりも、いろいろありすぎて脳が混乱している中でなんであんなことを言った挙句、もう帰っていいかなんて聞いてしまったのは何でなのですかね。

 

「……うーん。まあ、いいか。お疲れ様だったね、久鎖李君」

 

まあ、師範代から許可が出たので帰るんですけどね。にしたって、今回のあれは流石にやり過ぎたかね。

個人的に好きなキャラではないとは言え、天之川にきつく当たり過ぎてしまったかもしれないなと反省する。

 

その一方で疑問に思ったこともある。

この世界の天之川光輝は、原作以上に歪んでいるのではないか。そう思えてしまった。

バタフライエフェクトの可能性も考えた。現状だとそれが一番ありえそうな可能性の選択肢である。

まあそれが分かったところでその効果について如何こうするつもりもないのだが。

 

「ありがとうございました、師範代」

 

そう言った後に道場に礼をして、師範代に頭を下げる。

そしてゆっくりと立ち上がり、道場を出ようとした。

 

「「「――久鎖李(くん)!!!」」」

 

その時であった。

道場から、3人の声が響き渡って俺の耳に届いた。

 

「……また、来てね」

 

聞き違えるはずもない、雫の声が。

 

「また会おうぜ!そん時は、俺もお前みたいな強いやつになれるよう努力してるからさ!」

 

最高に格好良くて、誰よりも熱い熱血漢な龍太郎の声が。

 

「また今度、会おうね!とても格好良かったよ」

 

聖女のような微笑みで俺を見送りながら手を振っている、香織の声が、俺の耳に届いた。

 

少し泣きそうになりながらもその気持ちを押しとどめて、しっかりと顔を振り返らせる。

そこには八重樫流の門下生たちに加えて、さっきの3人がいた。

皆に向かって手を振り、声を掛ける。

かけがえのない、俺が欲しいと思っていた友人たちに向かって、声を掛ける。

 

「勿論だとも!()()()()、ここで会おうじゃないか!」

 

そう言って踵を返して、帰路を辿る。

本当に、彼ら彼女らはかけがえのない友人になる、と。そんな確信めいたことを考えながら、家に帰る。

 

きっとその足取りは軽く、希望に満ち溢れていたのであろう。




前書きであんなことを言っておいてあれですが、とても長くなりました。
というか文章が迷走しているところが多々あります。そこはご了承ください。

ということで原作確認と失ってしまった文章力を探しに出るので失踪します。
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