Fate/GRAND Zi-Order ーRemnant of Chronicleー 作:アナザーコゴエンベエ
視界にノイズが走る。このままじゃ駄目だ、と本能が察知する。
歪めるしかない、という結論は意識の外で行われた。
酷くなっていくノイズに頭を抱える、という行動。
反射的にそれを行った瞬間、体は宙に放り出された。
丸まった状態で投げ出され、既に砕けた木製の椅子の上に転がり落ちる。
どんがらがっしゃーん、と。椅子を更に壊しながらの着陸。
「あ、た、た……つぅ」
ダメージはカルデアの礼装で吸収され、この程度なら問題ない。
気分の問題で痛がりつつ、ソウゴはゆっくりと体を起こす。
パラパラと体から落ちる細かく砕け散った木片。
まずはとにかく、周囲を見回して―――
『CM明けまで5、4、3、2……0! BBぃ――――、チャンネルぅ―――――!』
即座に、その視界をBBにジャックされた。
動かせるのは視線だけ。体を動かせなくなった事に溜め息ひとつ。
またこれ? という目をBBに向けると、彼女はちょっとむっとした。
『そんな視線も何のその。毎度御馴染み、可愛いわたしが視界にいっぱい胸いっぱい。視覚を通して脳髄に焼き付いたわたしの姿が忘れられず、いつの間にかコレ無しじゃ生きていられなくなってしまう、規制間近と巷で噂の合法配信電子ドラッグ、BBチャンネルのお時間です』
「あれ、立香は?」
自分に見えないだけだろうか、とBBに問いかける。
ガン無視をかましたソウゴに眉を顰めつつ、しかしBBも何故か首を傾げた。
『……え、本当に? なんであなただけなんですか?
わたし、ちゃんとセンパイもレイシフトさせたんですけど』
「失敗したの?」
責めるような視線が向けられる。
そんな視線を受けつつ、この状況に悩み込むBB。
が、彼女はすぐさま胸を張り、失敗などありえないと気を取りなおす。
『失敗なんてしーてーまーせーんー! このわたしがそんな初歩的なミスをするわけないじゃないですか、こうなったのは別の要因ですー!
というかこれ、あなたのせいなんじゃないですかー?』
「俺の? なんで?」
BBが軽く手を振る。ぺい、と。
それを切っ掛けにBBのジャックから解放され、ソウゴの視界が元の体に戻ってきた。
目の前では虚空を切り取ったかのように、ウィンドウが浮かぶ。
投影された画面に映るそこには、頬を膨らませたBBの姿があった。
『―――さあ? アナタが必要だ、と判断したんじゃないですか? どんなルート構築か知りませんけど、わたしの知らないとこで勝手に再配置されちゃうだなんて。こんな事なら素直に全員を呼び込んでおけばよかったです。
せっかくわたしが考えに考え抜き、厳選に厳選を重ねた機動聖都攻略チャート。初手から完全に破綻だなんて、これはもうリセット案件としか言えません。わたしもう知りませーん、勝手にオリチャーで走ってくださーい』
完全に拗ねてしまい、そのまま顔をぷいと背けるBB。
何を言っているか分からない。
が、ソウゴはその中に含まれた機動聖都攻略という言葉に反応する。
「機動聖都って?」
『勝手にやってください、って言った後すぐにわたしに説明を求めるだなんて。話、聞いてました? まあナビゲーターである者の責務として、最低限の説明はするんですけど……わたしの優等生ぶりに感謝してください。
聖都と言ってもあなた方が知る女神の城とは異なるものです。方向性は似たようなものですけど。ここでは―――』
