アンタとはもう戦闘ってられんわ!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第23話(3)京都決戦、開戦

「くっ……一旦退かせてもらうとするわ……」

 

 九尾の内、一尾を失った狐がその巨体を消す。小金谷が叫ぶ。

 

「よしっ大富岳に集中攻撃だ!」

 

「そうはさせんで!」

 

 大富岳の前方に機妖が大量に発生する。

 

「な、なんて数だ!」

 

「色使いからしてめざわりな戦艦二隻を落とせ!」

 

「そうはさせるか! 各機発艦せよ!」

 

 小金谷の号令とともに、二隻のカタパルトからロボットが次々と飛び出す。

 

「うおおお! 曲がったことが大嫌い、疾風大洋だ!」

 

 威勢よく叫び、地上に降り立った大洋の駆る光が、周辺の機妖を撃破する。

 

「いいぞ、各機続け!」

 

「……こちらも頼むで」

 

「うおっ!」

 

 大富岳から勢いよく飛び立った二機の翼を持った黒い機体と白い機体が、的確な爆撃を行い、大洋ら地上で戦う部隊が困惑する。小金谷が土友に問う。

 

「あいつらは⁉」

 

「ロボチャン滋賀代表の『黒鳥』と『白鳥』です! 志渡布に与していたか……」

 

「なんていうスピードをしてやがる……」

 

「スピードアップの為、徹底的な軽量化を追求して、パイロットスーツの代わりに全身を包帯とガムテープでぐるぐる巻きにするスタイルを採用しています」

 

「どんなスタイルよそれ……」

 

 土友の解説に殿水が呆れる。

 

「俺も既にフンドシ一丁です!」

 

「変な対抗意識燃やさなくて良いから」

 

 大洋の報告を殿水は切って捨てる。小金谷が声を上げる。

 

「このままだと制空権を握られてしまう!」

 

「ワシたちが参ります!」

 

 FtoVのモニターに日焼けした男性が映る。

 

「貴様は確か……」

 

「空援隊隊長、外原慎次郎です!」

 

「あの空援隊の! よし、任せるぞ!」

 

「了解、続け! 飛燕!」

 

「りょ、了解!」

 

 外原の乗る朱色の大型戦闘機、彼方に隼子の乗る石火が飛行形態で続く。

 

「!」

 

 彼方らの接近に気付き、黒鳥たちが速度を上げながら、巧みな飛行を見せる。

 

「な、なんちゅうアクロバット飛行! これでは……」

 

「怯むな、飛燕! 所詮は軽業ぜよ!」

 

 外原が相手にも聞こえるように叫ぶ。

 

「!」

 

 黒鳥たちがミサイルを放ってくる。隼子が慌てる。

 

「そのスピードと飛行姿勢を維持しながらミサイルを⁉ アカン、躱せへん!」

 

「落ち着け、ワシに合わせろ!」

 

「は、はい!」

 

 彼方と同じタイミング、同じ方向に飛んだ石火はミサイルを躱すことが出来た。

 

「⁉」

 

「か、躱せた!」

 

「奴らが面食らっている! 今の内に畳みかけるぞ!」

 

「しかし、どうすれば⁉ あの速度で飛び回る相手に射撃を当てるのは困難です!」

 

「ワシの上に乗れ!」

 

「! は、はい!」

 

 隼子は石火を人型形態に変形させ、彼方の上に乗らせる。

 

「よし! ワシが奴らの懐に飛び込む! そこで攻撃ぜよ!」

 

「わ、分かりました!」

 

「空の上で大切なのは速度や技術より度胸ぜよ!」

 

 外原はそう叫ぶと、一瞬で彼方を黒鳥と白鳥の死角に飛び込ませた。

 

「⁉」

 

「今ぜよ!」

 

「えーい!」

 

「‼」

 

 石火の放ったキャノンが黒鳥と白鳥の翼部分に命中し、コントロールを失った二機はきりもみ状態で落下していく。

 

「や、やった!」

 

「空をナメたらいかんぜよ!」

 

 隼子と外原が快哉を叫ぶ。土友が冷静に告げる。

 

「黒鳥と白鳥の撃墜を確認……」

 

「さすがは空援隊だ! む!」

 

 小金谷が前方に視線を向けると、巨大な銀色の機体が進撃してくる。土友が声を上げる。

 

「ロボチャン島根代表の『ボウフウノスサノオ』です!」

 

「奴も志渡布の傘下に! 凄い勢いだ! まさしく暴風だな!」

 

 小金谷の言葉通り、ボウフウノスサノオは地元の防衛軍の機体を次々と吹き飛ばす。

 

「量産型ではあの巨体は止められないわ! !」

 

 殿水が叫んだと同時に緑色の機体がボウフウノスサノオの進撃を止める。

 

「むん!」

 

「あ、あれは! 『佐賀の守り神』の異名をとる『サガンティス』!」

 

