Fate/GRAND Zi-Order ーRemnant of Chronicleー   作:アナザーコゴエンベエ

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夢、終着1506

 

 

 

 ―――マシンは風を裂き、ひたすらに進み続ける。

 

 障害は何もない。

 薙ぎ倒されただろう木々すら、何も残っていない。

 文字通り根こそぎ、全て吹き飛ばされてしまったのだろう。

 

 エルドラドは川のすぐ横にあった都市。

 その川が龍の首になり、軽くでも振り回された結果として。

 ごく当然のように、エルドラドという都市の周辺は全てが消滅した。

 

 木々はない。何も残っていない。

 それでも、何故か正面には都市がある。

 黄金の神殿を中心にした、幻想都市。

 あるはずのない、彼方の夢。

 

 男は力のありすぎるマシンを制御が効く程度で抑えながら、ただそこを目指す。

 

 不意に始まった彼らの旅の終着点。

 最後に故郷へと帰るために行われる、驚くべき冒険譚。

 

 黄金郷(エルドラド)

 多くの人間が夢に見た、金に溢れた富裕都市。

 その実態を、直視する時が来た。

 

「―――――ああ」

 

 ブレーキをかけながら、思わず零れた息。

 目標にしていた神殿が放つ黄金の輝きは、いつの間にか消えていた。

 近づきすぎて見えなくなった。もう神殿は目の前にない。

 

 あるのはただ、洪水に取り残された僅かな残骸が残された夢の跡。

 アマゾネスたちが拠点にしていただけの戦士のねぐら。

 

 どこかの誰かが求める光は、此処にはもう無いのだ、と。

 この時代にはもう、そんな夢は残されていないのだ、と。

 

「……ライダーさん。此処にはもう、アンタの夢も何も、残ってねえや」

 

 男が震えながら、そう吐き出した。

 バイクを降りた彼が、疲労感からふらりと倒れる。

 

 虚飾のカーテンは剥ぎ取られ、真相はここに露わにされた。

 故にその機能は停止する。真実ならぬ無実の栄光に向けて突き進む機関。

 コロンブスの夢は、もう動力にはなり得ない。

 

 ラピュタ―――アガルタの心臓が動きを止め、全てが崩壊に向かっていく。

 

 

 

 

 

『―――っ、エルドラド、反応ロスト!

 今まで存在していた都市が、完全に観測されなくなりました!』

 

 不在証明が為された以上、もうそれはどこにも見えない。

 残るのはただ、洪水の首に薙ぎ払われた廃都。

 それを確認したカルデアからの言葉に、コロンブスが反応した。

 

「クソがァッ!!」

 

 吐き捨てる罵声。

 そうして動きが鈍った相手の胴体に対し、ゲイツの拳撃が突き刺さる。

 くの字に折れて、吹き飛ばされるアナザーファイズ。

 

 彼がそのままの勢いで転がると同時に、大地に罅が走っていく。

 浮遊大陸の致命傷。心臓を失ったこの大陸は、もう浮かんでいられない。

 怪人の掌が罅割れた地面を撫で、牙を軋らせた。

 

 ゲイツはその場で立ち止まり、倒れたコロンブスを見下ろす。

 

「終わりだ」

「だが諦めねェ……! 諦めてたまるか! 俺は、いつだって―――!」

 

 罅割れた地面を叩きながら、怪人が船に顔を向けた。

 

「目的地まで飛べねェなら! 今この場所で! この大陸を地上まで引き摺り落とす!

