Fate/GRAND Zi-Order ーRemnant of Chronicleー   作:アナザーコゴエンベエ

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王佐の戦士2000

 

 

 

「避難、あとどのくらいかかりそう!?」

 

 振り抜いたサイキョージカンギレードを構え直しながら、ジオウⅡが背後に叫ぶ。

 そんな魔王の様子に怪訝そうな態度を見せるゲイツ。

 だが彼が疑問を口にするより先に、彼らの目の前にその理由が姿を現した。

 

 ―――消し飛んだ四肢を再構成。

 ミシミシと音を立てながら、骨格の通りに張り巡らされる新品の筋肉。

 熱に爛れた己の残骸を糧に、彼は新たな肉体を形成する。

 

「―――――――――■■■■……ッ!」

 

 ヘラクレスが動き出す。

 筋肉がようやく骨を覆った掌で地面を叩き、巨漢が上半身を持ち上げた。

 再生途中の体が喘ぐように大きく震える。

 

 一度砕けた膝下には、もう足を奪う宝具の効果は残っていない。

 消滅した筈の骨、筋、肉、皮。

 失ったものを正しい状態で再生し、彼は長らく消していた足を取り戻す。

 

 首を繋ぎ。胴を盛り上げ。鎧を纏い。

 四肢を伸ばして、大英雄が排熱するように吐息を漏らした。

 

 新たに取り戻した体は五体満足。

 彼は紛れもなく、アナザーフォーゼ・ヘラクレスとして蘇る。

 

「■■■■■■――――……ッ!!」

 

 ―――“十二の試練(ゴッド・ハンド)”。

 生前の行い、偉業が昇華されたヘラクレスが持つ逸話型宝具。

 それこそが彼自身の肉体であり。彼の頑強さの理由であり。

 その体に十二の命をストックするという、不死身の理屈である。

 

「な――――」

「……再生が速い。与えたダメージは想定以下だな」

 

 聖剣を握り、忌々しげにそう呟くアルトリア。

 真っ当なサーヴァントならば十回や二十回、容易に殺せるだけの連撃だった筈だ。

 だが再生速度を見るに、あの肉体に蓄積させた損傷も大きくない。

 流石に再生後、即行動できるほどに浅い傷では済まなかったようで何よりだが。

 

「どう気楽に見積もっても命を半分も奪えていない。撤退以外には無いぞ」

 

 あれだけ攻撃を重ねてこの始末。

 そもそも、このヘラクレスがどういった意図でこんな運用をされているのかさえ定かではない。

 ここで無理に押し切って特異点が解決するというわけでもない。

 

 であるならば、戦闘を続行するという選択肢はありえない。

 あと一押しでトドメをさせるならまだしも、この状態で継戦は無しだ。

 ここまでの攻勢で稼いだ時間は、被害者たちを逃がすために消費する。

 

「―――藤丸! ツクヨミ!」

「っ、まだ……!」

 

 振り向きざまのオルガマリーの声。

 それに反応し、一人で立てない男を支えながら立香が焦燥の声を上げる。

 動ける人間に動けない人間を支えてもらいながらの逃避行。

 

 ただでさえ速度は出ない。

 挙句、化け物の戦闘が背後で展開されているという事実は人の足を竦ませる。

 足取りはあまりに遅く、稼げる距離は微々たるものでしかなくて。

 

 ガチガチと響く、鋼が擦れるような筋肉が軋む音。

 ヘラクレスの体が組み上がり、血流を全身に巡らせ始める。

 一度焼け落ちた命の熱量が、その体に再充填されていく。

 

「常磐! あなたとアルトリアと……イリヤスフィールと美遊! 四人で抑えられる!?」

 

 こうなっては人を逃がすために人員を回すしかないだろう。

 勿論ヘラクレスを抑えるための戦力は削りたくない。だがこのままではジリ貧だ。

 攻めるも退くも自由に選べる状況を取り戻すため、まず人を逃がすのが必須になっている。

 

 ターゲットが変わっているなら、魔法少女二人は後ろに行かせられない。

 であるならば、その二人に加えて特に戦闘力に優れるアルトリア・オルタ。

 そこにジオウⅡの四人だけで戦力は大丈夫かという問いかけ。

 

 彼は背中のその言葉を受け取って、大剣を両手で構えたままゆっくりと腰を落とす。

 ソウゴの意志に感応するかのように、ジオウⅡの全身に漲るパワー。

 

 そうして覇気に満ちたジオウⅡを見て、ゲイツが僅かに顎を引いた。

 

「それが必要な事なんだから、出来るかどうかは訊かなくてもいいんじゃない?」

 

 ソウゴの答えを聞いて、呆れるような表情を浮かべるアルトリア。

 囮のように使われる事になるだろうイリヤと美遊が、しかしその状況を肯定した。

 少女たちはステッキを握りしめ、ヘラクレスと対峙する。

 

