黒片が渦を巻く。
その中心はすなわち
「……」
それはどこまでも静かに、露出した骨格が形作るしゃれこうべのような顔面を辺りに向けて、その最奥に有する
鎌を思わせる形状の前肢に突き破られた、半透明の
「ガウッ」
鳴き声が響く。
真なる竜種全体で見れば平均より少しばかり低い全高……その麓で、威嚇をする数匹の犬がある……マジョリティヘルハウンド。下位種であるマジョリティハウンドと比較して、より高い暗視能力と鋭さを有するその眼光が……突如出現した"なんだかよくわからないもの"を、激しい敵意と共に突き刺す。
しかし。
「ガウッ!ガウッ!ガ……」
「シャアアアアアア……」
「……」
鳴き声と言うより呼気のようなその音が発されると同時に、その鳴き声は止む……代わりに聞こえるのは、マジョリティヘルハウンドたちが
「シャアアアア……」
再びの静寂を呟きで打ち破ると、
◇
ユザーパー・ドラゴンは眠らない。
その簒奪魔法に特化した体器官は、通常のドラゴンと比してかなり特殊な構造をとっており……直接的原因については不明なものの、最終的には睡眠を不要とすることに成功している。
だから、目の前に唐突に現れた骨色の竜についても、すぐに存在を感知できた。
「シャアアアア……」
デスベッドも、当然ユザーパー・ドラゴンに対しては初見だ。呼気と共に
「……」
そして、効かない。
ユザーパードラゴンからしてみれば、ただ相手が謎の音と共に謎の魔法成分を有する瘴気を放っただけなのだが……デスベッドは、その事実から
「シャア……」
デスベッドは考える。
デスベッドは特殊行動に利用する鎌旋骨をそのまま思考器官としても用いるため、鎌旋骨を使用すればするほど判断力が低下していく……現在はまだ8本が残っているし、先ほど使用した2本も時間経過による回復を始めている。しかし、それでも実に5分の4まで低下していることについては、まぎれもない事実でもあった。
それがどう影響したのかはわからない。
デスベッドは……
「GYAAAAA……」
ユザーパードラゴンは考える。
ユザーパードラゴンは魔法行動に特化した竜だから、比較的高い……すくなくとも、先ほどの
先ほどが小手調べで、そしてそれが特に効果を発揮しなかったなら……次の攻撃は、もっと強い物であると確定するはずだろう。
睨み合う2体の竜は、しばらくの間膠着状態を続けて……それを先に解いたのは、デスベッドの側だった。
「シャアアアア!」
放つ特殊行動は……
そして、ユザーパー・ドラゴンは―――
◇
なぜか意識に急に現れたその
理由はわからないが、ユザーパー・ドラゴンはそれはそれでいいなと思った。飛ぶのに支障はないし、先ほど試したところだと、むしろスピードが上がってすらいる。
無果落耀の古城骸における、
まるで、相手から奪い取ったものを、誇示するかのように。