ありふれていない『天の鎖』で世界最強 作:如月/Kisaragi
Ep.4。
先に注意です。今回の話はもしかしたらキツイ話になります。
個人的にも書くときに辛いところや書いていて難しいところになりますし、更にあまりうまく描写ができずにあやふやな表現になるところがあるかもしれません。
これらの要素に留意したうえで、この話を読んでください。
前回のあらすじ
・決闘に勝利
・なんかシリアスになった
・香織、龍太郎と友人になった
ふと思えば、すでにこの世界に来てから一年ほどが経つのだなと思った。
現在は小学校にいる。実は去年が2年生だったので、今年で小学校3年生である。低学年から少し上がって、人格や個性が学校生活の中でどんどん生まれていく時期であると俺は思う。これはあくまでも病院の先生から聞いた話なので、転生している俺にとっては正直そう言われてもピンとは来ない。
しかし周りを見渡してみると、確かに様変わりしているように見える子供たちがたくさんいた。
俺?いつも通りです。エルキドゥロールプレイしながらのんびり暮らしています。
因みにではあるが、この学校には天之川光輝と香織、龍太郎。そして雫がいるのである。そして更に追記するなら、全員が同じクラスになっている。勘のいい方たちは察したとは思うが、雫がいじめを受ける時期になってしまったのである。
この前廊下を通りかかった時にヒソヒソと話している生徒たちがいたので聞き耳を立てたのだ。褒められた行為ではないと自分でも思うが、会話の途中で
聞いているだけでブチ切れそうになる罵倒の数々を何とか聞き流し、録音を取ることには成功した。しかし実際にいじめを行ったわけではないから、うかつな行動をとることができない状態という訳である。
チラッと、自分の近くで香織と話している雫の姿を見る。
今のところは何か辛そうな雰囲気のようなものを感じない。雫が感情を隠している可能性も高いが、果たしてその考察が正しいかどうか。少し様子を見ながら考えることにした。
何かがあってからでは遅い。被害に遭う前に何とかいじめを防いで、二度と同じことが起こらない様に対策を考える必要がある。
そしてもう一つの課題は、あの
その理由は天之川光輝の理論にある。彼は性善説を信じて疑わず、何事も自分が正義であると疑っていない節がある。故に、原作において雫は長い間苦しめられることになったのだ。そのようなことがない様に、俺が何とかしていきたい。救うことのできる人間は救っていきたい。それが今の考えである。
思考の海からいったん抜け出して、意識を浮上させる。既に休み時間は終わっており、授業が始まっていた。
ふと、窓から外の景色を眺めてみる。空は黒い雲で覆われていて、何か良くない未来を暗示しているように見えた。
いじめの事について考えてから一週間が経っていた。
今のところ、やはりいじめの形跡が雫からは見えていなかった。
しかしその表情には、どこか暗いものが見え隠れしているように見えた。従来では気付く事さえままならない微小な変化であったが、しょっちゅう一緒に行動していた雫の事である。それくらいの表情の変化には十分に気付く事が出来た。
しかし今から話しかけにいくのは得策ではない。さっきから強い視線を感じているのだ。
敵意と、嫉妬と、他の暗い感情が俺に突き刺さっている。きっとこれは、雫の事をいじめている人間たちからの視線であろう。
……嫌になってくる。
俺は第一、他人を蔑ろにして集団で
それにこの世界にやってきて初めてできた友人が雫なのである。特別な思い入れだってあるし、それ故に彼女の事を攻撃してくるやつのことがあまり俺は許せそうにない。歪な感情であることを理解していてもやはり俺は、雫の事を大切に守ってやりたいとそう思うのである。
取り敢えず、今は打てる手だけを打っておこう。そう思い自席を立つ。
すると俺に向いていた視線が少しだけ軟化する。自分が話しかけて貰えるかもしてないという希望的観測を、皆が皆持っているのだろうと考えることができた。
