ツインコネクト!プリキュア‼   作:ふーる41

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ガチ説明回です。
やっとか。


第3話前編 浮き上がる本と決まらない名前

「いやー、びっくりした。まひるがおじいちゃんから忍術まで教わっていたなんてね。」

「う…うん!すごいでしょ?うちのおじいちゃん。」

嘘なんだけどね…。そんなのさすがにおじいちゃんも知らないはずだし…。

「にん…じゅつ…?」

「なんて言うか…。火とか水とか出したり、煙玉とかで突然消えたりするやつ?」

「浅美。それ本物は絶対やってないからね?」

「あと、ごちそうさま。」

「「食べるの早っ!」」

お皿を見ると、もうクッキーは1枚も残っていなかった。最初20枚くらいあったはずなのに………。空腹の力恐るべし。

モイランの口の周りにクッキーの欠片がついてるのは黙っとこう。

 

「それで、まひるはこの子の記憶を取り戻すことにしたの?」

「うん。私、友達との約束は絶対守るガールだから!」

「え?いつの間に友達に?」

「まぁ…。」

「条件付きでだから!別にこれは単純なギブアンドテイクであって、本当にわたしが…」

「はいはい。だいたい分かった。」

浅美は、大して話も聞かず、まずカードをシャッフルした。

「二人の相性は………『恋人』の正位置ね。絶好調。」

「こっ……ここここここいびと!?」

 

女の子が真っ赤になっているのがかわいくて、思わずイタズラ心がうずいた。

 

「『恋人』かぁ…。運命的だねぇ。ほれほれ。」

「ちょっ!何してるのよ…。」

腕を組んで、体をギューッと密着させると、女の子がもっと慌てるのがわかって、心がもっとふわふわした。

モイランは、浅美にわからない程度にニヤッとした。

 

「で?意味は?どんな感じ?」

「何言ってんのよまひる。『恋人』に恋人以上の意味があるとでも?」

「…え?……本当に?リアルに?そういう意味?」

「そりゃそうでしょ。」

 

えっと…つまり、私とこの子は…その…アレなことになっちゃう訳で……。

さっきまでノリノリだったクセに、私の顔が一気にボッと熱くなった。絡めた腕を恐る恐る放して、なぜか女の子を直視できなくなった。

 

 

「冗談でーす。本当は正しい選択で人間関係が良い感じって意味でーす。ちなみに恋とは限りませーん。」

「………。」

 

熱くなった頭がスゥ〜っと冷えて、それから別の意味の熱がこみ上げてきて、おもむろにスっと立ち上がった。

 

「ん?……ちょっと?何?え?まひるさん?あの?怖いんですけど…って、ちょっと!?」

「…浅美のバカバカバカ!冗談に聞こえなかったじゃん!本気で信じかけたんだけど!今のドキドキを返してーーーー!!」

「いだだだだだだだだだだだ!!頭グリグリしないでよ〜!まひるの力だとシャレにならな…いだいいだいいだい!てかそんなに怒る〜!?」

 

手を頭から離して、プンスカしたままベッドに座った。

 

「第一、女の子同士だから。恋人とかありえないから!」

「うぅ〜。わかってるよぉ…。」

 

この発言を聞いたモイランがなんとなく残念そうなのはどうしてだろう。

 

コンコン、とドアをノックする音がした。

「入っていいか?皿、下げに来た。」

「いいよー。」

ガチャっとドアが開き、浅美のお兄ちゃんが入ってきた。キリッとした感じの、いわゆる俺様系イケメン。でも、ピンクの可愛い柄のエプロンを着けてるせいで色々台無しになってるけど。

「あと、昼飯作るから手伝え。まひるとそっちの子は待っててもいいぞ。」

「え〜。なんであたしだけ〜。」

と言いつつ、浅美は大して迷うことなく腰を上げて一階に降りていった。

 

「さて、と。これから2人にはいろいろと話をしなきゃいけないね〜。」

モイランは、皿がなくなったテーブルの上にぴょいと飛び乗った。

何を話すかは大体予想がついたので、私と女の子は同時にゴクリと唾を飲み込んだ。

 

「プリキュアって言うのはね〜…。」

「「…うん。」」

「ワタシにもまだよくわからないんだ〜。」

「「…ズコッ!」」

何だろうこのデジャヴ。

「ゴメンね〜。思い出したことはたくさんあるんだけど、まだまだ断片的でさ〜。」

「断片的…ってことは話せることはある…ってことでいいかしら。」

「うん。そうだよ。」

即答。そして、かつてないくらい真剣な顔だった。

 

