Fate/GRAND Zi-Order ーRemnant of Chronicleー   作:アナザーコゴエンベエ

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時代の救世主2068

 

 

 

「……いや、わけがわからないんだ。

 俺はただ、普通に、いつも通り、帰り道を歩いていただけだった。

 だっていうのに、いつの間にか()()()()()()()

 最初は開けっ放しだったマンホールか何かに落ちたのか、と思った。

 底まで落ちて、コンクリートに叩き付けられて、最悪死ぬかもしれない。

 走馬灯、っていうのかな。そんな風に感じていたはずだ。

 だっていうのに衝撃みたいなのは一切無くて、いつの間にか、地面に転がってた。

 このわけのわからない、悪夢みたいな世界の地面に」

 

 ぽつぽつと、泣き出しそうな声で語る男。

 アストルフォに連れられてきた彼は、ごく普通の人間だった。

 本当に何も知らないままにこの異常世界に囚われた被害者。

 

 それを聞きながら、アストルフォの先導に従い走り続ける一行。

 男はサーヴァントである少年に背負われながら、求められるままに彼が陥った境遇について教えてくれる。その情報を頭の中で整理しながら、オルガマリーが眉を顰めた。

 

『特異点の外から一般人が落ちてくる……か。幻想地底世界であるアガルタに、世界間の綻びから迷い人が落ちてくる。

 これ単体の話だけならば、よくある神隠しの類がアガルタにもあるだけと言えなくもない。が、他の話と併せて考えると少し引っかかる』

「どこがよ」

「アマゾネスでしょ。神隠しで現れる人間の男が生殖に必要なんて破綻してるもの」

 

 ホームズに問いかけたジャンヌ・オルタの疑問。

 それに横からさっさと答えをくれるのはクロエ。

 そうされたことに対して、オルタの視線がクロエの横顔に突き刺さる。

 彼女はそれを気にしもせず、言葉を続けた。

 

「根本的に、ここは神秘を外に逃がさないために地底にあるんでしょ?

 地上でこの世界のルールはもう通用しない、という前提は覆らない。

 だっていうのに、地上とこの世界を結ぶ綻びが定期的に発生するなんてありえない。

 道の通り方も知らない人間を無作為に取り込む入口なんてあってはいけないの」

「……そうね。ここは現代まで現存する裏側の世界。そうである以上、出入国に関しての問題はそれほど緩いはずがない。一人、二人ならともかく、彼の話ではアガルタには何十、何百人とその現象で落ちてきてしまった男性がいる事になる」

 

 クロエの言葉に頷くオルガマリー。

 

 この世界。この特異点。あるいは、そもそも神秘というもの。

 それらは水中にある風船のようなものだ。

 中の空気は少しずつ抜けていく。だからいずれ破綻するのが約束されている。

 空気が抜けていく速度に違いがあっただけ。

 島国のような環境はそれが遅く、地底という環境はそこから更に遅い。

 だからこのアガルタは西暦2000年にもなって、まだ現存している事になっている。

 

 だからこそおかしい。

 限定的に開ける道ならばともかく、地上との連絡が頻繁に取れる。

 それはこの世界という風船の穴を広げるようなものだ。

 

 一般人がほいほいと当たり前に落ちてくるような事があっていいはずがない。

 いやそもそもここがそんな環境であったならば、だ。

 この時代まで継続せず、もっと前の時代に破綻していなければ道理に合わない。

 

「ここのアマゾネスは聞いた限り、落ちてきた男の存在を前提にしなきゃ繁栄できない生物になってるじゃない。そんな馬鹿な話ってないでしょ。

 この世界に生きてるのに別の世界の物体に依存した生態なんて、歪んでいるにも程がある」

「え、えと。つまり……?」

 

 地上と関わりが深くては神秘性を維持できない。

 地上と関わりが薄くては生態系を維持できない。

 

 おかしいのはこんな設計であることか。

 あるいはそれでもこの世界が維持されてしまっていることか。

 難しい顔を浮かべて低空飛行するイリヤの隣に並びつつ、クロに視線を送る美遊。

 

