第四回偽エクスカリバー限定
実際、参加者たちも気づいていなかったわけではないのだ。過去の経験―――ネタイベントとして開催したら思ったより人がたくさん来たけどそれはそれとして
しかし実際のところ、今回の参加者数は第三回で
「エクスカリバーとしては100点だが、偽エクスカリバーとしては……フン。ダメだな、0点だよ」「審査に落選した偽エクスカリバー売ってま~す!オススメはこの『ゴブリンの斧カリバー』!見た目も性能も名前もゴブリンの斧と全く変わらないけど、俺は偽エクスカリバーだと思うよ~!」「すまん、お前で試し斬りしていい?」
……といった混沌的騒めきと、その所有者たる雑踏によって埋め尽くされていて……平均して毎分3.6人が死亡するという、かなりの盛況を見せている。
こうなればもはや、例えイベントその物が企画倒れになっても、続行するほかに選択肢は無い……何せ、参加者たちの大部分は当然のように右手に
そんなわけで、雲一つ無い青空の下、黄金にまみれた会場で……灰色の
「―――これより、第四回偽エクスカリバー限定
シャングリラ・フロンティアには音速の概念がある。
そのため、一斉に沸き立った観衆が上げる歓声より、一斉に掲げられた直剣が反射する陽光の方が、より速く会場を埋め尽くした。
◇
「エントリーナンバァァァァ……ワンッ!『
司会の男はそう叫ぶと、一振りの
エントリーナンバー1、『
どんどん上昇していく観客のボルテージを乗りこなすように、司会の男は続ける。
「さあ―――白羽を立てたのはクアッドビートル!丹念に蜜をやり、外敵との闘争から逃がし、時に己すら生贄とし……そうして最終的に完成した
「さあ―――1万マーニから!」
競りが、始まる―――!
「5000万!」
サイガ-100が現れて言った。
競りが終わった。
◇
「あちゃ~」「来ちゃったか~」「そりゃ来るよな、来ない理由がないわ」
先ほどの熱気はどこへやら、観衆たちは青空にも関わらずこれでもかと襲い来る寒風に身震いしながらざわめいた。
つい先刻までのざわめきとそのざわめきは、かなり深い所で異なっている―――プレイヤーでも、NPCでも、開発者でも……誰の耳をもってしても、そう感じることは間違いなかった。
「マジであれズルすぎでしょ、いくらネタイベントで参加者が金持ってないからって、新大陸のハイパーインフレ状態を旧大陸勢のオークションに持ち込むとかさあ……」
「鍛冶屋からしたらむしろ必要以上に金貰えてうれしいって言うのが面倒だよな」
「というか第一回より羽振り良くなってね?どうせ新大陸バブルなんて一時的なものだろとか斜に構えてたよなお前」
「チェストリアがズル過ぎる……」
そう、サイガ-100―――
偽エクスカリバーという文化には、単純なネタとは別に「例え
しかし、使う側からしてみればどちらが最強かは関係ない……単に
「……フム、打撃属性を備えた直剣か―――悪くない。
手元の黒い塊を見つめながら呟くサイガ-100を、ほとんどの観衆は畏怖の表情で見つめる……しかし一方で、畏怖とは別の色のついた視線も、全体のうち少しばかりは存在する。それは、「サイガ-100は初手でいくら払うかトトカルチョ」の参加者たちの物とは別に……どこか光を帯びたような、畏怖というよりも―――
◇
「エントリーナンバァァァ……ツゥゥ!!」
一貫して晴れ渡り続けている青空に指を突き上げると、司会者は場を仕切りなおした。
人混みの間に戻り始めた先ほどと同じようなどよめきを浴びつつ、第2の片手剣の名前が読み上げられる―――
「『エクスエクスエクスエクスエクスカリバー』ッッッ!」
エクスエクスエクスエクスエクスカリバー(全長6メートル)が袖から台車に載って運ばれてきた。
「ほう……考えたな」
観衆の一人が呟き、
「知っているのか、知らない人!?」
また別の観衆に聞き返される。
「いいか……サイガ-100が持っているチェストリアは、確かに普通の武器をしまう分にはうってつけのアイテムだ……だが!チェストリアには5メートルを超えるのアイテムは収納できないというルールがある……!」
「な、なるほど……!全長6メートルの片手剣を作れば、サイガ-100は購入しても運びようがないってことか!」
「ああ……そういうことになるな。さて、我らが
特に本筋とは関係ない二人を含め、場にいるプレイヤーが残らず注視する壇上で……少しばかりの
「さあ―――1万マーニから!」
競りが、始まる―――!
「5000万!」
サイガ-100が手を挙げて言った。
競りが終わった。
4割ほどの唖然とする人々、そして6割ほどの「知ってた」とでも言わんばかりに溜息を吐く人々の間を通り抜け、サイガ-100は壇上に上がる……そして、己の3倍以上の身長を持つ、その
「っと……何だ、けっこう軽いじゃないか」
普通に
7割まで増加した唖然を潜り抜け、サイガ-100は元の立ち位置へと戻って行った。
◇
もはや、雲と言う概念が本当にこの世界に存在するのかすら疑わしい。
「エントリーナンバァァァ……スリィィィ!!」
言葉通り2本を曲げて3本を立てた指を、
結果の良し悪しはともかく、観客の視線がそこに集中されたのは、ほとんど事実と言って差し支えないだろう。
「『エ
それは一見して、平均的な偽エクスカリバー……つまり、過剰気味な黄金装飾を施された、一振りの片手剣でしかなかった。
しかし……勿論、そんなはずはない。鍛冶師たちが丹精を込めて作った偽エクスカリバーが、そのような破棄を持たぬ存在であるはずが無い。そう考えた一部の観衆たちは、鑑定系統のスキルを使用して……
「いいか諸君、この剣の効果は単純明快だ―――」
彼らが
「―――
喧騒が走り出す!
「そ、そうか……」「サイガ-100は食いしばりの権化、ステータス的なVITは低めなはず……!」「なるほど、これなら個人を狙い撃ちにできるな……」「すまんこれ俺が買っちゃっていいスか?」
静止されず増大を続けるそれらに、運営側は何ら手を打つことは無い……必要性が無い、とも言えた。それどころか、このやかましさこそが
「さあ―――1万マーニから!」
競りが、始まる―――!
「5000万!」
サイガ-100が手を挙げて言った。
競りが終わった。
当然のように
一瞬だけ掲げられた剣の反射する太陽は、どこか神々しさを伴ってすらいた。
◇
「エントリーナンバァァァァ……フォー!『物体Xカリバー』!触った人間は死ぬ!」
「5000万!」
◇
「エントリーナンバァァ……ファイブ!『へクスカリバー』!6本に分裂する!」
「5000万!」
◇
「エントリーナンバァ……シックス……!『パクスカリバー』!カルマ値一定以下じゃないと使えない!」
「5000万!」
◇
◇
◇
◇
「エ、エントリーナンバー……トゥエンティスリー……『サックスカリバー』……!説明は、割愛……!」
息も絶え絶えの司会者が、二号人類特有の暗視能力によってどうにか会場を見渡しつつ、増幅された声で告げる。掲げられた
夜は青空を奪っていく。
「さあ―――1万マーニから!」
だからこそ、司会者が必死に声を張って絞り出したその最後の一言に対して……
「5000万!」
こうして、第四回偽エクスカリバー限定