 錨を下ろせ、サンタマリアァ――――ッ!!」

 

 地面に埋もれていた錨が引き戻される。

 渦巻く鎖。その勢いで空に跳ね上げられた錨が、再び地面に叩きつけられた。

 罅割れた地面を砕き、地表を捲り上げながら、地中に消えていく鉄の爪。

 

「“新天地探索航(サンタマリア・ドロップアンカー)”!!!」

 

 錨鎖が金属らしい盛大な擦過音を立てて、地面に沈んでいく。ただ地面に打ち込んだだけには思えないほど、尋常ならざる長さに伸びて沈み続ける錨。

 その動きを察知して、ダ・ヴィンチちゃんが声を上げた。

 

『―――錨がラピュタを貫通した! そのまま沈み続けてる! これは……!?』

()()()だ!!」

 

 アナザーファイズが起き上がり、その手に握った剣を輝かせた。

 

「俺の船は! 俺の錨は! 常に! この俺が、新たなる大陸に何があるかと胸を躍らせて、飛び出すための最初の一歩だった!!

 ならよォ! この錨で下したからには、この大陸は俺が見つけた()()()だよなァ!!」

 

 彼方で、錨が着水した。そのままの勢いで沈み続けるサンタマリアの錨。

 船の船底が罅割れた地面に沈む。

 同時に、急速にラピュタの高度が下がりだす。

 

 錨を下した船の重みでラピュタが地上に向け降下を始めた。

 

 この大陸が空中分解する前に、地上に届ける。

 彼は半壊した大陸をこのまま着水させ、一つの島国にしてしまうという。

 

『つまり宝具を通して、“ここは新大陸だ”と言い張り続けるつもりか……!』

「ハッハハーッ! そりゃあ世界の修正力とやらは言うだろうさ、“こんな大陸は本来は存在しないはずだ”、ってよォッ! それに俺は言い返してやるのさ、“誰も知らなかったものをこの俺が見つけたんだ”ってなァッ!!」

 

 新大陸の発見者、クリストファー・コロンブスとして。

 世界地図を塗り替えて、彼は自分の夢を押し通す。

 

「たとえ機関を潰されようが、この俺が支配すれば、()()()()()()()()()だけの生産力なら取り戻せるはずだ! そして戦争商売にまで持ち込めねェにしても、この大陸が生み出す奴隷は十分な商品になる!! 身体能力に秀でた、幾らでも生産できて使い潰せる労働力!!

 戦争を口実に一気に世界相手の大口商売とはいかなくなるが、それならそれでまた積み重ねるまでだ! この大陸(しょうひん)さえあればやれる! 簡単にはいかねェ、この時代の連中の目を盗むのは難しいはずさ! まともに動くことさえ難しいだろう! だが、どれだけ時間がかかろうが俺はやり遂げる!! みっちりと下準備して、必ず世界経済に食い込んでやる!!」

 

 己の顔を己で掴み、けして諦めない夢への道を口にする怪物。

 そんな相手を前にファイズアーマーが手に握っていたナックル、ショット555を放る。

 代わりに、戦闘の最中に近付いていたファイズフォンXを拾い上げた。

 

『そんなこと、できるはずが……!』

「できるかできないかじゃねェ! 諦めるか、諦めねェかだ!!」

 

〈レディ! ポインター・オン!〉

 

 ゲイツの指がキーを叩き、ファイズフォンXに認証コードを送る。

 それにより右足へと装着される武装、ポインター555。

 足を開き、腰を低く、上半身を前傾姿勢に。

 そうして構えたファイズアーマーに対し、アナザーファイズが剣を振るう。

 

「そうだ! 俺は、絶対に諦めねェ―――――ッ!!!」

 

 剣閃をなぞり、切っ先から放たれる赤い波動。

 罅割れ砕けた地表を、真っ直ぐに突き進んでくる赤い柱。

 真正面からやってくるフォトンブラッドの波濤。

 その障害を見据えて、ファイズアーマーが足に強く力を籠めた。

 

「……ああ。それでも奴らが諦めなかったから、お前の夢は此処で終わるんだ」

 

 迫りくる赤い壁に向け、ゲイツが走り出した。

 砕けた悪路をものともせず、行われる赤い戦士による疾走。

 赤い壁と赤い戦士の突進が、互いに最高速へ到達する。

 迫り合い、交錯する寸前。ファイズアーマーの足が、強く地面を踏み切った。

 