「この特異点の状況、というか()()()そのものに何かがある?」

『聖杯級の魔力リソース。世界観を構築する“物語”に関連した存在。

 それらを使って創られたにしても、無理がありすぎる。

 いや、不可能とまでは言わないけどね。あまりにも無駄が多すぎると言うべきか』

 

 唇に指を乗せ、考え込むような所作を見せるレオナルド・ダ・ヴィンチ。

 

『普通に考えて不思議だろう? なぜこうして無駄なリソースを垂れ流すのか。

 わざわざこうして“現代に”、“神秘の濃い異界”を発生させたんだ。それ自体に目的があるだろう、と考えるのが自然だ。だというのに、資源の消費を加速させなければ維持できない生態を持つ生物をアガルタ人として設定したのだろうか。そこに何かが無ければ納得できない』

「重要なのはアマゾネスであること、じゃないよね」

 

 画面の向こうで鷹揚に頷く天才。

 彼女が言葉にする前に、そのセリフをモリアーティが取り上げる。

 

「彼の話によれば現状ではアガルタの中には三つの国がある。詳細は不明だが……アマゾネスの国、それと表立って敵対している国、どちらとも不干渉という態度を見せている国、だ。

 そしてアマゾネスの敵対国もどうやら生態に関してはアマゾネスと同一。外からやってきた男性を得なければ生殖できない、という状況だネ」

『となれば、不干渉を見せている国も同じ、と考えるのが自然だろう。その国には普通に男性が存在している、というなら男の取り合いで両国から狙われているはずだ』

「男の取り合い……」

 

 あまりにもあんまりな表現に眉を引きつらせるオルガマリー。

 だがそうとしか言えないし、こちらから見ればふざけたようなやりとりでも、当事者からすればこれは種の生存競争だ。それでしか継続できないのだから、命を賭してでも達成しようとするのは当たり前の話。

 

「うーん、奪い合うくらいならいっそ共有しちゃうとか?」

「ないわー……」

 

 ヒポグリフを引っ込めて駆けているアストルフォの言葉。

 それに全力で顔を顰めてみせるのはオルタ。

 

「つまり戦いになったデオンとアストルフォみたいに、俺とプロフェッサーが狙われるってことだよね。それなら捕まってる人たちを助けるのは簡単に行きそう?」

 

 変な空気感を気にも留めず、ソウゴがそう言ってモリアーティを見る。

 レイシフトしてきた男は四人。いや、三人? 四人?

 ソウゴにモリアーティ、アストルフォとデオン。結局何人?

 

 自分も囮要員にされつつあるモリアーティがそこで軽く咳払いした。

 

『聞いた限りのアマゾネスの特徴から察するに、戦闘で強さを示した男性に対してもっとも魅かれるようですので、そうかもしれません』

「つまり私は戦闘せずに捕虜の誘導員だネ!」

『役に立たない男だな、キミは』

 

 聞こえてくるマシュの声。

 それに全力で同意を示す悪党。探偵の罵倒もなんのその。 

 

『ただ、仮に危うげなく捕虜となっている男性を全員助けられても、問題はその彼らを生活させるだけの物資も場所も確保できていない、ということだ。

 こちらでも探査を進めているが、それらしい空間はまだ見つかっていない』

「これだけ自然に溢れている土地ですし、やろうと思えばどうにかはなりそうですけど。

 最悪、街から多少の物資さえ奪い取れれば……」

 

 便利な能力を持ったジオウもいる。

 前例となる環境が劣悪すぎたキャメロットの難民とは違うだろう。

 ただ生活するだけで死に絶えるような自然の暴威は感じない。

 

 ロマニに対してそう告げて、事後の動きを考え始めるツクヨミ。

 そんな彼女に対して溜め息ひとつ。

 オルガマリーが視線を逸らして、情報源になっている男を背負った少年を見た。

 

「……それは置いといて、もう一つの件を片付けましょう」

『はい、霊基の確認を完了しました。

 その……彼と完全に同一の霊基情報がカルデアには記録されています』

 

 そう言われてきょとんとしてみせる少年。

 華奢とさえ言える少年の姿だが、男一人背負ってその疾走に乱れはない。

 サーヴァントならその程度は当たり前かもしれないが。

 