「……雫」
静かに声をかけると同時に、1枚の紙切れを押しつける。傍から見ただけだと何かが諍いがあったように見えるが、敵意をもってやったわけではない。
こうすることで雫への攻撃を少しでも遅くできるようにという目論見が含まれていた。もしかしたら意味がないかもしれないが、やらないよりはましだろう。
雫から少し離れて、窓側の席から廊下の扉前に向かう。
雫は紙切れを読んだあと、扉の近くから雫を見つめている俺の視線に気づいたのか、俺の方を見て目線でうなづいてきた。
それを確認した俺は、素早く廊下に出てトイレに向かった。流石に扉付近まで来ておいてそこから席に戻るのは怪しまれると思ったからだ。
布石は一手撃つことができた。ここからが、俺の能力の見せ所になるだろう。
エルキドゥの能力をフル活用して、必ずいじめを排除してやろう。そう俺は心に誓いながら、流し台で手を洗っていた。
みんなも手洗いとうがいはしっかりとやろう。やらないと前世の俺はボロボロになっていたからだ。何かとウィルスは怖い。たかがウィルスだと思わずに、みんなもしっかりと病気の感染予防に努めよう。
そして放課後になって俺は指定した場所で雫の事を待っていた。
しかしいつまで経っても、雫が現れないのだ。指定した時間からかれこれ十分が経とうとしていたのである。
……さすがに異常だ。もしかしなくても雫は今、いじめに遭っているのではないか。そう思うと、なんだか心が落ち着かない。
苛立ちを隠すかのように指をトントン、と膝の上で叩く。そんな風にして雫を待っていると、不意に声がかかった。
「あ、天臥くん!」
指定した位置は普段誰も立ち寄らない教室の中である。それこそ、このように呼び出しをしない限り人が来るということはない。
――怪しい。雫以外にこの場所がばれない様にうまく行動をしたはずなのに、今こうして人がやってきているのを考えると目の前の女の子が怪しく思えてしまう。
警戒心を切らさずに、必要な情報を聞き出す必要があると判断を下す。なるべく目の前の女の子に悟られない様に情報を聞き出すことにする。
「君は確か、同じクラスの子だったはずだよね……?僕に何の用かな?」
「天臥くんに聞きたいことがあったんだ。どうして天臥くんは、あんな男女に構っているの?」
……もしかしなくても、この男女とは雫の事ではないのか。そう思うと目の前の女の子は雫をいじめているグループの一人ということになる。
昔の記憶を頭から引っ張り出す。いつか聞いたことのある声ではないか、どこかで見たことのある姿をしていないか。ここ最近の記憶に残っていないか、自らの脳をフル活用して記憶を引っ張り出していく。
「私だって……天臥君に見ていてほしいのに……」
ふと、そんな小声が聞こえてきた。その声色は、嫉妬と恨みに塗れている声であった。
もしかしなくてもこの子はいじめのメンバーだ。この声を聞いただけでそうだと分かってしまった。
その声を聞いた時に感じたのは、底なしの憎悪と嫉妬。そして理不尽な怒りの感情であった。どろどろとしていて黒く淀み切っているその感情は、理不尽なほどに雫のことを突き刺していることが容易に想像できた。
恐ろしくなる。雫はこんなものの攻撃に耐え続けていたのかと。
そして俺は同時に、原作では心が折れそうになりながらもこの視線に耐え続けていじめを乗り切っていた雫のことが凄いと思えた。
そして彼女の小さな声を聞いてさらに気付いたことがあった。いや、気づいてしまった。
この世界では天之川光輝と常にいたからいじめが起きたのではない。確かに天之川光輝と雫は一緒にいることが少なかったのかもしれない。
しかし、俺とはどうだったのだろうか。実際のことを言うのであれば、光輝と一緒にいた時間よりも俺と一緒にいた時間の方が長い。
つまり、つまりである。
雫のいじめの原因は、俺自身にもあるのである。
