私が征夷大将軍⁉~JK上様と九人の色男たち~   作:阿弥陀乃トンマージ

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神対応が仇となる

「いや~楽しい漫才でしたね~どうもありがとうございました! 皆さん今一度『将ズ』に大きな拍手を!」

 

「わあっ~!」

 

 司会の言葉に観客が応える。拍手が落ち着くと、観客がざわつき始める。爽が腕を組んで考え込む。

 

(若手実力ナンバー1の歌舞伎役者である涼紫獅源さんが登場するのは皆さんも分かっているのですね……それにしても、今更ですが葵様はどちらに……?)

 

「さあ、続いては……このユニットの登場です!」

 

(ユニット?)

 

 爽が首を傾げる。ステージ上が暗くなったかと思うと、スポットライトが当たり、男装した葵がしゃべり出す。

 

「ああ、男というものは……」

 

(あ、葵様⁉)

 

「女性の魅力的な部分を見出すことに優れている……」

 

「あれって上様……?」

 

「本当だ……」

 

 客席が若干だがざわつく。爽も内心で大声を上げる。

 

(ま、まさか、ご自分も芝居に出られるとは⁉)

 

「よって、多くの女性と同時にお付き合いをしてしまうのも致し方ないことだ!」

 

(しかも、なんという役柄⁉)

 

 爽が唖然とする。

 

「しかし、困った……日替わりでお付き合いしていた七人の女性たちが今宵、この屋敷に集ってしまうとは……どうすればいいのだ⁉」

 

(な、七股とは……)

 

「ピンポーン♪ やっほー彼ピッピ、遊びに来たよ~♪」

 

 ギャルの恰好をした獅源がステージに登場する。

 

「おおっ、月子か、待っていたよ。今日もカワイイね」

 

「ありがと♪ ってか、なんでウチのこと月子って呼ぶの? ウケるんだけど~」

 

「と、とにかく、こちらの部屋で待っていてくれないかい?」

 

「おけまる水産~♪」

 

「ふう……とりあえず一人目……」

 

「ピンポーン……こんばんは、貴方。遊びに参りました」

 

 和服を着た獅源が再びステージに登場する。

 

「おおっ、火代か、待っていたよ、今日も素敵だね」

 

「ありがとう……前から聞こうと思っていたのだけど、何故私を火代と呼ぶの?」

 

「え? そ、そうだな、火のように燃え盛っているからだよ。こちらの部屋へどうぞ」

 

「分かったわ……」

 

「ふう……これで二人目……」

 

「ピンポーン……こ、こんばんは、先輩。遊びに来ちゃいました……」

 

 清楚な女子大生のような服装を着た獅源が三度ステージに登場する。

 

「おおっ、水乃か、待っていたよ。今日も可憐だね」

 

「あ、ありがとうございます……でも何故私のことを水乃と呼ぶのですか?」

 

「そ、そうだな、透明感があるからかな? こ、こちらの部屋で待っていてくれ」

 

「はい、分かりました……」

 

「ふう……これで三人目か……」

 

「ピンポーン! おいっす、アンタ! 遊びに来てやったぜ!」

 

 ヤンキーの恰好をした獅源が四度ステージに登場する。

 

「おおっ、木恋か、待っていたよ。今日も決まっているね」

 

「あんがとよ。ってか、なんであーしのことを木恋とかって呼ぶんだ? あだ名か?」

 

「木々のようになくてはならない存在だからさ! ささっ、こちらの部屋へ!」

 

「……よく分からねえけど、分かったぜ」

 

「ふう……これで四人目……まずまず順調だな」

 

「ピンポーン! おーほっほっほっ! 卿、遊びに来たわ! 光栄に思いなさい!」

 

 お嬢様のような恰好をした獅源が五度ステージに登場する。

 

「おおっ、金華か、待っていたよ。今日も美しいね」

 

「当然のことを……って、何故にわたくしのこと金華って呼ぶのかしら?」

 

「は、華々しさを讃えるためだよ。こちらの部屋で待っていてくれないかい?」

 

「ふむ……分かりましたわ」

 

「ふう……これで五人目……なんとかなるか?」

 

「ピンポーン……ふっふっふ……汝よ、我が降臨したぞ……喜ぶがいい……」

 

 ゴスロリの恰好をした獅源が六度ステージに登場する。

 

「おおっ、土姫か、待っていたよ。今日も怪しげだね」

 

「ほ、褒めても無駄だ……それより何故我のことを土姫と呼ぶのか? 不可解なり……」

 

「む、胸のドキドキを忘れないためさ。こちらの部屋で待っていてくれたまえ」

 

「うむ……なんとなくだが理解した」

 

「ふう……こ、これで六人目……なんとかなりそうだぞ!」

 

「ピンポーン♡ は~いマイダーリン、遊びに来たわよ~♡」

 

