発情しても強い理性で踏み留まる獣人ちゃんと、そんな心情を知る由もない相方くん   作:無料お試しセット

2 / 3
導入はパパッと済ませようと思ってたのに普通の冒険モノみたいになってしまったので初投稿です。
例のパートは頭空っぽにして書きました。




第二話:行方不明のメイドを探せ

 希望と吹き溜まりの町、イコリティ。

 大きく栄えながらもどこか荒れた雰囲気を纏うそこでは、名の通り希望を持った者と挫折した者が交わり合う。

 戦後、世界に生きる全種族の平和と協力を願って作られたそこには、今でも多くの旅人が訪れては消えていく。

 外門近くに設置されている冒険者ギルドは挫折者を生み出す最も高効率な施設でありながら、彼らの受け皿ともなる特殊な場所だ。

 

「行方不明のメイド探しぃ? それ、私達の仕事なのか?」

「はい。是非ともお願いしたいのです」

 

 朝、程良く混雑している施設内。

 その中でも異質な雰囲気を放っている最奥の窓口に、ファクトとミーシアはいた。

 

「でもドレーンさん、俺達は正直……戦う事くらいしかできません」

「私はそうは思いませんが、貴方達の意見は尊重します。しかし今回は依頼主が依頼主です。ギルドとしても誠意を見せなければなりません」

 

 相変わらずの無表情で依頼票を見せてくる魔人形に、ミーシアは髪先を弄りながら問う。

 

「依頼主……貴族なんだっけ?」

「はい。魔国の特権貴族、アセントレス家からの依頼です。大国の貴族、それも特権階級ともなればメイドの一人すら上位種族。大金をばら撒いてでも捜索する価値は十分にあるという事です。他の町のギルドにも同じ依頼を出したと聞いています」

「この報酬額で複数ギルドへの依頼だってのか? そりゃ随分と気前が良いな」

「それだけ困っているって事だろう。メイドだって大事な家族なんだから」

 

 話を聞き、感心して口笛を吹いたミーシアにギルド中から視線が集まる。抜群のプロポーションと露出の多い服装により普段から不躾な視線を集めがちな彼女だが、ギロリと周囲を一睨みして威嚇すると有象無象は慌てて元の姿勢に戻った。

 改めて二人が依頼票を覗き込むと、報酬額の欄にはいくつものゼロが並んでいる。先日受けた大型モンスターの討伐依頼にも並ぶその金額を、ただ探すだけで受け取れるのだから破格としか言いようがない。しかも成功報酬はまた別にあるという。二人は金のためだけに仕事をしている訳ではないが、それでも目を輝かせてしまうのは仕方がない事だった。

 

「では、受けていただけますね?」

「はい。依頼場所の捜索難度からしても俺達が適任だろうし、何より遭難者が心配だ。ミーシアもそれでいいか?」

「ま、そのド偉い貴族サマのメイドも見てみたいしな。サクッと行くか」

「ありがとうございます。手続きを行いますので、暫くお待ち下さい」

 

 深々と頭を下げた受付嬢は、依頼票を手に取って席を立つ。

 彼女が戻ってくるまでの間、二人は報酬の使い道について冗談を交えながら話し合っていたが、結局酒とゲーム以外の案は出てこなかった。

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 (くだん)のメイドは、主人に「珍しい食材が食べてみたい」と伝えられてから行方が分からなくなったという。

 この地域で珍しい食材といえばいくつかあるが、上位種族が危険に晒されるような場所となれば候補は一気に絞られる。他の場所であれば間違いなく無事に帰って来られるとのことで、二人は候補地の中で最も危険な洞窟へと向かった。

 

「『風船魚のエラ』ねぇ。泳いでる風船魚は一度見た事があるが、ありゃ美味いモンだったのか?」

「空中に飛んじゃうと失われる器官だからな。美味いかはともかく、珍しいのは確かだろう。俺は見た事すらない」

 