「―――わたしたちは連中を逃がす事に全力を注ぎます。

 それが終わるまで、あなたたちで時間を……」

 

 所長はただ必要な事を命令すればいい。俺たちはそれを必ず成し遂げる。

 

 いつも通りの返答を受け、頭痛を堪えるように額に手を当てるオルガマリー。

 だがここでいつものやり取りをする暇もない。

 オルガマリーは戦闘を四人に任せ、即座に全員を動かすための指示をしようとして、

 

『―――あれ、これ……逃げている人間、感知してる生体反応の数が増えてる……? いやこれ、もう逃げた筈の人間が流れに逆行して戻ってきているのか?

 逃げている筈の人たちが、相当な数こっちに向かって戻ってきて―――!? サーヴァント反応だ! 逃がしてる方向にサーヴァントの反応がある!』

 

 ロマニの言葉に、喉を引き攣らせて声を止めた。

 すぐさま振り向いた先。

 もっともヘラクレスから離れた位置には、避難民を支える立香がいる。

 その彼女の方へと迫る、逃げるのではなくこちらに向かってくる者たち。

 

 彼らは全力の疾走で彼女のいる位置まで走り抜け。

 

「おい、あんた! 早くそいつをこの中に!」

「え?」

 

 接近してきたのは、複数人で牽く大量の荷車。

 こちらに走ってきた連中は近づくや否や、動けない男たちを荷車に乗せていく。

 怪我人相手に雑な扱いだが、状況を考えれば致し方ないのだろう。

 

 呆けた立香に苛立ってか、一人が彼女から男を引ったくって荷車に放り込む。

 動けない連中を回収。そして動ける者たちは自分の足で走らせる。

 手際よく、手慣れた動作で行われていく逃亡の準備。

 荷車が反転し、来た方向へと頭を向けた。

 

「こっちだ! 説明してる暇はねえ! 生き延びたきゃ俺たちについてこい!」

 

 一人がそう叫び、走り出す。

 荷車の群れを総員で牽き、押し、瞬く間に離脱にかかる大勢の人間。

 それにつられたかのように、周囲の人間たちが彼らの事を追いかけ始めた。

 

 引き上げていく大勢の男の背を視線で追いつつ、ツクヨミがオルガマリーに問う。

 

「所長さん、どうしますか!?」

「―――ロマニ、サーヴァントの反応は!?」

『彼らが向かう方向の少し離れた位置で停止してる!

 その辺りでふらふら小さく動いてるけど、こっちにまで来る様子は……』

 

 状況から見て今来た連中とサーヴァントは同一勢力。

 男を助けるために来た様子から、アマゾネスよりは真っ当だと思いたい。

 

「……どっちにしろ、このままじゃ退けないわ!

 わたしたちが下がれば、ヘラクレスがそれを追って―――」

 

 その瞬間、ガクンと。

 オルガマリーの言葉を遮るように、唐突にヘラクレスの動きが止まる。

 

 その対応はよく知っている。今までのように何かを測るための停滞。

 魔法少女たちを見ていた大英雄が、別の対象に視線を奪われる過程だ。

 再生が生んだ余剰熱量を吐息で吐き切りながら、ヘラクレスの首が巡る。

 

「―――狙いが変わった!」

「そのサーヴァントの方ってこと!?」

 

 デオンが叫び、彼の向き直った方向に視線を送る。

 その事実に対し、弓を構えていたクロエが顔を引き攣らせた。

 現れたサーヴァントの位置は男たちが逃げていく方向の先。このままヘラクレスの前進を許せば、その過程で全てがひき潰される事に疑いはない軌道。

 

「正面からぶつかって止める――――!」

 

 ヘラクレスの前で振り上げられるサイキョージカンギレード。

 自身の命に届き得る刃を前にしても、大英雄はジオウⅡを一瞥すらしない。

 彼はただ定められた条件を満たした相手を狙い―――

 

 再びガクン、と。

 大きく揺れて、大英雄の動きが停滞した。

 直後にぐるりと首が回り、ヘラクレスの視線はイリヤたちへ。

 

「またわたしたちに変わった!?」

「これは……」

『―――()()だ。街から一定距離を開けた場合、問答無用でヘラクレスのターゲットから除外される! いや、ヘラクレスの稼働範囲が街の周辺だけなんだ!』

 

 ダ・ヴィンチちゃんからの声が届く。

 そうしている間にも、ヘラクレスが一連の停止と再照準を同じように繰り返した。

 起動し、動き始めに至った段階での停止。

 結果として何もせずにアイドリング状態を続ける事になる巨体。

 

 そこにひいこらと棺桶を引きずりながら、ようやく駆け込んでくるモリアーティの姿。

 息を切らしながらも指をピンと立て、老爺が皆の前で口を開く。

 

