異様な空気が立ち込めていた。
「…………」
プレイヤーがいる。二人だ。そしてその周囲を取り囲む幾十のカメラは、二人の姿が
この空間を説明するのに、大した言葉は必要ない。無機質な部屋、中央に陣取る
部屋の外……フィロジェネテック・ジオグリフ第一回公式大会二回戦Cブロックの観客席を埋め尽くす騒音も、静寂包むこのプレイルームに入り込むことはできない。トトカルチョを呼びかける声も、デッキを取り出しつつ行われる喧嘩も、そして応援の追い風も……何もかもが遮断され、ただ沈黙という支配者だけが、
「……………………」
二人は睨み合うことをしない。両者が両者に睨み合ってもなお足りないほどの闘志を抱いてなお、ただ机の上のカードを意味もなく取っては、戯れにシャッフルなどして弄んでいる。特に意味はない。フィロジオでは、ゲーム開始時にシステムによるオートシャッフルが掛かるからだ。
しかしそれでも、彼らはカードを弄ぶことを辞めない。シャッフルし、扇に開き、フレーバーテキストを読む。これでもかと言うほどに読む。シャカパチはしない。彼らはフィロジオプレイヤーであると同時に紳士でもある。
そして、静寂が破られる。
それは、局所的に見れば、ただ瞬間的に展開したふたつのウィンドウに伴った、一秒にも満たないような効果音に過ぎなかった。
しかし、同時に……その直後に現れ始めた
『魔力媒介音響兵砲〈セイレーン〉へようこそ。出力レベルはどうなさいますか?』
片方のプレイヤーが、4メートル96センチに及ぶ巨大機械を実体化させ……そしてそれが9メートル92センチに
「最大だ」
言う。
「コマンド……【
もう片方のプレイヤーが、メガホンとは反対側の手に
「……【
言う。
巨大な機械が、よくわからないアンテナが、マイクが、スピーカーが、禍々しいオーラを放つ苗木らしきものが、二つ目のメガホンが……仮想の仮想の
開かれたウィンドウが、カウントダウンを始める。
片方のプレイヤーの傍らの怪しげな装置が、紫の光と共に、上部に設置されたリンクを回転させ始める。
もう片方のプレイヤーの左手のマイクが、5段階ほどの変形を経て何やら怪しげな角を生やす。
両方のプレイヤーが息を吸い込むのは、まさしく同時で。
部屋全体が震える。数個のカメラが衝撃に耐えられずポリゴンと散る。二人の鼓膜が破れるが、両方ともそれを想定しリジェネアクセサリーを装備しているため、また治る。そして、また破れる。
ふたりは5秒間叫んだところで急に黙る。有志検証班の「勇魚」からの好感度の急激な低下と引き換えに、この判定に使われるのは最初の5秒間の平均音量だということが判明しているからだ。
そんなウィンドウの出現に伴う効果音が、またしてもつかの間の静寂を打ち破って。
「よっしゃああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
先ほどの物とは比べるにも満たないような、小さな小さな大歓声が、それに続いて上げられる。
「よし、じゃあ俺先攻ですね!えーっとそうだな……Stに《ユザーパードラゴン》、Oに《アーマード・ラーヴァ》、でスペル・フェノメノン《
「《
「サレンダーで」
こうして、フィロジェネテック・ジオグリフ第一回公式大会二回戦Cブロックは終わった。