『彼の正体は、アルスター伝説において赤枝騎士団の一人として知られる、魔剣カラドボルグの使い手。かつてアメリカで戦闘を行ったケルトの戦士――――真名をフェルグス・マック・ロイ』

「だよね……! 主に女と戦いが大好きな……!」

「それは一体どういう……?」

 

 立香が思わずこぼした言葉に対し、少年―――フェルグスが首を傾げる。

 アメリカで出会った彼は、男も女も戦闘も全てを愉しむ豪快な戦士だった。

 そして筋肉の塊のような巨漢だった。

 だが今、彼女たちの目の前にいる少年はその姿とは似ても似つかない。

 

 確かにどことなく似ているような気はする、が。

 華奢で優し気な雰囲気すら纏う少年に、あの巨漢と繋がりは見いだせなかった。

 

 そしてそんな立香の言葉を聞いて、どこか心配そうに。

 イリヤとクロエと美遊が、すい、と。

 何となく少年から距離を取るような軌道を描いた。

 

 それで少女たちを害するような真似をすると思われている、と思ったのか。

 フェルグスは即座に声を上げる。

 

「いえ、むしろ僕にとって女子供は守るべきもの! 民は国の宝。それを傷つけることなどしませんし、また傷つけられることをよしとする気もありません……!

 そのような暴虐を行うなど、いずれ王となる者として言語道断ですから!」

「王様?」

 

 その言葉にどこか嬉しそうな反応を示すソウゴ。

 そういう話じゃないから今は引っ込んでろ、と。

 彼の目の前で、オルガマリーが掌をひらひらと動かした。

 

『キミはここに“はぐれ”……マスターのいないサーヴァントとして招かれた、ということでいいのかな?』

「え? あ、はい。どうやら皆さんには真名も知られているようですが、改めて。僕はアルスター王族の一人、フェルグス・マック・ロイ。

 どのような経緯かは把握していないのですが、いつの間にかこの特異点に召喚されていました。聖杯から授けられただろうサーヴァントの仕組みの知識から言って、この時代の僕が召喚されるというのはまず無い筈なのですが……」

 

 ロマニから問いに返しつつ、フェルグスは僅かに眉尻を落とした。

 

「召喚されない?」

「サーヴァントというのは基本的に全盛期がベースになるものですからねぇ。

 まあ何を持って全盛期とするか、解釈によるところはあるでしょうけど」

 

 不思議そうにするイリヤに対し、ルビーが補足する。

 

 フェルグス・マック・ロイは少年期に全盛だったものはない。

 本人がそう断言したとはいえ、結局は解釈次第だ。

 自己認識の上ではそうだったとしても、少年期に見るべきものがあったから召喚された。

 召喚された以上はそうなるはずである。

 

「肉体的、戦力的に全盛期から遠いならば、精神面での選定なのでは?

 通常は戦力が基準になるものですが、そう言ったケースも十分ありえるかと」

 

 サファイアが更に続けた言葉を聞いて、美遊が改めてフェルグスに視線を向けた。

 だが彼はどこか困った顔。

 そんな珍妙な表情を見て、オルタが軽く眉を上げる。

 

「なによ、何か言いたげじゃない?」

「ええ、まあ。他人から見てどうなるかはわかりませんが……少なくとも、僕としては納得しがたいというか」

 

 何故そうまでして若い自身を否定するのか、と。

 そう言いたげな表情を見せたツクヨミに、彼は言葉を続けた。

 

「……そうですね。例えば今の僕にとっての夢は、善き王になること。

 その夢のために今なお研鑽を積む―――といっても、もう僕は生涯を終えたサーヴァントなのですが」

「別に関係ないじゃん。今でもいい王様になりたいんでしょ? じゃあそれは今でもフェルグスの夢なんだよ」

 

 口ごもったフェルグスに対し、そう言って見せるソウゴ。

 彼はそうやって後押しされたことにどう反応していいのか、と困った顔。

 