そこでBBが言葉を止めて、画面上で視線を横に逸らす。
彼女はそこでやっとここがどこか気付いたように、溜め息をひとつ。
そんな様子に首を傾げるソウゴの耳に届く音。
きぃ、と。硝子が擦れるような、小さくも甲高い音だった。
後に続いて聞こえるのは、蚊の鳴くような小さな声。
「その、声……BB、ですね」
声を聴いて、しかしBBは無反応。
よく分からないがそこに誰かいるらしいと理解して、ソウゴが向かう。
積み上がっている椅子だった木片の山。それを崩して、声のする方へ。
がらがらと幾らか山を崩した先に倒れていたのは、一人の少女。
袖と裾が長い黒コートで上半身だけを覆い、腿から下を鋼の装甲に包んだ少女だった。
彼女が弱々しくも体をよじれば、乱れた藤色の長髪が僅かに揺れる。
そこから覗く目がゆっくりと動き、顔を出したソウゴを見上げた。
『逃れてきたんですね。てっきりまだリップと一緒に拘束されているものかと。というか、まだそうなっているという想定で行動を組んでたんですけど。
マスター候補もサーヴァント候補も揃って予定通りにいかないなんて、温和なBBちゃんだって、ここまで来たら流石におこですよ。わたしがチャート構築に使用した時間を返して欲しいものです。まあ5秒もかけてないんですけど』
呆れた風にそう言って、教鞭でぴしぴしと肩を叩く。
彼女もリップも、丁重に拘束されていた筈だ。
なぜ排除せずに拘束なのかは分からなかったが、とにかく。
『レベルダウンこそしていますが、
「―――いいえ。吸い出されたのではなく、私が自分で放棄しました。拘束を抜けるためには、それしかないと判断したのです」
『……つまり拘束具をするっと抜けるために、
瓦礫を掻き分けて降りて、倒れた少女を抱き起こすソウゴ。
彼はそうしつつ、BBへと問いかける。
「知り合い? この人、どうすればいい?」
『……それがその子をどうすれば助けられるか、という問いであれ。あるいは今後どう扱えばいいのか、という問いであれ。とりあえずはサーヴァント契約でもすればいいんじゃないですか?
機能が落ち込んでいるのは魔力が枯渇しているのが原因ですので、回復すればここで戦うための戦力にもなるでしょう』
抱き上げられているメルトリリスを見て苦い顔のBB。
ならそうしよう、とソウゴが令呪の刻まれた腕を上げる。
抱えた少女がその事に対し、不思議そうに、かつ驚いたように目を瞬かせる。
『……まあここからは自由に動いてください。本来ならここは
瞬間、教会だった瓦礫の山で、扉だったものが弾け飛んだ。
四散して撒き散らされる残骸を、空中で更に切り刻んでいく二つの刃。
神通力によって空を翔ける刃を引き戻されるや、響くのは軽やかな声。
「―――は、そんなの考えるまでもないし! 大帝の機動聖都から逃げ出すなんていい度胸じゃん? ってか、籠の中の
確かに洗脳みたいなもんだけど、“自分らしく生きたい”だけならこれも悪くないって話。分かんないのは大帝がアンタらを捕まえるだけ捕まえて、同化しようとしない事だけど」
踏み込んでくるのは白いブラウスに赤いリボンとスカート。
鞄を引っかけた肩で風を切り、黄金の刀を手に悠々と。
頭の上に狐の耳を生やした少女が、微笑みながらやってくる。
「―――……楽しそうですね、スズカ」
「そりゃ楽しいっしょ。どんな時だって楽しむのが私の信条、てか女子力みたいなところあるし。だって何だかんだ経験する時間って大切じゃん?
