私が征夷大将軍⁉~JK上様と九人の色男たち~   作:阿弥陀乃トンマージ

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賛成派立論と質疑応答

「参加者の皆さまのご挨拶は以上です……それでは公開ディベートの開始となります。まずは高層ビル建設賛成派による『立論』となります。それではよろしくお願い致します」

 

 司会に促され、光ノ丸が立ち上がって話を始めた。

 

「まず申し上げておくべきことは、この高層ビル建設は経済的に大きなメリットがある、ということです。大規模な商業施設が入る予定もあり、多くの方に足を運んで頂けることと思います。また、この地区に於ける新たなランドマークとして、観光スポットとしての存在感を高めていくことに我がグループは期待を込めております」

 

「我がグループ?」

 

「氷戸家の経営する系列の企業が今回の高層ビル建設計画の建築主なのです」

 

「ああ、そういうことなんだ……」

 

 首を傾げる葵に、隣に座る万城目が小声で説明する。北斗が手を挙げる。

 

「司会さん、北町奉行としても一言良いかな?」

 

「どうぞ」

 

「そんじゃ一言……行政的な観点ってやつから見ても、今回の高層ビル建設計画は大いに歓迎すべきことだ。周辺を含めて、地域の経済発展に大きく寄与するだろうと確信している。それに……ランドマークって何だかカッコ良くね?」

 

「えっ⁉」

 

「以上!」

 

「終わり⁉」

 

 北斗の予想外の発言に葵は唖然としてしまった。司会の万城目もやや戸惑っていたが、気を取り直して進行を続けた。

 

「……それでは只今の賛成側立論に対する質疑応答に移ります。反対派の方、質問ある場合は挙手をお願いいたします」

 

「はい」

 

「五橋さん、どうぞ」

 

「氷戸さんにお聞きします」

 

「……どうぞ」

 

「そもそもこの高層ビル、きちんと建築法に基づいていますか?」

 

「無論です。何ら違反などしていません。構造上の問題も無いと報告を受けています」

 

「報告を?」

 

「そうです、今回の計画の総責任者は自分ですから」

 

「氷戸さん自らが総責任者を?」

 

「ええ」

 

 八千代が席に着いた。小霧が手を挙げる。

 

「もう一つ、氷戸さんに質問よろしいでしょうか?」

 

「氷戸さん」

 

「……はい」

 

 万城目に促され、光ノ丸が答える。

 

「今回の建築物件、景観保持法に抵触するのではないかという声も聞かれますが?」

 

「……著しく景観を損ねるようなものではないと認識しております。そういった声は話をわざと大袈裟にしようとしているだけではないでしょうか」

 

「大袈裟に?」

 

「ええ、付け加えさせて頂きますと、今回のこの高層ビル周辺の土地の買収についても話が進んでおります」

 

「周辺の土地ですか?」

 

「そうです」

 

「それはどういったねらいがあってのことでしょうか?」

 

「このビルを中心とした新たな調和を築いていく……という計画です」

 

 景元が手を挙げる。万城目が頷き、質問を許可する。

 

「新たな調和とおっしゃられましたが……それは景観問題に配慮してのことでしょうか?」

 

「問題、というものはそもそも発生していない、というのが我々側の見解ですが……様々な事情を勘案した上で導き出した計画です」

 

「その計画について詳しくお聞かせ願えないでしょうか」

 

「……当該地区に新たなランドマークを建てることによって、それをもとに新しい伝統を紡いでいくという考えです」

 

 南武が静かに手を挙げる。万城目が質問を認める。

 

「そのお考えは周辺の住民の方々には周知されているのでしょうか?」

 

「……きっと理解を得られるであろうと確信しております」

 

「つまりまだ具体的には話し合いなど持たれていないということですね?」

 

「……必要があれば、説明会などの機会を持ちたいと考えております」

 

「……分かりました。もう一点、北町奉行に質問宜しいでしょうか?」

 

「お、良いぜ、なんでも聞いてくれ」

 

 質問する南武に対して、北斗が笑顔を見せる。

 

「……ランドマークってカッコ良くね? ということですが、そもそもとしてランドマークというものを理解されていますか」

 

「おいおい、あんまり馬鹿にすんなよ。そうだな……簡単に言えば、その地域の象徴、シンボルみたいなもんだろ? シンボルっていうものは大きければ大きい方が良い。大きいことは良いことだ!」

 

 南武がやや呆れたように首を振る。

 

「今回の場合、その大きさも問題視されているのです……今回の問題をきちんと認識されていないのではないでしょうか?」

 

「重ね重ね失礼な奴だな~まあこれは俺の考えだが……時は進むもので人の世はそれに合わせて移ろいゆくものでありずっと不変なものなんてない。変化を前向きに捉えるべきだ」

 

「……分かりました」

 

「き、急に真面目なトーン……!」

 

 北斗の回答に葵は目を丸くした。反対派が静かになったことを確認し、万城目が進行する。


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