月光が大地を突き刺す。
ふと、軽いなと思う。魔力補給用に展開中の
黒曜の装甲は依然として、内部の命晶核に降り注ぐ輝きを閉じ込め続けている。先端に備わった煌弩晶針も、一貫して受け取った耀光を光耀へと換え続けている。ただそれらが生み出す重みだけが、俺にとって明らかに変化しているのだ。キャラクターを育てるというのはこういうことなんだろうな、と改めて思う。
そしてふと月を見上げれば、いつか
『連絡:……
声が響く。どこに響いたかはわからないがどこかしらに響く。
「お、終わったか……じゃあ俺がそっちまで迎えに行くからちょっと待ってろ」
言いながら、手早くインベントリアを操作してベヒーモス用のBW-ビーコンを取り出す。本来なら船で7日間かかる大陸間移動も、このアイテムがあれば5秒で済む、おかしいだろ……俺は思ったが、よくよく考えてみるとおかしいのは船を使っても大陸間移動に7日間かかることな気がしてきた。ま、まあ技術開発が進めば……する必要のない言い訳をしつつ、ビーコンのトリガーに指を掛ける。
『要請:少々お待ちください』
しかし、そこでまた声が響く。
「どうした?」
『
俺は驚いた。サイナの推測が当たっていたからではない……サイナが、この推測を
「……なんで?」
聞いてから、ちょっと不明瞭な質問だったな、と思う。
『応答:『推測が当たっている理由』と『推測をした理由』の2パターンに解釈できる問ですが、契約者は後者を意図している可能性が高いでしょう。パターン1:『推測が当たっている理由』……
俺はフラグ管理とかチャート管理とかメモリレジスタ管理とかについていろいろと考えたが、結局
「……つまりなんだ、お前も月を見てるの?」
とだけ返した。
『肯定:現在、当機は
「感想は?」
『非常に鮮やかで、綺麗で……インテリジェンスです』
「それは何より」
俺にはわからなかった。サイナが月を見ている理由もわからなかったし、サイナが俺を呼び止めた理由もわからなかった。でも、それでいいんだろうと思った。
『質問:
そう聞いてきた理由についても、同じことが言えた。
再び空を見上げつつ答える。
「……綺麗だと思うけど?」
『しかし視力的に考えると、当機の月の方がもっと綺麗です』
俺はイラッとした。頭装備を規格外特殊強化装甲【艷羽】に切り替え、更に
「ハァ~~~?いくら征服人形だからって調子に乗るなよ!お前のアイセンサー程度軽く上回ってやるよ、かかってこいやッ!」
『望むところですにゃん』
「あっお前ネコミミユニット付けたな!?システム的な暗視能力はズルだろ!」
『そういう契約者も頭部装備を変更しましたね?声がくぐもっていますよ』
「くっ……!いやそれを差し引いても俺の月の方が綺麗だね!」
『ご不満でしたら……当機の月、実際にご覧になりますか?』
「いいだろうよォッ!」
俺はインベントリアにBW-ビーコンを速攻でしまうと、代わりに視覚共有ユニットを速攻で取り出した。【艷羽】のスイッチをオフにしてこっちをオン!速やかに被りサイナの視界に接続し、そして―――!
『
煽り口調で聞くサイナに、
「いや認めない、お前の月の綺麗さはせいぜい俺と同格程度だ!」
俺は断固として答えて、
『そうですか……ふふ』
サイナが笑った理由が俺にはわからなくて、でも、それでいいんだと思った。
本当に綺麗な、満月の夜のことだった。