 宙に舞うゲイツ。その下を通り過ぎる赤い波動。

 そうしてアナザーファイズの必殺を飛び越えたゲイツの指が、ドライバーにかかる。

 

〈フィニッシュタイム! ファイズ!〉

 

 認証される必殺技コード。

 肩部、フォトンギアショルダーがファイズアーマーの性能を全て引き出す。

 全身を奔るフォトンブラッドが、右足に装備されたポインター555に集中。

 そのまま空中でゲイツの腕がジクウドライバーを回す。

 

〈エクシード! タイムバースト!!〉

 

 空中で前転しながら体勢を整え、飛び蹴りの姿勢に入るゲイツ。

 その途中、集約されたエネルギーで形勢した赤い光の矢がポインターから放たれる。

 

 咄嗟にそれに対してショットを握った拳を突き出すアナザーファイズ。

 拳が激突すると同時、マーカーは大きく広がり円錐を構築。

 内包する膨大なエネルギーによって、アナザーファイズの体をその場に拘束した。

 

「こ、んなモンでェ……ッ!!」

「やぁああああああああ―――――ッ!!!」

 

 マーキングされ、動きを封じられるアナザーファイズ。

 その離脱を許さないまま、飛来するファイズアーマーとマーカーが重なる。

 叩き付けられる赤い円錐。その威力が、アナザーファイズの全身に浸透していく。

 フォトンブラッドにより分断される分子構造、破壊され尽くされる怪人の鎧。

 

 ―――ファイズアーマーの姿がアナザーファイズをすり抜け、その背面に着地する。

 

 それを理解していても、コロンブスは動けない。

 体に重なるように浮かび上がるのは、マーカーが刻み付けていったΦのマーク。

 鎧は罅割れた部分から青い炎を噴き出して、灰に帰していく。

 

 霊基と融合したアナザーウォッチは灰になれば、当然彼自身も終了する。

 怪人化が解けた状態で仰向けに倒れ込むコロンブス。

 彼は光に還りながら、しかし引き攣らせた口元で気丈にも笑った。

 

「ハ……誰の夢が、終わるって?」

 

 ゲイツが振り向き、倒れた男を見る。

 彼はいま正に負けたばかりとは思えないくらいに野心に満ちた顔で、言い放つ。

 

「ハハハ……ッ! ハッハーッ! 終わらねェよ、終わらねェのさ……!

 一回、夢に見ちまったからには、辿り着くまで。たとえ死んでも……それどころか、自分から諦めちまったとしても―――その夢は、誰にも終わらせられねェ……!!」

 

 一度見てしまったからには、叶える以外に終わりはない。

 叶わなかった、諦めた、そんな結末は心に絶対に瑕疵を残す。

 どんなに小さなものであろうと、心にしこりを残す。

 それが良い事か悪い事か、なんてどうでもいい。

 その経験を人生の糧にする、なんて話では消化できない。

 

 その道を進む事を途中で止めたという事は、終点が見れなかったという事だ。

 当人がどれだけ心の成長だのなんだのと良い話にしたところで、果てにある光景を見れなかったという事実に変わりはない。そして、本人以外にそれを見れる奴なんていやしない。

 残る事実は、終わらせないまま途中で夢を降りたというものだけだ。最後には辿り着けたはずの誰も知らない光景を放置し、けして明かされない未知に鎖してしまった、というだけだ。

 

「ハッ、ハー……! 俺は諦めねえぞ……何度負けようが、何度失敗しようが……!