「そう、でしょうか。記憶……なぜか未熟だった頃で召喚されているだけで、僕の夢は……詳細は覚えていませんが、既に完結している、という自覚は持ち合わせています。

 僕は王としては大成しなかった。その役割を途中で降り、投げ出した。そうなった筈です。あくまで僕の経験ではなく知識の上での話ですが……」

 

 フェルグスはそこで一息。

 

「今の僕は、破れた夢をいつまでも追いかけているだけなんだと思います」

「―――でも、破れたからっていつまでも夢を追いかけちゃいけない、って決まりがあるわけじゃないでしょ?」

 

 言い募るソウゴ。

 この短い間で、彼の態度からどういう人間かを何となく理解したフェルグスが苦笑した。

 

「……どうでしょう。夢が破れたということは、そこに相応の理由があったのだと思います。

 夢破れるという事は、自分の心の中だけで起きるカタチの無い決着だからこそ……ただ夢だけを追いかけていられなくなった時、自分で自分の心を破り捨てる事なんだと思います」

 

 決着をつけられるのは自分だけ、という言葉にソウゴが口を止める。

 

「僕は僕の心がどうして自分を捨てるに至ったのかが欠けてしまっている。

 今の僕には、未来の僕が至った境地が分からない。

 だから、その欠落を埋めるためにまた夢を拾っただけなんだと思います」

 

 フェルグス・マック・ロイは最終的に王座を退いた。

 少年期の彼は善き王を目指していたにも関わらず、途中でその夢を放棄した。

 その理由が、未来の自分の行動理念が、今の少年には分からない。

 そんな彼に何かを言おうとして、しかしソウゴは何も言わなかった。

 

「未来の僕が全面的に正しい考えを持てていたか、というと疑問です。

 僕はそこまで出来がよくないし、いつだってそれを補うための鍛錬尽くし。

 ……はい。僕が生涯“正しく在れたと思うか”、と訊かれると肯定しづらい。

 けれど、いつだって僕は鍛錬を欠かさなかった筈だ。

 だから、“正しく在ろうと努力出来たか”、と訊かれれば肯定したい。

 いつだって僕はその点に関しての努力だけはしていた筈ですから」

 

 黙り込んだソウゴの背中に立香とツクヨミが目を向ける。

 その間にもフェルグスの独白は続く。

 

「だから実のところ、王座を放棄した未来の僕に思うところはそんなに無いんです。

 だってそれも、その時の僕が己の在り方に正しく向き合った結果なのだろう、とは思えるから」

 

 “自分が正しかったはずだ”、と彼は断言できない。

 けれど“自分は正しく在ろうとしたはずだ”、といつだって胸を張れる。

 フェルグス・マック・ロイが持つその方向性ばかりは、少年は一切疑っていない。

 

「自分を信じる、というか……そうですね、自分が重ねていく鍛錬を信じているんです。今日の僕が鍛錬を重ねた分だけ、明日の僕は前に進んでいる筈ですから。行き当たりばったりと言えばそうかもしれません。ですがただ悩んでうずくまるよりは、スクワットした方が時間の有効活用になりますし、やった回数分だけ成長するわけです。

 今の僕がやるべきことは、今の僕がやるべきこと。未来の僕がやり遂げたことは、未来の僕がやるべきだったこと。そうであって欲しいし、そうあるべきだと思います」

 

 そこで少年は小さく咳払いを挟む。

 話題がずれている、と認識したのだろう。

 そうして彼は、強引に話を元のものへと戻した。

 

「それで、ええと。そうですね、何が言いたいかと言うと……僕という人間は、完全に発展途上だという自覚があるということです。正直、何一つ最盛期に達しているという自意識はない。

 向上心は持っています。それを実現するための鍛錬を欠かす気もありません。だからこそ、今の僕より未来の僕の方が全てにおいて優る筈という確信がある」

『だから、キミが今ここにいる事自体が明らかな異常である、と?』

「はい。どう解釈しても僕は全盛期である、という条件を満たさない。

 誰より僕自身がそんな解釈をされたら納得できない」

 

 これから鍛錬を重ねていく自分だからこそ、鍛錬が足りていない今の自分を評価されては納得できない。時間と鍛錬を重ねて完成される自分であるからこそ、今の自分を全盛期と扱われるのはいっそ侮辱ですらある。