 東西の山を結ぶ大地の裂け目。その途中にぽっかりと空いた大空洞が今回の捜索場所だった。

 山脈から滲み出る豊富な栄養を蓄えた水がいくつもの地底湖を形成し、年中変わらない気候は独自の生態系を育む。規格外の大きさを持つ魔物が発見される事も多く、その広大な土地は第二の地上とも比喩されている。

 

 風船魚の特徴はその浮遊性だ。前に見た記憶を手繰り寄せながら、ミーシアはその外観を脳裏に浮かべる。

 

「お偉いさんからの依頼はプラスワンが基本だ。メイドだけ見つけて風船魚がありませんじゃ片手落ちだぞ」

「メイドが危ないかもしれないんだからそんなことしてる場合じゃないだろ。……まぁ、本人を探すついでに湖を覗くくらいはしてもいいかもな。正直、俺も味には興味がある」

「ファクトならそう言うと思って、実は網を用意してあるんだ」

 

 真顔で道具袋から投擲網を覗かせるミーシアに、ファクトは目を瞬いて呆れ顔になった。

 

「人が危険に晒されてるかも知れないってのに、全くミーシアは…………最高だな」

「だろう? これで報酬満額はいただきだ。存分に褒めていいぞ」

「よーしよしよしよし!」

「頭に届かないからって武器を撫でるのはやめろ!」

 

 わいのわいのと騒ぎながら歩を進める二人はすぐに一つ目の地底湖を見つけたが、そこにはメイドの姿も風船魚の姿もなかった。

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 時折網を投げながら空洞内を進んで半日が過ぎようとした頃、ミーシアの耳が僅かな物音を捉えた。

 

「……っ、聞こえる。いる。……これは……水音と、金属音? 戦闘中か……?」

「依頼のメイドか? すぐに向かおう!」

「結局魚は見つからなかったな……」

 

 未練がましく網を仕舞うミーシアに先行して、ファクトは不安定な足場を飛ぶように駆けた。

 戦闘中の急な加勢は相手の集中を切らせ、逆に状況を悪くしてしまう可能性がある。出来る限り音を消しながら接近したファクトは、高い岩場を越えた先に戦場を見た。

 

 水中から蛇のような体を覗かせる巨大な魔物。全長が大空洞の天井にも届きそうな怪物と対峙するのは、ゴシック調の使用人服を着用した女性。

 彫刻のように完成された顔を楽しげな表情で飾り、踊るようにステップを踏んで大蛇の猛攻をいなす様子からは随分と余裕が感じられる。

 

「……人違い、か?」

 

 どうにも助けが必要そうな状態には見えない。たまたまメイド風の服装をしているだけで、ただの通行人か冒険者である可能性が高そうだ。

 彼女の目的があの蛇だった場合、横殴りしてしまうのも憚られる。ファクトはそのまま身を潜めて成り行きを見守る事にした。

 

 大斧を担ぎながらジョギングのような速度で走ってきたミーシアも合流し、二人して岩場の陰に腰掛けた所で意外にも戦場から声がかかった。

 

「そこの二人。悪いが少し手を貸せ」

 

 茶でも飲もうかと呑気に水筒を取り出していた二人はギョッとして地底湖へと振り向く。

 宙に舞いながらこちらに顔を向けるのは先程のメイド。その表情はどう見ても苦労しているようには見えないが、決め手に欠けているのだろうか。

 上位種族特有の大仰な口振りで助けを呼ぶ彼女は、自分を狙って叩きつけられる巨大な尾を蹴って後方に飛び、二人の近くにふわりと着地した。

 

「構いませんが、俺達は何をすれば?」

「あの魔物を仕留めてくれ。どうにも水は苦手でな。手段は問わん」

「手を貸すっていうか丸投げだろそれ……報酬は?」

「『私がお前達の目標だ』と言ったら?」

「あぁー、そういう事……」

 

 予想が外れたが、どうやら目の前のメイドが目標の人物のようだ。しかも捜索依頼が出ている事も知っているらしい。主人が困っているというのに微塵も申し訳なさを感じさせない立ち振る舞いは流石上位種族――系統樹に愛された者達である。