 次こそは……次こそは、必ず……! 俺は、俺の夢を、叶えて―――」

 

 半身が光に還ったコロンブスは、それでも繰り返し言い続ける。

 見たいものを見に行く。欲しいものを手に入れに行く。

 彼の針路は、途中で降りるなんて結末は認めない。

 

 彼は明かしに行く。欲望の果てに見た夢の光景を。

 そこに辿り着くまで、諦めるなんてありえない。

 

 喘ぐコロンブスを見て、一瞬だけ顔を伏せて。

 しかしすぐに再び彼の顔を見据えて、ゲイツは確かにコロンブスに告げた。

 

「だったら、何度でも止めるだけだ。お前の夢が、俺の敵である限り」

「ハ―――そりゃあ、ご苦労なこった……」

 

 もうその言葉に迷いはなく。そう断言したゲイツに、呆れるように。

 コロンブスは力を抜いて、腕を地面に投げ出した。

 

 次があれば同じように、彼は同じように何よりも己の夢を追い求める。

 次があれば同じように、彼は同じように人の自由を守るために戦う。

 ただそれだけの事だから。

 

 クリストファー・コロンブスは最後に舌打ちひとつ。

 光となって消えていった。

 

 

 

 

 

 錨が消える。かかっていたテンションが消え、暴れた鎖。それもまたすぐに消え失せた。

 溶けていくサンタマリア号。

 その中に収められていた人間たちが突然、空中に放り出される。

 

「お願いね!」

 

 放り込まれるコダマスイカ。

 それなりのサイズのエネルギーボールになった彼が、クッションとして下に滑り込む。

 同時にエレナが足場にする円盤が放つトラクタービーム。

 そうして要救助者の無事を確保しつつ、立香は空を見上げた。

 

 ちょうどそのタイミングで、大気圏に突入してくるオレンジが見えた。

 どうやらエネルギーフィールドを展開したディケイドアーマー鎧武フォームのようだ。

 

「終わった、のかな?」

 

 振り返れば、シェヘラザードは動かずにその場に腰を下ろしたまま。

 彼女は注目を集めている事を知ると、杖を掻き抱いて視線を逸らす。

 

「……大蛇は打倒され、フェニクスは消滅し、ラピュタはその機能を停止した。

 今の私にはもう、あなたたちをどうにかする手段はありません」

 

 そう言ってから、力を抜けば。

 シェヘラザードの体もまた、光となって溶け始めた。

 その感覚に対して彼女は、ぶるりと身を震わせる。

 

「……今回の私は諦めました。

 いえ。己の結末より、己が語るだろう物語を優先した」

 

 その願いを。死から逃れるという結末を、彼女は今回ばかりは手放した。

 彼女が語り部であったから。

 そちらの方が良い筈だ、という声には異論を唱えられなかった。

 

 ラピュタの崩壊が早くなっていく。

 全てを失ったこの大地は、もうすぐ崩れ落ちるだろう。

 恐らくは最後の楔であるシェヘラザードが消えれば、あっという間に。

 

「ですがきっと、私はまた繰り返すでしょう。死から逃れるという、この望みのために」

 

 消えていく感覚の中で、女は後悔するように口を開く。

 いつかと同じように。勇気と共に踏み出して、しかし死への恐怖に溺れた時のように。

 彼女はこの選択を後悔しながら、再び死んでいく。

 

 きっとまた繰り返す。

 機会が巡って来れば、人類を道連れにしてでも望みを果たす。

 そんな自分を、彼女はきっと止められない。

 いいや、今だってそうだ。止めようとさえ思わない。

 

「でも、望みのために全力で何かする……それが、人が生きるって事なんじゃないかな」

 

 そう言うシェヘラザードに対して、立香はそう告げた。

 視線を交わせば、彼女はそのまま言葉を続ける。

 

「だから……あなたが繰り返しても、きっとまた誰かが止めに行く。

 自分が生きる世界を守りたいと思った誰かが」

 

 大きく、溜め息をひとつ。

 酷く憔悴した様子の彼女は、太陽を見上げながら震える声を絞り出した。

 

「……地獄ですね。それではいつまでも、私は死から逃れられない」

「そうだね。私たちは生きてるから、きっとずっとそうなんだろうね」

 

 しょうがない、と。

 少女はそう言って、ただシェヘラザードを見つめた。

 

 ―――女が顔を下げて、少女と視線を合わせる。

 目を合わせて数秒、女は諦めたように顔を伏せた。

 

