私が征夷大将軍⁉~JK上様と九人の色男たち~   作:阿弥陀乃トンマージ

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洞窟にて

「うん……」

 

「葵様、気が付かれましたか」

 

「サワっち、ここは……って、手足が縛られている⁉」

 

「どうやら我々はまとめてさらわれたようです」

 

「まとめて? ああ、皆……」

 

 葵が周囲を見回して確認する。よく見知った顔から今日知り合ったばかりの顔もいる。

 

「葵様も含めて全員で12人です」

 

「……浴衣に着替えてロッカーに服を置いたまではぼんやりと覚えているんだけど……」

 

「そのロッカーに強力な睡眠薬が仕込んであったのダ……ガスが噴出しテ、知らず知らずのうちに部屋中に充満していタ……」

 

「そんな……」

 

「スマン、油断しタ……」

 

 イザベラが申し訳なさそうに呟く。八千代が声を上げる。

 

「あのロッカールーム自体が罠だったということですの⁉」

 

「罠という言い方が適切かどうかは分かりませんが……そのようなものでしょうね」

 

 憂が答える。八千代がなおも興奮気味に声を上げる。

 

「何のためにこんなことを⁉」

 

「顔ぶれを見るかぎり、私などはともかくとして、上様をはじめ、お嬢様、尾成さま……大江戸城学園のVIPと呼ばれる方々を狙ったのでしょうね……」

 

 憂は八千代を落ち着かせるように、冷静に話す。

 

「大江戸幕府を快く思わない者の犯行か……」

 

「いわゆるテロリストね。しかも結構な集団よ」

 

 雪鷹の呟きにクロエが反応する。絹代が呟く。

 

「なかなかの手練れのようですね……」

 

「尾成さま……」

 

「な、なにかしら? 伊達仁さん」

 

「まさかとは思いますが……」

 

 爽から向けられた視線の意味に金銀はすぐ気が付く。

 

「わ、私を疑っているのですか⁉」

 

「この合宿中、将愉会を切り崩す為に色々と画策していたようでございますので……」

 

「確か二、疑わしいナ……」

 

「よ、よくご覧なさい! 私も手足を縛られているのですよ⁉」

 

「それがフェイクの可能性もあル……」

 

「な、何を馬鹿なことを!」

 

「尾成さま、貴女、わたくしたちがちょうど集まっている時に現れましたわね?」

 

「五橋さままで……何をおっしゃっているの?」

 

「偶然と言うには随分と都合が良いなと思いまして……」

 

「……タイミングを伺っていたことは事実です」

 

「! ということは……」

 

 小霧が目を丸くする。金銀は慌てて首を振る。

 

「この誘拐の首謀者は私ではありません!」

 

「……ではあの更衣室は一体?」

 

「それは知りません」

 

 爽の問いに金銀が答える。爽が首を傾げる。

 

「知らない?」

 

「ええ……」

 

「そんな話が通ると思っているのカ?」

 

 イザベラが鋭い視線で見つめる。金銀はしばらく黙った後、話し出す。

 

「……確かに伊達仁さんがお察しの通り、私はこの合宿中、将愉会の切り崩しの為に、様々な策を弄しておりました! しかし、あの更衣室のことは本当に何も知りません! 皆さんを一か所に集め、チケットを配るにはとても都合の良い場所だと思って利用させてもらったに過ぎません!」

 

「……我々をあの更衣室に集めるように誘導したのではないですか? 貴女さまならばそれくらい容易いはずです」

 

「……ええ、そういう誘導もしました。ですが、私はこの誘拐に関知しておりません!」

 

 爽の言葉に金銀は声を上げる。雪鷹が首を傾げる。

 

「……疑わしいな」

 

「ええ、まだ信じられないわね」

 

 雪鷹の呟きにクロエが頷く。絹代が口を開く。

 

「……大分汗をかいておられます」

 

「それも芝居かも?」

 

「汗を舐めれば、嘘をついているかどうか分かるのですが……」

 

「な、なんですか、その特技は……」

 

 絹代の発言に小霧が若干引き気味になる。イザベラが頷く。

 

「試してみる価値はあるかもナ……」

 

「では……」

 

「ちょ、ちょっと、私にそんな趣味はありません!」

 

 にじり寄ってこようとする絹代に対し、金銀が拒否反応を示す。

 

「ちょっと待って! 皆、少し落ち着こうよ!」

 

「!」

 

 黙っていた葵が声を上げる。皆の注目が葵に集まる。

 

「私は尾成さんを信じるよ」

 

「う、上様、ありがとうございます……」

 

「皆もそれで良いね? 言い争いをしてもなにもならないよ」

 

「葵様がそうおっしゃるのなら……皆様?」

 

 爽の呼びかけに皆が頷く。

 

「よし、じゃあここはどこなのかを把握しよう」

 

「潮の香りからしテ、海の近くにある洞窟であることは間違いないようだガ……」

 

「ここは江の島岩屋です……」

 

 みなみが口を開く。隣に座っていた雀鈴が尋ねる。

 

「え、そうなのか?」

 

「ええ、間違いありません、いわゆる観光スポットの場所からは少し離れていますが」

 

「流石は地元出身!」

 

 葵が笑顔で頷く。八千代が声を上げる。

 

「場所が分かったのなら、なんとか脱出しましょう!」

 

「難しいナ……」

 

「な、なんですって⁉」

 

 イザベラの呟きに八千代が重ねて声を上げる。

 

「さっきも誰かが言ったよう二、これだけの人数をさらったのダ、相当な数のテロリスト集団と考えた方が良イ。この状態で逃げるのは困難を極めル……」

 

「確かに気配や足音を多く感じる……恐らく洞窟の出入り口付近はガチガチに見張られているだろうな……」

 

 雪鷹が耳を澄ませながら淡々と呟く。クロエが問う。

 

「ではどうするの?」

 

「何かきっかけでもあれバ……!」

 

 突如轟音が聞こえる。皆が周囲を見回す。小霧が驚く。

 

「な、何の音⁉」

 

「そこの隙間から外が見えるよ!」

 

 葵が首を振って、岩壁にある僅かな隙間を指し示す。皆がそこから外を覗き込む。

 

「あ、あれはジェットスキー⁉ 乗っているのは……ああっ⁉」

 

「借りを返しに来たわよ……葵っち♪」

 

 ジェットスキーに華麗に跨る、良鎌倉幕府第四十五代将軍、真坂野紅が軽やかに呟く。

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