「ヘラクレスには行動を許された範囲がある……! 逃げ出す事に成功した標的を無限に追跡する、わけではない、という、事だネ……! そして―――」

『彼が標的を選ぶために使う、“国家に与えた被害”という評価値は累積する』

 

 しかし彼が生きも絶え絶えに口にしようとした事実を、ホームズはあっさりと口にした。

 過呼吸気味のモリアーティからは罵倒も出てこない。

 いちいちそれを言及する事はせず、

 

「つまり……あっちにいるサーヴァントは、アマゾネスの国と敵対してる?」

『この推理が正しいのであれば、そういうことになる。街の一角を吹き飛ばす以上の損害を既に稼いでいる筈だ。どうやって、という点は先程のヘラクレスの動きが証明してくれる』

 

 ホームズのその言葉に対し、オルガマリーが眉を顰めた。

 目を細くして思い返すのは、先程までの自分の状態。

 

 ヘラクレスは自分を狙っていた。ターゲットされた理由は恐らく、男性の強奪。

 単純な破壊ではなく、男を逃がすという被害を与えた結果として。

 それを行った集団の代表である彼女が、正確に狙われた。

 

 乱入してきた男たちは、逃げていた男たちを手慣れた様子で確保していった。

 つまり、アマゾネスから財産を巻き上げていったのだ。

 あれほど手慣れた様子であれば、実行した事は一度や二度ではないだろう。

 その状況でヘラクレスに狙われていた彼は―――

 

「まず間違いなく、捕まっていた男たちを逃がす集団の代表―――!」

 

 先程の様子を見るに、男たちは少なからずそのサーヴァントに協力的だ。

 敵か味方か。断定するには早いが、敵ではない可能性が高い。

 

「それで! そっちに逃げて顔合わせするの!? それとも動かないこっちの相手!?」

「こんな状態の相手に剣を向けるのは憚られますが……!」

 

 周囲に投影した剣群を突き立て、それらを全て矢に改造。

 そうしながら弓を構えていたクロエが叫ぶ。

 彼女の前に立ちながら短剣を両手で握るフェルグスが、苦虫を嚙み潰したような表情になる。

 

 再生は終わってなお、ヘラクレスは動かない。動こうとしても動けない。

 照準を定めてからでなくては彼は動く事ができないのだ。

 そんな大英雄の隙だらけな姿を見て、微かに唇を噛むオルガマリー。

 

「この状況なら倒し切れる……!?」

『いえ、やめておいた方がいい。まず外にいるサーヴァントが絶対に味方とは限らない。仮に味方だったとして、男性らの避難が終わってそのサーヴァントがそこを離れただけで、ヘラクレスの照準はこちらに集中します。

 それに何よりヘラクレスが何故ああなっているのか分かっていないのです。途中で彼の優先する行動が別のものに切り替わらないという保証はどこにもない。こういう方法もある、と理解するだけにして今は撤退すべきでしょう』

 

 ホームズが即断する。モリアーティも同意の表情。

 

「―――仮に奴が一切動かず無防備なままだったとしてさえ、数分で命を削り切るのは難しい。アレを仕留め切るには、先程と同等の連撃を二度三度と叩き込んでどうか、というところだ。

 もちろんそれでも足りない、という事さえも十分にありえる。動けないからあっさりと殺せて拍子抜け、などという事はまずないだろう」

 

 漆黒の魔力を立ち昇らせる聖剣を手に、口惜しげに。

 アルトリアもこれ以上の戦闘続行という選択は無いと告げた。

 

「アレの頑強さは宝具の護り。立ち尽くしているだけでも防御能力は十全に発揮される」

 

 そもそも動いていたとしても、ヘラクレスは防御行動など一切とらない。今の彼はただ愚直に目的を果たさんとするだけのマシーンなのだ。

 ある意味では常に隙だらけ。その上でこの無敵かつ不死身ぶりなのがヘラクレスだ。

 

 そんな彼の前に立っていたジオウⅡが剣を下げる。

 そうしてどこか何かに迷うように顔を巡らせて、はっきりしない様子で呟く。

 

「……それに、なんか。多分、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

『殺させたがってる、ですか……?』

 

 この怪物を殺せるものが一体どれだけいるのか。

 だというのにそう考えている人間がいるとすれば、狙いは間違いなくカルデア。

 ―――いや、常磐ソウゴだろう。

 

 当惑するマシュの声を聞きつつ、立香がソウゴに向け問いかける。

 

「スウォルツ?」

「―――それと、加古川飛流かな」

 

 ヘラクレスがアナザーフォーゼになっている。

 それだけならば第三特異点の繋がりを利用してフォーゼの力を回収しただけかもしれない。

 だがきっとそれ以上の何かがある。

 そう感じている様子のソウゴの背中を見て、立香がオルガマリーと顔を合わせた。

 彼女がそれに対して小さく頷き、声を張る。

 

