墓前
僕がシャングリラ・フロンティアへのログインをサボり出してから、数か月が経った。
別に何かの理由があって、あんなに熱中していたこのゲームを放り出したって訳じゃない―――ただ、ゲームにはいつか
それに関しては……神ゲーでも、クソゲーでも、変わらない。
といっても、僕が単に
では、僕がシャングリラ・フロンティアを―――世間で神ゲーと絶賛される、このゲームを放置し始めた理由の
僕がシャンフロを投げた理由の
◆
『征服人形愛好会』。
僕がマスターを務めていたクランの名前だ。
『
皆が皆、揃って征服人形に愛情を向けていた―――そんなクランだったのだ。愛情の
……しかし、それは過去の話だ。
一人のメンバーは、ある日突然姿を消した。SNSのアカウントも、同時に削除されていた。
一人のメンバーは、「ネフホロ2が発売されるからしばらくログインしない」と言い残し、そのまま帰ってこなかった。
一人のメンバーは、PKerに粘着されて、心を折って引退した。PKに対し報復しても、彼は帰ってこなかった。
ネットゲームからプレイヤーはどんどん消えていく。このクランの参加条件を考えれば―――新規プレイヤーがそれを補うことも、そうそうできることじゃない。一人、また一人とメンバーは減って行って―――最後にマスターである僕が消え、僕らのクランはその瞬間、ただのシステムログの藻屑と化した。
◆
さて、ゲームを突然
要するに、すっかり鎮火していたはずの、僕のシャンフロへのモチベーションが……さっき突然沸き上がり、肉体をシャンフロに駆り立てている。抗う理由を持たない僕は、モチベーションの命ずるままに、使い古しのVRヘッドギアを被り―――再び、神ゲーへと舞い戻ることにしたのだ。
諸々のテストを終えたシステムが、フルダイブの感覚を僕に与え、数か月ぶりの
目を開けば、天井があった。
◆
今、どこかの街中にいる。
◆
数か月のスパンがあってもUIの操作はそう簡単に忘れられないようで、ステータスに辿り着くのはすぐだった。展開されたウィンドウと、そこに乗せられた文字。それらをスクロールし、流し読み気味に処理していく。
装備されたアイテム一つ一つに、それを手に入れるまでの様々な冒険の記憶が紐づけられている―――案外、覚えているものだ。そうやって感傷に浸る僕の、忙しくウィンドウをスクロールする手が―――
―――ぴたりと、止まった。
何故止まったか?「アクセサリー」の欄に、今まですっかり存在を忘れていた……しかし思い出してみれば、非常に大切な存在だった
―――
◆
数か月前の時点で、既に存在していた2艘のバハムート……特にリヴァイアサンには、
インベントリアは非常にレアなアイテムだ、これを持っているプレイヤーは3桁もいないだろう―――少なくとも、数か月前はそうだった。だからインベントリアは、僕の数少ない、
……まぁ、今の今まで忘れていたのだが。
◆
懐かしい。
僕の感じる感情はそれだった。随分久し振りに
そう、確か―――
「―――【
◆
インベントリアの中に墓地がある訳は無いのだが、事実として
もうちょっと詳細を描写するならば―――そう、
無機物的な格納空間に浮かぶ石草金属武器等の諸々が混沌を生成する中、その
……さて、この墓地の正体は一体何なのか?
まず征服人形のタイプを見てみよう―――エルマ、シンシオ、レヴナ、ミオン、リリエル、ミオン、エルマ……この並びに特に規則性らしきものは感じられない―――だが規則性とは別に、僕は彼女たちに
いずれも、
タイプが同じなら外見も当然同じになるはずなのに、僕は何故か彼女たちを見分けることができた。なぜかは分からない、プログラムがそうしているのか、超感覚に目覚めたのか、それともただの気のせいか―――しかし、それは今は重要ではない。問題は、
僕は考えた。そして……思い出した。クランには上の下程度の連中が集まっていたけれど――いや、むしろ
「鍵」シリーズにはリンク機能があるから、メンバーのチェストリアと僕のインベントリアを繋げることができた。もはやリンクした
つまるところ、こうだ。
おそらく契約者が引退かなんかしたときに、征服人形がその契約者のチェストリアに入り込む的なイベントが起こる。
そして、軒並み引退したクランメンバーたちのチェストリアは、僕のインベントリアにリンクしているから……彼らが契約していた人形たちは、僕のインベントリアへ転送される……つまるところ、一人引退するごとに、僕のインベントリアには機能停止した征服人形が一人増える。
その結果としてできたのが……この、妙に秩序じみた墓地、というわけだ。
……僕は結論を出した後、もう一度征服人形たちへ目を向けた。
さっきまで無表情に見えていたそれらが、どこか違うニュアンスを含んでいるようにも感じ取れる―――どんなニュアンスかは僕にもよくわからないが―――敢えて表現するならば、「
……この仮説が合っているとして、一つ辻褄が合わないことがある―――肝心の
「―――おかえりなさい、
声が、聞こえた。