「―――では、いつか……いえ」

 

 いつか、こんな自分の夢が叶いますように。

 そう願おうとした女が、どうしようもなさそうに首を横に振る。

 

「私の企みを阻もうとするような人間がいない世界なら、最初から私たち英霊は呼ばれる事もないのでしょうね。ああ、本当にどうしようもない。ええ、本当に……」

 

 人間がもっと弱い生き物なだけであればよかったのに。

 弱くて、強くて、臆病で、勇気があり。

 こんなどうしようもない生き物だからこそ輝くと、語ったからこそ知っている。

 そんな者たちの物語だからこそ、心を奮わせると知っている。

 

 青い顔をしたまま、複雑な感情を織り交ぜて吐く溜め息。

 その呼気と共にシェヘラザードの体が光に解け、空へと昇っていく。

 

「? うん、またいつか?」

「いいえ。もう二度と出逢う機会が無い方がいいでしょう。

 だってそうなってしまったら、その度に私は死ななくてはいけないですから」

 

 最後に本気でそう言い残し、シェヘラザードが消え失せる。

 

 途端に崩壊を更に加速させるラピュタ。

 亀裂は一斉に断崖となり、浮島は残骸の集まりへと変貌していく。

 高度は一気に下がり、破滅の断末魔を轟かせ始める。

 

『ラピュタ、崩壊まで恐らく1分もありません!

 離脱のためのレイシフト、準備できています!』

「ちょっと待って、その前に降ろさなきゃいけない連中がいるわ」

 

 オルガマリーがそう言って目を向けるのは、助け出されたレジスタンス。

 それにエルドラドに向かったもう一人も回収しなければならない。

 

「あたしが……って」

 

 すぐに円盤の軌道を変えようとしたエレナが、自身の異変に気付く。

 シェヘラザードが失われた結果、彼女をこの世界に呼び出した楔も失われた。

 そうなった彼女は現界を維持できず、光に還り始めている。

 

「あー、もう! こんな時に!」

「……って事は、一人しかいないでしょ」

 

 言って、剣を納めながらジャンヌ・オルタが視線を飛ばす。

 見られている男は素知らぬ顔でストールの位置を直しているが。

 

 そんな時に、空からオレンジが落ちてきて地面を粉砕。

 浮島の一部を滑落させつつ、ラピュタの残骸へと着地を成功させていた。

 状況は把握しているとばかりに、ソウゴはすぐに両手に握った旗を振るいつつ叫ぶ。

 

「黒ウォズ! いいよね!」

 

 振り抜かれた旗から奔る重力場。

 それが崩落していくラピュタの一部を一時的に重力から解放する。

 そうして一定の足場を確保しつつの叫びに、黒ウォズはゲイツへと視線を向けた。

 

「構わないが……救世主、とやらに任せてしまっていいと思うがね。

 どうせゲイツくんと白ウォズはタイムマジーンで来ているようだし」

「あっ、そっか」

 

 即座に納得して、ジオウがウォッチをホルダーから取る。

 そのまま流れるように、彼はゲイツへとそれを投げた。

 咄嗟に受け取ったゲイツに対し、ジオウは更に声をかける。

 

「じゃあゲイツ、タイムマジーンでそれ使って!」

「なに?」

 

 受け取ったものを見れば、それはスペクターのライドウォッチ。

 これを使ってレジスタンスたちを救え、と言う事だろう。

 言い返そうとして、しかしそんな余裕がある状況ではないとウォッチを握り締める。

 

「…………白ウォズ、タイムマジーンだ」

「仰せのままに、我が救世主」

 

 拾ってきたビヨンドライバーを持ちながら、恭しく臣下の礼を取る白ウォズ。

 同時に空に穴を開け、飛来するのは白いマジーン。

 ハッチを開けているそれに迷わず飛び乗れば、機体がすぐさま人型に変形。

 その頭部にスペクターのウォッチを装着する。

 

〈スペクター!〉

 