その事実に気づくと、自分の無責任さとなぜこのようなことに気づけなかったのかという自分への苛立ちが募る。
やり場のなくなりそうなこの感情を力任せにたたきつけない様に気を付けつつ、改めて目の前の女の子に向き合う。
「どうして、と君は聞いたけど。逆に何で君は僕の交友関係に文句をつけるかのような口調で聞いてきたのかい?」
「べ、別に文句をつけに来たわけじゃないの!私はただ、何で天臥くんが
「……」
呆れてものが言えなくなってしまう。
この子、光輝といい勝負をしているのではないかと考えてしまうほどには考え方が捻じ曲がっている。
そして俺は、雫のことをあんな奴呼ばわりされたせいでかなり脳に血が上ってきていた。
「そうなんだ。それじゃあ何でか教えてあげるよ」
いらつきを言葉に乗せながら、目の前の女の子のことを見る。
雫への思いの丈をこの声と感情に乗せて届ける。
「……雫はね。ああ見えても繊細なんだよ。君たちみたいに集団になっていじめられても、決してばれない様に僕達に取り繕ってくる。それでも彼女は決して心を折ることなく常に強くあり続けているんだ。それってすごいことだと、僕は思うんだよ」
本心からの雫に対する尊敬の念と皮肉を交えて、目の前で信じられないという顔を浮かべている女の子に向かってさらに話を続けていく。
「君は彼女の事を男女って言ったけどさ。あの子は決して男ではないよ。人並みの女の子みたいに可愛いものが好きで、お洒落が好きな女の子。それが君たちの知らない、八重樫雫という少女の本当の顔だよ」
君たちの知らない、のところを少しだけ強くいってみるとやはり女の子の方は怒り心頭というような表情を浮かべて睨みつけてきた。
「……なんで……何であなたが、そんなことを知っているんですか!あんな地味で、全然可愛げもないやつのくせに!何で貴方はそういうことを言ってくるんですか!?」
目の前の女の子の言葉に耳を傾けて、重要なことを聞き逃さないように意識を集中させる。
なぜ彼女が、いや彼女たちが、雫のことをいじめているのかを聞き出せていない。さっきからの会話で何も原因を言っていないことに気づき、問い質してみることにする。
「何でか。それはね、僕と雫が友達だからさ。というよりも、君はその醜い嫉妬をやめた方がいいよ。そんなものからは何も生まれてなんか来ないのだからね」
醜い嫉妬という言葉が強く響きすぎてしまったのか、目の前の女の子は顔を歪ませてこちらのことを見てきていた。
どうしてそんなことを言うのか、という表情が見え隠れしている。
「あと悪いことは言わない。今のうちにいじめをやめておくことを推奨するよ」
「……
ちょっと待ってくれ(オルガ団長並感)。
貴方も、ってことはつまりである。誰かが、既にいじめをやめるように言っているということになる。
しかし龍太郎や香織がそういうことを言っていたらきっと俺にも伝えてくれるだろう。二人からそのようなことは聞いていない。
これから予測できること。それはつまり。
「……もしかして、光輝かい?」
「……よくわかりましたね。そうですよ」
待ってくれよ。
それだったらまさか、俺が気付くずっと前から。
「……」
無言で走り出し、教室から出ていく。
話していた相手には完全に失礼に値するが、そうしないといけないような気がしたからだ。
雫を一人にさせてはいけないと、そう強く思ったからだ。
「……天臥くん!」
後ろから聞こえてくる声に聞こえないふりをして、俺は走り出した。
ただ、雫を探し出して見つけて話をしなければいけない。
空の雲は、黒く淀んでいた。
一抹の不安を抱えながら、俺は走り出した。
暫くシリアステイストが続きます。
前書きにも書きましたが、描写が難しいところになっているのでこの小説が好きではないなと思った方はブラウザバックをしてください。
次回の投稿は土曜日になるといいなと思いながら〆たいと思います。
日曜日は少々苦しいかもしれません。なるべく毎日投稿を心掛けていきますので宜しくお願い致します。