Fate/GRAND Zi-Order ーRemnant of Chronicleー 作:アナザーコゴエンベエ
「は―――ま、どーせ全部と当たって勝ち抜く事には変わりないし」
頭を押さえていた手を、髪を掻き上げながら払う。
スズカはそうして二振りの剣を背後に浮かべ、白銀の刃を握り直した。
それを見てメルトリリスが
それより前に、聖剣を手にしたシャルルマーニュが出た。
「ちょっと」
「事態はよく分かってないが、状況は把握した。というか、事態はどうあれだ。真名を捧げ、その名を預けられたマスターを守護する。それが
ってわけで、とりあえずここは俺に任せてくれ」
振り返り、立香とメルトリリスを見て宣言する白騎士。
酷く不満そうなメルトリリスの後ろで、立香が大きく頷き返した。
その返答に軽く口角を上げて、シャルルマーニュは大きく体を沈ませる。
スズカが床を蹴る。軽やかに、無駄なく跳ねる少女の体。
彼女の視界が捉える全ては情報。それを考慮して選択される一手目。
動かすのは大通連。神通力により空を舞う黄金の刃。
その刀身が炎となり、シャルルマーニュへと向けられた。
「
「―――エリュプシオン!」
シャルルマーニュが腕を振るう。
彼がその手に握るのは波打つ刃の聖剣、
その動作に応えるように、スズカの放った炎の前に聳え立つのは岩石の壁。
せり上がる岩塊に激突する炎の渦。
火勢を受け止めた岩の盾を目にして、スズカは敵の情報を更新する。
彼女が足元に運ぶ顕明連、それを踏んで空中に留まった。
「火傷するぜ―――!」
岩山を挟んだ向こうから届く、シャルルマーニュの声。
次の瞬間、岩がスズカの放った炎を巻き込みマグマとなり、弾け飛んだ。
その勢いのまま、飛来する溶岩の飛礫。
空中で固定した顕明連を足場に、すぐさま彼女はバックステップ。
間合いを広げつつ、大通連のクールタイムを確保。
一秒置いて、再びその刀身を別のものへと変えさせた。
「
その刃から溢れるのは水流。迫りくる溶岩を逆に押し流す鉄砲水。
流れは当然、上から下へ。
灼熱に燃える岩を遮って床に沈める、滝のようなシャッター。
「トルナード!」
聖剣から昇るのは、その滝を全て凍てつかせる凍気。
滝壺から氷の柱が立ち上るように、その場に発生する大氷柱。
刀身を凍らされ、氷柱の最上部に突き刺さった状態になる大通連。
その柄へと飛び乗りながら掌を返し、スズカが手を振り抜いた。
刀の峰で殴り壊される氷の柱。
そうして解放した大通連を神通力で浮かせたまま―――
「頭、冷やしな――――!」
突風が下から襲い来る。
力強く吹く颶風。氷の柱を打ち砕きながら突き抜けていく上昇気流。
それは砕いた氷を礫にして巻き込んで、荒れ狂いながらスズカへと吹き付けた。
大通連を蹴り、下がりつつその刀身を疾風へ。
「―――
雹を含んだ嵐に向けて突風を叩き付け、その反動で離脱する。
力任せに攻撃範囲から逃れつつ、彼女は宙に浮かせた顕明連へと着地した。
高度を落としつつ、スズカの視線がシャルルマーニュに向けられる。
(地、火、水、風。さっきの宝具解放を見るに、あとは
舞い降りるスズカを目掛け、疾走する白騎士。
彼は自身に向けられる視線を感知して、僅かに目を細めた。
「疑似勇士、召喚!」
シャルルマーニュの背後に展開される飛行する輝剣。
空いた左手の動きに連動する剣の動作。
彼は自身の目の前にまで輝剣を持っていくと、不敵に笑いながらそれに手を添えた。
「“
剣が変わり、顕れるのは星のように咲く魔光の盾。
正面にそれを構えられた瞬間、スズカは即座にその場を跳んでいた。
シャルルマーニュの正面、盾の向きと方向をずらす動き。
(正面からはアウト、あの盾に視覚を潰される。視れなきゃ情報が集まらない。視覚以外から拾える情報が0ってことはないけど、どう足掻いても学習速度はガタ落ちする。情報が集まらなきゃ演算精度が上がらない。サイアクじゃん、こっちの弱点きっちり分かってる。
はっ、流石は天下に名高き勇者様、ってこと?)