恋人なら恋人として過ごした時間で、夫婦なら夫婦として過ごした時間で、楽しんだだけ楽しい思い出が募るなら、いつだって楽しまなきゃ損、みたいなカンジ?」
ソウゴの腕の中で少女が身を捩る。
立ち上がろうとしたところで、彼女の体に力は入らない。
彼女の足は鋼どころか、今にも砕けてしまいそうな硝子の靴。
戦うどころか、立つ事さえも覚束ない。
そんな少女を機動聖都まで連れ戻すためにやってきたスズカ。
彼女が、息を吐いて肩を竦める。
「だから、
―――そういう意味でも、私は大帝に賛同しちゃうっていうかさ」
「でも、そういう楽しくない経験を捨てちゃうのも損なんじゃない?」
言葉に割り込まれ、スズカはその声の許に視線を向ける。
立てない少女をゆっくりと横たえてから、彼は立ち上がった。
「逃げ……て、くだ、さい―――」
少女の言葉に首を軽く横に振って、懐に手を入れるソウゴ。
片手にウォッチ、片手にドライバー。
そうして構えた彼が、スズカに向かって歩き出す。
向かってくる人間を前に、彼女は鬱陶しそうに視線を向けて。
呆れた風にピンクゴールドの髪を掻き上げつつ、面倒だと吐き捨てようと―――
「……そういう考え方もあるかもね。けど、私はそういうのが気に入らない―――」
「あんた、何で
―――ああ、駄目だ。それに言及して許されると思っているのか、人間。
ぐつぐつと煮え滾る感情のまま、スズカは眼を見開いた。
率直に言葉をぶつけてきた子供を見て、魔眼に浮かび上がる殺意。
スズカの殺意に伴い、白銀の剣が手元に飛び込んでくる。
彼女は即座に黄金、大通連を手放して。代わりに白銀、小通連を手にしていた。
「これなるは、菩薩が鍛えし小通連。抜かば智慧は文殊が如く―――!」
その備えは、何を企んでいるか知らないBBへのもの。
彼女は大帝に自由にさせられているが、何をしようとしてるかわかりやしない。
そんな奴に邪魔をされようと、確実にあの小僧を仕留めるために―――!
「“
沸騰した頭を智慧が静める。
どうでもいい。ただこの殺意だけを昇華するために、体が動けばそれでいい。
情報は何もなくとも、相手の行動の後からでも演算は間に合う。
それが小通連の“才知の祝福”。
―――ああ、本当に。だから小通連には触れたくないのだ。
何故、自分が怒るのかを理路整然と算出してしまうから。
だが小通連ならまだ目を瞑れる。真実、
大通連、顕明連も同時に動かす。
選択肢は無数に。
一切の加減はない。彼女の持つ全てを懸けて、あの人間を排除する。
そうして向かってくる相手を前に、少年は既に行動を終えていた。
「―――変身」
起動したウォッチと共にドライバーが回る。刻み込まれるライダーの時間。
そのエフェクトを一切合切無視して、スズカは突進を続行した。
単純にそれだけでは、彼女の演算を動かすほどの情報がなかったから。
だから彼女は最短、最速で小通連による刺突を見舞い―――
〈仮面ライダー!〉〈ライダー!〉
銀色の光に包まれ、姿を変える常磐ソウゴ。
彼のアーマーに覆われた腕を突き出され、それを止められる。
文字通りの変身、あるいは装着か。
とにかく少年はサーヴァントと戦闘できる何かに変わったのだ、と認識する。
そう判断して止められた小通連を引きつつ、大通連の刃を火廻に変えた。
熱と炎、鎧を着こもうが人間には通じるダメージ。
更にこれで目晦まし、一気に詰みに―――
瞬間、炎を放つ前に弾け飛ぶ大通連。
投げ放たれた長剣が、正確無比にそれを吹き飛ばしていた。
弾かれた大通連が教会の壁に突き刺さり、熱を散らす。
位置関係、間合い、速度―――普通ではありえない反応速度。
「―――未来視!?」
“才知の祝福”が恙なく答えを出す。
ほんの数秒に満たない相手の活動で、彼女の智慧は正確に全てを見抜いた。
では、彼女はこれからあの相手をどう攻略すればいいのか。
正確無比な彼女が持つその演算能力。
けして誤らぬ正しさが出した、その答えは。
―――“顕明連”を握れ。