 背部に装着される飛行ユニット。そこから展開される鎖。

 それが周辺のレジスタンスたちを捕まえ始める。

 瞬く間に周辺の連中を捕まえたマジーンは、そのままエルドラド跡地へと。

 

 飛び去るマシンを見送って、オルガマリーが白ウォズを一瞥。

 その後に、すぐさまカルデアに向かって叫ぶ。

 

「ロマニ! マシュ! 帰還のためのレイシフト実行を!」

 

 打てば鳴る鐘の如く。

 既に準備を完了していた離脱の手段は、滞りなく実行される。

 青い燐光に包まれてこの時代から消失するカルデア部隊。

 彼らを見送りながら、二人のウォズがその場で相手を窺うような視線を交わした。

 

 と、そんな怪しい男二人を眺めながら、エレナもまた退去していく。

 

 

 

 

 

「―――これは基礎中の基礎だ! これが解けなきゃ話にならんぞ!? 今まで何をやっていたんだ、お前は!」

「えー……そんなこと言われてもさー」

「言われてもさー、じゃない! まずテキストを読め、いいから読め! その上で何が分からないか訊け!」

 

 がなり、机を盛大に叩く手。それを避けるように机に俯せるソウゴ。

 すぐさまその襟を掴み、ゲイツは彼の上半身を引っ張り起こした。

 そのまま彼の顔面にテキストを押し付ける。

 ソウゴは鬱陶しげにそれを顔からどかし、文句ありげに眉を顰めてみせる。

 

「別にゲイツに教えてもらわなくても……」

「言ったはずだ! 貴様がオーマジオウになるようなら俺が倒す! だがお前は言ったな、最高最善の魔王とやらになると! 言ったからには、それなりの努力を見せてもらう!」

「それで何で勉強を……」

「まともに勉強もできない奴がまともな王様になどなれるか!」

「勉強はできる家臣に任せるのが王様だし……」

「そういう王を何と言うか知ってるか? 最低最悪の愚王だ!」

「じゃあさ! せめて王様に必要な歴史の勉強とかに……」

「全! 教科だ! 決まってるだろ!」

 

 ぎゃーぎゃー言ってるそんな二人を横目に見つつ、マシュは首を傾げた。

 

「その、思った以上に仲がよろしいというか……」

「ええ、そうね。私もちょっとびっくりしたけど」

 

 テキストを広げながら、ツクヨミがちらりとそちらを見る。

 

 アガルタ攻略は恙なく終了した。ゲイツのマジーンが回収した人間たちは無事地上に届けられ、崩落したアガルタの破片が大きな被害を出さなかった事も確認済みだ。

 今は特異点修復による予後観察の最中。そうなってしまえば彼女たちにできることもないので、こうして勉強会が再び開かれる運びになったのだが。

 

「ま、仲がいいに越した事はないんじゃないかネ?」

 

 モリアーティが教鞭を軽く振りながら髭を撫でる。

 

 タイムマジーンでカルデアに乗り込み、ウォッチをソウゴに突き返しに来たゲイツ。そんな彼はこの場でいつも通りに寝落ちしてたソウゴを見つけ、我慢ならないとばかりに叩き起こした。

 そんな風にゲイツに付き纏われては、ソウゴには寝る暇もない。うつらうつらとしながら、何とか勉強をさせられる事になってしまった。

 モリアーティが見る限りゲイツの学力に問題はないし、任せてしまっていいだろう。

 

 二人を眺めつつ、立香がマシュに問う。

 

「ちなみにオルタは?」

「オルタさんは前のように図書館を使っておひとりで自習されてます。あと、アストルフォさんは何故かイリヤさんたちと一緒に……デオンさんはそのお守りする、と」

 

 不思議そうにしているマシュに対し、重ねて質問するツクヨミ。

 そんな質問に対して答えを返すのはモリアーティ。

 

「アルトリアは?」

「彼女は一通りカルデアを回る、と言ってふらふらしているようだネ」

 

