発情しても強い理性で踏み留まる獣人ちゃんと、そんな心情を知る由もない相方くん   作:無料お試しセット

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pixiv先生方のSNSを見てたら自分を抑えきれなくなったので初投稿です。

作品タイトルの部分は後半ですが、折角なので全部読んで、どうぞ。




第1話:日常

 

 晴天。

 大型の魔物が力尽き、地響きを起こしながら崩れ落ちた。

 その体には数多くの打撲跡と切り傷が付いており、周囲の破壊された地形も合わさって激しい戦いが行われていた事が分かる。

 

「っしゃあ! やったな!」

「ああ、俺達の勝ちだ!」

 

 返り血と土埃で体を汚しながらも、勝利の喜びを体で表現するのは一組の男女。互いに抱き合い、相手の背中を叩いてそれぞれの活躍を賞賛する。

 ひとしきり揉み合った後、男は笛を吹いて獲物の場所をギルドへと報告し、女は大斧の血を拭って再び肩に担いだ。

 

 二人はこの地域で活躍する冒険者だ。数年になる付き合いの中で距離が近くなっているものの、互いを尊重し合い、人間と獣人のタッグでありながら実力と秩序を持ち合わせた理想的なパーティであるとギルドからの評価も高かった。

 

「これで死体も回収されるだろう。あー疲れた。早く町に戻って一杯やろう」

「だなぁ。でも、私は何より先に風呂に入りたいかな。汗で全身がぐしょぐしょだ」

「ん。あぁ……確かに、俺もそうだな。よし、さっさと引き上げるか」

「よっし。それじゃ凱旋と行くか!」

 

 弾むように会話を進め、身を寄せながら笑顔で歩き出した二人の冒険者。

 仲の良い姉弟か幼馴染にも見える彼らは、今回の任務の苦労話に花を咲かせながら拠点の町へと帰っていった。

 

 

 

――――――

 

 

 

「はい、報告を受け付けました。ファクトさん、ミーシアさん、お疲れ様でした」

 

 夕刻。

 拠点の町へと戻ってきた二人は、ギルドにて依頼の完了報告をしていた。

 話を聞きながら帳簿にペンを走らせるのは上級任務担当の受付嬢。ドレーンという固有名を持つ魔人形(マジック・ドール)である彼女の他に、カウンター裏では何体もの魔族が事務机に向かって手を動かしている。

 受付嬢による普段通りの淡泊な受け答えに、獣人の女性ミーシアは腕を組んで巨大な胸を(そび)やかしながら不満を口にした。

 

「おいおい、随分とさっぱりしてるな。町に被害が出かねない大物だったんだぞ? 何か特別報酬とかは無いのか?」

「特別報酬…………必要ですか? ファクトさん」

「うーん……まぁ、彼女もこう言ってますし、何か頂けるのなら嬉しいですかね?」

「そうですか……」

 

 睨むように目線を向けてくるミーシアを無視しつつ、ドレーンは男の言葉を受けて悩む素振りを見せる。

 数秒固まっ(フリーズし)た受付嬢は、妙案を閃いたとばかりに無表情のままわざとらしく手を打った。

 

「ではファクトさん、今夜私と食事でも如何ですか? とっておきの年代物を差し上げます」

「えっ、まさかあの四十年モノを……? いいんですか!?」

「おい待て。要求したのは私なんだが?」

 

 ぶら下げられた餌に対し即座に食いついた相方の肩に肘を乗せ、ミーシアは受付嬢に顔を寄せる。

 

「年代物は貴重なのです。量がありません。心苦しいですが、せめてファクトさん一人だけでも持て成してパーティの平均士気を向上させれば、ミーシアさんにとってもプラスになるという寸法です」

「そんなの詭弁も良い所だろ……私達はこの後一緒に食事をとる予定だったんだ、悪いが今度にしてくれ。そして、その時は私にも酒を寄越せ」

「そうですか。とても残念ですが、パーティ内での決め事は不和を生まないためにも守っていただく必要があります。それでは、またのご利用をお待ちしております」

「四十年物……」

 

 元々冗談だったのか、ミーシアの言葉を受けて魔人形はすぐに引き下がった。

 やや残念そうに眉を下げたファクトは、相方に背中を押されるとフラフラとギルド併設の酒場へと歩いていった。

 

 

 

――――――

 

 