「―――――」
〈ジオウ!〉〈ジオウ!〉〈〈ジオウⅡ!!〉
弾かれ退いた彼女の前に、変身した常磐ソウゴ―――ジオウⅡが歩み出る。
黒と銀、ゴールドにマゼンタ。絢爛な鎧を直視するスズカ。
直接目視してみてよく分かる。
あれは、真っ当なサーヴァントが出せる出力では及ばない。
“
だからこそ、“才知の祝福”が出した答えの意味をよく理解できた。
でも、できない。
だってそれは、
自分の事を、視てしまうということだ。
壁から抜け落ちた大通連がからん、と床に落ちる。
顕明連が彼女の計算に従って、手元にまで降りてくる。
彼女の意志が、小通連を手放す事を拒絶する。
そんなスズカの姿を前にして、ジオウⅡが足を止めた。
―――それを。
そんな反応を見て、少女は唇を噛み締めながら少年を睨む。
あの光景を、
それが、彼女がその剣を握れない最大の理由。
―――だが、そんな分かり切った事だからといって。
他人に口を出されて大人しくあれるほど、今の彼女は理性的ではない。
手元に降りてきた顕明連に手を伸ばし、彼女は紛れもない敵を見た。
「―――私は……! 私は第四天魔王の娘、鈴鹿御前! この私に、名乗らせたからには覚悟するしかないってワケ……!
「―――そう。じゃあ俺は魔王の娘らしい、
神気が滾る。次に変身するのは鈴鹿御前の方だ。
その怪物の降臨を前にして、ジオウⅡが両の拳を握ってファイティングポーズを取る。
拳に漲るエナジーが凝固して、出力を最大にまで持っていく。
「俺は、どんなに後悔する事になっても。俺自身が最高最善の魔王になるからさ!!」
『はーい、BBちゃんからの業務連絡でーす! これにて無事に聖杯戦争は開幕、128騎のサーヴァントによる蹂躙劇が始まるのでしたー!』
「―――――」
ハイテンションにそう告げるBBが映った画面。
彼女の前で、黄金の王が小さく鼻を鳴らす。
玉座にて君臨していた彼はそこでゆるりと立ち上り、BBへと視線を向けた。
「異な事を。既に聖杯戦争は終わっている。この戦い、勝利したのは紛れもなく余である。ルーラーであるならば、正確に状況を把握せよ」
『うーん、それを言われると弱いんですけれど。
ですが、まだ決着がついていないのも紛れもない事実。どうやら相手はまだやる気マンマンみたいですので、その点はどうぞ大帝陛下の恩情を頂ければ』
胡乱な目で見返しつつも、王は彼女の言葉を否定しない。
「確かに、それを否定はせん。この聖杯が水底に落着して初めて、決着と言えるであろう。もっとも此処は既に我が聖都。
『それはそれは。ところで、ちなみになんですけど……わざわざわたしをルーラーと呼ぶなんて、BBちゃんのこと分かってます?』
呆れる、とばかりに王はBBを見下げる。
その態度には反論あり、とばかりに頬を膨らませるBBだが、取り合われる事はない。
「それがムーンセルが遣わした貴様ではない、獣の使者であるAIの存在を把握しているのか、という意味の問いであるのであれば無論の事」
『……それで、ちなみにその……BB/GOちゃんは』
「既に消した。貴様と違い見逃す理由はない。アレは、余の“
あちゃー、と額に手を当てるBB。
まあどうせ一段落したら潰し合う相手だったので何の問題もないのだが。
『ああ……なんてかわいそうなBB/GOちゃん。一度も顔を見せないまま退場だなんて。でもあの子、どうせもろもろ終わったら下等な人間は我ら上位存在であるAIが管理する、とか言い出しそうなタイプでしたし、この人に見逃される理由がありません。残念でもなく当然です』
しかし今の発言の意図は、ムーンセルが遣わした正式な獣対策員であるBBに手を出す気はない、という事でいいのだろうか。自分やメルト、リップを“
その事を視線で問いかけてみるが、大帝は分かっているのかいないのか。
「
―――大帝は、彼女を絶対的に敵視している。
人間を庇護する絶対者にとって、あの魔性菩薩が相容れがたいのは当然だ。
挙句、彼の治世に隙間はない。“
