シャングリラまで約五分(短編集)   作:Z-LAEGA

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【注意】なんだかよく分からない話


紙屑と見るか宝と見るか

いかにもな幾何学的(ジオメトリック)模様が床を走り、その上を地上絵(ジオグリフ)狂い達が交じり歩き、その頭上には情景模型(ジオラマ)に向けられるような()()の光が点り拓く。ちょっとした用事(金策)で立ち寄ったリヴァイアサン第三殻層「戯盤」は、概ねにおいていつもと同じだった―――すなわち、遊戯(プレイ)にまみれた監獄(プリズン)だった。

 

しかし。

 

一つ、いや()()と言うべきか。()()()()()()物がこの空間には存在する。それは機鯨(リヴァイアサン)に漂うサイエンス・フィクショナブルな空気を破壊しているようで、よくよく見てみると微妙に溶け込んでおり……極めて支配的に、そして当然のようにそこに鎮座していた。簡単に言うと―――

 

―――()()()()()()()()

そして、そこに()()()人々である。

 

「なあ、そこのあんた……ちょっと、聞きたいんだけど」俺はとりあえず、山の麓で一心不乱にパックを剥いているプレイヤーに話し掛けた。

 

「ああツチノコさん……イヤあなたのその()のが何だって話ですけど」プレイヤーはパックを剥く手を全く緩めずに(それどころか()()してさえいた)、振り向いて言った。

 

「いやそれはいいでしょそれは、文句は運営に言えよって感じ……とにかく聞きたいんだけども」俺は反論しつつ仕切り直した。

 

「はい」はい。

 

「……()()は、ナニ?」

 

「これですか……」プレイヤーは肘より先を除くすべての部位を5秒ほど沈黙させた後、言った。「あっレジェ出た」俺は頭を抱えた。

 

「フーン黒死の天霊―――ゴミだないや?フィロジオは枚数制限緩いし使いどころが無くも無いのか……ア~~~失礼、()()はですね、おっとエクス!!??マジで!??イヤほんとすみません……はい。これはですね……パックの、山です」プレイヤーは独り言(ノイズ)を交えて見ればわかることを言った。

 

「それは分かってるんだよなァ~~~~」俺は苦言を呈した。

 

「あぁパックの種類も言います?ユア・エクスペリエンスですよ、一番安い奴。やっぱ最高効率化するとなったらプレがいいんでしょうけど、こういう原点回帰的なのも乙ですよね……ハイ色竜来たァ~~~」プレイヤーは何やら目的を達成したらしく、手を止めるとすっくと立ち上がり踊り始めた。俺は頭を抱えた。

 

「……種類は分かった、聞きたいのは……」俺は右手を頭から左胸に移して特に意味も無く必勝の先触れ(ザ・フォアランナー)を発動しつつ言った。「……この山が生えた、()()だ」

 

その途端、プレイヤーは急に踊りをピタリと止め……神妙な面持ちで、言った。

 

「フィロジオのパックって、個数を指定して―――要するに、()()()()()できるじゃないですか」

 

「うん」俺は相槌を打った。

 

「あの個数指定、結構たくさんできるんですよ―――100個とか200個とか指定しても、一瞬でパックを排出してくれる」

 

「うん」俺は相槌を打った。

 

「でね、そうなると当然、()()したくなる奴が現れる……『何個まで指定できるのか』を、知りたくなってしまうんだ」

 

「……うん」俺は相槌を打った。オチが読めてきたぞ……

 

「でもね……考えてみてくださいよ、このクソデカいバハムートだかリヴァイアサンだかに、()()なんてものが本当にあるでしょうか?これがNPCの店だってならわかりますよ、あいつらは()()という壁に常に阻まれているから、百頼んだ商品が五十くらいしか買えないことなんてザラだ……だけどここは、戯盤は違う!!百頼めば百が、千頼めば千が、万頼めば万が……きっちり、正確に、忠実に納品される!!」

 

「…………うん」俺は相槌を打った。もしくは、打つことしかできなかった。

 

「それを知らずに……或いは知った上で、どこかの馬鹿が大量注文をしでかしてしまった!!頼んだパックがどれくらいかはちょっとわかりませんが……まあ、確実に五桁はいくでしょう」

 

「ちなみにその馬鹿は?」

 

「圧死しました」

 

えぇ……

 

「まあ、そういうわけですよ……ツチノコさんも剥いていきます?パックの中身は買った奴のカードプールで決まるから、多分蠍は出ないけど……それでも、きっと色んなカードが見つかるはずだ。この山は一人のプレイヤーの体験(エクスペリエンス)で―――人生なんだから」

 

そう言って、プレイヤーは山へと戻っていった。

 

俺は、立ち尽くすばかりだった―――リヴァイアサンは何もかもを呑み込んで、それ故に景色は変わらなかった。いかにもな幾何学的(ジオメトリック)模様が床を走り、その上を地上絵(ジオグリフ)狂い達が交じり歩き、その頭上には情景模型(ジオラマ)に向けられるような()()の光が点り拓く―――山なりの形状(ジオメトリ)を持つ、カードパック達を取り巻いて。今まさにプレイヤー達によって削り取られ続けている山は、様々な側面を持っていた―――見方によっては紙屑で、見方によっては財宝で、見方によっては人生だった。リヴァイアサンは、それらすべてを確実に呑み込んでいたのだ。

 

そして、俺は歩き出した。

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