私が征夷大将軍⁉~JK上様と九人の色男たち~   作:阿弥陀乃トンマージ

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急な話

                  壱

 

「九州視察?」

 

「ええ」

 

 葵がスラリとしたスタイルの長い黒髪の眼鏡をかけた女性に尋ねる。その女性、葵と同じ二年と組の生徒である伊達仁爽(だてにさわやか)が頷く。

 

「それはまた急な話だね……」

 

「本来ならばもう少し後の時期なのですが、諸々の都合で前倒しになりました」

 

「諸々の都合?」

 

「長崎県出島に商館を置いているオランダの『カピタン』の都合です」

 

「ピータン?」

 

「カピタン……商館の最高責任者のことを指します。ポルトガル語ですが、日本と主に貿易を行う国がオランダに代わってからもそのまま用いられています。英語で言う、キャプテンのことですね」

 

「ふ~ん」

 

「そのカピタンは大体数年おきに、時期的には11月初め頃に代わるのですが、それが前倒しとなりました」

 

「うん」

 

「葵様が将軍職についた春頃に、カピタンがこの江戸へ参府するはずだったのですが、ご本人の体調不良でそれが叶いませんでした」

 

「そういえば代理の方がいらっしゃっていたね」

 

 葵が思い出したように頷く。

 

「そうです。つまり、現在のカピタンと葵様はお会いしていないというわけです」

 

「そうなるね」

 

「しかし、現在のカピタンには在任期間中、日本とオランダの関係強化にたいへんご尽力頂きました。その功績に報いる為にも、征夷大将軍である葵様自らが直々に出島を訪れていただけないかと、長崎奉行殿などからの強い要望がありまして……」

 

「ふむ……」

 

「元々予定されていた九州視察のスケジュールに出島へのご訪問を組み込むという話が急遽まとまりました」

 

「……嫌だって言っても駄目だよね?」

 

「重要な外交儀礼ですので……」

 

「うん、ごめん、冗談だよ」

 

 葵が苦笑交じりに頷く。爽が頭を下げる。

 

「申し訳ありません」

 

「サワっちが謝ることじゃないよ。お城の大人たちが決めたことでしょう?」

 

 葵は部屋の窓から見える大江戸城に目をやる。この大江戸城学園は、大江戸城の敷地内に建っている学園である。

 

「どうしても気乗りしないようであれば、例えば映像メッセージを送るなどというかたちを取ることも出来ますが……」

 

「いや、大丈夫、行くよ、九州に」

 

 葵が笑って爽に答える。

 

「そうですか」

 

「九州視察ってどういうスケジュール?」

 

「出島をはじめ、十日間で九州各地を回って頂きます」

 

 爽がスケジュールの書かれた紙を葵の机に置く。

 

「こ、これは……結構、ハードだね……」

 

「やはり取り止めますか?」

 

「……私、九州って行ったことないから、行ってみたいな」

 

「視察と言っても、それほど堅苦しいものではありません。関係各所に挨拶さえすれば、その後は比較的自由な時間もあります」

 

「そこで観光出来るってことだね」

 

「まあ、それもある意味視察になるかと……」

 

 爽はふっと笑う。葵が紙を見ながら尋ねる。

 

「もしかしてサワっちもついてきてくれる感じかな?」

 

「実はそのように打診をされまして、勝手ながらそのように話を進めておりました。もっとも、わたくしのところにも急に来た話でしたが……」

 

「うん、サワっちがついてきてくれるのならより安心かな」

 

「そう言って頂けると助かります」

 

「他の人は来ないのかな?」

 

「……学園の関係者はそれぞれ九州の各地を訪問される予定になっております」

 

「学園の関係者……例えば生徒会長とか?」

 

「そうですね。各地との交流などもありますので」

 

「ふ~ん、みんなもみんなで意外と大変だね……」

 

「それでは葵様……そろそろご準備の方を……」

 

「うん?」

 

「本日の夜の便で長崎に飛んで頂きます」

 

「ほ、本当に急な話だね⁉」

 

 葵が驚く。

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