「まず、ワルスギルプの説明からしていこうかな。それが一番わかりやすいだろうし。」

「ワルスギルプって…あの化け物のことね。」

「作り方とか、細かいところはわからないけどね〜。ワルスギルプは、二つの物体、生き物とそうじゃないものを組み合わせて作られた化け物。触れたものをサビさせて、そのエネルギーを奪ってどんどん強くなるよ。口から吐く瘴気が一番危険だね〜。で、これはさっきも言ったけど、頭を壊さないと絶対に倒せないし、サビたものは元には戻らない。」

「だから『死ぬ』って言うより、『永眠』って言った方が近いんだね。」

モイランは、深くうなづいた。

「何か質問ある〜?」

 

う〜ん。…そういえば。

 

「口から吐く瘴気を浴びたらどうなるの?」

「サビるよ。一瞬で。」

「私たち…普通に浴びてなかった?」

「浴びてたね。」

「たしかに…そうね。でも、サビてないわね。」

「サビてないね。」

「どして?」

 

モイランは、いい質問だねぇ、とでも言いたそうに得意げに笑って、胸を張った。

 

「じゃあこれから、プリキュアシステムについてできる限りの説明をするね。」

 

モイランが、6センチくらいの右手を前に突き出すと、バネみたいならせん状にほどけて前に垂れ下がった。小さな右手はあっという間に長い赤いリボンになった。

「ホントは全身ほどけるけど、口もなくなっちゃうし、ジェスチャーも全くできなくなっちゃうからね。」

「「……。」」

「ワタシは心と心をつなぐリボン。それを応用したのが心の声だったり、思っていることを共有したりすることなわけなんだけど〜。」

ヒュルヒュルとリボンが元の右手の形に巻き取られた。

 

「それはワタシの機能のほんの一部でしかないんだよ。」

 

短い両手が私たちの胸をビシっ!と指した。

 

「プリキュアが力の源にしてるのは感情。ワタシのメインの機能は、感情のエネルギーをメタモリアっていうプリキュアが使うエネルギーに変換するエンジン、あとは二人の中で流れるメタモリアを制御するリミッターだよ。」

「メタ…」

「…モリア?」

「ワタシはあくまでエンジン。メタモリアの元になる感情のエネルギーを生み出すのはマッヒーと…………まぁとりあえずあなたたち二人なんだよ。」

女の子が首を傾げた。

「どうして二人なの?」

「実はね、メタモリアは一人で使うには強すぎるんだよ。例えば〜………電池を使う時、直列繋ぎと並列繋ぎだったらどっちが長持ちする?」

「えーっと……並列繋ぎ………だったっけ?」

つまり…。

「一人じゃムリでも、二人なら耐えられるってこと?」

「そうそう!マッヒー正解!二人なら余ったメタモリアをもう一人に移したりもできるし。その方が安定するからね。」

要するに、私と女の子が電池で、モイランが導線、そしてプリキュアとしての姿が豆電球とかスピーカー…ってことかな。

「もし一人で使ったら…どうなるの?」

女の子の質問に、モイランは一瞬考え込んだ。

「それはよくわからないけど〜…。心に何か異常なことが起こるのは間違いないかな〜。この理論だと直列繋ぎになるわけだから、豆電球は明るいけどすぐ焼き切れちゃうだからね。たいていの場合はワタシが止めるよ。絶対にオススメはしないかな〜。」

「…そう。」

「あと、さっきも言ったけど、ワタシが起きてない時に変身すると、最初みたいに大暴走しちゃうから気をつけてね。ワルスギルプも倒せないし。だからまぁ、マッヒーが殴りまくってぶっ飛ばしたのはナイス判断だったよ♪」

「判断って言うか…知らなかっただけなんだけどね。」

私は軽く頭をかいた。

 

あれ?何か他に話があったような…。

 

「じゃあ話を進めるけど、二人は変身する時に使ったカードの名前を覚えてる?」

「う〜んと、…なんだっけ?」

「『ゴールド・コマンド』だったかしら。」

「そうそう。『ゴールド・コマンド』は金の力。だから、サビないんだよ。」

「…なんで?」

「金だから。」

 

…どゆこと?