 特権貴族の使用人とは随分と緩い仕事らしい。

 

 とはいえ、ギルドからの依頼で来ている以上断るという選択肢は無い。

 ファクトは岩場から飛び出すと、そのまま滑りながら地底湖へと降りていった。

 

「ミーシア! 大振りで頼む!」

「了解。誘導は頼んだ!」

 

 相棒の指示を受けてミーシアは膝を曲げた。そのまま床を蹴り、衝撃で岩場を破壊しながら天井へと跳び上がる。

 

「これだけ広い空洞なんだ。流石に崩落なんて……しないよな?」

 

 瞬く間に天井へと取り付いたミーシアは、天地を逆転させた姿勢のまま再び膝を曲げて力を溜める。タイミングを計ってバネを開放すると、天井の爆発と共に高速で地底湖へと落下していった。

 

 突然の爆発音に驚いた大蛇は、本能的に湖の中へと体を隠そうと身を縮ませる。決して頭の良い種族ではないものの、空から降ってくるナニカが自分にとって致命的なものである事は直感で理解できた。

 

「いい反応だ。あのメイドと戦ってさえいなければ、もう少し長生きできただろうに」

 

 後頭部――地底湖の中央側から声がする。明らかな異常事態。

 大蛇は生存を優先して振り向くよりも水に入る事を優先したが、結果から言えば、彼が二度とそうする事はなかった。

 

「魔道具は良いよな。起動さえすれば、毎回同じ結果が返ってくる。カードゲームとは違う」

 

 何をされたのか――大蛇は背後から加えられた強烈な圧力に屈し、無理矢理に頭を前方へと伸ばされる。

 陸の上に首を差し出すような格好になったのと、一筋の流星が落ちたのはほぼ同時。凄まじい振動と爆音が洞窟全体を揺らし、発生した衝撃波は大蛇の頭部と地底湖を真っ二つに縦割りにした。

 

「おっ、相変わらず良い腕だな」

「ミーシアこそ流石の威力だ。パワーだけじゃなく技も光ってる」

 

 死亡確認をする必要もない、体の半分を二又に割かれた大蛇が水飛沫を上げながら崩れ落ちる。

 空洞内にまだ音が反響している中、余韻に浸る事もせず慣れた様子で二人は互いの健闘を称え合う。

 メイドはそんな冒険者達の様子を見て、一人感嘆の声を漏らしていた。

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 復路は行きよりも遥かに短時間で済んだ。

 メイドの口から風船魚は不要であると伝えられた事に加え、彼女自身も体力をまるで失っておらず先導する二人にぴったりと追従する事ができたからだ。

 

 空洞内で夜を明かす事も視野に入れた大荷物を用意していたが、幸い地上に出ても日は落ち切っていなかった。町に戻る頃にはすっかり暗くなっていたものの、外門は閉まっておらず、冒険者ギルドにも明かりが灯っている。

 

「ほら、お目当ての上位種族サマだぞ」

「お疲れ様でした。ファクトさん、ミーシアさん」

 

 相も変わらず暇そうにしていた上級受付嬢にミーシアが声をかけると、魔人形はすぐに振り向いて背筋を伸ばした。

 深く頭を下げた彼女は使用人服を着た女性に向き直ると、開口一番に問いかける。

 

「如何でしたか? 当ギルド代表のパーティは」

「うむ。とても参考になった。技量といい、魔族との接し方といい、他の人間とは異なる面白さがあったな」

「ありがとうございます。満足していただけたのなら何よりです」

「……なんだ? 知り合いか?」

 

 目の前で繰り広げられる噛み合わない会話に、違和感と焦燥が首を(もた)げる。

 首を捻るファクトの隣で、ミーシアは素直に疑問を投げかけた。受付嬢が反応する。

 

「魔国の特権貴族、アセントレス家のラナオーブ・ブラッド・アセントレス様です」

「……は?」

「ですから、魔国の特権貴族、アセントレス家のラナオーブ・ブラッド・アセントレス様です。今回の依頼主様ですので、挨拶された方が良いかと思います」

「えぇ……」

 

