グッドナイトダービー   作:海月くらげ

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体調不良で遅れました
今後も不定期になると思いますがどうぞよろしくお願いします。

主人公は自分のことを老いぼれと言ってますが、外見は若いです

2021/6/22 誤字を訂正しました 報告ありがとうございます


第三話

「ありがとうございました!アドバイザーさん!」

「ああ、怪我に気をつけたまえよ」

 

 名も知らぬウマ娘が汗を滴らせながらも笑顔でトレーニングに戻っていく。

 

 あれから1ヶ月は経った。ルドルフと理事長の熱心な説得に負けた私は、トレーナーのついていないウマ娘や新人トレーナーにウマ娘視点からアドバイスするという職(ベテランのトレーナーの仕事では?)に就いた。現役時代に後輩にした助言が逸話として残っているとかなんとかで是非ともきて欲しいと言われたが、それに加えルドルフが強く推薦したとたづなからこっそり教えてもらった。

 

 助言にしても大成したのはわずかな幾人かで、多くのウマ娘は注目されることなく去っていった。残酷ではあるがそれがレースの世界である以上仕方のないことだ。敗れたものはいずれ忘れ去られ、勝者は敗者の意志を継ぎまた走る(戦う)

 

 私もその敗れ去っていった者の一人のはずだ、今を走るウマ娘たちに時代遅れの敗者が助言することなど無いかもしれない。

 

 だがそれでも、今こうしてここにいるのはやはり未練が消えないからだろうか。

 

 そう考えるともしかしたらたづな(あの人)も1枚噛んでるのかもしれない。現役時代も何かとお世話になったし、呼び捨てでいいと言われるくらいには仲が良かった。もしかしたらあのおっかない先輩は私の魂の奥でくすぶっているものも見抜いているのかもしれない。

 

 だが私にはもうどうすればいいのかわからない。走ることも叶わず、引退してからも未練に縛られ、しかしアドバイザーとして勧誘されても言い訳を並べ辞退しようとし、結局承諾する。もう自分のことがわからない。

 

 しかしまあ、あれこれ考えていると疲れてきたのか少し眠たくなってきた、ここに来て暫く経ったがまだ完全に慣れていなくて疲れてしまったのかもしれない。今日は風もなくポカポカと日が差している、元選手とはいえ衰えた身だ、眠たくもなる。特に、今日のような雲ひとつない爽やかで陽気な日は。

 

 思考が陰鬱な方向に向いてきているから少し休憩してリフレッシュしよう。幸いにも私の体調面も考えて、私の下へ1日に来る人数は少なめに程度調整されている。少しくらい目をつぶっていても大丈夫だろう。

 

 

 ***

 

「先輩、起きてください」

 

 目を開けるとウマ娘が一人立っていた。はて誰だろうか、凛々しい顔つきに三日月のような特徴的な前髪…。

 

「ん…、うぅ…、ああ、ルドルフ…」

 

 おぼろげだった思考がクリアになっていく。軽く目をつぶって休憩するつもりが思った以上に本格的に眠ってしまったらしい、ルドルフが微妙な顔をしてこちらを見ている。そういえば彼女は生徒会の役員だったはずだ、先輩でかつ知り合いとはいえ昼寝をして職務放棄をしていたらそりゃ微妙な顔にもなるだろう。むしろ雷が落ちてこないだけ御の字だろうか。

 

「体調面についてはこちらも理解しているつもりですが、あまりこう堂々と寝るというのは…」

「ああ、すまない、今日はいい天気だったからついね」

「雲ひとつないまさに青天白日、心地いい絶好の練習日和でもありますから」

 

 ルドルフは気まずそうにこちらを見て話しかけようとし、やめるという行動を何度か繰り返している。何か言いづらいことがあっただろうか、彼女はいうべきことはきっちり言うたちだとは1ヶ月という短い期間ではあったが理解している、説教しようか悩んでいるという訳ではない…はずだ。

 

「迷惑…だったでしょうか…」

「…迷惑?」

「ええ、私と理事長で貴女を勧誘した時、貴女は自分のことを『老いた役立たず』と自己否定していました。あの時は少々興奮していましたが、もしかしたらその気でないのに無理やり誘ってしまったのではないかと、もしそうでしたらいつでも辞められるように私も掛け合います」

 

 どうやら昼寝していたことではないらしい、ルドルフの顔からは後悔かそれに似た感情が読み取れる。

 

「ルドルフよ、君が気に病む必要はない。結局最後に決めたのは私自身だ。私は引退してから長い上にレースもあまり見てこなかった、今でも老いた役立たずだとは思う。だが、わざわざ指名してまでくれた人の顔に泥を塗るようなウマにはなっていないさ。それに」

「それに…?」

 

 

 

 

 

「明日は雨が降るそうだ、辞めるのは晴れた日に決めてる」

 

 

 

 

 

 

 

 






ウマ娘が持つキラキラと輝く貴いもの

脆く壊れやすいが、これを持つウマ娘は
苦境に立ってなお折れなかったと言う
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