シャングリラまで約五分(短編集)   作:Z-LAEGA

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【掌編】霊耀

太陽が昇っていた。

 

例えば、危牧でクソキリン(ゼピュラ・ジラ)の襲撃を耐え忍んだ末、消えていく墨雲の間から顔を覗かせた日の出(希望)であったり。

例えば、ドブアイスの数少ない夜ステージをクリアした後、容赦も休憩タイムも無く襲い掛かってくる日の出(悪魔)であったり。

例えば、ミナココロ大戦記のわくわく桃農家体験中盤辺りでふと現れて、「もうこのゲームやめよっかな」とすら思わせた日の出(憧像)であったり。

 

俺は今まで色んなゲームで色んな日の出を拝んできたが、どの日の出にも()()ってモンがある……一切が同じものなど、一つとして無い。シャングリラ・フロンティアの日の出(イベント)における個性とは即ちグラフィックで、『海蛇の林檎』の小綺麗な窓から陽光を差し込ませる太陽は、つい先程までの()()()()()がまるで無かったかのように美麗(ハイポリ)幻想的(リアル)だった。

俺はふと自分の()()に視線を移した。窓枠が日光を中途半端に遮っているせいで、なんだか()()()のある影が一部埋もれる。

 

「なによ」

 

傍らの少女―――ウィンプは、視線に気づいたらしく振り向いて言った。あとついでにさっきからずっとウィンプを囲ってワイワイやってる着せ替え隊の連中も一斉にこっちを見た。やめろやめろインベントリから大量のアイテムを捨てた後にポーズ解除したら物理演算がバグって発生する物体Oみたいな挙動を取るんじゃない……若干ヒきつつ続ける。

 

「イヤさぁ……お前、ちょっと()()が足りなくない?」

 

「えっ」

 

「なァ~~~~にをおっしゃるんですかツチノコさァん!!!!?????」

 

「ウィンプちゃんはヘタレなのがいいんですよヘタレなのがァ!!!!!」

 

「おいバカ言葉を慎め、ヘタレじゃなくて『生存本能が強い』くらいにしとけ」

 

雑音を伴うウィンプの反応。俺は話を続ける。

 

「アレだよ、お前は建前上()()()ってことで強キャラ路線で行ってる訳だろ?でもお前はな……強キャラとしてはちょっとガワが弱すぎるというか」

 

「……サミーちゃんがいるじゃない」

 

「反論せずに初手で虎の威を借りに行くの、潔くて好きだな~~~~」

 

「虎の威ではないでしょサミーちゃんはあくまでもウィンプちゃんの眷属なわけだから」

 

「さんを付けるんだよさんをォ!!!!」

 

ごめんこのノイズ設定でオフにできない?辟易しつつ続ける。

 

「サミーちゃんさんが威厳に満ち溢れたすばらしきお方なのは知ってるよ。でもそれはそれとして結局本体はお前なワケだ」

 

()()()ってこともあるかもしれないしな―――俺は脳内で付け足した。

 

「お前が何かのはずみでボロを出しちまうと、一気に諸々が瓦解する……その構造自体を変える方法が無い以上、お前をなるべく()()()()しか手が無いって訳だ」

 

「えっと……わかったわ」

 

「絶対ほんとは分かってないのに流れ的にわかったわしてるでしょ」

 

「可愛い~~~~~」

 

「とりあえずウィンプたそに似合う敵幹部っぽい服を考えたんですけど……」

 

へえどれどれ……俺は雑音とコミュニケーションする。……この肩のトガってるのは何?必要な物なの……必要?そっかぁとりあえず保留で。

 

「まあとにかく、お前に適当なアクセを付けて強そうに見せようって寸法だ……オーケー?」

 

「……だいじょうぶ」

 

よーし早速行くぞ……俺はインベントリアを掻き回した。何が出るかな~~~~~

 

「えい」

 

えーこいつは―――封雷の撃鉄(レビントリガー)(ハザード)!!!!!!死ぬわボケ!!!!!!自分の装備欄に突っ込んで引き直し。何が出るかな~~~~~

 

「えい」

 

えーこいつは―――要塞女王蜘蛛人形(フォルトレス・ガルガンチュラドール)か。なかなか迫力もあっていい感じな気がするが……

 

「どう?」

 

「やめてぇ……もうくもはいや、いやぁ……」

 

トラウマを刺激してしまったようだな……引き直し。何が出るかな~~~~~

 

「えい」

 

えーこいつは―――(イデ)(ここまで読んでもう察した)死ぬわボケ!!!!!!自分の装備欄に突っ込んで引き直し。何が出るかな~~~~~

 

「えい」

 

えーこいつは―――霊角の残影か。ウーン強そうではあるけどウィンプは素手キャラだからガチで見た目装備以上の効果を発揮しない気が……引き直……

 

「まって……くもよりはまだ、そっちのほうがいいわ」

 

そういうことになった。

 

 

ツチノコニーネが毒剣を明確に()()()()()()ことを考えると、ゴルドゥニーネの分け身達にとっての「毒」は装備品の判定を持っている可能性がある。その辺の検証がてら、とりあえずウィンプに残影を装備させてみようという事になった。

 

ンでまあ、その()()が……

 

「えっ」

 

「サミーちゃんさんが光ってる!!!!すげえ!!!!」

 

「ウワッものすごく神々しい……それでいて優しい目!!!!すてき!!!」

 

「これステルス性能下がるのでは……いや効果アップ分で帳消しになるのか」

 

……この有様である。

まあアレだよね、という。ウィンプがとりあえず角付けるじゃん?()()()()()が好きなノイズ諸氏がヒュゥーーーーーッするじゃん?ここまではいいよ、イヤよくは無いけど。でそこでなんか違和感を覚えたんだよね、()を感じるって言うか。ウィンプの方から光が来てるのは何もおかしくないんだけど、それとは別の場所……具体的に言うと俺の背後に光を感じたのよ。で振り向いたら()()()()()()()()()()()()()。バグかな?しかしバグでは無かった。どうも、その……ゴルドゥニーネにとっての装備品は「毒」じゃなくて「()()」だったみたいなんだよね。で霊角の効果で装備品には発光エフェクトが付くからピカーするって言う。

 

「……これいがいにないの?」

 

ウィンプが聞いてくる。自分の額から発せられる謎の光が眩しいようで、その目は細められている。

 

「お前魔法使える?」

 

「つかえないわ」

 

俺はちょっとインベントリを確認して答える。

 

「これが相性が最悪(黒曜纏の石外套)、これがおしゃれ装備(燕尾羽衣)、これが使ったらヤバそう(烈砲百足人形)……どれがいい?」

 

「どれもよくないわよ!」

 

「一応この骨人形みたいな特にデメリットがなさそうな奴もあるけど……」

 

「いげんからはほどとおいわね」

 

ごもっとも。

 

「…………まあ何だ、アクセ路線は無理だな無理。とりあえずサミーちゃんを使ったステルス戦法でも練習するしかないだろう」

 

「ステルスせんぽう?」

 

「『なにもないところからあらわれるわたし』みたいな感じの」

 

「ステルスせんぽうというよりいっぱつげいね」

 

……俺は窓の外を眺め、溜息を吐いた。

 

サミーちゃんさんが光っていた。

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