グッドナイトダービー   作:海月くらげ

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 AC要素を少しずつ混ぜています。誰か主任がウマ娘の可能性を証明するためにトレーナーになるやつとか書いてください

 今回の話ですが、作者の啓蒙が足りなくて分かりずらかったら申し訳無いです。もしかしたら後々直すかもしれません

 そして遅れましたが感想、お気に入り、評価ありがとうございます!クソザコメンタルなので投稿した後はいつもドキドキしてますが、皆さんの温かいコメントでむせび泣いています

 見てくれる全ての人に血の加護がありますように

2021/6/30 誤字を修正しました


第五話

 今日も変わらず仕事をこなす。

 

 助言を必要とするウマ娘もしくはトレーナーのもとへ向かい、少し手助けをする。私の活動が少しずつ実を結んでいるのか、少し前にたまたま出会った理事長に「感謝ッ!!」と言われた。役立てているのなら何よりだ。

 

 最近は移動するのも億劫になってきた、ガタが近いのかもしれないがまだまだ動ける、こういう時ウマ娘で良かったと思える。最近はすれ違うウマ娘が、親切心からか車椅子を押してくれることも多くなってきてとても助かっている。みんないい子達ばかりだ、レースを見に来てくださいと招待されたこともある。

 

 けれど、ここに来てからも、来る前ですら、どんなレースも一切見なかった。いや、正確には見たくなかった。

 

 結局私は心の弱い臆病者だ。かつて夢破れ去っていったウマ娘の遺志を継ぎ、多くの人の夢を背負い走るなどとのたまいながら、いざ自分がその立場になれば、誰かに夢を継いでもらうことも、終わらせることもできずにいる。だから、きっと、あのキラキラした輝きを見ると…いや、よそう。私はもうターフに夢を見れないのだから。

 

 さて、車椅子を押してもらってやってきたのは保健室、ご存知怪我の治療などに使われる施設だ。先のように怪我はもちろん、バッドコンディションまで治すことまでできる。独特な匂いのするこの場所のお世話になった人は少なくないことだろう。

 

 私がそんな場所に来るのは別に怪我をしたとか、体調が悪いとか、サボりに来たとかそういう理由ではない、注射を打つためだ。ひとまず空いているベッドの一つを使わせてもらう。が、その前に処方された薬を水で飲む。

 

 足が痛むのを我慢しながらベッドの上に腰掛けズボンを下げ太ももを露出させアルコールで消毒する。そして車椅子の背中に取り付けたポケットから薬品と注射器を取り出し、それらもアルコールで消毒してから薬を打ち込む。最初の頃は注射に対する恐怖心で震える手をなんとか抑えて打っていたが、今ではなれたものでスムーズに一連の作業を行える、慣れたとはいえ苦手なものは苦手なものだ。もちろん不健全な薬物などではない。

 

 事故を起こさないように器具を処理していると、保健室の扉が開く。やって来たのはルドルフだった。

 

「グッドナイト先輩ここに…っ!!」

 

 片付けている注射器を見てビクッとしているのを見るあたり彼女も注射が苦手なのだろう、カーテンを閉めておくべきだった。なんとも言えない空気を払拭するためか、ルドルフは咳払いをし、仕切り直す。

 

「あー、先輩、どうしてここに?」

 

「見ての通り注射だよ。安心したまえ、怪しい薬じゃないさ」

 

「いや、そこは心配してないのですが…ところで、お時間はありますか?」

 

「ああ、何かあったのかね?」

 

「いえ…少しばかり、相談というか、話したいことが」

 

 ルドルフの顔はいつもの凛々しい表情ではなく、何か決意を固めたような、そんな印象を与えるような顔をしている。

 

「そういうことを聞くのも、アドバイザーの務めというものだ、ここでは話しづらいことかい?」

 

「そうですね、よろしければ場所を移しても?」

 

「ああ、大丈夫だとも」

 

 身だしなみを整え、ルドルフに車椅子をゆっくりと押されながら移動する。すれ違う生徒がほとんどいないのは今が昼食の時間だからだろうか、誰もいない廊下を静かに、ゆっくりと進んでいく。

 

 やって来たのは大樹のウロのある場所、今の時間帯なら保健室より人が来ないと踏んだのだろうか。ルドルフは私の目の前に出てきて、私が促すとポツリポツリと話し始めた。

 

 自身の夢のために、全てのウマ娘が幸福な世界のために、自身の走りで理想と規範を体現するのだと固く誓ってきた。だが、その彼女の走りを前にして自信を失くし、引退するウマ娘も幾人も見てきたそうだ。

 

「私はトレーナー君に問うた、私の夢をどう思うかと、勝利を積み重ね頂点に立ちウマ娘を救うという私の夢は、私の往く道は正しいのかと。彼は言ってくれた、『私の夢を信じている』と」

 

 彼女は、いや、ルドルフはこちらをまっすぐに見つめる。

 

「私は心の中を覗くことなんてできませんが、それでも貴女の心の内を多少は理解しているつもりだ。だからこそ聞きたい、私の夢をどう思うだろうか」

 

 数分だろうか、數十分だろうか。いや、きっと30秒にも満たない短い時間だっただろう。ルドルフは一言も喋らず私の答えを待っていてくれていた。

 

「ルドルフよ、今の私はその問いに答えられるほどの器じゃない。諦めと羨望、醜く歪んでいるのが今の私だ」

 

「そんなことは…」

 

「だから」

 

「…」

 

「だから、君の三冠がかかったレース…」

 

「!!」

 

「君が夢の一端を掴むことができるかがかかっているレースを、見届けてからでも良いだろうか」

 

「……ええ、わかりました。 どうか私の往く道を見届けてください」

 

「ありがとう、優秀なウマ娘、シンボリルドルフよ」

 

 曇り空から少し、光が差していた。

 

 

 

 




注射器

鎮痛効果を持った薬液が入った注射器
痛みを緩和することができる

もっとも、効果は一時的なものに過ぎない
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