シャングリラまで約五分(短編集)   作:Z-LAEGA

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掲示板のノリを会話劇に突っ込みたかったんですがうーん?という感じ


実況!ツチノコ杯空の部

「さぁ~~~もうすぐスタートですツチノコ杯空の部」

「あのすみません」

「実況は私、名無しの開拓者と―――どうしたんですか名無しの開拓者さん」

「いやあの、僕は海の部の実況担当だったような……」

「……ちょっと不慮の事故で、前任の担当者が出られなくなってしまいまして」

「別に事故の一つや二つ、リスポーンすればリセットできる話では?」

「いや、()()()()()()()んですよね」

「は?」

「あの、ちょっと手配ミスがあったと言いますか……」

「手配ミスって何!?」

「人間砲弾役と間違えられちゃって」

「この広大な港で何が始まろうとしているというんだ……?」

「競争ですよ」

「戦争の間違いじゃないですかね」

「ハハハ……さて、空の部参加者全7チームの解説を始めましょうか」

「せめて否定してくれませんか!?」

「おーっと残り時間も押してきました、そろそろ解説をスタートしないといけませんね」

「……分かりましたよ、座ってればいいんでしょ座ってれば!!」

「エントリーナンバー1、機体名……『エグゾ=エチード』!」

「オーソドックスな複葉機、って感じの見た目ですね」

「実際性能も大体はオーソドックス……なんですが、実はちょっと特殊な面があるんですよ」

「というと?」

「『エグゾ=エチード』がツチノコ杯に応募されたのは空の部が開設される前でして。当時は『どう考えても飛行機が船の大会に出られるわけねーだろINT振りなおしてこいよwwwww』みたいな匿名掲示板の煽りが蔓延っていた時代でして、まあシャンフロにINTなんてステはないんで普通にエアプなんですけれども、まあとにかくこういう雰囲気が全体的にあった、と言いますか」

「つまり……『船の大会に出られるわけ』を世間が求めていた、ってことですか」

「そうそう!ですから、『エグゾ=エチード』にはそのための()()()()が為されているんですよ」

「理由付け……()()()だったりします?」

「その通りです。『エグゾ=エチード』はその点において、()()()()ことができる数少ない機体と言えるでしょう。今回は空の部門と海の部門と陸の部門に同時出場しているらしく」

「ちょっと待った」

「どうしました?」

「陸の部門、何?見たところ大海原が我々の視界を青一色に染めているんですが」

「……アレを見てください」

「アレは……()()()()?」

「造ってるんですよ、橋を」

「馬鹿じゃねえの???????????」

「再来年にはどうにか完成させるって言ってましたけど……まあ、この様子だと無理そうですね」

「レースの始まりよりサービスの終わりの方が先に来るでしょ」

「まあ……次に行きましょう、エントリーナンバー2『()(バタ)()』!」

「あの」

「はい」

()()()()()?」

「そうですね、伝書鳥(メールバード)です」

「……もしかして、鳥に紐を括り付けてゴンドラを運んでもらう、みたいな?」

「その通り。設計した名無しの開拓者氏は『シャンフロで最速のMobは伝書鳥だから、当然のことながらそれを使えば絶対に勝てる。愚かな鳥どもも、これから築かれる新たなる伝説の礎になれて浮かばれるだろう』とのコメントを寄せています」

「飢えたハヤブサに餌と間違えて食い尽くされてほしい」

「残念ながら三食欠かさず与えているらしく」

「福利厚生が充実している……」

「搭乗者の人間性はともかくとして速度は確かなもの、期待のチームと言えるでしょう」

「これ仮に勝ったとして実用化できるんですかね?」

「……次行きましょう!」

「誤魔化した……」

「エントリーナンバー3、『風船を持って飛び降りる』!」

「審査で弾けなかったの?」

「海の部に参加するつもりがいつの間にか定員オーバーしていたそうで、ワンチャンを賭けて急遽用意した風船で空の部に当日参加することを決めたそうです」

「審査で弾けなかったの????????????」

「…………次行きましょう、エントリーナンバー4『尖鉛筆(シャープペンシル)』」

「これは……()、ですか?」

「ペンシルロケットを横向きにした感じだそうです」

「それ重力に負けて一瞬でドボンしませんか」

「いや、ジャイロセンサーを付けてそのあたりは万全に調整しているそうです」

「シャンフロでジャイロなんて作れるんだ……」

「厳密には生体ジャイロだそうですが」

「は?」

「何でもないです」

「いやあの、詳しくお願いしたいんですが」

「本当に何でもないんですよ、生体ジャイロなんて別に何でもないし、さっきからあそこで私たちを見ている黒服の人が構えているスナイパーライフルのようなものも別に何でもない」