一瞬だけ顕明連に視線を向け、しかしすぐに顔を逸らして。
間合いを取りながら探るような立ち回り。
やがて白騎士が足を止めたところで、彼女もまた動きを止めて溜め息をひとつ。
「なにそれ、別のサーヴァントの宝具引っ張りだせるわけ? 流石に盛りすぎっしょ、それ。そういう盛り盛りなのは普通、JKの専売特許なわけじゃん?」
「JK……? ああ、ジョシコーセー? って奴だな。いいよな、あれ。男女問わず、身分問わず、信仰を問わず、誰であれ求めるものは学問を納められる、って機関の事なんだろ?」
シャルルマーニュが盾を手放せば、それは剣に戻って消えていく。
まあ、展開し続けるには辛い魔力消費なのだろう。
そうでもなければやっていられない、とスズカは軽く肩を竦めた。
「はー? なにそれ、そーゆー話はしてないから。私の言うJKってのは生き様、つまり覚悟の話なわけ。私がこうしてJKとして立っているのは、何であれ可愛くするし、どんな事でも楽しむ心意気、みたいな―――……」
黙り込む。自分の言葉で、自分の意志が消沈していく。
自己嫌悪が止まらない。早く小通連を手放したい。
だが、これを手放してあのA級サーヴァントとやりあうのは無理だ。
彼女は特級ではあるが、それは通常のサーヴァントとしての枠組みを超えた場合の話。
常に自分の意志でその枠を超える手段を持っているから、という話。
この状態でシャルルマーニュとの一騎討ちは流石に辛い。
「ああ、その精神を養うにはまずはカタチから。騎士が鎧を着こむように、学徒は制服を身に纏うって事だろ? 心配ない、俺だってそのくらい理解するさ。
……―――いや、自分で言っててやっぱ心配だな、アイツ!」
流石に女学生の服とかは着ないはず。着ないと言って欲しい。いや、やるかもしれない。たぶんやる。彼こそは十二勇士においても面白さNo.1、子猫よりも自由な奴と噂の騎士アストルフォだ。可愛いからってスカートを普段着にしてる可能性だって……いや、まあ、流石にそこまでじゃないだろう。多分、きっと、恐らく、大丈夫だろう。大丈夫だといいな。
ううん、と悩むシャルルマーニュ。彼を見て。
その後ろにいるマスターとメルトリリスを見て。
そこで彼女は大きく息を吐いた。
「……ガン萎え、なんかやる気なしってカンジ。もう戻るし。何か文句ある、BB」
『あれれ、別に第三宝具を使わなくても
彼女に追従していたウィンドウの中で、BBは大袈裟に驚いた顔。
まあ、確かにBBの言う通り。
例え相手にマスターがいても、
やろうと思えばシンプルに削り合いで勝てるはずだ。
だがそんな事してやる理由はない。
これは128騎のバトルロイヤル。枠外の戦いで自分が消耗してやる義理はない。
もちろん、これが
『まあやりたくないならそれが構いません。どうぞ退いて、自分のエリアにまで帰還してください。わたしだってセンパイがサーヴァントと契約してしまった以上、ここでチュートリアルは強制終了です。
せっかく鈴鹿さんをわざわざ連れてきたのにイベントをSKIPポチーっ! だなんて、わたしだってチョベリバです。これ以上は手助けなんてしてあげませーん。
―――ま、せいぜい頑張ってくださいね、センパイ?』
最後の言葉は最後のマスターへ。
軽くそう言い放つと、BBは通信を終了させてしまった。
「あ、そ。じゃあ、私も帰るから」
小通連を手放して、大きく後ろに跳ぶ。
雇い主からOKが出た以上、もう継続する気は一切ない。
言葉さえ交わさないまま、スズカは脇目も振らず撤退に移る。
それを見送り、頭を掻くシャルルマーニュ。
彼は数秒待機した後、踵を返して立香に向けて歩み出した。
立香もまた彼に向かって歩み寄ろうとして、しかし。
彼女の進路を、メルトリリスが遮った。
(……BBが何もせずに退いた。アイツ、こいつの事を把握してた? 現れたのは私より前? 後? 前だとしたら、意図して伝えなかったって事?)