 

「う〜ん。科学的な感じじゃなくて、スピリチュアルな感じで説明すると、昔、金には不思議な力が宿るって言われてたんだよ。」

「「うんうん。」」

「その理由の筆頭が、鉄とか銅とか銀とかと違ってサビずに、輝き続けるから。だから、王様のお墓とかは金がいっぱいな感じでしょ?」

「あー、たしかに。」

「たぶんだけど、ワルスギルプのサビに対抗しうる手段として、そういう力を持つ金の力が選ばれたんだと思う。」

 

金の…力。

 

「その割には…コスチュームに金色が少ないような…。私、髪の毛が金髪になったくらいだし。」

「わたしも、金色の部分なんて星のアクセサリーくらいよ。」

「まぁ、変身中のワンピースが金色だから…ね?」

 

とりあえず、使ってるのが金の力だからサビないってことでいいのか。

 

「あ、カードの説明忘れてた。」

「忘れてたのね。」

「あはは。ごめんね〜。あのカードは、『メタモリー・チップ』って言うんだよ。」

「メタモリー…」

「…チップ。」

なんかさっきから固有名詞が増えてくなぁ…。プリキュア…メタモリア…メタモリー・チップ…。

「これはね、特定の感情を媒介に、メタモリアをコスチュームとかとして実体化するための設計図みたいなものだよ〜。」

「ふむふむ。」

「例えば、『ゴールド・コマンド』が象徴するのは『心』。他のチップの基盤になるカードで、実体化すると強いメタモリアにも耐えられて、しかもサビなくて、身体能力も耐久力も変身前よりものすご〜〜く高い体を作るよ。」

「他にも…ってことは、他にもあるってことよね。」

「それはね〜。こんな感じ。」

 

モイランは私たちの間に飛び移って、両手をリボンに変えてそれぞれの腕に巻き付けた。

すると、黄金色のハートの周りを、7つのシルエットがくるくると回っているホログラムが浮かび上がった。

 

「なにこれ。」

「真ん中のハートが『ゴールド・コマンド』だよ。」

「じゃあ、周りのシルエットがその他のチップってこと?」

 

モイランは、眉間に軽くシワを寄せた。

 

「…わかんない。」

「「…え〜。」」

「解放した情報はこれで全部なんだよ〜。プリキュアって何なのかとか、そういう核心に触れることはまだわかんなくて。まぁ、これが一番それっぽいかなって思ったから、一応知らせたんだけど。」

「解放…ってどういうこと?」

 

今度は耳がほどけて、モイランの頭を指した。なんか思ったより自由度高いな…。

 

「ワタシの中には、最初、マッヒーたちからリボンを通してゲットした情報しかなかったんだよ。」

「その中に、わたしの過去のことがあったりはしない?」

「ごめんね〜。なかった。多分、情報そのものがあなたの中から消されてるから、ワタシにも読み取れなかったんだと思う。」

「そう…。」

女の子の顔がしゅん…とした。正直、一瞬私も期待したけど、やっぱりそんなに簡単にはいかないか。

「さっきも言ったけど、目覚めてすぐの時はワタシにはプリキュアの知識はほとんどなかったんだよ。それが、二回目の変身の時に変わった。推測だけど、ワタシの記憶は消えたんじゃない。単にアクセス制限みたいなものががかかっているだけで、『メタモリー・チップ』がカギになって、記憶がだんだん解放されていくんじゃないかな。」

 

つまり、その一回目の解放が、さっきの変身だった…ってことかな。

 

(正解!だと思う!)

 

突然の心の声。………だと思う?ってはっきりしないなぁ…。あと、また疑問。

 

「どうやったら、解放できるの?他のチップって。何回か変身すればいいの?」

「…わかんない。でも、ただ変身すればいいってことじゃないみたい。『ゴールド・コマンド』は解放前でも使えるけど、他は違うみたいだし。」

 

え?解放してなくても使えるの?

 

「『ゴールド・コマンド』だけはね〜。適合者を選別する役割も兼ねてるんだと思うよ〜。」

 

…適合者…?

