私が征夷大将軍⁉~JK上様と九人の色男たち~   作:阿弥陀乃トンマージ

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長崎グルメ

                  弐

 

「いや~長崎の町もなかなか賑わっているね!」

 

 葵が周囲を見回す。爽が慌てる。

 

「葵様、あまり大声を出されると、目立ってしまいますから……」

 

「ああ、ごめん、ごめん……この後は予定ないんだっけ?」

 

「長崎奉行さまとの会談も終わりましたし、本日、この後は基本自由です」

 

「そっか~」

 

「腹が減ったたい!」

 

「僕も!」

 

「私も……」

 

「お、お前たち、保護してもらっているのだから、あまり図々しいことは……む!」

 

 ヒヨコたちを注意したデニスの腹の虫が鳴る。葵が笑う。

 

「ははっ、デニスっちもお腹が空いたみたいだね?」

 

「皆さんは会談中、別室で待機してもらっていましたからね」

 

「め、面目ない……」

 

 デニスが恥ずかしそうに顔を俯かせる。

 

「気にしないで! じゃあ、長崎グルメを食べに行こう!」

 

「おおっ! さすが将軍、気前がいいたい!」

 

「ヒ、ヒヨコさん、大声で将軍と言わないで下さい……」

 

 爽がたしなめる。ヒヨコが後頭部を掻く。

 

「これはすまんたい……」

 

「まあまあ、サワっち、それより長崎グルメを堪能出来るお店はある?」

 

「少々お待ちを……こちらのお店などいかがでしょうか?」

 

 爽が葵に端末を見せる。葵は頷く。

 

「よし、じゃあ、そのお店に行こう!」

 

 葵たちは町の中心部の近くにあるレストランの前に立つ。爽が説明する。

 

「ここならば、様々な長崎グルメを網羅しています」

 

「良いね、さっそく中に入ろう」

 

 葵たちは店の中に入る。席に着くと、爽がメニュー表を配る。

 

「お好きなものを注文して下さい」

 

「じゃあ……うちはこれたい!」

 

「僕はこれ!」

 

「私はこれ……」

 

「では、俺はこちらを……」

 

「葵様は?」

 

「私はこれかな~?」

 

「かしこまりました。すみません」

 

 爽が店員に注文する。しばらくして、料理が届く。

 

「ほほう! やっぱり長崎に来たらこれを食べんば始まらんばい!」

 

「ヒヨコ、何それ?」

 

「これは『長崎ちゃんぽん』たい!」

 

 ティムの問いにヒヨコが答える。葵が覗き込む。

 

「それが有名な長崎ちゃんぽんか……」

 

「福建料理を日本風にアレンジしたものですね」

 

 爽が説明する。

 

「では、お先に……いただきま~す! うむ!」

 

「どう?」

 

「思ったよりもこってりしてなくて、かといってあっさりというわけでもないたい。鶏から丁寧にとった、上品で雑味のないスープ……。そこにキャベツや豚肉の脂の甘み、エビやイカの海鮮の出汁、そのいずれもが存分に味わえ、また余計な調味料が入っていないことで素材の旨味をより直接的に感じることができるばい!」

 

「つまり?」

 

「ばり美味しいばい!」

 

「じゃあ、僕とエマはこれを……」

 

「ティム、何それ?」

 

「これは『トルコライス』だってさ」

 

「え? トルコ料理?」

 

「一説によると中華のピラフ、和食のトンカツ、洋食のスパゲッティという三つの食文化のミックス感が、東西の文化が交わるユーラシア大陸中央に位置するトルコに通じるということでこの名前が付いたそうです」

 

 爽が眼鏡の縁を触りながら説明する。

 

「ふ~ん……味はどうかな?」

 

「……うん、美味しいよ!」

 

「ピラフにスパゲッティ、デミグラスソースのかかった豚肉……一皿で三つの味が楽しめる……まさしく味の文化交流……」

 

「エ、エマ、いきなりどうした……?」

 

 ティムとエマのリアクションの違いにデニスは戸惑う。爽が声をかける。

 

「デニスさん、わたくしたちもいただきましょう」

 

「そ、そうだな……」

 

「二人は何を頼んだの?」

 

「『皿うどん』です」

 

「ちゃんぽんに似ているね」

 

「ちゃんぽんは出前の際、どうしてもスープがこぼれてしまうといった問題がありました。その解決策として、麺にスープを吸わせるこの皿うどんが出来たといわれています」

 

「へ~そうなんだ」

 

「それではいただきましょう、デニスさん」

 

「あ、ああ……うん、美味いな」

 

「パリパリとした麺に、とろっとしたあんかけ野菜のバランスが堪りませんね」

 

「う~ん、美味しそうだね~」

 

「将軍は……いや……」

 

「葵で良いよ、ヒヨちゃん。ティムとエマも」

 

「ヒ、ヒヨちゃん⁉ ま、まあよか、葵は何を頼んだんや?」

 

「私は『ミルクセーキ』だよ。さっき、料理はちょっと頂いたからデザート代わりにね」

 

「飲み物みたい……」

 

「エマさんの指摘通り、イギリスの『エッグノック』という、卵と牛乳を用いたカクテルがもととなったと言われています。それが、この長崎では氷を加え、アイスクリームのような食べ物にアレンジされたそうです」

 

「なんでそうなったんだろう?」

 

「長崎は坂道が多く、そこを上下して大量の汗をかく人たちのためを思ってだそうです」

 

「ふ~ん、地元に根差したデザートなんだね……う~ん! 冷たくて美味しい!」

 

「僕も食べたい!」

 

「ティム、自分の分の料理をちゃんと食べろ……」

 

 デニスがティムを注意する。葵がウインクする。

 

「ティムとエマにも後で注文してあげるから」

 

「ありがとう!」

 

「ありがとう……」

 

「……うちは?」

 

「ああ、ヒヨちゃんの分も注文するから……」

 

「お子様が三人ですね……」

 

 爽が呆れ気味に呟く。食事を終え、葵たちは町に繰り出す。

 

「じゃあ、今度はお土産でも買おうかな。ん? 人だかりが……って、弾七さん⁉」

 

 手鎖をかけられて跪く橙谷弾七の姿を見て、葵は驚く。

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