 

「あの時咄嗟に取った水薬がさぁ、あの混ぜたやつだったんだよ。もうマズいのなんのって」

「ははは。戦闘中の気付けには丁度良かったんじゃないか?」

「そうか、なら今度からファクトが倒れた時はあれを使う事にするな?」

 

 食事処兼酒場『秩序の部屋(オーダー・ルーム)

 ギルドに併設されているそこは、冒険者の憩いの場であり、彼らの命を明日へと繋ぐ重要施設だ。

 大仕事を終え、間接的に多くの人の命を救ったファクトとミーシアの二人は、今日の冒険を振り返りながら祝杯を呷っていた。

 店内の客は疎らで、馬鹿騒ぎを起こす者もいない。そのため、窓際の席から発せられた言葉が二人には聞き取れてしまった。

 

「チッ、混ぜモンがいやがる」

「バカ、聞こえるぞ。やめとけ」

「は?」

 

 一部の獣人に向けた蔑称。

 ファクトは声の方向へと振り向き、立ち上がった。楽しい酒の席に冷や水をかけられ、彼の視界は一瞬の内に赤く染まる。

 ミーシアも決して言われっぱなしで我慢するような性格ではないものの、相方の冷静さを欠いた様子に驚いて制止の声をかける。

 

「おい、気にするなって。相手も酔っ払いだ」

「だからって相棒を侮辱されて黙ってたんじゃ俺の胃が持たない。すぐに終わらせるから追加の酒でも注文して待っていてくれ」

「ファクト、結構酔ってるな? 普段なら私を止める側の癖に……まぁ、今日くらいは別にいいか」

 

 瞼を半開きにしながら歩き出したファクトに、ミーシアは呆れたように肩を竦めて匙を投げる。第一、これは自分を想っての行為なのだ、嬉しくない訳がない。彼女は上機嫌に尻尾を揺らしつつ、追加の注文をするべく店員に手招きした。

 

 一方、窓際の席に静かに到着したファクトは、項垂れる男の肩を叩いてからテーブルに手を突く。

 

「なぁ、誰の相棒がなんだって?」

「ッ……! って、お前かよ。……なんでもねぇよ」

「もう一回言ってみろ。ばっちり聞こえてんだよ。その口、二度と閉じないようにしてやろうか?」

「ファ、ファクト! すまねぇ、コイツ飲み過ぎてんだ!」

 

 酒を飲み過ぎた男に、酒を飲み過ぎた男が絡み、酒を飲んでいる男が止めに入る。

 カオスな状況を破ったのもまたカオス。項垂れていた男は急に笑い出し、重くなった瞼を押し上げて開き直ったように口を開いた。

 

「へ、へへ……いいぜ、言ってやるよ。『混ぜモン』だって言ったのさ。事実を言って何が悪い? あいつみたいに何の種族かもわからねぇ獣人がいるから、この町だって中央の奴らにバカにされるんだ……!」

「ジーク、やめとけって!」

 

 男の仲間は手を伸ばして話を止めようとするも、ジークと呼ばれた男は虫を払うような手振りでそれを避け、尻を浮かせてファクトへと向き直る。

 

「ファクト、お前も気をつけろよ? 知ってるだろ……獣人と人間が組んだパーティの末路を。結局本能には勝てねえんだ。人間なんて食い殺されるか、食いモノにされて終わりだぜ。だから昔は戦争だってしたし、今も国だって分かれてるんだ」

「ミーシアは、そんな事はしない」

 

 遠い昔を思い出すように手を震わせながら語ったジークの様子は、何かトラウマの存在を思わせる。そんな彼を見て若干冷静になったファクトは、相手を諭すように強く意思を乗せて言葉を発した。

 

「彼女は誇り高く、理性的で、どんな時だって仲間の事を大事にする――強く崇高な精神を持つ大切な相棒だ。何年も一緒にいるけど、俺なんかよりよっぽど大人だよ」

「そりゃあ、お前ん所ほど長く関係が続いてるのは珍しいさ。だがな、こと種族間の問題には絶対なんてモンは存在しねぇんだ」

「知ったような口を利くな。あんたの過去に何があったかは知らないが、俺達とは関係ないだろ」

 

 互いにやや頭を冷やしながらも続く押し問答。

 ファクトの真っ直ぐな瞳に見据えられ、先に折れたジークは水の入ったグラスを呷ってから一つの皿を差し出した。

 

