私が征夷大将軍⁉~JK上様と九人の色男たち~   作:阿弥陀乃トンマージ

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生徒の笑顔の為に

                  玖

 

「お体はいかがですか?」

 

「体のあちこちがなかなかの筋肉痛だよ……」

 

 爽の問いに葵が体中を抑えながら答える。

 

「それはそれは、改めてお疲れ様でございます……」

 

「遠泳大会のつもりがいつの間にか変則トライアスロン大会に参加させられていたからね。長距離走はともかく、ロードバイク?っていうのには初めて乗ったよ」

 

「初めてであれだけの激走を見せるとは……」

 

「周りに上手く乗せられたって感じがするけど……」

 

「それでも凄いことですよ」

 

「まあ、案の定というか体が結構ガタガタって感じだけどね」

 

 葵が苦笑する。爽が提案する。

 

「それならば引き続き、部屋でゆっくりとされていた方がよろしいのでは?」

 

「いや、元々午後は休養に充てようとは思っていたけど、今夜は楽しみなレクリエーションもあるしね。部屋に籠ってはいられないよ」

 

「ふむ、そこまで楽しみになされておられたのですか、『キャンプファイヤー』……」

 

「夏の合宿の定番って感じがしない? しかも海沿いで行うキャンプファイヤーだなんて! これは参加しないという点はないでしょう!」

 

「しかし、まだ夕方です。いくらなんでも会場に来るのが早いと思いますよ」

 

 爽が苦笑する。葵も頷く。

 

「それもそうだね、一旦宿舎に戻ろうか……」

 

「お、恐れながら上様!」

 

「! あ、貴方たちは……」

 

 生徒たちが何人か葵の下に集まってきた。その生徒たちの代表が話を始める。

 

「私たちは今夜のキャンプファイヤーの実行委員なのですが……」

 

「あ、ああ、色々と準備をなさっていましたよね、ご苦労様です」

 

「それなのですが……」

 

 葵が首を傾げる。

 

「どうかされたのですか?」

 

「キャンプファイヤーの前に行う演芸大会の出演者が足りなくて困っているのです!」

 

「え、演芸大会?」

 

「まあ、基本は簡単な出し物のようなものなのですが、結構本格的な生徒もいて、キャンプファイヤーの参加者からは年々楽しみにされているものなのです」

 

「出演者が足りないというのは?」

 

「急な体調不良とか、追試が入ったとか、色々です……」

 

「出演者は何組足りないの?」

 

「そ、そうですね、三組ほどです……」

 

「そうか……」

 

「あ、あの……」

 

「その三組のクオリティは問わない?」

 

「え? ええ、この際贅沢は言いません、というか、皆が笑顔になることが出来ればそれで構わないのです」

 

「分かった」

 

「はい?」

 

「その三組、私が手配するよ」

 

「ほ、本当でございますか⁉」

 

「うん、任せといて。皆はキャンプファイヤ―の準備を進めていてよ」

 

「あ、ありがとうございます! 失礼いたします!」

 

 キャンプファイヤー実行委員たちは嬉しそうに持ち場に戻る。葵が腕を組む。

 

「さて……どうしようか?」

 

「当てがないのですか?」

 

「うん……」

 

「ならばどうして引き受けたのです?」

 

「生徒の困っている顔を見てしまったら放っておけないよ!」

 

「お考えは大変立派ですが……どうされるのです?」

 

「……サワっち、手品とか出来ない?」

 

「出来ません」

 

「だよねえ……」

 

 爽が端末を確認してから首を左右に振る。

 

「……急いで連絡を取ってみましたが、将愉会の皆さんもこの時間帯はそれぞれ予定で埋まっているようです」

 

「ああ、そうなんだ……」

 

 葵が首を傾げる。爽が考えを述べる。

 

「やはり無理なようだと実行委員の方々に伝えた方が……」

 

「一度受けたことを投げたら、がっかりされちゃうよ」

 

「それはそうですが……」

 

「……サワっち、あの人の連絡先は分かる?」

 

「え?」

 

「……というわけでこうしてお願いに上がりました」

 

「まさか、上様の方からいらっしゃるとは……」

 

 宿舎のロビーで葵と金銀が顔を合わせる。葵が笑う。

 

「さすがに計算外でしたか?」

 

「ええ、かなりね」

 

 金銀が苦笑気味に笑う。

 

「それで、改めてお願いなのですが……」

 

「申し訳ありませんが、お断りします。参りましょう、将司」

 

「よ、よろしいのですか?」

 

「よろしいのです」

 

「……自信がないんですか?」

 

「⁉ なんですって?」

 

 葵の言葉にその場を去ろうとした金銀が振り返る。葵が続ける。

 

「この演芸大会はいわば芸を争う真剣勝負の場……まさか稀代の勝負師と謳われるお方がそこからお逃げになるとは……」

 

「分かりました。参加いたしましょう」

 

「ありがとうございます! リハーサルなどは実行委員の方から連絡が入りますので!」

 

 葵は爽を連れて、その場を去る。将司が頭を抑えながら尋ねる。

 

「金銀お嬢様、まんまと乗せられてしまったのでは……?」

 

「定石外ですが、ここはあえて飛び込んでみます……」

 

「……というわけで本当に急なんだけどお願い出来ないかな?」

 

「いいぜ、参加してやるよ」

 

「ほ、本当⁉ どうもありがとう! リハーサルの時間など諸々は実行委員の方から連絡が入るから! それじゃあ!」

 

 葵はその場を去る。二年は組の副クラス長、神谷龍臣が笑う。

 

「へっ、思い出すな、出演者不足の文化祭の後夜祭を飛び入りで盛り上げたあの時を!」

 

「あいにくそんな記憶はさっぱりないが……俺たちの活動を知っているとはな……」

 

 二年は組のクラス長、日比野飛虎はどことなく嬉しそうにしている。

 

「困ったな……後一組なんだけど……」

 

「! 葵様! 将愉会のあの方から連絡が!」

 

 葵は爽から端末を受け取り、電話に出る。

 

「……返事が遅くなってすみません。演芸大会、アタシで良ければ力になりますよ」

 

「ほ、本当⁉ 一流の歌舞伎役者さんが来てくれるなんて助かるよ!」

 

 獅源の言葉を聞いて、葵の顔がパッと明るくなる。

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