ダンまち外伝~悪徳の迷宮都市ロアナプラ 作:37級建築士
前提としてあくまでダンまちが主役。ダンまちの世界に正反対ともいえるラグーンのキャラ、それが交わったときにおこる拒絶反応的なドラマ、それを描いていきます。
目指すべきは、ブラックラグーンを未読でも楽しめる作品
「おい姉ちゃん、良い飲みっぷりだなッ」
「おい、こっち酒追加だ、じゃんじゃん持ってこい!」
「久々のいける口だ。火酒の特上持ってこい!」
「……」
「ははは、なんだよここ!レゴラスにギムリ、そのくせ給仕にはキャッツダンサーときたもんだ。ロジャーラビットの夢を見るほど、あたしは草を噛んだ覚えはねえぞ。なあおい、お前がウサギだからか?何とか言ってみろっての」
「……ッ」
酒気のこもった吐息が、あと顔に押し付けられたお胸が中々にボリューミーで弾力もあって、とっても気の落ち付け所が無い。
非常に難解なスラングをベラベラと、正直もう帰りたくて仕方ないのだけど、どうにも逃がしてもらえる様子はない。ちびちびとお酒をなめながら、僕は時折助けを求めるようにシルさんを見る。
「……ふふ」
「!」
どうしてか、笑顔なのに余計恐怖を感じる。ごめんなさい、理由はわからないけど不可抗力なんです。この人、まったく僕の言ってること聞いてくれないんです。
不思議な武器を持つ、とってもおっかなくて綺麗なレベッカお姉さん、彼女との出会いはダンジョンの中で
× × ×
「なあ、おい」
気配を殺し、通り過ぎようとした僕は、とても冷え切った声を浴びせられた。
冷や水で心臓が止められたような感覚、何故なら僕は今関わってはいけない人と関わってしまったからだ。きっかけは不自然な音、爆音とも、金属音ともとれないその音色に惹かれ、好奇心から足を運んだ。
17蔵、そこはミノタウロスが群発する危険地帯。そんな中で丸腰の女性を見つけた。
手足とお腹も大胆に露出した情熱的なファッション。けど、その目つきはモンスターよりも動物的で、とても普通の女の人には思えない。
そして僕は見た。その女の人が、両脇に収めた何かを抜くと、周りにいたミノタウロスが一瞬で消え去った。
理解できない戦い、僕はその場を去るべきと本能が察した。思えば、ベル・クラネルには女難の相が激しく付きまとう人生故、本能的に感じたのだろうが
すでに、毎度のことながら手遅れという奴だったのだ。
「……あ、あはは」
どうしよう、もうすでに機嫌が悪そうだし、なんで
「手前、ガキか?」
質問をされた、まあ確かに、年は15にも満たないしと、ベルは黙って頷く。その際に手を上げていたのは本能的にか
「……ハンズアップか、ならこれを収めた方が良いな」
「?」
「おい、ガキ……ここはどこだ」
手に持った何かを収め、女性は近づく。身長差もあって、ベルは首を上げた。目が合う、予想外にその尊顔は整っていて、原石のような美を感じさせる。
「おいおい、目を覚ませば地の底。ロックの馬鹿もいねえし、おまけに出会ったのはバニーボーイ、なあ教えろ。ここはどこで、お前は誰だ?」
「……それは、ダンジョンとしか」
「ダンジョン? おい、それはどこの隠語だ。」
「……ダンジョンは、ダンジョンです。ここはオラリオで、僕たちは冒険者、ダンジョンにいるなら、あなたも同業者じゃ?」
至極当たり前の回答。ダンジョンにいるのに、どうして、まるで別世界から来たような謳い文句。ふと、過去に起きた事例がベルの脳裏によぎる。
……古城さんや雪菜さんと同じ、この人も、別の世界から
かつて起きた異界との接触を思い出す。ではこの人は、一体何者で、何をもたらすのか
「えっと、あなたもしかして」
「……」
「え、ちょっと」
興味なさげに、女性はベルの横を通り過ぎる。退屈そうに欠伸をかき、もう飽きたとばかりに
「あの、どこに」
「決まってんだろ、地上だ。あたしはガキのお守するほど暇じゃねえ」
……絡んできたのは貴方の方じゃないですか!
脳内で突っ込むも、それを口にできるほど蛮勇は持ち合わせていなかった。
「ま、待って、出口そっちじゃ、その先は18階層で」
「は、18? なんだそりゃ、おいおい、あたしはいつからダンテの妄想に浸かってんだ。たく、しゃあねえ」
「!」
奇妙な絵柄が書かれた紙、それを胸のアーマーに叩きつけるように押し付ける。
「巡礼者になる程あたしは煉獄のカルマも、ましてやコズミックホラーにも興味はねえ。バニーボーイ、こいつでガイドしな」
「……これ、もしかしてお金なんですか?」
「はぁ! ドルも通じねえとか、いったいここはどこなんだよぉおお!」
× × ×
愚痴を聞かされ、たまに小突かれ、ベルはレヴィに振り回されながら今に至る。
「……なるほど、ベルさんも大変ですね」
「はい、そうです……ひくっ」
気が付けば、宴も大盛り上がりで、ベルも何気に酔いが回ってきた。シルを隣に、遠めにバカ騒ぎするレヴィを尻目に卑屈なため息を漏らす。頭を撫でるシルさんがとてもやさしくて、癒される。
「本当に、一体何者なんですかね?」
あの人はと、視線の先、荒くれの冒険者相手に酒を交わし、ドワーフすら打ち負かすように豪快な飲みっぷりを魅せる。
「……エールか、こんなのはピスと変わらねえ。バカルディはねえか?ジャックダニエルもないなら、あたしは火を噴くぞ、デビット・パーカーフィールドみてえに派手なのをな!」
「たく、なんだいそりゃ。坊主、あんたも厄介な客を連れて来たもんだね」
「……すみません」
ミア母さんが絡む、けれど仕方ないんです。これはどうしようもなくて、はい後悔してます。シルさんの慰めが心にしみる。
「なあ、あんた。そんなに飲んでるけどね、ちゃんと支払いはあるんだろうね」
「安心しな、足の本数は足りてるよ。ミセス・ハルク」
「なんだい、意味は分からないが不思議とあおられてる気がするよ。ま、その気概はかってやる。ほら、あたしの酒だ」
ボトルで置かれた銘柄の無いドワーフの火酒、特注品なのか、周りのドワーフ酒飲み達は歓喜の声をあげ、レヴィさんはその見るからにきつそうな酒をストレートで一口二口と
「いいねえ、いい火加減だ。それにこの店も、イエローフラッグほどじゃねえが悪くねえ」
「知らない店だね、まあ、誉めてんのなら受けとるよ」
「……」
「なんだベル、お前も欲しいのか?」
いえ、それを飲めば僕の意識は明日に飛びます。
やっぱガキだなと、レヴィさんはまた酒宴に戻る。ぼくよりも、ある意味冒険者らしい、この街の荒くれた空気にすっかり染まっている。
……ぼく、この人を連れ帰らないといけないんだよな。
何度目かわからないため息、隣で楽しそうにしているシルさんの慰めを感じながら、ただ僕はこの宴が終わるときを待ち続ける。
「さあ、飲むぞ! 先につぶれた奴は、あたしのカトラスでケツの穴を増やしてやるからな!」
沸き上がる歓声、あとから来る客も混ざり、宴はより大きな集団に
……帰りたい
次回、戦闘描写いきます。
レヴィのセリフの元ネタは全部アメリカ映画や文化の話です。雰囲気で楽しんでもらえれば大丈夫です。