 セクシーな女性の恰好をした獅源が七度ステージに登場する。

 

「おおっ、日奈か、待っていたよ。今日も溢れんばかりにセクシーだね」

 

「ありがと♡ でも、なんでアタシのことを日奈って呼ぶの?」

 

「た、太陽のように眩いからさ。こ、こちらの部屋で待っていてくれないかい?」

 

「うふっ、分かったわ~♡」

 

「ふう……こ、これで七人目……な、なんとかなった! 後はそれぞれの部屋で逢瀬を楽しんで……ああ、そうだ、名前の呼び間違いにも注意しないとな。月曜日の女だから月子、火曜日の女だから火代……」

 

「さ、最低な男……」

 

 爽は思わず声を漏らす。

 

「彼ピッピ~早く~」

 

「おおっ、月子、どうしたんだい?」

 

「先輩……!」

 

「おおっ、木恋! じゃなかった、水乃、どうかしたかな?」

 

「卿! どこにいるの⁉」

 

「えっと、誰だっけ……土姫? 日奈? い、いや、金華か!」

 

 獅源が声色を使い分け、その声に釣られて、葵がステージ上を右往左往する滑稽な様子を見て客席からは笑いが漏れる。

 

(ステージ上を走り回る葵様も大変そうですが、声を使い分け、しかもその都度、衣装を早着替えしている獅源さんもかなり大変そうです。しかし、それを感じさせないのが流石というところですね……)

 

 爽は腕を組みながらうんうんと頷く。ドタバタなコメディはあっという間に幕を閉じ、客席からは盛大な拍手が送られる。ステージを降りて着替えを終えた獅源は控室代わりのテントを出て満足気に呟く。

 

「こんなこともあろうかと用意しておいた脚本が大いに役に立ってくれました。これは上様の覚えもめでたいはず……ん?」

 

「涼紫さん! 舞台とっても素敵でした!」

 

「もう改めて惚れ直しちゃいました!」

 

「アンタたちどいて頂戴! 獅源さま! 私とお付き合いして下さい!」

 

「ちょ、ちょっとあなた! 図々しいわよ! 私とデートしてもらえませんか⁉」

 

「あなたも人のこと言えないでしょう! 私と出かけた方が楽しいですよ!」

 

「品が無いわね……獅源さま、こちらが婚姻届です。サインを……」

 

「どさくさ紛れになにしてんのよ! 獅源さま、ハネムーンの予約は取りました!」

 

「な、なんなのよ、アンタたち⁉」

 

「それはこっちの台詞よ!」

 

 出待ちの女性たちが押し寄せ、ああだこうだと言い合いになる。

 

「ちょっとどきなさいよ!」

 

「痛っ! やったわね!」

 

 言い合いがエスカレートして、押し合いへし合いに発展する。獅源が両手をポンポンと叩き、声をかける。

 

「あ~あ~ちょいとお嬢さん方、お待ちになって……」

 

「!」

 

「皆さんのお気持ちはとっても嬉しいです。ただ、残念ながら、アタシの体はこの世に一つしかございません……」

 

「あ……」

 

 女性たちが一斉に悲し気な顔つきになる。獅源は笑顔を浮かべて告げる。

 

「よろしければ……日替わりなら皆さん一人一人とゆっくり素敵な時間を過ごせます。それでいかがでしょうか?」

 

「きゃ~♡」

 

「そ、それでも良いです!」

 

「ははっ、理解ある皆さんに囲まれて幸せです……はっ!」

 

 獅源は自分のことをジト目で見つめている葵に気が付く。

 

「なるほどね~あの脚本は創作じゃなくて実体験なわけだ……」

 

「い、いや、上様、これはですね。なんといいましょうか……」

 

「打ち上げでもどうかと思ったけど、お邪魔しちゃ悪いね。それじゃあ」

 

「お、お待ちになって下さい! こ、これは一種のフアンサービスというやつで……」

 

 獅源が引き留めるが、葵はその場を去ってしまった。横から現れた爽が淡々と呟く。

 

「素晴らしい舞台でしたと感想を伝えにきたらまた面倒なことに……葵様へはそれとなくフォローをしておきます」

 

「た、助かります!」

 

「ですがそれはそれ。涼紫獅源さん。これはややマイナスポイントですね……」

 

「し、審判はするのですか⁉」

 

「厳正かつ公平な審判をお願いされておりますので……失礼致します」

 

「そ、そんな……」

 

 爽もその場を去り、獅源は呆然と夜空を見上げる。その様子を遠くからじっと見ていた将司が傍らに立つ金銀に囁く。

 

「金銀お嬢様、紫も塗り潰せましたね……」

 

「ええ、定石外の手も打ってみるものですね。勉強になりました……」

 

 金銀が戸惑いながらも笑みを浮かべる。

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