「……―――退くわ! 常磐とアルトリアを殿にして、逃げている連中を追い越さない程度の速度で正体不明のサーヴァントの位置まで撤退! そこがヘラクレスがわたしたちをターゲットできる範囲の境界線だと思われます、そこを踏み越えて様子を見る!」

「はい! ゲイツは……!」

「一番前だ。オーマジオウといつまでも並んでいられるか」

 

 文句を言っていても離れる様子は見せず。

 少なくとも避難民の無事が確保できるまでは付き合う、と。

 そういう態度で彼は踵を返し、しかしそこで一度足を止めた。

 

 一瞬だけ迷ったゲイツが、ジオウⅡへと渡されていたライドウォッチを放り投げた。

 そうしてから走り出し、荷車の轍を追い始めるゲイツ。

 

「私も前に」

「ならわたしも……」

「いえ、美遊様。私たちは殿寄りの方が」

 

 ゲイツを追うツクヨミ。彼女の横に並ぼうとした美遊をサファイアが止める。

 あのサーヴァントが範囲外に消えれば次のターゲットはイリヤと美遊。

 彼女たちが先導するのはやめた方がいい。

 

「……アヴェンジャー、ライダー。あなたたちがツクヨミと一緒に前へ」

「りょーかーい。なんか状況が混沌としてきてよくわからないことになってるんだけど、ジャンヌ・オルタはわかってる? 分かり易いように噛み砕いて教えてくれない?」

「さあ? ま、敵っぽかった奴を燃やしてけばそのうち解決するでしょ」

 

 ヒポグリフの手綱を引き、ツクヨミを追おうとするアストルフォ。

 幻獣が加速に入る前にアストルフォの後ろに飛び乗るジャンヌ・オルタ。

 騎兵はその際に軽く交わした言葉に、訳知り顔でうんうんと何度か首を縦に振った。

 

「うーん、なんというか。見かけによらずブレーキをかけることとカーブで遠回りすることを知らない暴れ牛っぷりが流石ジャンヌ! って感じ!」

「燃やされたいワケ?」

 

 背中で揉め事が起こる前に翼を一度羽搏いて。

 ヒポグリフがゲイツとツクヨミの背中を追いかけて加速した。

 

 

 

 

 

 潰れた家屋の残骸。瓦礫の間にミシミシと何かが軋む音が響く。

 それが腕を組んだ女の筋肉が放つ音だと、此処にいる誰もが知っていた。

 充血した獲物を求める眼が、少しずつ理性を削り落としていく。

 

「女王! どうか、どうか……! 早まった真似は……!」

「――――分かっている、奴は我らと戦いに来たのではない。

 攻められた我らの国を守りにきたのだ。どういう理屈か知らんが、紛れもなく」

 

 昂ぶりを制御し、女王は動かない。

 彼女は女王であり、アマゾネスを統べる者。

 彼女の行動には、確かな統率がなくてはならない。

 

 一歩踏み出せばそれが出来なくなる、と。

 それを理解しているから、彼女は前に踏み出さなかった。

 

 戦場に出ないのは恥ずべき事だ。

 が、理性を捨てて怨敵をただ辱める事も恥ずべき事だ。

 そんなものは戦士の在り方ではない。

 

 例えば、好く戦った敵兵を討ち取った後に引きずり回すなど。

 そんな事をするような輩は、理性も誇りもない恥を知らぬ野獣と言えるだろう。

 

「――――まだ動かん。今はまだ、な」

 

 ―――あの男が地上に落ちてくるのはもう何度目か。

 そしてアレが現れる度に、何度彼女は全身全霊で挑み続けたか。

 彼女はもうこの召喚のうちに、あの男を何度殴りつけたかも分からない。

 

 その上で彼女は今のところ、あの男に一度たりとも敵対された事がなかった。

 何百と殴りつけようとあの男は不動。

 一切反撃を行わず、一切彼女に視線を向ける事さえなく、やるべき事だけやって帰っていく。

 

 死ぬほどに怒り狂った。

 またしても敵としてすら見ないのか、と。

 

 だが何度かの邂逅を経て、僅かながらに彼女は落ち着いた。

 

 なるほど、敵対はしてこない。

 なるほど、どれほど攻撃しても意にも介さない。

 

 だがあの男は、彼女を見る事さえなかった。

 やがて美しく成熟する少女の顔になど、一切の興味を示さず。

 ただ自身に傷一つつけられない弱者を見ないだけだった。

 

 ―――ならば、いい。

 それは彼女が弱いだけだ。

 