「うーん……一応、サーヴァントとしてできる事はしたつもりなんだが」
「どうしたの、メルトリリス?」
シャルルマーニュが武装を解除し、苦笑する。
その態度を見て、自身を遮るメルトリリスの方を不思議そうに見る立香。
「……アナタ、本来のマスターは? このSE.RA.PHにいるのは128騎のサーヴァントと、BBに用意された
「アルターエゴ、っていうのは?」
「マスター、説明は後で。今は黙っていて」
真剣そうなメルトリリスにそう言われ、お口チャック。
なぜ彼女はこうもピリピリしているのか。
「あー……黙秘、と言いたいが。そりゃ無理だな。けど話としては単純だ。俺はただ、その128騎には含まれていないってだけのことだ。
俺はいわゆる129騎目……いや、たぶん130騎目のサーヴァント、って奴になる」
「130番目、って。それ、ソウゴに召喚されたサーヴァントってこと?」
お口チャック解除。
BBはソウゴを130番目のマスター、と称していた。
それはつまり、そういう話なのだろうか。
―――と、そこで。あ、と思ってももう遅い。
しかし、彼女の前に立つメルトリリスから叱責が飛ぶような事はなかった。
代わりに、彼女の背中から感じる雰囲気が酷く不機嫌になったような気がする。
申し訳ない、つい。
「うん? ソウゴ、ってのは誰かの名前か。悪い、知らない。
俺の召喚は偶発的に起こったもので、誰か特定の召喚者がいるわけじゃないんだ」
だが、シャルルマーニュはそれをあっさりと否定した。
「もちろん召喚に至った理由はあるし、アタリはつけてる。状況証拠でしかないけどな。ただちょっと、それをいまマスターに開示しろ、というのは待って欲しい。ここで説明したらたぶんきっと色々まずい事になる、と思う。いや、大層な理由をつけずとも、ここはギリギリ俺の我儘って事で何とか通らないか?」
大真面目に引き締めた表情で、ふざけた事をのたまうシャルルマーニュ。
そんな相手に対し、メルトリリスの眉が上がる。
「通るわけが―――」
「じゃあそれで」
「マスター!!」
早々に了承してしまった立香にメルトリリスが声を荒げる。
が、彼女はすぐにその調子を不承不承抑えこむ。
そうして呼吸を整えた後に、マスターへと問いかけた。
「―――それで。このサーヴァントの目的が、アナタの不利益になるものだったらどうするというの? 私たちを利用してこの聖杯戦争を勝ち残ること。それがこのサーヴァントの目的であったなら、アナタは一体どうする気? もう少し慎重に判断して欲しいのだけれど」
隠したようで不機嫌さはまったく隠せていない。
長い袖で覆われた腕で、苛立たしげに藤色の髪を払うメルトリリス。
そんな彼女の態度に対し、立香は腕を組む。
「……うん、でもその程度なら全然いいと思う。ここ、サーヴァントが128人もいるんだよね。その状況で、ましてサーヴァント相手には逃げるしかない私がいる以上、協力してくれるサーヴァントは多いに越した事ないよ。
ごめん、私はまだメルトリリスが心配してる事を気にできる場所にいないんだ」
何だか分からないが、メルトリリスは妙にこちらを心配してくれる。
ただ彼女を完全に信頼したとしても、単純に戦力が無視できない。
メルトリリスは強力なサーヴァントだが、それこそつい先程に危機に瀕した。
―――立香のせいで剣の雨を避けられない、という。
メルトリリスが如何に強力で、仮にこのSE.RA.PHで最強だったとして。
複数のサーヴァント、広範囲に威力が及ぶ宝具、それを相手にすれば立香は死ぬ。