 唐突な告白に、ミーシアは唖然とし、ファクトはドン引きして顔を顰めた。

 捜索依頼が出されていたメイドはメイドではなかったのだ。目的がまるで分からないが、金のかかる遊びである事は間違いない。

 

 暫しの硬直の後、二人は流れるような動きで膝を突く。国の重鎮にも謁見した経験のある彼らである。権力者との会合において必要な最低限のマナーは備わっていた。

 

「冒険者のミーシアです」

「冒険者のファクト・フリードです。先ほどまでの無礼な言動の数々、誠に申し訳ございませんでした」

「よい。面を上げよ。態度も楽にして構わん」

 

 ファクトが形式ばった謝罪をすると、メイド(嘘)も形式ばった反応を返す。

 二人はその言葉を受けて立ち上がり、待機姿勢を取った。よくある一連の流れだった。

 

「『面白い人間と獣人のパーティがある』という噂を耳にしたのだ。他の貴族には毛嫌いしている者もいるが、私は冒険者には寧ろ好感を持っている方でな。丁度この地方を治めている阿呆に用事があった故、顔を見て見たくなった」

「それで、嘘の依頼を出したという事ですか?」

「許せ。ギルドには説明していたし、その分報酬は多額にしておいた。悪い条件ではなかっただろう?」

「まぁ、それは確かに」

「我ながら中々に面白い催し物だった。この格好も新鮮味があって良い。何か希望があるのなら、報酬に加えてやろう。何でもいいぞ」

「何でも……」

 

 メイド(嘘)(ラナオーブ)の言葉に冒険者二人は顔を見合わせた。互いに少し悩んだ後、代表してファクトが口を開く。

 

「では……何か、貴重な酒を賜りたく存じます」

「……酒? 自分で言うのもなんだが、これは躍進のチャンスだぞ。本当に酒でいいのか?」

「はい。ここには魔国の品があまり入ってこないので。ええと、何か不都合がありましたでしょうか?」

「いや、……フフッ……構わん、構わん。何でも良いと言ったのは私だものな。確か宿に止めてある馬車に我が国の酒が積んであった筈だ。それを持って行くがいい」

 

 ラナオーブは受付から紙を受け取って一筆認めると、ミーシアにそれを差し出して御者に渡すよう伝えた。宿泊先は有名な店だったために口頭ですぐに説明が済んだが、ギルドからだと対角に位置しており少し距離がある。ミーシアも相方にやらせる仕事ではないと思い、素直に従って宿へと向かった。

 

 待つ間、ファクトとラナオーブの二人は応接室へと場所を移した。ギルド内は閑散としていたものの、酒場から送られる好奇を含んだ目線が鬱陶しかったからだ。

 互いに柔らかいソファに腰掛けると、未だに使用人服のままの特権貴族は一つの疑問を口にした。

 

「先程の報酬の話だが、貴族と繋がりを持とうという考えはなかったのか? 私の依頼を受けたという事は、少なくともそういう勘定も含んでいるものだと思っていたが」

「いえ、単純に報酬額が多かったので……」

 

 冒険者の通説として、『権力者とはコネを持っておけ』というものがある。

 今までの対話応対からラナオーブは貴族にしては温厚で接しやすい性格に見える。何かあった時にすぐ潰れてしまわないように、力ある者と繋がりを持っておく事はどの職業であっても利が多い。

 しかしファクトはそうしようとは思わなかった。何かに縛られて安定を得るよりも、自由を愛する獣人の相方に合わせ、着の身着のままの日々を続けていきたいと考えていた。もし冒険者が続けられなくなったなら、二人で畑を耕したって構わないのだ。

 

「そう警戒するな。受付の魔人形から話は聞いている。遭難者の身を案じてくれたのだろう? 相手が魔族であっても恐れず、嫌悪せず、緊張せず振る舞えるのはお前の長所だ。あの獣人と長くいるからか?」

