シャングリラまで約五分(短編集)   作:Z-LAEGA

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クソゲーコンペ至高のクソゲー賞受賞に伴い現れると想定される「おい焼肉食わせろ!」などと要求してくる野蛮な人々を鎮めるために執筆された焼肉二次です


おお、燃え盛る炎に凝望を

サバイバアルと焼肉をしている。

 

「おいサンラク、これひっくり返すぞ」

 

サバイバアルが言いながら武骨な箸を伸ばし、皇金焼肉板(おうごんやきにくいた)カイザープレットの山吹色に鏡像を落とす。一枚の肉切れが裏返され、じゅうという音と共に油が弾ける。

 

「了解……イイ感じに焼けてきたな」

 

俺は言いながら、狙う肉に目星をつけておく。こういう時に渡り鳥(ミグラント)は便利だな……ハシビロコウマスクと違って、ずらしたり嘴を開いたりしなくても食事ができる。

しばし、沈黙が流れる。ビーフオマージュ・レッドボディの切れ目たちが金板の上で踊り狂い、肉の焼ける匂いを海蛇の林檎の店内に漂わせる。

 

「……」

 

ちらとサバイバアルの方を見れば、こいつもどの肉を選ぶかなんとなく決めたようだ。彼の視線が向かうゾーンに大体の目星をつけ、その付近の肉は避けることを決めておく。カイザープレットにつけられた段差が、肉たちを華麗に受け止めながら、照明を受けて黄金(きん)の光を放つ。

―――今だ。

俺は確信した。肉が弾ける瞬間と肉が弾ける瞬間の間に、焼肉の確かな()()を見た。右手の箸を開く。狙っていた肉を見定める。そして、一直線に突っ込んで―――

 

「……?」

 

いつの間にか、カイザープレットの上から肉が無くなっていた。

 

「……」

 

混乱しつつ、とりあえずサバイバアルの方を見る。サバイバアルも混乱しつつとりあえず俺の方を見てきたので、結果的に顔を見合わせる形になる。しかし……渡り鳥(ミグラント)の眼は二つじゃない、俺は顔を見合わせながら、同時にその()()()()()者を視ることができる。

幼女(ティーアス)先生が、小さな頬を動かしながら……何かを()()()()()()、サバイバアルの背後に立っている。

 

「…………なるほどね」

 

とりあえずインベントリアから新たな肉塊を取り出し、肉切り包丁の形にした【冥輝(メイキ)】で連斬スキルを発動してべべべっとカットしていく。なんとなく察したらしいサバイバアルが、おずおずとイイ感じに切れた肉たちをトングでカイザープレットの上に並べていく。

……やってやろうじゃねえか。

俺は肉が食べたかった。

 

 

「返すぞ」

 

「おう」

 

先ほどと比べて随分簡潔なやり取りを経て、またもや赤色が茶色に塗り返されていく。その淡々とした空間は、言うなれば俺たちの()()で満たされていた。何としてでも自分の肉を守り切ってやるという闘志が、カイザープレットの下で燃え盛る橙色の焔と重なる。

―――今、

 

永劫の眼(クロノスタキサイア)ァッ!」

 

だ。

世界が減速する。幼女先生と俺の間に共通しているのは、肉を()()()()()()()()で食べたいという点―――であれば、自分が最適だと思ったタイミングで意識を加速させれば。

 

(……やっぱりな!)

 

金髪の幼女が走り来る。俺は当然、彼女を止めねばならないが……クソ、このステータスでもまだ体が相当重い……!覚えているバフスキルを片っ端から発動し、少しでも体を軽くしようとする。星海飛脚(アステ・ランナー)でモーションを加速ッ!封雷の撃鉄(レビントリガー)(ハザード)でさらに加速ッ!封雷の撃鉄の自傷ダメージで覚醒己律を発動ッ!積み上げられたバフたちが俺の肉体に様々なエフェクトを纏わせ、それは……どこか、虹のようでもあって。リミットブレイク・レェス、ヴィス・ユガ、リミット・アセンション……そして。

 

「―――(プラ)(ディ)(オン)ッッ!!!」

 

肉体が逸脱の速度を帯びる。その場で四歩足踏みし、弾丸めいた迅速を己に乗せる。幼女先生も異変に気付いているようだ、肉から視線を放し俺を見据えている。だったら―――俺が取るべき行動は。

 

「一つだァッ!」

 

箸をそのまま()()()()()!煩雑な光たちを受け止めるカイザープレットに目を向けて、今度こそ一直線に肉を掴み取ろうとする!間に合うか?間に合わせて見せる!俺の全身全霊で、絶対に肉を食って見せるんだァーーーッ!!

 

「ォラッ!」

 

肉を一切れ、いよいよ掴み取る。そのまま加速したモーションで口に運ぶ。俺の加速は、世界の減速はもうすぐ終わる。だったら、せめて―――!

 

()()……」

 

確かに口の中に入った牛肉が、熱と旨味を撒き散らす。俺は嬉しかった。自分が幼女先生に妨げられず、どうにか肉を食えたことが嬉しかった。まあ……残りの肉は全部回収されてしまったんだが。そんなことは知ったこっちゃない。加速の終わりがいよいよ近い、次第に効果時間を終え始めたスキルたちが、火花が散るようにエフェクトを消していく。ああ―――

 

「ぬぺぼきゃぷ」

 

「さ、サンラクーーーっ!」

 

俺は超高速で肉を一切れ掴み取って口の中に放り込んで咀嚼した後様々な方向に後先考えずに生み出しまくったベクトルによって体中をひねられて死んだ。

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