その事実を当然理解している彼女は、僅かに視線を逸らした。
「……128騎の大半は勝手に潰し合うでしょうけどね」
「でもありがとう。あと、悪いんだけどそういうことを思い付いたらどんどん言って欲しい。きっと状況が変わるごとに、そういうこと考えていかなくちゃいけないから」
カルデアからの支援はない。知恵者からの言葉は貰えない。
頼り続けたマシュはいない。共にやってきたソウゴはいない。
この戦いは、藤丸立香というマスターが指針になって進めないといけない。
その事実を確かめるように、少女は小さく深呼吸をした。
むむむ、と。顔を珍妙に歪めるメルトリリス。
確かに彼女の性能は破格だ。特にここに来てから最高潮以上の最高潮。
その事実に疑いはない。が、同時に彼女は自分が舞台で踊るプリマドンナ。
そもそもが、マスターを護衛するなどという用途に向いていないのだ。
分かり切っている話に渋くなる眉。
振り向けば、そんな彼女をシャルルマーニュが間抜けな顔で見ていた。
「……見た事かしら、少なくとも私の方がマスターからの信用を得ているという事ね」
「おお、そりゃ参った。けどそうだな、それでいいと思うぞ。マスターを真っ先に助けに入ったのはアンタなんだから、最上の信頼はそこに置くべきだ」
うんうん、と頷くシャルルマーニュ。
立香もまたメルトリリスに疑いはない、と確かに首を縦に振った。
ふふん、と袖で崩した口元を隠しつつ微笑むメルトリリス。
「―――当然でしょう。ここに来たのも、契約したのも、私の方が先なのだもの」
「そっか、そうだな。じゃあマスターのファースト・サーヴァントであるアンタは俺の先輩だな! よろしく、メルトリリス先輩! 俺の事は好きに―――いや、シャルルマーニュでもいいけど、できればシャルルとかシャルって呼んでくれ。マスターもな」
ふざけた呼び方に一転、眉を吊り上げるメルトリリス。
その後の言葉を告げる時、一瞬だけシャルルマーニュの表情が曇る。
まるで
彼のそんな様子を見て、立香が頷く。
「そう? じゃあよろしくね、シャルル」
「……そう。まあアナタに合わせるわけじゃないけど、私もメルトリリス……あるいはメルトと呼んでみてもいいわ。マスターがそれが呼びやすいと思うなら、だけど」
「おお、じゃあ改めてよろしく、メルト先輩!」
「アナタに言ったわけではないんだけど―――――!」
がなるメルト、笑うシャルル。そんな二人を横から見て、立香が苦笑した。
そうして数秒間だけ緩んだ空気を張り直すように、メルトが咳払いをひとつ。
「大体、アナタにはもっと有名な真名があるんじゃなくって、シャルルマーニュ。
―――いいえ、カール大帝?」
打って変わり、再び詰問口調。
何が彼女をそこまでシャルルを警戒させるのか、彼女はやはり当たりが強い。
ともすれば、敵として戦ったスズカ相手よりもだ。
何かあるのだろうかと視線を向けてみても、彼女はシャルルを見据えたまま。
「あー……まあ、そうだよな。普通は名乗るならそっちだろう、と思うよな。
ただまあ、俺の場合ちょっと事情が違う。アイツ、カール大帝は俺とは別側面の存在なんだ」
「カール大帝……」
シャルルマーニュ、即ちカール大帝。彼こそは、ローマ、ゲルマン、キリスト教。三つの文化を融合させ、大帝国を築いたフランク王国の聖王。
中世以降、現代に至るまでの『ヨーロッパ』という枠組みを成立させた太祖にして、偉大なる騎士道の体現者である九偉人に数えられる一人。
シャルルマーニュというのは、カール大帝の治世を原型にした武勲詩、叙事詩の集合である『シャルルマーニュ伝説』におけるフランク王国の君主の名だ。カール大帝を由来とする伝説の勇士、それがシャルルマーニュと言う事になる。
