「しかし、どうなっているですかね。この艦」
「しょうがないだろ。サイコフレームは禁止条約に入っているんだから。こうして暗礁宙域をいくしかないだろ」
「そうじゃなくて、なんで袖付きまでに認知されてんのかって話」
「そっちか。確かに、私も気になっていたが……。あの力を見た以上、放っておけまい」
「しかし、あいつは無罪放免というのも気に食わない。やはり地球生まれかよ」
「俺がどうかしたか? オールドタイプ」
「地球生まれでニュータイプって訳ないだろ。宇宙に適用したのがニュータイプって話」
「分かりませんね。俺だって感じたんだ。これがニュータイプでなくて、どうする?」
あの機体に乗って不思議な感覚を味わったのだ。まるで相手の方からビームに引き寄せられるかのような感覚。それに呼応するかのように動くガンダム。
あの感覚はなんだ? サイコフレームの共振? じゃあ、あの赤いMSにはニュータイプが乗っていた。赤いMSはサイコフレームを使用していた。そう感じたのだ。
「バカバカしい。赤い彗星とでも言うのか」
「縁起担ぎだよ、縁起担ぎ。だまされることもない。シャアは死んだのだからな」
「消息不明ですよ。けつまくって逃げ出したんじゃないか、って」
「そんな話もいいが、そろそろ暗礁宙域を出ようとしている。第二戦闘配備だ」
アラームが鳴り響き、俺は後方に身体を流す。
「なんだ? どういうんだ?」
ジークが揶揄するような目線を送ってくる。
「パイロットなんだから、ガンダムで待機しますよ」
「けっ。この間まで整備班だったガキが乗り回す代物かよ」
「それで成果を上げれば何も問題ない、そう考えているお偉いさんがいて、現場はそれに振り回されるわけか。くだらんな」
俺は更衣室に向かうとプリスメントガンダムを見上げる。サイコフレームによる増強。従来の金属よりも堅いとされるサイコフレームを装甲に使えば、それは堅いMSが生まれるだろうさ。
※※※
「きた。右舷前方より高熱源体接近。数三」
「うち一機を例の赤いMSと断定、三倍の速度で接近!」
「シャアじゃないですか!?」
「バカいえ! 未来の人のために今を生きる者を犠牲にする、それがシャアだ。この輸送船を狙う理由はなんだ?」
「リヒティ艦長もそう思うかね? 非武装のガンダムに非武装の艦船。これじゃあ、敵に塩を送るようなものだ。いやそれが事実かもしれん」
「さすがアナハイム。敵味方関係なし、か。慈善事業のつもりですかね?」
「敵MS接近。光通信入ります!」
「こちら連邦政府宇宙軍、貴艦の行動目的を知りたい。そうでなければ検分をする」
「こっちは輸送船だ。コロニー資材を搬入中だ」
「なら、なんで暗礁宙域などから出てきた? 貴艦の嘘か?」
「アナハイムからの委託なので、そちらに聞いてはもらえないでしょうか?」
「…………検分を行う。まずはハッチを開けろ」
赤いMSがビームライフルで艦橋をガンガンとぶつける。
「……ふぅ」
リヒティは一息つくと、艦内マイクをオンにする。
「ガンダム、いけるか!?」
「行きます!」
俺はガンダムを起動し、目の前にあいたハッチから飛び出す。
「こいつ! ガンダムだと!」
「スペースノイドをいじめてきた白い悪魔かよ!」
「敵の回線を切れ、これではこちらの作戦が筒抜けだ」
「ミノフスキー散布、回線オフ! 右後方に敵機!」
「こいつも早い!」
ガンダムは腕をあげビームライフルを構える。そして、飛翔する敵機にそのビームを打ち込む。が、軽くかわしてみせる。
まるでこっちの性能を見極めるかのような、戦いに俺は疲弊していった。
「こいつら! 真綿で殺す気か!」
ジェガン用のビームライフルで応戦するが、出力が低いのか装甲を貫けない。だが、これ以上出力を上げると銃口が焼き付くだろう。
ジェガンのシールドについたグレネードで一機を撃墜。
二機目に蹴りを入れ、その手にしたサーベルを奪うと、そのまま切りつける。二機目も脱落。
目の前には赤いMSが一機。
「どうする? これでそっちは一機になったが」
赤いMSは信号弾を放ち、その場を撤退する。
「引き際も見事だな。ガンダム、帰艦する」