アタシをボランチしてくれ!~仙台和泉高校女子サッカー部奮戦記~ 作:阿弥陀乃トンマージ
第1話(1) 焼きそばトンカツパンの悲劇
「ボランチ」とは、サッカーにおいて、中盤の一番底に位置するポジションで、「舵取り」や「ハンドル」を意味するっポルトガル語の「volante」を語源とする。
「アタシをボランチしてくれ!」
ある春の日の昼下がり、私、
私が宮城県の
「ああっ! ごめんなさい! ごめんなさい!」
あっけにとられている私に対して、学校指定の小豆色のジャージを着た眼鏡のショートカットの女の子が慌てて駆け寄ってきて、しゃがみこんでハンカチを使ってパンの残骸を拾い集めようとしました。
「あーあ、勿体ないネ」
「っていうか拾ったっていらないでしょ、ウケるんだけど」
声のする方を見てみると、三人の女の子の姿がありました。サッカーボールに片足を乗せて立っている長身の褐色の女の子。その隣に立つサイドテールの女の子。更にその二人の後ろでボールをイス代わりに腰掛け、退屈そうにスマートフォンをいじっているセミロングの女の子。
「言っとくけど、ボールをちゃんと止められなかったアンタのせいだからね」
サイドテールの女の子が髪の毛の毛先を指でくるくるとしながら言いました。
「ああ……ごめんなさい、ごめんなさい……何とお詫びすれば良いか……」
ジャージ姿の女の子が跪くような姿で私に向かって謝り続けます。眼鏡と長めの前髪でよく見えませんが、瞳には涙を堪えている様に見えます。正直言って、詳しい事情は分かりませんが、現状から判断するに、これはいわゆるイジメの現場というやつではないか!そう思うやいなや、気が付けば、私の体はその三人組の前に立っていました。
「イ、イジメ……カッコ悪いでしゅ!」
「――――――ぷ、あははははは!」
一瞬の静寂の後三人組の内の二人が笑い出しました。もう一人は相変わらず興味無さげにスマホをいじっています。
「いきなり喋ったと思ったら噛んでるし。マジウケるんだけど」
三人組の中で一番小柄な女の子が笑いながらこちらに向き直りました。小柄と言っても、背丈は私と同じ位でしょうか。髪型は右側頭部のみアップにした、変則的なサイドテールで前髪は右側から左側にかけて長くなっているアシンメトリーというものでしょうか。制服は着崩しています、おしゃれといえば聞こえは良いですが、校則を守っているとは言い難いものです。スカート丈も短いですし。どちらかといえば不良さんです、間違いありません。私は若干気後れしつつも、彼女たちに、改めて言い放ちました。
「イジメは良くありません!」
すると三人組の中で一番長身の女の子が体を折り曲げて、私の顔を覗き込み、嘲笑気味に、
「イジメ? どこがヨ?」
と聞いてきました。私より頭一つ高い、大柄な褐色の女の子です。髪型はソフトなリーゼントで、髪色は金髪とまでは言いませんが、明るい色をしています。制服はカーディガンを腰に巻き、シャツの胸元のボタンも上から二つほど外しています。こちらは超ミニスカートです。人を見た目で判断するのは良くありませんが、こちらはわりとストレートな不良さんです。
「ボールを彼女にぶつけて遊んでいたでしょう!」
「ぶつけていたんじゃねえヨなあ、鳴実?」
鳴実と呼ばれたサイドテールの女の子は、指で毛先をいじりながら、気怠そうに答えます。
「てゆーかウチらサッカーしてただけだし?」
「サ、サッカー……?」
「そ、サッカー、だよねぇ、ヴァネ?」
ヴァネと呼ばれた褐色リーゼントの女の子も笑いながら、
「アタシら流の練習ってやつヨ」
「練習……?」
「そ、近い距離でボールを止める練習、実戦的ってやつ――?」
「トラップって知らない? ぽっちゃりちゃん?」
そういって、二人はまた大笑いをしました。