私が征夷大将軍⁉~JK上様と九人の色男たち~   作:阿弥陀乃トンマージ

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妙なヒートアップ

「受付終了したよ~」

 

 北斗が葵たちのところへ戻ってくる。葵が尋ねる。

 

「どうすれば良いの?」

 

「順番が回ってきたら呼ばれるからそれまで待機だね~」

 

「景品も出るという話でしたが、何かを競うのですか?」

 

 爽が北斗に問う。

 

「ああ、いくつかチェックポイントみたいなのがあってね。そこを周ってきたタイムを競うんだよ。あまりに時間がかかり過ぎると強制タイムアウトになるけど」

 

「なるほど……」

 

「是非とも上位に入って、景品を頂きましょう!」

 

 南武が声を上げる。葵が戸惑う。

 

「な、南武君、気合入っているね……」

 

「いやいや、これは余興なんだから、タイムアウトにならない程度にゆっくり回ろうよ」

 

「兄上!」

 

「南武は怖いからさっさと終わらせたいだけでしょ~?」

 

「南武君、怖いのダメなの?」

 

「そ、そんなことはありません!」

 

 葵の問いに南武は首を左右に激しく振る。

 

「ご無理はしない方が……」

 

「伊達仁さん! 無理などはしていません!」

 

「それならばよろしいのですが……」

 

「あんまり早く終わっちゃうと動画の取れ高がさ~」

 

「動画? まさか……」

 

 爽が北斗に視線を向ける。北斗があっけらかんと答える。

 

「ああ、『自由恥部』に上げる動画を撮影しようと思って。タイトルは『将軍と肝試ししてみた』っていうのにしようかなって」

 

「却下です」

 

「え~なんでよ?」

 

「葵様のプライベートを全世界に配信するなどもってのほかです」

 

「上様はどう?」

 

「え? 別に良いけど」

 

 葵があっさりと了承する。北斗が手を打つ。

 

「ほらきた!」

 

「葵様!」

 

 爽が葵に詰め寄る。

 

「な、なに? サワっち……」

 

「征夷大将軍ともあろうお方が肝試しで悲鳴を上げ、恐怖に泣きわめき、最悪粗相をしてしまったところを配信されてしまったら、幕府の威信に関わります……」

 

「そ、粗相って! そこまで怖がりじゃないよ!」

 

「もしもということがあります」

 

「こう言っちゃ悪いかもしれないけど、所詮は学生の出し物でしょう? そんなことにはならないって……」

 

「あ、動画は編集するから心配ないよ~」

 

「だから大丈夫だってば!」

 

 北斗の言葉に葵が声を上げる。

 

「ふふふっ、なにやら楽しそうですね!」

 

「うわあああっ⁉」

 

 突然の呼びかけに南武が驚く。呼びかけた金銀とその傍らに立つ将司が困惑する。

 

「そ、そこまで驚かれるとは……」

 

「尾成さん?」

 

「こんばんは上様。ご無沙汰しております」

 

「いや昨日も会ったばかりだけど……こんばんは」

 

 葵は金銀に挨拶を返す。

 

「この肝試しのイベントに参加されるのですね?」

 

「は、はい……」

 

「これは奇遇ですね。実は私たちも参加するのです」

 

「じ、実はって……」

 

「……恐れながら何が狙いでしょうか?」

 

 戸惑う葵に代わり、爽が尋ねる。

 

「狙いなんてありません。ただ純粋にイベントを楽しみたいだけです」

 

「嘘くさいな……」

 

「十中八九嘘でしょう……」

 

 葵と爽が小声で囁き合う。

 

「囁き合うのは止めて下さいますか? でも、そうですね……せっかくの機会ですから、どちらが先にチェックポイントを周ってゴールを競うというのはいかがでしょう?」

 

「いや、いかがでしょう?って言われても……」

 

「まさか……逃げるのですか?」

 

「!」

 

「残念です。征夷大将軍ともあろうお方がそれほどまでに弱腰だとは……」

 

「……その勝負、受けて立ちます!」

 

「葵様⁉」

 

 あっさりと挑発に引っかかった葵に爽が驚く。金銀が笑う。

 

「ふふっ、そうこなくては……」

 

「はあ……しかし、よろしいのでしょうか?」

 

「伊達仁さん。何がですか?」

 

「こちらは四人でそちらはお隣の山王さんとお二人……人数はあまり関係ないかとは思いますが、後になって不公平だとか言われても困りますので……」

 

「ああ、ご心配には及びません。こんなこともあろうかと助っ人を呼んであります」

 

「こんなこともあろうかって……助っ人?」

 

 葵が首を傾げる。金銀が声をかける。

 

「さあ、出ていらっしゃい!」

 

「はい」

 

「失礼します」

 

「! お、大きい……」

 

 陰から長身の双子が現れた。二人とも茶色がかった髪色で短く整った髪型をしている。

 

「ご紹介しましょう! 我が三年は組の名物双子、虎ノ門兄弟です!」

 

「初めまして、兄の虎ノ門竜王(とらのもんりゅうおう)です」

 

「初めまして、弟の虎ノ門竜馬(とらのもんりゅうま)です」

 

 二人は長身を折り曲げて葵に向かって丁寧に頭を下げる。北斗が鼻で笑う。

 

「なんだ、誰かと思ったら、俺らよりチャンネル登録者数の少ない虎ノ門兄弟さんか~」

 

「ふん、そうやって余裕をかましていられるのも今の内だぞ、黄葉原北斗……」

 

「なんだって?」

 

「黄葉原南武が怖いものが苦手だということくらい調べはついてある……」

 

「弟に足を引っ張られ、貴様らは無様な負けを喫する……その様子を動画に収めて配信してやる。それによりお前らの評判はガタ落ち……我々が『由恥部亜』として上に行く!」

 

「こ、怖くなんてありませんよ!」

 

「ほう、言ったな、黄葉原南武。ではどうだ? このイベントの最難関である『ナイトメアコース』で勝負するというのは?」

 

「そ、その勝負、受けて立ちます!」

 

「え⁉ な、南武君⁉」

 

「私たちを無視して勝手に話を進めないで下さる⁉」

 

 虎ノ門兄弟と黄葉原兄弟の思わぬヒートアップで肝心の葵と金銀は置き去りにされる。

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