 あらゆる点において、自分は未完成。全盛期に至る前のフェルグス・マック・ロイなのだ、と。少年は強く断言した。

 

「……つまり、だ。彼の召喚はルールから逸脱したもの、イレギュラーというわけだ。

 通常の法則ではなく、何らかの干渉を受けた歪んだ法則に当て嵌められたワケだネ」

「アンタがあのバイク女やらアーチャーやらが黒化するようにした仕組みと同じ、ってわけ?」

 

 呆れるように見据えてくるオルタの目。

 それにキミもその法則に当て嵌まった一人だが、という顔を浮かべるモリアーティ。

 

『――――なるほど』

『うん? どうしたんだい、ホームズ。一人だけ分かった風な顔をして』

 

 視界の端で頷いて見せている名探偵。

 それを意識に留めて、ロマニが彼に声をかけた。

 

『今のところこの件について気付いているのは私だけのようだ。

 ならば私がそんな表情を浮かべているのは、実に正しいことに思えるね』

「勿体ぶってないでさっさと言いなさい」

「すまないね、私の宿敵がこんな男で」

 

 当然のことのように微笑むホームズに対し、オルガマリーが率直に命令を出す。

 なぜか申し訳なさそうに謝るモリアーティ。

 そんな怨敵の様子にこそ不機嫌そうに眉を軽く上げて、ホームズは仕方なさげに肩を竦めた。

 そして素直に自身が至った考えを白状し始めた。

 

『先程閲覧した資料です。

 カルデアがこれまで記録した中で、アガルタに適応する霊基を確認した』

 

 召喚の際に見た資料。

 特異点攻略のため、事前に出来る限りの情報を集めたもの。

 言われてそこに記されていた情報を思い出す。

 

『あれを見て私はまず、エレナ・ブラヴァツキー女史の適性が低すぎる事に疑問を持ちました。

 基本的にはその名がよく知られ、霊基数値が強力な英霊ほど時代に弾かれ易い。だから彼女はむしろ適性が高い方だろうと思っていたのですが……実際は真逆。最低レベルの数値で、彼女はこの特異点に拒絶されていた』

 

 エレナ・ブラヴァツキー。

 カルデアが第五特異点、アメリカにおいて邂逅した女性。

 神秘を探求する神智学の祖。

 彼女の事に言及したホームズに対して、立香が問いかける。

 

「なんでエレナにだけ?」

『そこは少々因縁あり、という事で』

「少々ねぇ」

 

 モリアーティの茶々を咳払いで流し、ホームズが続ける。

 

『さておき。まあそれだけならば、アガルタという土地が彼女という冒険家に暴かれる可能性を拒絶した、と解釈もできました。彼女は人柄上、こういった伝承世界を研究して表に出してしまうタイプですので。

 実際にアガルタを見てみれば、確かに神秘を暴き立てる者と相性が悪いのはおかしくない』

 

 アガルタという異常は表に出てはいけないものだ。

 単純な話、この土地という異常は既に地上では維持できない。

 だからアマゾネスたちという種はおかしい、という話を既に行った。

 それと同じように、エレナのような人種が天敵であってもおかしくない、と。

 

 だがそうではない。或いはそれだけではない。

 そういったホームズの口振りに、目を通した資料を思い起こす。

 そうして思い至った情報にはっとして、オルガマリーがフェルグスに視線を向けた。

 

「――――そう、いえば。フェルグスも」

『……そうだね。フェルグスも相性は最低だったはずだ。

 エレナ・ブラヴァツキー、フェルグス・マック・ロイ。その二人と同値だったのは他にもいる』

 

 手元で資料を引っ繰り返し、ロマニが呟く。

 彼の確認を待たず、ホームズが続けた。

 

『アガルタとの相性最低を記録した残りのメンバーは、フランシス・ドレイク船長と大英雄ヘラクレス。この両名の事についてはいったん置いておくとします。

 そしてこう解釈するのはどうでしょう。相性が悪かったのは、それらのメンバーの()()()()()である、と。

 本来の在り方で召喚されないように特異点側に設定されていた。召喚された場合、現界する過程で霊基に異常を来すよう、何らかの機能が仕込まれていたのではないか。

 異常霊基でしか召喚できないように仕組まれていたために、本来の霊基でのアガルタ適性が下限にまで振り切れてしまった』

「つまり今、その英霊たちは本来ありえない歪み方をして召喚される……いえ、されている?」

 