「ふぅ……なら、お前達がいつまで仲良し小好しでいられるか、賭けでもしながら見といてやるよ。これは詫びだ。あの獣人にやってくれ」

「わかった。……で?」

「……で、ってのは? 話は終わっただろ?」

「ミーシアへの謝罪がまだだ。ギルドに言いつけるぞ」

「……お前、こんな細かい奴だったっけ? かなり酔ってるな?」

 

 皿を受け取りつつも更に謝罪を要求するファクトの姿に、ジークは眉を下げながら頭を掻いた。

 

 

 

――――――

 

 

 

「うあー、飲んだ飲んだ。もう寝るぞー!」

「早いな。こんなにめでたい夜なんだ、カードゲームでもしないか」

 

 夜。すっかり静かになった町の宿の一室で、酔った様子の二人はそれぞれのベッドに転がった。

 彼らは男女混合パーティでは珍しく同室で寝泊りをする。初めこそファクトが気を使って部屋を分けていたのだが、一時期パーティが生活に困窮した際に同室となり、それが便利だった事から今もそのままになっている。二人の間に強い信頼があり、一緒にいても心労が発生しない気安い間柄であるからこそ可能な節約術と言える。

 

「カードか……ファクト、酔ってると弱いからなぁ。最初から勝者の決まってる戦いにどんな価値があるんだ?」

「おっ、言ってくれるな。前回俺のコイントスにひれ伏したのはどこの誰だ? 俺のデッキはあれから更に進化してるんだ」

「あれこそたまたま勝っただけだろ……二度と同じ展開にはならないぞ」

 

 ファクトは鞄から取り出したデッキケースを振りかざして大仰に宣戦布告する。その前には何度も負けている筈なのだが、都合の良い記憶だけが残っているようだ。

 聞き分けの悪い弟を諭すようにミーシアが説得するも、気持ちよく酔っぱらっている彼の闘志は収まらない。

 

「なんだミーシア、随分と弱気だな? よォし、俺が負けたら何でも言う事を聞いてやろうじゃないか。さあ勝負だ!」

「…………いや、ただの遊びでそんな条件はつけられない。私は報酬が欲しいんじゃなくて、憐れに負ける相方の姿を見るのが忍びないと言っているんだが……まぁ、本人が無様を晒したいと言うのなら仕方がないか」

 

 呆れたように息を吐いたミーシアは、わざとらしい仕草でデッキケースを取り出した。テーブルと椅子をファクトのベッド脇まで運ぶと、うつ伏せになっている相方に向かい合うようにして座る。

 

 元はファクトがやりたいと言い出して一緒に始めたこのカードゲームだが、何だかんだで良いコミュニケーションツールとして機能しておりミーシアも気に入っていた。

 相方には気付かれないように立ち回っているものの、その熱はこっそりと雑誌等で勉強している程である。その結果、勝率が彼より高くなった事にも彼女は満足していた。

 

 互いのデッキをシャッフルし、規定の枚数を手札として引き入れる。初手で全て決まってしまうような浅いゲームではないが、それでも流れというものが存在するのが物事の常である。

 

「これは……悪いな、ファクト。どうやっても負けてやれそうにない。命乞いの準備はいいか?」

「なん……だと……?」

 

 まさかの開幕勝利宣言にファクトはベッドから飛び起きたが、今更姿勢を正した所で状況が覆る事はなかった。

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

「……全く、本当に床で眠る奴があるか」

 

 案の定ファクトは正常な判断ができず、攻めるタイミングを誤って盛大に自滅した。対戦後、「これが今日の俺への罰だ!」と床に転がった彼は、目を閉じてからものの一分ほどで寝息を立て始めた。

 普段は冷静で思慮深い相方がここまで自由に振る舞うのは珍しい。酒の力が大半だろうが、ミーシアは自分に気を許してくれているそんな姿を見て素直に嬉しく思った。

 

「……」

 

 心の奥に温かいものを感じながらじっと眺めていたミーシアだったが、時間が経つにつれて相方の体に目が吸い寄せられていく。服を捲れさせて大胆にも肌を露出する様は目に毒だ。

 水で軽く流しただけの程良く硬い肉体からは、獣人の本能を揺さぶる雄の香りが漂う。

 

「……」

 