 

「解放できるようになるためには、ワタシが目覚めることが必要不可欠。でも、ワタシが目覚めるのは最初の変身の直後みたいだから、解放前も使えないとダメでしょ?」

「まぁ…」

「そうなるわね。」

つまり、適合者はプリキュアになってモイランを目覚めさせられるってことだよね。

「適合者とそうじゃない人の違いって何なの?」

「う〜ん。生まれつきの素質もあるとは思うけど〜…。細かいところまではわからないかな〜。」

モイランは少し顔をしかめて首を横に振った。

「それも解放待ち…ってことね。」

「正直、解放してもあるかわからないんだけどね〜。」

 

私が…適合者…。うーん。私ってそんなに特別感のある感じの人な気が全然しないんだけど…。

 

 

 

「あとね、この子の記憶はなかったけど、得られた情報はあるよ〜。」

「「!!」」

私と女の子は顔を目を合わせて、モイランをじっと見た。

「なっ!何?どういうの?」

「この子のチカラについて。」

「……チカラ?」

「…………。」

女の子がさっきみたいに不自然に目を逸らした。

モイランは、得意げに笑いながら、女の子に結んだ方のリボンをくるくるっとらせん状に絡ませた。

「『ジャンプ』、『ガード』、あとは『フロート』かな?」

「………なんで知ってるのよ………。」

女の子は、自分で自分の体をぎゅっと抱いた。

「さっきね〜、変身した時にこっそり読み取ったから〜。」

「何それやめて!」

「…………?…??」

女の子が本気で嫌そうな顔になった。私は全く話が見えなくて、ハテナマークを飛ばすばかりだった。

「言った方がいいんじゃないの〜?これから協力してくれるわけだし、それにもう1回見せちゃったでしょ?」

「でも、わたし自身どういうものかがわかってないし……。」

「いいからいいから。」

「えっと…どういうこと?」

「はぁ…………。」

女の子は軽くため息をついた。

「……多分、これからたくさんご飯をいただくことになると思うけど。いい?」

「いや、ここ私じゃなくて浅美の家だし。いいんじゃない?私が来てるから、たぶんたくさんお昼ご飯作ってくれてると思うけど。」

「じゃあ、わかったわ。…………できるだけ、誰にも言わないでね?」

「うん。約束する。」

女の子は、おもむろに左手を上げて、スっと目を細めた。その体が微かに紫色の光をまとった気がした。

 

「………『フロート』。」

 

女の子の口がその言葉を呟いた瞬間、浅美の机の上に載っていた、表紙にでかでかと『風水』と書かれた分厚い本が震えながら数センチ浮いて、五秒くらいで落ちた。

「うわぁ……………。」

「これでクッキー五枚分くらいかしら。もうお腹が空いてきたわ。」

「……大丈夫?」

「…………えぇ。」

最初私はただ口をあんぐりと開けて、呆然としていたけれど、女の子の顔色が少しだけ悪くなっていることに気づいて我に返った。

「この力を使うと、とにかくお腹が空くの。こんな小さなことでもね。燃費は最悪よ。」

「これ、調べてみたら変身してなくても使えるみたいなんだよ〜。メタモリアとは違って、体に溜め込んだエネルギーをそのまま使ってるみたい。だからお腹が空いちゃうんだと思う。」

「でも…すごい!魔法みたい!運命的だよ!」

私は目の前の新しい神秘に、ドキドキが止まらなくなった。

「そうだね〜。体の中のエネルギーの量が許す限りは、いろいろできるみたいだよ。」

「………溜め込んでも一瞬で消費しちゃうじゃない。使えないわよこんなもの。」

女の子はぐったりとベッドに倒れ込んだ。

毎回こうなるんだったら、確かにそんなに使えるものではないな、と思って、ちょっと寂しい。正直、もうちょっと色々やってほしいけど。

 

「そんなあなたに〜、いいお知らせ!」

「………何よ。」

「あなたのチカラ、どうやらメタモリアで代用できるみたいだよ〜。」

「………え?」

「………えっ!?」

これは…光が見えたやつじゃない?

「って言うか、メタモリアの方が強いし〜、感情を失わない限りは無限に作れるし〜、いい事づくめなんだよね〜。」

「…なるほど!…でもメタモリアは変身した後じゃないとダメなんじゃ…。」

「ううん。メタモリアの精製そのものは変身しなくてもワタシがいればできるんだよ。」

便利すぎない?それ。

「問題があるとすれば、やっぱり一人じゃ使えないってことかな。二人いっしょなら大丈夫だけど。手を繋ぐとか、それ以外でも体のどこかがワタシとマッヒーの両方に触れてればオッケーだよ。」