 牙も爪も毒もない小さな獣に脅威を感じるものなどいない。

 そういうことであるならばいい。

 惰弱と誹られる事に腸が煮えくり返るが、事実としてそれだけの力の差が存在する。

 ならば納得するしかない。彼女は弱者だから、戦士として扱われなかっただけ。

 

 その事実に、彼女の殺意が一段増す。

 

 必ず殺す。

 絶対に殺す。

 一切の容赦なく殺す。

 肉片一つ残さず血煙に変えて殺す。

 

 今度こそ敵としてあの男の前に立ちはだかって、成し遂げる。

 そのためにならば、彼女は僅かだが理性を維持できた。

 

「―――――ハ、ァ」

 

 怒りで赤熱した吐息を漏らす。

 眼球が充血していく事実を認識し、頭から血を下げるために大きく息を吐く。

 燃え立つような全身の熱を、吐息でクールダウンさせる。

 

 同時に、理性が維持できたのは彼女が女王だからだ。

 生前のそれとは違うものだが、確かに彼女は戦士であり女王である。

 そうであるがゆえに確認すべきことを口に出す。

 

「……攻めてきた者の正体は」

「どちらの国の者でもないようです。恐らくは地上から来た者たちかと」

「どこの国の者でもない。そして落ちてきたばかりでは奴の事を知らないのも道理か」

 

 あの男が落ちてくる切っ掛け。

 最初の攻めは、彼女が知るどこでもない勢力だった。

 イースも不夜城も他国を攻めるようなことはもうしない。

 それがこの世界のルールなのだ、と最初にいやというほど思い知らされたから。

 

 その事実に対して再び彼女の血流が加速する。

 沸騰したかのように煮え滾る戦士の血。

 それを抑え込むために歯を食い縛り、彼女は話を続けた。

 

「……だが奴らは生き延び、撤退した。この国から男どもを持ち出すという目的まで成し遂げて。強き戦士だ、今までの連中とは比ぶべくもない」

 

 突然やってきてレジスタンスと共に撤退した、という事は外の人間。この戦闘自体は連中とレジスタンスが共同して動いていた様子はない。

 あの連中はこの世界のルールを把握する間もなく、同族がアマゾネスの胤として奴隷にされているのを見て義憤を抱き、救出のために敢然と行動して、あの男と対峙してなお生き延びた。

 様子を窺っていたレジスタンスはそれに便乗して目的を達成した、と。

 

 恐らくはそんなところだろう。

 

 彼女は戦士ではないものの在り方に関心はない。

 胤として甘んじていたような男どもの事などどうでもいい。

 

 だが今回現れたのは、苦境に立たされた同胞を助けるためにアマゾネスの都市に挑む者たち。その戦士たちはあの男と戦い、一時的に退けさえした。

 どのような戦士たちが属しているかまでは分からないが、単体で彼女を上回る戦士もいるかもしれない。いや、戦果を見る限り間違いなくいるはずだ。

 

「レジスタンスを追い、男どもを奪い返しますか?」

「―――――少し、待て」

 

 思考の最中に滾る血が熱を持ち、思考を阻む。

 戦うことを考えただけでこれほどのヒートアップ。

 やはりこの有様では戦場に出て指揮など出来るはずがない。

 

 ―――街中での戦闘はアレに絶対に阻まれる。

 が、街の外。国外の無法地帯ならば戦闘するのも自由だ。

 レジスタンスは国家ではない。

 レジスタンスがこちらを攻撃すれば怪物に鏖殺される。

 だがこちらがレジスタンスに攻撃するのは自由なのだ。

 

 その事実をしかと理解した上で、女王が掌で自身の額を掴む。

 怒りで理性が駆逐されていく状況を、彼女は力尽くで捻じ伏せる。

 彼女は女王だ。

 

 何をしたい。決まっている、イースでも不夜城でも攻め込む事。

 そしてそこに落ちてくるだろうあの男を八つ裂きにする事だ。

 だがそれではいけない。彼女は女王だ。女王でなければならない。

 戦士に戦って死ね、と告げるのは彼女の使命である。

 しかし無駄に消費する事は許されない。

 彼女が怨念を果たすためだけに、彼女の民たる戦士を消費してはいけない。

 

「……レジスタンス、か。奴と張り合えるだけの戦力を取り込み、次にどうするか」

 

 海賊女王も女帝も動かない。いいや、動けない。

 何故? 決まっている、侵略者になればあの怪物に例外なく鏖殺されるからだ。

 彼女たちに出来る事は、時折落ちてくる男を拾って楽しむ事だけ。

 

 今回はアマゾネスの国家―――黄金郷を守るために動いた。

 だが立場が変わればあの怪物は立ち位置を変える。

 仮に黄金郷が海賊国家を攻めれば、あれは海賊を守りアマゾネスを殺すだろう。

 というか、最初に現れた時がそうだったか。

 

