サバイバアルが仇討人になるより前くらいの時系列です
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[特殊裁定(システムウィンドウから確認可能)]
この装備は現在装備中の頭、胴、腕、腰、足の装備の耐久値を全て消費することで女性のみ装備可能。その場合この装備のステータスは耐久度を除き、消費した時点での装備のパラメータと同値となる。
[特殊裁定(システムウィンドウから確認可能)]
この装備は耐久度を持たず、通常の破損状態にならない。この装備は装備者が死亡判定が決定した際に解除され、再度の死亡判定を受けることで再装備が可能となる。この装備を装備している間、装備者は常にデスペナルティと同様のステータスダウンを受ける。
「
◆
「こういう場合どうすればいいんだ?」
サバイバアルは俺に聞いた。
ファステイアの路上に降り注ぐ清々しい陽光を蝕むように、彼(同時に彼女でもあるが)のアバターの周囲を黒ずんだ靄が囲んでいた。靄たちは生きているかのように飛び回っては死んでいるかのような気配を飛び散らせ、サバイバアルの全身をこれでもかというほどの不吉の塊で装飾していた。汚していたと言ってもいいかもしれないが、こいつは最初から汚れてるところもある。一概には語れないだろう。
そういう諸々の事情を鑑みた上で、俺はサバイバアルと視線を合わせた。目つきの悪さを隠すみたいに目元のあたりで揺れ動く、灰色のヴェールの向こうに答えた。
「死ねばいいんじゃねえかな」
俺は本気でそう思っていた。
サバイバアルの身に具体的に何があったのかは知らんが、とにかくこいつはなんらかの手段で入手したR.I.Pを着けて、それが外れなくなって困っている。まあ普通の武器みたく装備品メニューから外そうとするとエラーが出るから、そこで動揺する気持ちはわからなくもない。だが、なんのかんのいって死ねば全ての問題は解決される。じゃあ死ねばいい。
……いや、待てよ。
本当にそうか?
黒づくめの喪服に包まれたサバイバアルの身体をサッと一瞥する。俺は疑いを持ち始めていた。いくら元脳筋ゴリラとはいえ、アイテムに関する簡単な説明文を理解するくらいの知能はあるはずだ、あると信じたい。だいたいこいつはシャンフロでは普通に武器を結構使うジョブらしいし、脳筋ゴリラ状態はあくまでスタイルの一つと見るべきだろう。じゃあ知能あるわ。しかし、そうだとしたら……なぜR.I.Pの解除条件を把握していない?
……
俺はなるべく長く考えられるようにサイレントで思考加速スキルを発動した。目の前の光景が速度を失っていく。街道の上で無意味に舞う砂塵や、やけに視線を逸らしたそうな顔をしつつ
……考えていこう。
スローモーションで踊る喪服の肩のリボンか何かが、太陽をやはりゆっくりと透かしている。というのは関係ない情景だがつい意識してしまった、プレミ1だな。
読めば理解できるはずのR.I.Pの説明文を把握していない。そういう場合に最初に考えるのは、
この可能性は一見ありそうにも見えるが、それにしてはサバイバアルは……あまり動揺していない。もしこいつが説明文を読まずいきなりR.I.Pを使ってしまったんだとしたら、その先にはたかがお試しで自分の大事な防具を失った哀れな男がいることになる。動揺なんてものじゃないだろう、母親にセーブデータを……忘れろ、忘れるんだ。
着せ替え隊なんてものを立ち上げたからには、まるきり防具に執着がないタイプという訳でもないだろう。自分の防具を失えば相応の悲しみが来るはずで、俺にする質問も「どうやって脱ぐか」より「どうやって防具を取り戻すか」あたりになるはずだ。まあそっちを聞かれても「諦めろ」以外答えられないけどな。
とにかくこいつは見たところ、悲しんでるって様子ではない。驚いてるというのも違う。ヴェールに隠されてよく見えないが、目元の感じは……うーん。これ無の顔じゃないか? 特に喜怒哀楽の中で特筆すべき感情がない時の顔な気がする。少なくともラブクロックではそうだったし、無の顔の状態ではピザが持つ感情とヒロインの感情が「共鳴」してしまうような事故が起こりにくいので休憩ポイントとか呼ばれてもいた。ピザが持つ感情って何?
あるいはこの目は清々しさとも取れるが……こんな辛気臭い上になんかぬるぬるしてるドレスを着て清々しいも何もないだろう。じゃあやっぱ無の顔だわ。少なくとも防具が壊れることは知った上でR.I.Pを使って、想像通り壊れたので「ほーん」みたいになってる、ただそれだけの顔。でもそれなら説明文を読まないとおかしあっ
速度を取り戻した世界で、サバイバアルの口が開かれる。
「……あ? コレ死ねば解除できるのかよ。途中までしか説明文読んでねえからわからなかったぜ」
ただせっかちなだけかよ!
「ちょっとその辺の宿屋で死んでくるわ」
そう言い残すとサバイバアルはスタスタと去っていった。高くない、しかしリアル人類の平均値は優に上回ったAGIが、黒死の粒子を残像のように振り撒きつつ、彼の背中を遠ざけていく。
「……何だったんだ?」
あまりの消化不良感に、思わずそう呟いてしまう。
ま、まあ……うん。説明文を上から読んでいって、解除方法の欄にたどり着く前に飽きてとりあえず使うことにしたってなら……確かにあんな感じになる、かな? いやでも解除方法って結構最初の方に書いてなかったっけ。それとも……よっぽど
R.I.Pで?
謎だ。
そうして俺が首を捻っていると、裏路地の方から呼び声が聞こえてきた。
「サバさ〜ん!」
どうやら着せ替え隊の生産職らしい。
「あっ超変態ニキ!」生産職は初めて聞くあだ名で俺を呼んだ。頭上をチラリと確認する……チッ、着せ替え隊の癖に
「サバイバアルなら死にに行ったぞ」
「あの人が生きに行ったこと一度もなくないスか?」
その側面はあるけどね。
「あいつに何か用でもあったのか?」
「ええ、ちょっとサバさんがえっと……コレ言っていいのかな……まあ大丈夫か……いやでも……」
最初に口開いた時点で負けてるだろ。
「まあ言うか、うん、うん! サバさんが
何を見せられてるんだ……?
一人芝居をしながら
俺自身は、そう判断したのだが。
「ようサンラク…………っ!?」
ちょうど宿屋から帰ってきたらしいサバイバアルの見せた……何と言うか、