「冒険者ですからね。他種族には慣れているんです」

「他の者ではこうもいかん。特に私のような位の高い種族だと、前に立つだけでも人間を萎縮させてしまうからな。今回、初めは興味本位だったが、存外良い掘り出し物が見つかったな……」

 

 依頼を達成した冒険者を褒め讃えたラナオーブは、その途中からゆっくりと口元を歪め、最後には舌なめずりをした。

 にこやかな笑顔にも見えるその表情に、ファクトは内心で首を傾げながらも笑顔を返す。

 

「どれ、もう少し報酬に色を付けてやろうか。酒だけでは味気なかろう?」

「酒だけでは味気がない……? ……酒の肴、ですか?」

「違う」

 

 酒に思考を支配されている男の元に移動したラナオーブは、自然な動きで彼を持ち上げて抱き抱えた。

 

「え? ラナオーブ様、なにを……」

「ふふ。言っただろう? 『色』をつけてやると。さあ、《抵抗するな》」

「な、……? ??? う?」

「なんと、まだ言葉を発するか……素晴らしい。まぁそう心配しなくても良い。これは一時的な催眠だし、今から行うのは……そう、疲労回復のマッサージだからな」

「ぉ?? ? 〜〜ッ!?」

 

 ラナオーブは妖艶に微笑んで唇を濡らすと、混乱する男の唇を上から奪った。

 唇同士を唾液でぬるぬると滑らせて感触を楽しんだ後、何度もかぶりつくようにして男の軟肉を食む。それを飽きるまで堪能すると、男の口内に肉厚の舌を侵入させた。相手の小さな舌を吸い、絡ませ、舐めしゃぶって犯した後、歯茎を、頬肉を、口内全てを唾液漬けにするように柔舌で蹂躙する。

 触れるだけで全身を疼かせる甘い液体を体内に直接流し込まれ、そのあまりの快感に男は本能的に逃げようと藻掻く。しかし、それは体を持ち上げられ、頭を抑え込まれ、胸を乳肉で圧迫されている状態では相手を興奮させるだけの行動だ。それにより更に強く情欲を滾らせたメイド服の女性は、無意識に男の頭を撫でて腰を擦り付ける。

 

「あむ、ちゅ。んむ……はぁ…………ふふふ。ふふ」

 

 長い長い抱擁と接吻。淫らな衝動をぶつけられ、男は何も分からないまま強制的に快楽を流し込まれ続ける。意識があれば狂う事もできただろうが、催眠により思考を奪われている今、脳を犯す強過ぎる快感から逃げる術はない。

 

 女は薄れていく理性に身を委ねながら、本能のままに食事を悦しんだ。

 

 もっと気持ち良く感じさせたい。もっと自分の存在を刷り込みたい。もっと強く抱きしめたい。

 もっと、もっと――

 

「……は。なんだ、もうそんな時間か。出来る限り時間を稼ぐようメモに書いておいたのだが」

 

 何かを察知するかのように顔を上げたラナオーブは、素早くファクトの口元を拭ってソファに置くと、彼の目の前に膝を突いた。

 

「おおーい、なんか色々貰ったぞー」

 

 声と共にミーシアが大荷物を抱えて応接室に入ってくる。

 彼女はすぐに室内の異変に気付くと、荷物を放り出して相方へと駆け寄った。

 

「ファクト! ……なあ、貴族サマよ。何をした?」

「随分と疲労していたようだからな。魔術で眠らせて治療しておいたのだ」

「匂いでバレバレだぞ。あんた、よく嘘をつく奴だな」

「許せ。性分だ」

 

 獣人は鼻が利く。しかし、そうでなくともすぐに分かる程度には室内の空気は甘く、淫らだった。

 匂いの出どころは殆どがラナオーブの口元と下腹部。ファクトの服に乱れた形跡が無い事に、一先ずミーシアは安堵した。互いに合意の上であればそれでも文句を言う筋合いは無いが、状況からすると可能性は低いだろう。

 