 わざわざそんな仕組みを織り込んだのだ。

 なぜ特定の英霊だけにそんな仕組みを仕込んだのか、と考えるならば。

 それらの面々で異常な召喚をしたかった、と考えるのが自然だろう。

 

 ならば今名前が出たエレナ・ブラヴァツキー、フランシス・ドレイク、ヘラクレス。

 この三人はアガルタに異常な状態で召喚されていることになる。

 

『まだ一例しか確認できていないですが、可能性は高いかと。それこそ召喚されるサーヴァントの属性を限定させた前例はありますので。

 ―――それと言うまでもないかと思いますが、当然カルデアが観測した事のないサーヴァントが存在する事を否定するものではないのであしからず』

「……アガルタの世界観と、特定のサーヴァントの異常召喚。まだ見えないわね。

 これは一体何が目的なの?」

 

 ホームズは答えない。

 今回はここまで、と言わんばかりに懐から出したパイプを吹かそうとして。

 

『すみません、ホームズさん。管制室は完全禁煙です!』

『おっと、これは失敬』

 

「―――えーっと、つまり、その、どうすれば?」

 

 一通りの情報共有が済んだと見たのか、おずおずとイリヤが声を上げた。

 今はとにかくアマゾネスたちが向かった方向に進んでいる。

 逃げてきた男の話を聞く限りそちらには街があり、アガルタに落ちてきた地上の男性が大量に捕まっている。だから助ける、のはいいのだが。その後、そしてその先にどうするかだ。

 その先の展望がないのだから、もっと足場固めを優先するべきなのが実情で。

 

「…………退く、と言って聞く気はある?」

「所長が本気で必要だと思ってそう言うなら、かな」

 

 ノータイムでソウゴが返す。つまり、退く気がない。

 大量に助けられたとして、その後どうするかもあてがないけれど。

 それでも、ここで逃げるのはちょっとナシだろう、と。

 

「いつも通り、だね!」

 

 気を入れ直すように立香が言う。

 訊いたイリヤもどこかほっとしたように見えて。

 オルガマリーが全力で溜め息をひとつ、そうしてから顔を上げた。

 

 

 

 

 

「やあやあ! ボクこそはシャルルマーニュ十二勇士がひとり、アストルフォ!

 ついさっきぶりの人はいる? いない? とにかくたのもー!」

 

 ランスで地面をがつりと叩き、街の入口辺りでアストルフォが名乗りを上げた。

 街の中から困惑する様子は伝わってくる。

 アマゾネスたちは全員武装して街中に広がっている様子なのだが。

 

「攻めてこないね?」

「ふぅむ、意外だネ。アストルフォくんという目標を見つけたら形振り構わず、というような動きがあるものと考えていたが」

 

 陽動は男性組。街の正面から攻め込み、アマゾネスを引きつける。

 その間に女性組が街の側面から侵入し、捕まった男性を引っ張り出してくるというわけだ。

 普通なら直球すぎる、と蹴り飛ばしたくなる案だ。

 が、相手が地上の強い男性を求める好戦的なアマゾネスなら、それが最良だと判断した。

 

 フェルグスは何やらアマゾネスとは戦えないらしく、残念ながら女性組だが。

 

 ソウゴとモリアーティがまだ狙われないのはいい。

 だが既に力を見せているアストルフォにも反応しないのは少し予想外だ。

 捕縛のためでなくとも、王とやらを守るために動きを見せるはずだと思っていたから。

 

「こうなると彼女たちが口にした敵の存在の正体が―――」

「こうなったらこっちから攻めるしか……?」

 

 小さく呟くモリアーティに対してそう言って。

 しかしその瞬間、背後に何かを感じてソウゴは振り返る。

 まったく同時にそこに現れるのは時空のゲート。

 

 六角形に開いた機械的なゲートの形状こそはジェネレーションズウェイ。

 タイムマジーンによって時空航行をする際に展開される道である。

 

「白ウォズ……?」

 

 であるならば、それの下手人は一人しかいない。

 即座にウォッチを握りつつ、ソウゴがそちらに向き直り。

 

「あそこだ!」

「待て、いつもと違うぞ……!