 あまりにも無防備な、その姿。

 日中は必死に抑えているその感情が、欲求が、暗がりの中でふつふつと湧き上がっていくのを感じる。普段は面倒だとさえ思うその欲求が、今は何より心地良い。 

 

「そんな所で寝ると疲れが取れないぞ、ファクト」

 

 彼が体を痛めてしまわないようにベッドまで運ぶ必要がある。

 そう自分に言い聞かせ、手を伸ばす。手を出してしまう――大事な仲間に。なんの意味も持たない筈のその言葉が、今はこんなにも心を揺さぶってかき乱す。

 腰を跨ぎ、覆い被さるように床に手を突いた。そして相棒の頭を抱くように腕を回した瞬間、得も言えぬ幸福感が体中を突き抜けた。

 大切なものを手に入れた幸せ。慕っている相手を支配できた幸せ。嗅ぐ度に身を疼かせるこの匂いを好きなだけ肺に取り込める幸せ。

 

 幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。幸せ。

 

 

…………

……

 

 

 気が付けば、ミーシアは愉悦に顔を歪め、相方の四肢を押さえ込むように全身でのしかかり、彼の後頭部に鼻を埋め、蕩ける乳房でその顔を完全に包み込んでいた。

 慌てて体を持ち上げて顔を覗き込むと、ファクトは荒々しく呼吸をしながらも怪我をした様子はない。流石は上級の冒険者――人類の上澄みだ。

 ほっと胸を撫で下ろしたミーシアは当初の予定通りに相方をベッドへと運んだ。一緒に倒れ込むようにして横になり、さも当然のように胸を彼の顔に押し付ける。発情と共に全身から滲み出てくる色香を彼の体へと擦り付けてマーキングしながら、湧き上がる愛おしさに頭を撫でる手が止まらない。

 

「駄目……だ。駄目だ……」

 

 その時、感情が間違いを犯そうとするのを、また別の感情が止めた。うわ言のように否定の言葉が漏れる。

 彼に嫌われたくない。彼を傷付けたくない。そんな紛れもないもう一つの本心がギリギリの所で理性を手繰り寄せ、無意識で動こうとする体を縛る。

 

 今起きられると言い訳がきかない。抱き寄せたり匂いを嗅いだりといった行為は「ベッドに運ぶための動作」という大義名分が苦しいながらも存在したが、これから先はどうやっても言い逃れができない。こんな姿を見られてしまえば、今まで積み上げてきた信用は一瞬の内に崩れ去るだろう。

 嫌悪され、侮蔑され、パーティを解消されてしまえばこれから先どうやって生きていけばいいのか分からない。彼と出会う前、自分が何を目的に生きていたのか思い出せない。

 

「はぁっ、はぁっ……」

 

 火照る体から熱を逃がすように浅い口呼吸を繰り返す。自分を律するように頭を振る。

 ミーシアは後ろ髪を引かれつつもゆっくりと男の上から降り、少しの距離を後退(あとずさ)り、逃げるように窓際に向かった。

 

 開け放った窓から流れ込んだ新鮮な空気が、部屋に篭った甘い香りを中和していった。

 

 

 

 






ど っ ち つ か ず の 正 義


ハートマーク使おうか迷ったけどR-17くらいになりそうだったので止めました。
獣人ちゃんを敬語キャラにしようかも悩みましたが、受付嬢さんが敬語だったので止めました。
妄想に身を任せてたら一日で完成したのでそのまま投稿しました。完全に勢いだけの小説です。本当にありがとうございました。

ちなみにこの後は、
獣人ちゃんは翌朝ちょっと負い目を感じながらも、発情しちゃうのは割といつもの事なので結構すぐに立ち直り、何事もなかったかのように二人はギルドに出勤!
男くんの実力を見越して他の人外ちゃんがパーティに誘っちゃってえっちな事になったり獣人ちゃんが嫉妬しちゃったりしてオワリッ!平定!解散!

獣人ちゃんの種族イメージ

  • 犬系(ウルフとか)
  • 猫系(ワーキャットとか)
  • 虎系(ジャガー、タイガーとか)
  • 亜人系(ハイオークとか)
  • 狐系(キュウビとか)
  • 兎系(ラビット、バニップとか)
  • 鳥系(ハーピー、グリフォンとか)
  • その他(是非とも感想欄にどうぞ)
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