頭を掻きながら、言葉を選ぶように続けるシャルル。
「おおまかに分けると史実寄りの王としての存在がカール大帝。俺は幻想寄り、シャルルマーニュ十二勇士として武勲詩に語られる方の存在、ってわけなんだが……」
「それってどんな違いがでるの?」
「本来は出ないさ、普通ならその両方を備えたものが英霊“カール大帝”なんだから。クラスによって表に出る性格の比重は変わるだろうけどな」
クラスによって性質の違いは出るだろう。
セイバーであるならば幻想寄り、勇士としての面が大きくなるのは違いない。
聖剣の扱いは大帝としてのカールでなく、勇士であるシャルルの担当なのだから。
「ただ今回は事情が違った。俺は何故か“シャルルマーニュ”でしかなかった。
一大帝国を築いた史実のカール大帝と、
「カール大帝が自分だとは思ってるのに、自分が大帝であると思えない?」
「うーん……アイツが自分だとは分かってる。ただ、お互いに譲れない場所が違うんだ。
アイツからすれば俺は白昼夢みたいなもんだし、俺がアイツを見たって現実感がない。アイツは現実を見る事にした頑固者で、俺は夢見がちなままのスカポンタン。根っこの部分は共通してるが、行動方針が割と真逆になるんだよ、俺たち」
彼は自分という存在は、カール大帝が少年期に過ぎ去っていたものだという。
史実の大帝ではなく、物語において語られる勇者としてのカール。
本来の転換点で切り替わることなく、少年の夢のままでいてしまった残影。
と、そこまで話してはたと気付くシャルル。
今まで語った部分を置いといて、とジェスチャーで示し、彼は話を元に戻す。
「まあそういう違いがある、と軽く理解してもらって。で、俺は聖杯戦争より、なぜこんな召喚になったのか、っていう問題の解決が目的なんだ。
なんで、メルト先輩が心配してるような事にはならないと思うぜ」
メルトリリスは注意を彼に向けるが、彼からすれば的外れだ。
ぶっちゃけ、自分は聖杯戦争には関係ない。
そうはっきりと口にした少年王に対し、彼女はそれでも懐疑的な視線を向ける。
「さっき言ったのは、その理由にもう予想はつけてるって意味?」
「ああ。異常な状態で俺が呼ばれたって事はつまり、カール大帝が異常を起こしたって事。だから―――と、今はこのくらいで勘弁してくれ。どうかな、メルト先輩」
立香から問いに、シャルルはそう言って笑う。
彼がここに出現したのは、あくまで聖杯戦争とは別件。
不満を隠さず、しかしメルトはそこで追求する事はしなかった。
シャルルマーニュはカール大帝の一部。
恐らくカール大帝が異変を起こした結果召喚された者。
その説明に、一応の納得をしたのだろうか。
あるいはこれ以上追求するには、自分の持つ情報を開示する必要があるからか。
不機嫌そうに、しかしこれ以上は口にできないと眉を顰めるメルト。
そんな彼女をちらちらと見つつ、立香はもう一つ訊いておく。
「それってつまり、さっき自分を129から130に言い直した理由? 129騎目のサーヴァントがカール大帝で、130騎目がシャルルだった、って事なのかな」
「ああ。俺はここにきてからアイツの顔を見てないが、このSE.RA.PHにアイツがいるのは間違いない。俺の半身だ、近くにいればそのくらいはビビッ! とくる」
そう口にすると言う事は、カール大帝の存在は決定的なのか。
メルトが彼の物言いに何かを言おうとして。
しかし言葉を詰まらせて、堪えるように途中で唇を引き締めた。