 それになぜ街の上に現れない! あれは本当に奴なのか!?」

 

「……? なんかアマゾネスたちも騒いでるけど」

 

 背後から殺到するアマゾネスの怒鳴り声。

 それに反応して一応槍を構えながら、アストルフォが首を傾げた。

 そんなやり取りをモリアーティが目を細めて聞く。

 

 そうしている間に顔を出すライトグリーンとシルバーの機体。

 それは出現すると同時にハッチを開き、空中で一瞬だけ動きを止めた。

 

 ―――そこから飛び降りる黒い影。

 視界に掠めただけで全身白一色の白ウォズではない、と直感できる出で立ち。

 数メートルの高さから危うげなく飛び降りた者。

 青年であったその者が、顔を上げながら装着したハーネスの首元を掴んで整える。

 

 交錯する視線。

 常磐ソウゴとその青年が、眼光をぶつけあう。

 

「あんたは……」

「―――どうやら、あいつの口車に乗った甲斐はあるようだ」

 

 困惑の方が強いソウゴの前で、青年の眼光は敵意から一切ブレない。

 二人が視線を交わしている内に、空中でタイムマジーンが再始動する。

 取って返し、ジェネレーションズウェイへと消えていく機体。

 

 それを気にした様子もなく。

 彼は着地の体勢から確かに立ち上がると、懐から一つのデバイスを取り出した。

 それをそのまま、自分の腰へ。

 

〈ジクウドライバー!〉

 

「あれ、は」

 

 ドライバーから展開され、青年の腰に巻きつくベルト。

 だがそれだけではジクウドライバーは使用できない。

 それを誰より知っているソウゴの前で、青年が腕のホルダーに手をかけた。

 

 取り外される赤と黒のライドウォッチ。

 彼は握ったウォッチのベゼルを回しながら突き出して、スターターへと指を乗せた。

 

〈ゲイツ!〉

 

 起動するライドウォッチ。ゲイツと名を告げた力の結晶。

 彼はソウゴと同じようにそれをジクウドライバーへと装填し、拳を握った。

 堅く握った拳でドライバーのロックを叩いて外す。

 

 青年の背後に展開されるデジタル時計。

 四つ並んだ0の文字盤が、時を刻む事無く回りだした。

 回転待機状態になったドライバーの両端に、青年の両腕が添えられる。

 

「――――変身!」

 

 一息に。彼はドライバーを一気に回転させた。

 回転していたデジタル時計が正位置で停止し、そこに文字を浮かび上がらせる。

 0と代わるように浮かぶ文字は同じく四文字。

 即ち“らいだー”の四つ。

 

〈ライダータイム!〉

 

 青年の姿が変わる。

 ジオウとよく似た、しかしまったく違う姿。

 赤いスーツに装着されていく真紅の装甲。

 

 そうして変わっていくプロセスもまたジオウによく似たもの。

 彼が背負ったデジタル時計から放たれる文字四つ。

 それが赤い戦士の頭部に嵌っていく。

 戦士の現状を示す機能を持つ頭部の印字、インジケーションバタフライ。

 

〈仮面ライダーゲイツ!〉

 

「仮面、ライダー?」

 

 変身を完了した赤い戦士、仮面ライダーゲイツ。

 彼が腕を上げ、黄色いプロテクターに覆われた指を伸ばす。

 その指先が向けられたのは、言うまでもなく常磐ソウゴ。

 

「此処で貴様を倒す―――覚悟しろ、オーマジオウ!!」

 

 

 





 いまアナザーキバの話した?????

 811日がP.A.R.T.Y.なら毎年8月11日は平成記念日なんです?
 山の日を……潰す!
 お前たちの山って醜くないか? まるでデコボコで石ころだらけの道だ。
 俺たちがその山を開拓して、綺麗な平地にしてやろうってこと。
 
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