 それでもあれは彼女に攻撃をしなかったが。

 

 殺人、窃盗、破壊工作。

 他国に対するあらゆる害悪に対し、あの存在は起動する。

 国外からの脅威を一切許さない国家の完全防衛機構。

 

 仮に死の恐れがない安寧な国家があったとして。

 しかし他国からの侵略という外的要因による崩壊の可能性は免れない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「――――不夜城だな。準備をしろ」

「ハッ!」

 

 狂気に揺れる瞳を理性が抑えつけ、彼女の思考を安定させる。

 その上で出した結論を受けて、アマゾネスが大きく頷き走り出した。

 

 レジスタンスが逃げ回るだけの鼠ではなくなったというのなら、状況は一気に変わる。

 だが状況が変わっても目的は変わらない。

 勝利する。国家同士の戦いに、反抗勢力に――――彼女の狂気の根源たる怨敵に。

 

 敵を粉砕しその亡骸の上で勝利を叫ぶ。

 今度こそ、その結末を迎えるために―――

 

 

 

 

 

 体を揺らし続けていたヘラクレスが、ようやく糸が切れたように停止して。

 ゆっくりと頭を上向かせ、岩の天蓋へと視線を向けた。

 それにより展開される宇宙へのゲート。

 ヘラクレスが飛行を開始し、充電のために衛星軌道上へと帰還していく。

 

 その光景を丘の上から見渡して、彼は一度鼻を鳴らす。

 

「……これは失敗だな。

 “死と再生”を繰り返す奴ならば、効率良くオルフェノクに近づけると思ったが」

 

 そもそも普通にやっていては死にやしない。

 カルデアにあれだけ攻勢してもらってやっと一度、とは。

 命のストックが幾つ飛んだか知らないが、非効率にもほどがある。

 

「だったらどうする。このまま常磐ソウゴを放置か?」

「ああ、この特異点で何かする気はない」

 

 不機嫌そうなスウォルツに背を向け、手頃な岩に座っていた加古川飛流。

 彼からの問いかけに対しそう答え、スウォルツは紫衣の裾を翻しながら踵を返した。

 そんなスウォルツを鼻で笑う飛流。

 

「常に夜だった新宿。それに続けて地面の底。太陽が無ければあんたのギンガの力は意外と不便なもんだな。もうアナザーフォーゼみたいに毎度宇宙に行ったらどうだ?」

「―――――」

 

 煽ってくる相手を一瞥し、スウォルツはそのまま歩いていく。

 ストレートに苛立ちを返してきた彼に対し、肩を竦める飛流。

 

 ギンガの力は太陽光さえあれば無尽蔵。だがそれ以外の環境下では制限が多い。

 結局のところ戦場が太陽の下でなければ全力は出せない。

 もっとも、スウォルツが使えばそれでも戦えるだけの力ではあるが―――

 

 そのまま歩いていこうとするスウォルツを呆れた顔で眺めつつ。

 岩から腰を上げた飛流が、再び彼の背中に声をかけた。

 

「拗ねるなよ。それで、いいのか? 結局ファイズの力の回収は失敗なんだろう?」

「……さてな、()()()()()()()()()()()()()。この属性がどれだけ役立つか知らんが、まあ様子見するさ。

 あれが己の世界のために王の聖櫃(アーク)を求めた者であることには変わらん事だしな」

 

 スウォルツは足を止めることもなく、言い返しながら歩き去ろうとする。

 

「……あともう一つ。奴はどうするんだ」

 

 更に問い詰めるように飛流が突き付けてくる疑問。

 そこでスウォルツは足を止め、胡乱げな表情で振り返った。

 声は平坦ではあるが、焦燥を煮詰めたような響き。

 

「―――何も。少なくとも今は、な」

「ふん。なら、俺が何をしても問題ないな?」

 

 二人の視線が交錯する。

 僅かに目を細めたスウォルツが、飛流の怒りの表情を見据えた。

 獲物を奪われるのではないかという焦りの顔。

 

 ウィザードもカブトもフォーゼも回収済み。

 好きに使わせたところで問題ないが、この様子では―――

 

 そのまま数秒睨み合い。

 しかし、先に視線を外したのはスウォルツだった。

 

「好きにしろ」

 

 そうとだけ言って、歩き去るスウォルツ。

 その場に残された飛流が強く拳を握り、怒りとも喜びともつかない表情を浮かべた。

 

 

 

 

 

「…………ヘラクレスの命を三つ分、死亡させた、ですか」

 

 女が虚空を見上げ、呟くように言う。

 誰かと話しているように見えるが、周囲に他の者はいない。

 

「予想外、です。あれほどの怪物がまさか一度とはいえ、敗北するなんて」

 

 それを成し遂げた相手に対し、恐怖にぶるりと体を震わせる女。

 