 意外にも頬を染めて頭を掻いたラナオーブだったが、立ち上がり、ミーシアに振り向いた時には既に彫刻のような硬い表情に戻っていた。

 

「誓って危険な目には遭わせていない。寧ろ明日には体調が良くなっている筈だから安心してくれ。……念の為に聞いておくが、お前達はそういう関係なのか?」

「いや、違う。私は……そうじゃない」

 

 質問され、ミーシアは咄嗟に――いや、悩む時間があったとしても肯定する事はできなかっただろう。

 彼女には愛だの恋だのが分からない。親の顔すらも見た事がない。ファクトに対しては並々ならぬ感情を抱いているものの、自身が情欲のはけ口にしてしまっているだけの部分が大きいと考えており、その罪悪感から対等な関係であるとはとても言えなかった。

 ファクトとの素の力差は圧倒的だ。一度想いをぶつけてしまえば、歯止めを失った感情はどこまでも転がり落ち、三日と待たず彼を壊すだろう。故に、彼女は想いを胸に秘め続ける。

 

「なら別に構わんだろう? ――と言う程、私は厚かましくはない。この食事代として良い物をやろう。お前が運んできた荷物、それに青い小箱が入っている筈だ」

 

 漂う色香に当てられて徐々に性欲が思考を染めていく中、ミーシアはラナオーブの声で我に返った。

 室外の空気を取り込むべく入口の荷物に近づいて中を漁ると、そこには言われた通りの小箱があった。取り出して蓋を開ければ、入っていた銀のリングが照明の光を反射する。

 

「『水中呼吸の指輪』……と言われている魔道具だ。効果は名前の通りなんだが、細かく言えば違う」

 

 何を想像したか、ラナオーブは淫らに顔を歪めて説明を続ける。

 

「例えば、空気の薄い山中でも苦しくならないし……口と鼻を何かで覆われた時にも呼吸ができる」

「……!」

「ふふ。中々悦しめそうな品だろう? ああ、心配しなくて良い。これは身勝手な『玩具』ではなく、『装着者の安全を守るための装備』だ。大切な仲間に渡すのは普通だし、パーティとしてもそうあるべきだと私は思うぞ」

「……」

 

 ミーシアは手の中の魔道具を見つめ、その使い道を夢想する。先に自分の体で安全を確認する必要があるが、それでもこれが本物であれば様々な場面で役に立つだろう。

 覆っても、乗っても、抱き締めても、相手を苦しませる事が無い。起こしてしまう確率だって大幅に減る。

 そんな夢のような状況が、この魔道具によって現実のものとなるかもしれない。

 

 

 ラナオーブはその後も何点か話をしてから引き上げていったが、ミーシアは己の劣情を抑えるのに必死でその内容をよく覚える事ができなかった。

 

 

 






ファクト:なんかよく覚えてないけど酒も貰えたし口内炎も治った。

ミーシア:種族の習性もあってあまり独占するタイプではない。とにかく相方を外敵や悪意から守りたいし、幸せになって欲しいと思っている。でも寝てると犯してしまう(未遂)。

ドレーン:実はギルドの他職員と一緒にワンチャン狙っている。

ラナオーブ:メイド服に男の匂いが移っていたのでアイマスク代わりにして寝た。

風船魚のエラ:コリコリしてる食感が面白いだけで味はあんまり無い。

古の大空洞:この地域3本の指に入る高難度ダンジョン。超大型の魔物が多く生息しており、決して網を投げながら探索するような場所ではない。




次回、
「獣人ちゃんに発情期到来」
「薬師スキュラさんの触手部屋」

デュエルスタンバイ!

性癖だらけの不健全すぎるtwitter(閲覧注意)

獣人ちゃんの種族イメージ

  • 犬系(ウルフとか)
  • 猫系(ワーキャットとか)
  • 虎系(ジャガー、タイガーとか)
  • 亜人系(ハイオークとか)
  • 狐系(キュウビとか)
  • 兎系(ラビット、バニップとか)
  • 鳥系(ハーピー、グリフォンとか)
  • その他(是非とも感想欄にどうぞ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。