それは…特に問題はないって思っていいのかな。

女の子は、ぼーっとした目で、「早く言ってよ…」と弱々しく呟いた。

「じゃあ、試してみよっか。マッヒー、もうちょっとくっついて。」

「うん。」

肩と肩をぴたっとくっつけると、女の子の体温と、パチリ、と静電気みたいな感覚がした。

「じゃあ、その状態でなんでもいいから使ってみて。さっきよりデッカイの。」

「はぁ…。」

女の子は、もう一度左手を上げた。目がくらむような、さっきとは比べ物にならないくらい大きな光だった。

「…『フロート』!」

机の上の本が何冊も、しかも1メートルは浮き上がった。それだけじゃない。浅美の部屋の、水晶玉とか勾玉とかの占いグッズ一式も続々とポルターガイストみたいにフワフワ浮かんで、そして羽みたいにそっと落ちた。

「「……どう?」」

「すごいわ。お腹、全然さっきと変わってない。…………ただ、ちょっとだけ肩が重いかも。」

「あ、私も。」

モイランはちょっとだけうなり声を上げた。

「やっぱり変身前だと作れるメタモリアが少ないからね〜。ちょっとだけ負担かかっちゃうかぁ…。まだ改善の余地ありかなぁ〜〜……。でもまぁ、すぐにまたチャージされるからだいじょーぶ!なんか嬉しいことでもあれば治るよ。」

「嬉しいこと…。」

なるほど。感情のエネルギーだから、いくらでも湧いてくるってことかな。

さっきワルスギルプと押しあった時に、力が急に強くなったのも、このメタモリアのおかげ…か。

 

「それで、二人にお願いしたいことがあるんだけど〜。」

……この流れからして…。

 

「モイランのチップ…つまり記憶の解放を手伝ってほしい……ってことよね。」

「正解♪記憶喪失どうし、考えることはおんなじだね。」

 

女の子とモイランはうなづきあった。

 

「わたしは自分の過去を知りたい。」

「ワタシは自分が何なのか知りたい。代わりに、ワタシもあなたのこと、がんばって調べるよ。もともと、ワタシの素体だったリボンをつけてたのはあなただしね。」

「えぇ。少しは光が見えてるモイランが羨ましいわ。」

モイランは、両腕を元に戻して、ちょい、と女の子の方に手を差し出した。女の子はその手をぎゅっと握った。

なんだかまた置いていかれそうに思えたので、私もその上に自分の手を重ねた。

 

「私だっているよ。この子がやるなら私もやる!友達だから!」

 

モイランと女の子が少しだけびっくりしたような顔になって、笑った。

この時、『友達』っていう言葉に心の中でニヤニヤしてたのは絶対秘密。さすがに恥ずかしいもん。

 

「マッヒー。今、『友達』って自分で言ってニヤニヤ…」

「思ったそばから暴露しないでええええええええええええええええ!!!!」

「「……?」」

女の子とモイランが本気で不思議そうだったせいでかえって恥ずかしさが増して、心の中で悶絶した。

 

「マッヒー。今心の中でもんぜつ…」

「だぁぁぁぁぁぁかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!」

 

 

「やぁ、コモドルガ。元気?」

「……………………。」

俺が大広間までの廊下を歩いていると、絶対に今会いたくない奴ランキングダントツ1位が現れた。

「テメェが俺にそう聞くのは、俺が元気じャねェことを確信してる時だけだよ。」

「ははっよくわかってるじゃないか。で、結局どうなんだい?」

「元気じャねェよ。ふざけてんのかテメェは。」

「あぁ。ボクはふざけてのさ。」

「テメェ………!」

 

イラつく野郎だ。ガスマスクひつペがしてやりてェ。

 

「これはガスマスクじゃなくてただの仮面だよ。何度も言ってるだろう?カラスのクチバシみたいで気に入ってるんだよ、これ。」

「そのゴーグルの部分はどう見てもガスマスクだけどな。んなこたァどうでもいいんだよ。」

「ははは。違いない。」

顔は見えないが、その顔がものすごく俺にとって癪に障るものであることは容易に想像できた。

「で、何の用だ。……クロウレス。」

「暇つぶし。」

「アァ!?」

コイツ、即答しやがった。

「当たり前じゃないか。たまたま通りかかったら、あ・の!ゆ・う・しゅ・う・な!コモドルガ君が浮かない顔をしているのが気になったんだよ。」

「いちいちムカつくんだよテメェの言い方はァ!」

くッそー!見た目ヘナチョコのくせに!普通にケンカすれば体格的に俺の方が強いッてのにー!殴りてェ!