 そうして幾つか言葉を交わしつつ。

 軽く深呼吸しながら、立香は両手を組んで軽く伸ばした。

 

「んー、じゃあ今日も始めよっか!」

「はい! 今日はカルデアのアーカイブから、千夜一夜物語(アラビアンナイト)のデータを引き出してきました! 原点の時点であったとされる物語と、後から付け足されたとされる物語。これらを皆さんで読み解いていきたいと思います!」

「だ、そうだ」

 

 立香の声に即座に応えるマシュ。

 肩を竦めるモリアーティの横を飛び出し、彼女が手際よく配布し始める資料。

 それを見て、おお、と感嘆の息が漏れる。

 

 横で繰り広げられる光景を見て、突っ伏したソウゴが弱々しく呟く。

 

「ねえゲイツ、俺もあっちがいいんだけど……」

「黙れジオウ! そんな事は最低限の課題を終わらせてから言え!」

 

 頭を叩くゲイツの持った丸めたテキスト。

 その一撃に顔を落とし、ソウゴは深々と溜め息を吐き落とした。

 

 

 

 

 

「かくして―――」

 

 そんな事が行われているカルデアの一室の外で、歩み出す黒ウォズ。

 彼の歩みに合わせて周囲が黒く染まる。

 

 そうして進めば現れる大時計の前で彼は足を止めて。

 しかしその次の瞬間、その場が白く染まった。

 

「かくして。アガルタの戦いを制した明光院ゲイツはファイズの力を手に入れ、魔王を打倒するための一歩を踏み出した」

「…………」

 

 反対側から歩んでくる白ウォズに合わせて、白い光が背景を染めていく。

 未来ノートを手に滔々と語る白いのを見て、目を細める黒ウォズ。

 すぐに逢魔降臨暦を開き、黒ウォズもまた語り出す。

 

「次の戦いは西暦1639年の日本、下総国。

 その地で手に入れるレジェンドの力は仮面ライダーキバ……」

 

 言葉と共に周囲に張り巡らされる運命の鎖(カテナ)

 黒い背景に浮かびあがるのは銀色の鎧と、金色の眼光。

 闇夜に潜む吸血鬼のように、それを従える王のように、君臨する威容。

 

 そんな姿が白と黒に蠢く背景に揺られて、影を帯びる。

 微かに見えるのは、吸血鬼と相反する白い聖騎士のような姿。

 それが―――

 

「そして、もう一人」

 

 白ウォズの声と共に紫煙に塗り潰されていく。

 代わりに現れるのは、紫色の忍装束。

 手裏剣を思わせる形状の面頬に、腿まで伸びた紫のマフラー。

 

 そんな戦士のマフラーが、無風だったはずのこの空間で突然はためいた。

 なびく布の向こうに見えるのは、翼を広げたような姿の青い戦士。

 

 白ウォズが微笑み、黒ウォズが顔を顰める。

 

「救世主、ゲイツリバイブを導くための未来の戦士―――」

 

 彼の名を告げようとしながら、白ウォズがゆるりと手を伸ばして。

 その瞬間。

 

 ばつん、と。

 まるで照明が突然落とされたように、二人のいる空間から光が消えた。

 

 そのまま数秒後、闇の中で明滅する桜色の光。

 そこから更に数秒、再び何度か明かりが点滅して。

 

 そうして、闇の中にはただ。

 『NEWS✿BB』と。

 そう映し出された液晶画面だけが残された。

 

 

 




 
 くぅ疲。原作に対して変に話を盛ろうとすると無駄に難易度上がるってそれ一番言われてるから。学習しろ。

 次はCCC→下総国→セイレム→エグゼイドになると考えられる。
 この辺りは月姫次第でしょう(適当)

 CCCの後に明治維新入れるかもしれません。下総の後でもいいかも。オール信長もそこに混ざるでしょう。あとそこに龍馬と高杉と斎藤をぶちこめー。もっと盛るペコー。
 
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