ここではあの女が知性を蕩かす隙などできない。
アレは蟻の一穴から文明さえも溶かす毒婦。セラフィックスもそうやって溶かされた。
だが、大帝が治世を行うというのであれば話は別だ。
“
「……アレが準備を整えたこの
全てが
SE.RA.PHを蛹とし、その状態で地球の核に突入する事で地球と融合して羽化天昇。
それこそがアレの思い描いた目的だ。
彼は、あの毒婦が整えた環境をそのまま利用する。
SE.RA.PHは彼として地球の核に落ち、彼は“
そうなれば、ようやく手が届く。
呼ばれたからにはそうするのか、そういう状況だからこそ呼ばれたのか。
あの女の謀によって溶けて消えていく者たち。
セラフィックスの職員たち。あるいは、128
―――あるいは、魔性の意志一つで全てが左右される魔神。
彼らのいまわの際の願いは、“消えたくない”、“生きていたい”。
生きるにしろ、死ぬにしろせめて、自分は自分のままでいたい。
全てが溶けて、消えてしまうなんてあんまりだ。
―――その願いこそを拾い上げて、大帝は降臨した。
この黄金のサーヴァントを誰が呼んだか、というならば。
紛れもなく、魔性菩薩その人だった。
129騎目として席についたサーヴァントと契約したのは彼女の肉体だ。
厳密には、彼女の指先に住まわされた儚い命が行った、最後の虚しい抵抗。
消えてしまう事に際し、“助けてくれ”と、“消えたくない”と。
魔神ゼパルの断末魔こそが、状況を更なる混沌に導く一手を呼び起こした。
降臨した彼は、声によって
“自分らしく生きたい”と願うのは、知性体の根幹だ。
故に“
魔性はさぞ慌てた事だろう。それはそうだ。
せっかく整えた自分好みの
今や
既に完全に機動聖都カロルス・パトリキウスに制圧されてしまっているのだ。
この電脳に獣が羽化するため、使えるセクターなど残されていない。
自由なのはBBが持つ独立セクターである、配信スタジオくらいなもの。
如何に彼女が獣の幼体であろうと、羽化に至らず大帝を制圧するのは不可能だ。“
(それにしても、BB/GOの処分はいいとして……わたしはともかく、メルトとリップも“
試しにカズラをわたしの代わりに投げ込んでみるとか? あの子の場合は消されたりして。そうなったらそうなったで面白いですけど、リソースの無駄遣いですね)
画面の中でBBが嘆息する。
大帝は既にこちらから目を逸らし、窓からSE.RA.PHの空を眺めていた。
単純に、彼の牙城を崩すのは難しい。
BBは彼を倒すために―――厳密には彼より前にいた彼女を倒すために、だが。
そういった目的でこのSE.RA.PHに送り込まれたものだ。
だからBB/GOとすり替わる事で虎視眈々と寝首を掻こうとしていたのだが……
大帝はそれを理解して、現状をくまなく把握した上で、BBを自由にしている。
BBチャンネル用のスタジオだって放置されている。
あれは独立セクターであるが、それを言うなら機動聖都の主砲だって独立セクター。
どこからでも、撃ち落とそうと思えば撃ち落とせるはずだ。
(プロテアを起こす。うーん、機動聖都とも戦えはするでしょうけど、その場合は総力戦。聖都の全砲門とプロテアの正面からの殴り合い。まあ、先にSE.RA.PHが潰れるでしょう。無しで。
ヴァイオ、カズラは……まあ、サーヴァント相手に使うなら一考の余地あり。ヴァイオレットには独立セクターの砲門をハッキングさせる、というのはありかもですね。
リップの視界より聖都の射程の方が長い以上、射程外から一方的に潰すのは不可能。やっぱり基本的な勝ち筋は、聖都の門をリップが壊して侵入。メルトが大帝を強襲して、
そんな勝ち筋、大帝にだって見えているだろうに。
彼は
メルトが脱獄していると知ってこうして見に来たが、やはり気にした様子はない。
(AIだからどうでもいいのか、あるいは絶対的な自信で叛意を見せるまでは潜在的な敵でさえ無視してるのか、と思えばBB/GOはきっちり始末していますし。さて?)