「実況降りていい?」

「(無言で手を上げる)」

「いや今のハンドサインは何ですか?????????」

「本当に、降りるんですね?」

「…………いいえ」

「そうですか。では次に行きましょう、エントリーナンバー5……『地球平和号』」

「地球限定なの?」

「つまり地球以外は別に平和でも平和じゃなくても構わないってことですね」

「ここユートピアな気がするんですが……」

「……見た目は、オーソドックスな戦術機という感じですね。積載量の関係か図体がデカいようですが」

「あの、明らかに()()みたいなのが見えるというか現在進行形でモクモクやってるんですが」

「……おっと、ちょっと天気が崩れ始めたようですね」

「あの煙突が原因なのでは?????????」

「…………()()()()()()()()そうです」

「は?」

「おやおや雷まで轟き始めましたね……これは荒れそうだぞ」

「いや何をおびき寄せてるの?????絶対この黒雲はそれが原因でしょそれが!!!」

「すみません雷で聞こえませんでした、もう一度お願いできます?」

「出禁にするべきでは?」

「ハハハ次行きましょう、エントリーナンバー6、機体名『機構(ザ・メカニズム)』!!」

「……なんですかこのめちゃくちゃ複雑な外見は」

「なんでも小型戦術機を大量生産して一つ一つを()()として組み込んでいるらしく」

「普通に凄いのが来たな……」

「設計者の名無しの開拓者氏によると『理論上は約4時間で新大陸に到達することが可能だ』だそうで」

「いや凄すぎません!?優勝候補じゃないですか!!」

「なお『試運転は一切行っていない』だそうで」

「解散」

「えーでは次、エントリーナンバー7、『マトロス・キャノン』!」

「いやいやいやいやいや」

「どうしました?」

「……あの、どう見ても()()なんですが」

「合ってますよ」

「大砲で5000kmはちょっとキツくない???????」

「いやそれがですね、この大砲は()()()()が可能なんだそうで」

「は?」

「砲弾の中にテントが張ってあるわけなんですが、この砲弾の周囲に()()()()が敷き詰められていましてね……空中で大砲を()()()してもう一度発射させられるんですよ」

「な、なるほど?」

「『火薬を都度使用して推進力を得るという意味ではロケットに近い』と名無しの開拓者さんは言っていました」

「あの、それ道中で生成された大砲は海に投棄されておしまいなんですか?」

「…………」

「なんか言えよ!!!!!!」

「あーまた雷だ、聞こえなかったな……まあそういうわけで、これにて全チームの紹介が終わりました」

「生態系!!!!!!!」

「うるさいですよ名無しの開拓者さん……おっとそろそろ時間ですね、では本格的に実況を始めるとしましょうかァ!!!」

「逃げた!!!!こいつ逃げた!!!」

「えー今のところオッズは『風船を持って飛び降りる』が最大で『エグゾ=エチード』が最小です、他にも色々ありますが時間がないので飛ばしまして……カウントダウンが、始まります!!」

「あーーー!!!!あーーーー!!!!!!!!!!」

「さあいよいよです……5!」

「あーーーー!!!!!!!」

「(手を上げる)」

「(黙る)」

「4!」

「……あの、雲行きがマジで怪しくなってきてません?」

「3!」

「しかも、なんか()()()()ような……」

「2!」

「ヤバくないですかこれ」

「1!」

「不吉すぎる」

「0―――」

 

 

「生きてます?」

「どうにか」

「まさか『機構(ザ・メカニズム)』が開幕と同時に爆発四散するとは思いませんでしたね」

「いやかなり予想通りだった気が……」

「さらに開幕と同時に雷が落ちるとも思いませんでしたよ」

「いやそれも予想通りじゃありませんでした?」

「雷が『地球平和号』に直撃したのもビックリ」

「それは確かに予想外だわ」

「二つの衝撃が同時に来たせいで大体の機体はお陀仏みたいですね」

「これ普通に犯罪では?」

「どっちが?」

「両方」

「『機構(ザ・メカニズム)』は不慮の事故、『地球平和号』に至ってはただの自然災害でしょう?問題はありません」

「自然…………?」

「大自然は雄大ですね」

「……まあいいや、それで残存する機体は?」

「『エグゾ=エチード』は飛行能力を失って空の部を棄権され現在海の部で争っています」

「航行能力が活きた形ですね」

「『()(バタ)()』は伝書鳥(メールバード)が速すぎて紐が千切れ置いてけぼりにされました」

「そんな面白いことある???」

「『尖鉛筆(シャープペンシル)』は破損につき棄権」

「……あの、普通に外装は無傷なように見えるんですが」

「棄権です」

「えっいや生体センサー」

「棄権です」

「アッハイ」

「『マトロス・キャノン』は内部のテントが破壊されたので棄権です」

「……えっと」

「えー、『風船を持って飛び降りる』以外の全機体が棄権したので……」

「風船が優勝????????」

「そうなりますね」

「えぇ……」

「えー、こんなこともあろうかと『風船を持って飛び降りる』の搭乗者である名無しの開拓者さんを」

「どうも」

「いやちょっと待ってください……なんか聞こえません?」

「本当だ、まだ雷が続いてるんですかね?」

「いや雷雲は平和号が壊れたとたん急速に晴れたはず」

「じゃあなんだろう」

「……あの、これ()()では?」

「ふざけんなー!」

()()らしきものも聞こえますね」

「あの、帰っていいですか?」

「(右手を上げる)」

「足音がどんどん近づいてきてるんですけど???????」

「ゴー!黄鉛筆(イエローペンシル)!!」

「何!?何その掛け声は!?」

「あの、僕の方は帰っていいですか?」

「何!?!??!?」

 

《この番組は、レッド・ペンシル・エージェンシーの提供でお送りしました》

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