「やはり最初の失敗が痛い……本来であれば、警備はもう一人……」

 

 彼女が共犯者から聞いた、カルデアのこれまでの戦い。

 それを利用して彼女はこの世界を紡いだ。

 

 彼女は語る者。であるからこそ、“カルデアのこれまでの戦い”すら彼女にとっては最早誰かに語り聞かせる事が出来るものだ。

 語り聞かせる事が出来る、と言う事はその力を利用できるということ。

 

 求めたのは王を守る者。

 王が治める都市を守護するための最強の剣。

 

 第三特異点。手に入らない空想の玉座を求めた男、イアソン。

 第五特異点。有り得ざる在り方に身を任せた獣王、クー・フーリン。

 

 二人の空想の王を語り、この世界にそれらの剣を招来した。

 が、成功したのはヘラクレスのみ。何故かフェルグスは役割に入らなかった。

 当人に王を守る気が無かったのだろうか。

 

 理由はどうあれ、守護者とすることを失敗したことには違いない。

 

 最悪の状況だ。だってそうだろう。

 カルデアはヘラクレスの相手を出来る。別に倒せる必要はない。

 ヘラクレスを抑えつつ、別動隊を出せるほどの戦力があるならそれでいい。

 大英雄を抑えられるという事は、国家を攻略できるということだ。

 

 例えば黄金郷を攻め、ヘラクレスをそちらに誘導。

 ヘラクレスの行動原理は実に単純だ。誘導自体はそう難しくない。

 その隙にこの国に攻め込まれれば、彼女は死んでしまう。

 それは嫌だ。絶対に嫌だ。

 

 ―――既に召喚されてしまった以上、もう一度の“死”は絶対だ。

 だからこそ、せめてもう二度とそうならないようにしてからでなくては。

 この世界を変えてからでなくては、怖くて怖くて死ねもしない。

 

 フェルグスを取り込めていれば、その間隙を埋める事ができたのに。

 最早何を言ったところで遅い話だが。

 

「あら、キャスター。こんなところで何を?」

「――――女王」

 

 奥の自室から黒いコートを肩に引っかけた女が、海賊帽を被りながら現れる。

 どこか満足気な様子で姿を現す彼女の隣には誰もない。

 昨晩に部屋へ入る時には、連れ立っていた男がいたはずだけれど。

 扉の開いた室内にも、その気配はもう残っていなかった。

 

 もういない、夜を越えるために使い潰された男。

 恐怖から震えそうになる体を抑え込む。

 そのままゆっくりと彼女は頭を垂れて、女王へと礼を見せた。

 

 ―――ああ、本当に。なんて怖い世界。

 

「遠見の魔術を。どうやらアマゾネスの支配地域にあの怪物がまた姿を現したようです」

「……まったく、本当に忌々しい。あれのせいで黄金郷にも不夜城にも攻められない。この私に何も奪う事を許さない、だなんて」

 

 苛立たしげにそう口にする女。

 彼女たちの海賊行為は、この世界では一切許されない。

 やればヘラクレスによって蹂躙されるだけ。

 

 この特異点が成立し、真っ先に他所の国に牙を剥いたのはアマゾネスだった。

 それこそが誰もルールを知らない世界での、最初の闘争。

 

 アマゾネスは真っ先に要所である此処を落とそうと動いた。

 そうしてそのために大勢の戦士が雪崩れ込み―――全員、ヘラクレスに鏖殺された。

 

 いや、全員ではないか。

 彼は国のための剣であるが故に、国を治める王にだけは一切牙を剥くことはない。

 目の前の海賊公女も、黄金郷の女王も、不夜城の女帝も、彼に殺されることはない。

 

 アマゾネスの女王がどれだけ力を尽くしても、彼に敵と判断される事はない。

 

 さておき。

 その事実をもって、海賊たちは自分たちがヘラクレスに守られていると勘違いした。

 結果として、彼女たちは風を受けた帆のように意気揚々と黄金郷へと攻め込み―――今度は彼女たちがヘラクレスに鏖殺された。

 

 そうして、この世界のルールが周知された。

 他国に被害を出したものは、ヘラクレスによって処刑される。

 この世界は、国家に敵対する外敵を許さない。

 

 彼女たちは繁殖に外から落ちてくる男を必須とする。

 他国から奪ってくる事は許されない。ただし、街の外の戦闘ならその限りではない。

 

 つまり早い者勝ち。

 外に落ちてきた男をいち早く見つけ、自国の領土に引っ張り込んだら勝ち。

 それを破ったらヘラクレスに殺される。

 その競争だけがこの世界において許された戦いである。

 

 ふと。女王に殺され、窓から捨てられたのだろう男の事を思う。

 

「……ですので、不必要に殺すのは出来れば控えて頂いた方が」

 

 ―――思いはしたものの、男の事を思ってというよりも。

 繁殖に必要な男を減らされたら、兵士である民が減るという問題だ。

 この期に及んだら兵士はいればいるほどいい。

 そうでなければカルデア相手に時間を稼ぐこともできなくなる。

 

 女王に諫言するという危険と、兵士の生産数を減らす危険。

 単純にどちらが命の危機を増すか、という話だ。

 

「言いたいことはわかるわ、でもダメよ」

 

 女王が腕を伸ばし、自分の肩を抱く。

 その美貌の上に張り付けられるのは、陶然とした微笑み。

 

「だって一度手に入れたものを持ち続けたら、価値を失くしてしまうでしょう?

