私が征夷大将軍⁉~JK上様と九人の色男たち~   作:阿弥陀乃トンマージ

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不穏な打ち合わせ

                  陸

 

「ん?」

 

 宿舎の廊下を歩く葵が自らの端末の画面に目を留める。爽が尋ねる。

 

「葵様、どうかされましたか?」

 

「これ……」

 

 葵は画面を指差す。爽が覗き込む。

 

「『豪華賞品争奪! ビーチバレー大会』ですか……」

 

「面白そうだね、サワっち、参加しない?」

 

「日時は……今日これからですか……」

 

「参加者は直前までエントリー受付中だってよ」

 

 葵の誘いに爽は申し訳なさそうに首を振る。

 

「生憎、わたくし、午後は所用がありまして……」

 

「あ、そうなんだ」

 

「葵様は午後も自由時間でいらっしゃいますから、どうぞご参加なさって下さい」

 

「う~ん……」

 

 葵は首を傾げる。

 

「なにか問題でも?」

 

「いや、これ、二人一組で参加受付しているみたいなんだよね……」

 

「ああ、確かにビーチバレーですからね……」

 

「どうしようかな……」

 

 葵は端末を手際よく操作する。しばらく間をおいて爽が尋ねる。

 

「……如何でしょうか?」

 

「うん……他の子たちも空いてないってさ……」

 

「そうですか」

 

「仕方がないね、参加は諦めよう」

 

「そのようなことをおっしゃらないで下さい。折角の夏合宿です。時間はぜひとも有意義に使って頂かないと」

 

「そうは言っても……」

 

「少しこちらでお待ち下さい」

 

「え?」

 

「わたくしの代役を呼んで参ります」

 

「もう来ていル……」

 

「うわっ⁉」

 

 音もなくいつの間にか自らの背後に立っていたイザベラに葵は驚く。

 

「流石、話が早いですね」

 

 爽がにっこりと微笑む。葵がぼやく。

 

「ザベちゃん、普通に出てきてよ……」

 

「? これが普通だガ?」

 

「それが普通?」

 

「アア」

 

 イザベラが当然だろうとばかりに頷く。葵はため息をつく。

 

「はあ、まあいいや……」

 

「なにかマズかったカ?」

 

「いや別に。サワっち、もしかしてだけど?」

 

「そのもしかしてです。イザベラさんにわたくしの代役として参加して頂きます」

 

「代役?」

 

「……こちらです」

 

 爽は自身の端末を操作し、画面をイザベラに見せる。

 

「ビーチバレー大会カ……了解しタ」

 

「お願いします」

 

「い、いや、勝手に話を進めないでよ!」

 

 葵が慌てる。イザベラが呟く。

 

「皆まで言うナ、ショーグン。他の参加者を秘密裏に始末すれば良いのだろウ?」

 

「ぶ、物騒なことを言わないでよ!」

 

「ム、競技中にそれとなくカ? 多少ミッションの難易度が上がるガ……まあ問題はなイ」

 

「も、問題あるよ!」

 

「頼もしい限りです。それでお願いします」

 

「だ、だからサワっち、勝手に話を進めないでよ!」

 

「え?」

 

「エ?」

 

 爽とイザベラが揃って首を傾げる。

 

「え? じゃないよ! 駄目だよ、始末しちゃ!」

 

「始末とは言葉の綾です。もちろん、大会から棄権する程度ですよ」

 

「当然ダ。余計な騒ぎは起こしたくないからナ」

 

「そうじゃなくて! 私は純粋に競技を楽しみたいの!」

 

「純粋に?」

 

「純粋二?」

 

 爽とイザベラが再び揃って首を傾げる。

 

「いや、なんで言葉分からなくなっているの⁉ 純粋! ピュア! アンダースタン⁉」

 

「そ、それは分かりますが……よろしいのですか?」

 

「何が⁉」

 

「ショーグンの運動能力は高いガ……必ず優勝出来る保証は無いゾ?」

 

「それはそうでしょう⁉」

 

「な、なんと……」

 

「……構わないのカ?」

 

「だから何が⁉」

 

「いや、てっきり……」

 

「喉から手が出るほど豪華賞品が欲しいのかト……」

 

「興味が無いと言ったらウソになるけども! フェアに競技に臨んでこそでしょう⁉」

 

「ふむ……」

 

「なるほどナ……」

 

 葵とイザベラが揃って顎に手をやって呟く。葵は片手で頭を軽く抑える。

 

「……なにその発想はなかったってリアクションは?」

 

「確実に勝ちを獲りにいく為にイザベラさんに一仕事お願いしようと思いましたが……」

 

「そういう忖度いらないから!」

 

「……だそうです。あくまで純粋にピュアに競技を楽しんで下さい」

 

「逆に難しいナ……」

 

 葵の言葉にイザベラが腕を組む。

 

「他に頼める方がおりませんから……」

 

「まあ、ベストは尽くス。プロとしてナ……」

 

「だ、だから! 勝手に話を進めないでったら!」

 

 声を上げる葵に対して、爽が困った表情になる。

 

「ですが、他に予定が空いている方もおりません」

 

「べ、別に無理に参加しなくても!」

 

「先ほど申し上げたように、時間は有意義に使って頂かないと……ただぼうっとしていたのでは他の生徒に示しがつきません」

 

「そ、そうは言っても……ザベちゃん、ビーチバレー出来るの?」

 

「……要は人を痛めつけなければよいのだろウ?」

 

「理解の方向が怖い!」

 

「……自分が出ます」

 

「⁉」

 

 声のした方向に葵たちが顔を向ける。

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