サイナが見当たらない。
「……いないな」
空間には雑貨たちが雑多に雑然と散らばっている。それは例えば明らかに呪われてる感じの藁人形であったり、明らかに呪われている感じの人形であったり、普通の手甲であったり、明らかに呪われている感じの本であったりする。少なくとも、手を伸ばす気にはなれない。
「お~~~い、サイナ~~~」
「……困ったなあ」
別に彼女の身が心配なわけではない。今までにもえーっと……
インベントリアを歩き回り、ついでに軽く整理整頓を行い、ちょっとしたものを自分のインベントリへと移し替える。そんなことをしているうちに待ち人が現れるのではないか、という何の根拠も持たない期待は当然のように跳ねのけられ、
しばらく無言でよくわからないものの山に立ち向かった後、ふと俺は手を止めた。
「……これは」
そう―――それは
機能としては確か単純な頭装備としてのものに加え、モニタリング、各種センサ、それから……
「……視覚データの、閲覧」
俺が最初に
もっと言えば、その横では……そう、サイナが、観測データをストックしていて―――
「……【
気付いた時には、口にしていた。
◆
○第一の断片
背景には見覚えがあるというか、この映像そのものが前に見たものと完全に同一だ―――トマホーク戦直前、敵情偵察を行うべくサイナに中継してもらった、あの映像。
こうして改めて見てみれば、最初の形態の時点でこの
……とすると、あの
時折視界が揺れるのは、恐らくサイナ本人の頭と連動しているためだ。とは言え大したことではない、あの60フレームで全部違う角度向いてるロボを常時操作するクソゲーほどではないし、60フレームで全部違う角度向いてるロボを常時操作するクソゲーをクリアしたから三半規管は鍛えられている。
そろそろ次に行こう、ここから得られる情報はこれ以上無さそうだ。
◆
○第二の断片
ベヒーモスだ。俺は直観的に理解した。
リヴァイアサンとベヒーモスは
辺りを見回そうとし、よく考えてみると
それで……サイナは、これは何をしているんだ?
まあいい、何を買ってるのかがわからない以上、これ以上情報は得られなさそうだ。次に行こう。
◆
○第三の断片
空中のようだ。
シャンフロの空にはめっちゃヤバいモンスターがいる、みたいな設定は覚えてるが、アレは確か随分高い場所の話だったはずだ……サイナに渡してあるブースターを最大まで
そしてこの目下に広がる空間は……神話の大森林か?俺がいるのがサードレマの蛇の林檎本店だから……んー、まあ大陸を隔ててるよりはマシか。紐づけられてる日付データもつい最近の物のようだし、これで位置の推定は完了したといって良いだろう。
それにしても、見たところサイナは殆ど全速力で移動している……どこに向かっているんだ?今チラッと横切った建物から類推して……んー、
まあ向こうから来てくれるってならそれはそれで良い、ヘッドギアを引っ張り出した意味がなくなってしまうが……ゲームをやってればそんな日もあるだろう。おとなしくこいつを取って……
あれ?
何だ、録画がもう一件あるじゃないか。一応再生してみよう。
◆
○第四の断片
映像の中の俺は辺りを見回したかと思うと、謎の魔法陣を浮かべてスッと消えた……インベントリアエスケープだ。しばらくして出てきた俺はゴツいヘッドギアを被っていて、何やら映像を鑑賞しているようで、そして、俺自身がその映像に映っているという事は、つまるところ―――
顔が、近くにあった。
「
外されたヘッドギアが露わにしたゲーム内素顔に、目の前の人形―――エルマ=317は、たくさんの感情と一緒に笑いかけた。
「よう……サイナ」
「……えーっと」
どう切り出すか若干迷う。サイナは笑みをそのままに……いや、何かを
「……よし、せーので行こう」
「了解:せーの」
「せーの―――」
たった今
たった今
「「おめでとう」」
突き出された機械色の指輪を受け取り、突き出した皇金色の指輪を受け取られる。すべてが円満に完了したという事実が、サイナのその表情から存分に見て取れた。
契約からちょうど半年目のその日は、極めて順調に過ぎていったのだ。