 どんなものであれ、一番輝いているのは欲して手に入れた時。

 その輝きは時間とともにくすんでいき、いずれは邪魔なだけの鉛になる」

 

 彼女が足を動かし、窓辺に立った。その先に広がるのは水の都。

 水路が走る美しき都市に散乱するのは、放棄された数々の物品。

 そこかしこに転がっている、かつて宝石のように輝いていた物。

 その光景に頬を緩め、女王は再びキャスターに視線を向けた。

 

「何よりの幸福が手に入れた瞬間にあるのなら、手に入れた時点でそれ以上の幸せになれる経験はないでしょう? だったら拘泥しても無駄じゃない。

 それ以上が無いものにこだわるより、新しい体験を。そして新しい幸福を……そうして誰もが幸福を享受できるのが、本当の理想郷というものでしょう?」

「―――――――」

「新しいものが得られないから古いものを使い続ける。ダメよ、そんなの。

 新しいものが得られないなら、どこかから別の新しいものを奪ってこなければ」

 

 恐怖が滲むキャスターの顔。それも当然の話。

 この世界で何かを奪うということは、絶対に死ぬということだ。

 彼女たち女王はその条件を踏むことはないが、それは当人には分からぬ話。

 

 キャスターの反応に何を感じたが、女王が皮肉げに口元を歪めた。

 

「―――わかっているわ。あの怪物とやりあうのが不可能だなんて。

 それでも手があるでしょう? 新しいものは次々と落ちてくるのだから」

「ですが……」

「止めないし、止められないわ。だってそれが私の作った唯一の規律。

 奪うだけの海賊国家における国営のためのサイクルなのだから」

 

 海賊公女は壊れている。

 原型から離れた形で成立している、とか。元から人間性が壊れている、とか。

 そういうものではなく、イースの女王・ライダーは壊れている。

 略奪がその魂を成立させているのに、ここは略奪を許さぬ世界であるが故に。

 

 元凶の一つであるキャスターが視線を伏せる。

 そんな彼女の前で、女王は自分に言い聞かせるように言葉を続けた。

 

「ええ、そう。これが私の国のルール。

 わかっているのでしょう、なら二度とそんな馬鹿な発言はしないようにね」

 

 略奪を封じられた略奪者。海賊公女が肩で風を切り、歩き出す。

 キャスターとすれ違い、そのまま外へと向かっていく。

 そうしてすれ違った瞬間に、キャスターの口が小さく動いた。

 

「はい……よくわかります。何であれ、いつまでも持っていられるものはない。どんなものであれ、いつかは手放す事になるのは必定」

 

 彼女の声を聞いて、海賊公女が足を止める。

 それを気にしているのかいないのか、キャスターの微かに震えた声は止まらない。

 

「……一度捨てたということは、一度捨てる決心をしたということ。一度捨てる苦しみを味わったということ。それを拾い直すなんて事をしたら、また捨てる苦しみを味わう事になってしまいます。それは、怖い事です。同じ苦しみを二度も三度も味わうだなんて、とても……」

 

 女が杖を掻き抱き、小刻みに体を揺らす。

 

「とても、恐ろしいこと……ですから」

 

 そんなキャスターの言葉を聞き届け、しかし。

 何も口にせず、振り返りもせず、海賊公女は足を再度動かし始めた。

 

 

 




  
 シェヘラザードが特異点を成立させるための過程を何となく想像する。

 第三特異点でメディアに踊らされ王になろうとしたイアソンの右腕、ヘラクレス。
 第五特異点でメイヴに王になる事を押し付けられたクー・フーリンの右腕、フェルグス。
 共に傍に侍る女が王を動かした空想の国における護国の剣。

 シェヘラが状況を動かす男にこの辺りを選んだのに理由付けは出来そう。
 実際はどうなんじゃろうな。

 ちなみにシェヘラは武則天のとこには逃げていません。逃げられません。手土産にできそうな玉手箱やイースの水門の鍵を盗んだらダユー(イース)に損害を与えた判定でヘラクレスが殺しにきます。死んでしまいます。自分で設定したのに。ガンマイザーみたい。
 
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