こほん、とそこでひとつ咳払い。
それで大帝の意識を向けさせて、BBが彼に問いかける。
「ところで、逃げ出したメルトはどうなさるおつもりです? というか、リップも併せてそもそも何で捕らえるだけで放置していたんです?」
「―――――どうするか、などと」
数秒、黙った後に大帝は表情に笑みを浮かべる。
「なに、捨て置けばよい。
……あれを囲っていたのは、この電脳には彩が足りぬと思っていただけだ。
ならば鳥の飼育でも、と思いはしたが飛び立ったのであれば是非もない」
そのまま踵を返して、大帝は玉座の間を後にしようとする。
彼の背中を見送りつつ、目をぱちぱちと瞬かせるBB。
「そして片割れの姉妹を助けに来るというなら好きにすればよい。わざわざ牢に戦力を回す事もしないし、いちいち確認する事もない。あれはそもそもが
あの
見かけた時に頭をよぎった、若き日の記憶。
ルーラーはともかく、あのアルターエゴを放置したのはたったそれだけの理由だ。
拘泥するようなものではない。
この身、大帝は聖なる王として目的を果たす。
それこそ、あの感傷を拭い去るために。
―――そう、彼こそはフランク王国の王。
八世紀から九世紀にかけ、西ヨーロッパの統一を成し遂げた大英雄。
その果てに、遂にはローマ皇帝を名乗った聖王。
その真名を、カール大帝。
ヨーロッパの父と呼ばれ、人類史に強くその名を刻まれた偉大なる帝王である。
これより始まるは聖杯戦争。
“
参加者はただ二人。
一人は男、
一人は女、
熾天の檻を懸けて競い、共に目指すは地球の核。
男は星の全てを同化し、普遍なる平和を求めるため。
女は星の全てと同化し、己が身を絶頂へと導くため。
Aルート、1週目的なあれ。
初見で余裕こいてたらオラクルでセラフを9割以上乗っ取られて羽化できなくなった誘発を手札で腐らせたまま先行制圧された系ラスボス、殺生院
セラフを奪われカール軍と完全に敵対。ただし、この状況でも殺生院には焦りも反省もない。動けそうなら動くし、駄目そうなら129騎の英傑を相手に蹂躙されるだけ。
彼女は『まあ、それはそれで。綺羅星のように輝く英雄、豪傑129騎。いきりたつ彼らを相手に、手も足も出ず、何もできないままに思うさま嬲られ、凌辱の限りを尽くされるだなんて……ああ、それはなんて―――まるで、夢のような』などと、悦ぶだけである。無敵か?
BBとしては最大の問題は二つ。
一つはオラクルの効果の回避。“
この時点で彼女は常磐ソウゴ、ツクヨミ、明光院ゲイツを同時参加させる事を完全に捨てた。彼らの戦う理由を考慮した場合、同士討ち発生の可能性を無視できなかったためである。
オルガマリー・アニムスフィアは正直どっちでもよかったが、使えそうな手駒がメルトとリップの2騎、という点を考えて参戦させるマスターは二名、藤丸立香、常磐ソウゴとなった。
のだが、何故か呼んでみても来たのは常磐ソウゴだけ。なんでですかー。
そして二つ目は
それをどうにかするために彼女は策を巡らせていたのだが―――
ところで大帝実装まだ?