「じゃあカール大帝も探した方がいいよね?」
「ん? いや、俺の目的は後回し、というか忘れてもらってもいいぜ。別にアイツがいま悪さしてないなら、俺が変な召喚されたってだけで終わりの話だし」
あっけらかんと、シャルルは自分の行動目標をどうでもいいと言い切る。
そんな彼の間の抜けた様子に、メルトはすぐさま食いつく。
「ちょっと、それがどうでも良いわけないでしょ? もし何かしてたら―――!」
「いや、してないって。何かする時にこそこそするような奴じゃない。
それは俺を見れば分かるだろ? 俺は堂々としてる方がカッコいいからだが、アイツの場合なおさらだ。アイツにとって己の治世は正しく
その行動は聖なるものである、と。カール大帝は己が行動をもって示す王だ。
自分の存在を表に出さない動きなどするはずがない。そこは絶対に裏切らない。
仮にそんな動きをしているというのなら、それはもうカール大帝ではない。
活動しているように見えないならば、実際に動いていないのだ。
そこは間違いなく、確信していい事実。
「もし普通に動ける状態でそこらにいたとしたら、目的はさておきアイツは絶対に目立つ事をしてる。というか、アイツの宝具が目立たないわけがない。そんな奴だから現状で動きが見えないなら、そもそも動ける状況にあるかどうかさえ怪しい。たぶん霊基は存在しているが、サーヴァント・カール大帝として動ける状況じゃないんだろう」
そこに関しては一切の疑いを持っていないのか、そう断言するシャルルマーニュ。
彼の断言に、メルトもまた視線を彷徨わせて口ごもる。
まるで否定したいけれど否定できない、とでも言うように。
ぱん、と。軽く手を打ってシャルルが話を変えに行く。
「それで、マスターの方が大変な事態なんだろ? そっちに集中していこう。そっちを解決すれば、自然と何でこうなったか分かるかもしれないし。で、何すりゃいいんだ?」
「……まずは油田ケーブルエリアを通って中央部に行きましょう、マスターに溶けられたら困るし。あそこならまだ完全には電脳化していない建物もあるでしょうから」
「溶ける? 溶ける、って……私が?」
言われた事に目を開き、自分の体を確かめる立香。
言われてみれば、どことなく体が粟立っているような。
やっと気づいたのか、とメルトがどこか呆れるような表情を見せる。
「電脳化した空間にそのままいたら、礼装で保護していたって人間は数時間でデータ化して消失するってこと。何にせよ、とにかくまずはアナタが休憩できる拠点を確保しましょう。
時間に限りもあるし、後は移動しながら説明するわ。さっきのアナタの質問とかね」
アルターエゴの事とかか、と頷く立香。
彼女は考えなくてはいけない。この特異点で戦い抜くために。
そして考えるためにも、様々な情報を集めなくてはいけない。
シャルルマーニュは彼が持つ多くの情報をくれた。
次はメルトリリスに色々教えてもらう。
彼女の言う事を聞いて、しっかりと理解して、進む方向を決める。
それがまず、ここに来た彼女がやらねばならない事だ。
「そっか。うん、分かった。お願いね、メルト」
「―――――ええ」
力を入れ直して、身構えつつ歩き出す立香。
そんな彼女の姿を見てから、メルトもまたその
シャルルマーニュは動き出した二人の少女の背中を数秒眺め、相好を崩す。
だがすぐに気を取り直して表情を引き締め、追従し始めた。
なおシャルルマーニュが情報を開示して困るのは本人じゃなくメルトな模様。
これ言ったらたぶん先輩が困るんだろうなぁ、と思って黙秘する後輩の鑑。