宇宙世紀0097年。
アナハイムエレクトロニクスはナラティブガンダムの他に、もう一機試作機を用意していた。
輸送艦『コロッサス』。搭載モビルスーツ数8。武装もなく、細長い機影からは艦橋と居住区が見てとれる。その甲板、モビルスーツデッキに搬入されたばかりの機体がある。
全体的の印象として華奢なイメージがあり、所々がむき出しのフレームになっており、装甲をつけるための穴や凹凸が残っている。兄弟機であるナラティブ同様、全身の要所にサイコフレームが採用されており、強度は高い。
ニュータイプ専用機というわけでもない。
サイコフレームはそれ自体が強靱な防御力を誇る素材であるため、この『プリスメントガンダム』に採用されたのだ。なお、フルサイコフレームの実験機としての役割も担っている。
その『プリスメントガンダム』の搬入作業が今なお行われていた。
「こんなの誰が乗るんすか……?」
ジョージは渋面を浮かべ、機体の搬入作業を進める。
「そんなの知らんよ。大方、地球生まれのエリートだろ」
「へ。そのエリート様のために俺たちが足で使われるわけかよ。いやな気分だって」
爆発音が鳴り響き、輸送船が揺れる。
「なんだ?」
「敵襲!」
アラートが鳴り響き、搬入作業は一時中断を余儀なくされる。
「敵。見つかった? だが、この肌をざらつく感じは……?」
俺は『プリスメントガンダム』に乗り込む。
「待て、ジョージ!」
「やっこさん、こいつが狙いでしょう? なら、機体から離れる」
「武装がないんだぞ」
「そんなの!」
近くにあったジェガン用のビームライフルとシールドを携行させると、エアロックから飛び出す。
「いた。敵機三機、うち二機をギラズールと確認。もう一機は、なんだ? あれは……」
赤い機体。脚部と同じ腕部を持ち、四つあるスラスターの代わりに、ウエポンラックが装備されている。ハンドガン、サーベル、二連装バルカン、グレネードが装備される前腕だ。
「奴がリーダーか」
ビームライフルのトリガーを引き、発射されたビームはギラズールを火球に変える。
左右に展開した敵機。とくに赤い機体はこちらをあおるような動きを見せる。
「なんと!」
俺は再びビームを放つ。後方にいた敵機に向けて。
二機目のギラズールが霧散すると、目の前に赤い奴が迫ってくる。その手には大型のビームアックスが握られている。
マズい。
本能的にそのビームを回避する。
『やったな!』
「なんだ!?」
風が舞うように言葉が舞った。
ビームサーベルを引き抜き、応戦する。
赤い奴が腕にあるバルカンを撃ち放ち、距離をとる。グレネードをシールドで防ぐ。
引くとビームライフルの残弾を確認する。あと五発が限界だ。それ以上になると銃身が焼き付く。
赤い奴は手にしていたビームアックスを持ち直し、柄の先端をこちらに向ける。
直後、ビームが放たれる。
「くっ。そんなのありかよ」
バーニアを吹かすと機体を反転、ビームを交わす。
バルカンで威嚇をし、誘導する。が赤い奴はその誘導にのることなく、機体を翻し遠くに望む戦艦へと帰っていく。
「引き際も見事だ」
俺はコロッサスに機体を流し、着艦する。
拳が飛んでくる。スピードの乗ったいいストレートだ。その先に俺の頬があることを除いて。
「馬鹿野郎。こいつ生態認証を知っていて、乗ったのか?」
「いえ。知りませんでした」
「そうだとしても、立派な軍紀違反だ。こいつ自分のやらかしたことの大きさが理解できていないんっすよ」
「そうだな……」
渋面を浮かべるリヒティ艦長
「あれはアナハイムエレクトロニクスから託され、連邦の資産になる予定だった機体だ」
「でも、機体は無事だ。それも輸送艦ごと」
「フルフロンタルが見張っているかもしれないのだぞ。その危険性は無視できない」
「ふむ。上層部に一報を入れたが、未だに決着がつかないらしいな。それまでは独房に入ってもらう」
「了解しました」
ダレルとバスターが俺の両脇を抱え、独房へ向かう。
しかし、あの機体に乗ったとき、相手の声が聞こえた気がした。あれはなんだったんだろうか?
考えても栓のない話だが、考えずにはいられなかった。
初のフルサイコフレーム機。思った以上の性能を持っていた。
もう一度乗りたいと思うのはすでに〝ガンダム〟に魅入られたからだろうか。