 

「そういえば、プリキュア出たらしいね。」

「アァ出たよ!それがどう………なんで知ッてんだ?」

クロウレスはあっけらかんと言い放った。

「見てたから。」

「はァ!?」

仮面の奥の顔が、ニヤッとしたのがなんとなくわかった。

「『俺の名はコモドルガ!ハズアルド三幹部が一人にして、我らが最大の障害たる貴様らをサビの一部にする者だァ!』…だっけ?その後君のワルスギルプがボコボコにされる様は傑作だったよ。」

頭の中で、何かがメラメラと燃えた。

「………どッから見てた?」

「『④俺が強引に吹き飛ばす。』のちょっと前?血なまこになって『どこだァ……どこだァ……。』ってゾンビみたいになりながら探してた時からだね。」

「最初ッからじャねェかァ!」

とうとう我慢できなくなッて、俺はクロウレスに渾身の右ストレートパンチを浴びせたが、ヒョイとあっさり避けられた。

「って言うか、あんな急ごしらえのワルスギルプでよくあんな大見得切っちゃったよね。さすがと言うか。」

「うるせェ!その時はあれしかなかったんだよ!」

「しかもボクへの嫌がらせだろう?わざわざカラスを素材にするなんて。」

「勝手にそう思ッてろ。俺は報告行ッてくるからな。」

そろそろ右ストレートでは治まらなくなりそうだったので、その場からスタスタと歩き去った。

 

「…………………………………面白い。」

 

クロウレスの呟きを無視して。

 

 

「「「いただきます!」」」

「おぅ。たっぷり食えよ。」

(ワタシはお腹空いちゃったなぁ…。)

 

ごめんね…。後でプリンでも買ってあげるから。

 

(ぷりん…………?…………あ、おいしそ〜。)

 

何してるの?

 

(マッヒーの記憶を隅から隅まで調べあげてるところ〜。)

 

やめて!普通にやめて!

 

私は膝の上のモイランの顔をガシッとつかんだ。

 

(は〜い。黙るよ〜。)

 

ふぅ……。

 

ちょっとだけ胸を撫で下ろして、浅美のお兄ちゃんが作ってくれたたらこスパゲティに手を伸ばした。そのお兄ちゃん本人は女子会を邪魔するつもりはないって言ってさっさと二階に引っ込んで行っちゃったけど。

麺をくるくるとフォークで巻いて、口に運んだ。

うん………。絶妙な味付け。多分隠し味に醤油が入ってる。お店出せるくらいおいしい。

 

「ところでさぁ、まひる。」

「どうしたの?」

「この子の名前決めない?不便だし。」

 

まぁ…確かに。名前呼べないのが辛いっていうのはさっき思い知ったばかりだし。一応デスティニーって呼んだりするけど、やっぱり違うよね。

あと、いい加減このモノローグでの『女の子』呼び辞めたい。

 

「で、何か希望あるの?」

浅美、多分その質問意味無い。

「なんでもいいわ。ペルシャでもアメリカンショートヘアでもノルウェージャンフォレストキャットでも。」

「のる……え?」

ネコ……だからそれネコ!

「うん………却下。」

「だね〜。」

女の子はちょっと残念そうだったけど、さすがにこれは譲れない。

「じゃあ、私たちが考えるしかないか〜。」

「だね。なんか良い感じのやつ降りて来ないかね〜。……う〜ん。私は後で!はい!まひる!」

「むむむ。なんか運命的なやつにしたいなぁ…………。」

「そこで目をキラキラさせない!とんでもないキラキラネーム生み出さないでよね!」

「…………デスティニーから取って……。」

「アホ!」

「いたっ!」

浅美は軽くデコピンしてきた。

「デスティニー!?デスティニーってなんや!言ったそばから何キラキラネーム生み出しとんねん!運命的やからデスティニー!?アホちゃうか!あーそやったそやった!まひるは昔からアホやったな!」

「浅美………出てる。あと痛い。」

「あっ………。」

 

オーバーヒートした浅美は、急にニコニコ笑ってごまかした。

 

「な、何でもないよー。」

「浅美、幼稚園まで大阪に住んでたんだよ。そのせいでエセ関西弁がたまに出ちゃうみたいで。」

「いつもは隠してるんだけどね〜。あはははは。」

「…………おおさか?」

「話、それちゃったね。名前……名前……。」

 

う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん。

 

「「思いつかな〜〜〜〜〜〜〜〜〜い!」」

 

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