「機体ごとぶつけて止めたか、随分とまた無茶をするな!」

 

「『秘剣・燕倍返し』!」

 

 土友と小金谷が感嘆としていると、今度は青色の機体が長い刀を振り回してボウフウノスサノオの頭部の半分と左肩部から左胸部を破壊する。

 

「今度は『北九州の暴れん坊』の異名を取る『リベンジオブコジロー』!」

 

「おおっ、ボウフウノスサノオが活動を停止したぞ!」

 

 土友と小金谷が声を上げる。火東が叫ぶ。

 

「今度は川沿いから来たわよ! あの白いのは……ごんたくれだったかしら?」

 

「奴も速くて強いな!」

 

「足裏に車輪を付けている為、高速での移動が可能です!」

 

「くっ、このままだと防衛線を突破されてしまう!」

 

 土友の説明に小金谷が顔をしかめる。ごんたくれから声が上がる。

 

「おらおら! 邪魔すんねやったらいてこますぞ!」

 

「ならば邪魔させてもらおう!」

 

 やや茶色ががった白色の機体がごんたくれに対し、攻撃を仕掛ける。

 

「⁉ な、なんや自分は⁉」

 

「『ウ・ドーン』だ!」

 

「ロボチャン香川代表、大讃岐製麺所の機体か……」

 

「なんで製麺所がロボットを作ってんのよ……」

 

 土友の呟きに殿水が冷静に突っ込む。それにウ・ドーンのパイロットが反応する。

 

「そこのお嬢さん、堅いことは言いっこなしさ! うどんだけにね!」

 

「何を言ってんのよ……」

 

「あ~だから、艦内食のうどんが充実していたのか~お腹減ったな~」

 

「義一さん、もうちょっと我慢して!」

 

 呑気な声を発する木片を火東が注意する。

 

「さあ、行くぞ! 麺を打って、悪を討つ!」

 

 ウ・ドーンが構えを取る。ごんたくれのパイロットが怒鳴る。

 

「ふざけんなや!」

 

「ふざけてなどいない! 我が故郷に伝わる伝説のヒーローを模したこの機体の技をとくと味わいたまえ! うどんだけにね!」

 

「さっきからその麺がらみで上手いこと言おうとしてんのウザったいねん!」

 

「はああっ!」

 

「おりゃあ!」

 

「「⁉」」

 

 両者の拳が交錯し、互いに当たる。ごんたくれがやや後ずさり、ウ・ドーンが片膝をつく。

 

「互角か⁉ いや、ごんたくれがやや打ち勝ったか!」

 

「むっ、やるな……コシの捻りが利いた良いパンチだ!」

 

「腰やろ! 次でしまいじゃ!」

 

「そうはさせん!」

 

「ぬっ⁉」

 

 やや小さめの二体並んだクリーム色の機体がごんたくれの前に立ちはだかる。

 

「大会では世話になったな! ヤンキー兄ちゃん! うやむややった決着をつけよう!」

 

「ン!」

 

「土友、あれらの機体は……」

 

「ロボチャン徳島代表、鳴門重工業の『UZUSIO』です。ちなみに女の子が乗っている方が『UZU』で、もう一機が『SIO』です」

 

「ほぼワシの勝ちやったやろ! まあええわ! 同じことをくり返したる!」

 

「川沿いの時点でアンタの負けや!」

 

 UZUSIOの二体が川に入る。

 

「な、何や⁉」

 

「行くぞ! 半魚ちゃん!」

 

「ンン!」

 

 UZUに乗る少女がSIOに乗る全身水色の肌をした不思議な存在に声をかける。

 

「喰らえ! 『渦潮双撃波』!」

 

「どはっ⁉」

 

 二体の手から同時に発射された渦を巻いた状態の川水の放流が二条、ごんたくれを襲う。

 

「ごんたくれが活動を停止!」

 

「見事だ、UZUSIO……何故こんな少女がと思っていたが、謎が解けたな!」

 

「いや、だから最大の謎が残っているでしょ! 何で皆、放置するんですか⁉」

 

 頷く小金谷に対し、通信を繋いできた隼子が突っ込む。殿水が小金谷に代わって返答する。

 

「さっきはお疲れさま、どうかしたの?」

 

「上から桃色の球体が防衛線に向かって突っ込むのを確認しました!」

 

「桃色の球体? えっ⁉」

 

 モニターを確認した殿水が驚く。報告通り、桃色の球体が突っ込んできたからである。

 

「ロボチャン岡山代表の『シン・モモタロウ』か。奴らも志渡布傘下に……」

 

「な、なんで丸いの? 中国地区大会ではあんな形状では無かったはず……」

 

 殿水は土友に尋ねる。土友は眼鏡を抑えながら答える。

 

「詳細は省くが、『なんだかんだで丸いのがええじゃろ』という結論に至ったそうだ」

 

「詳細を省いたら駄目でしょう⁉ なんだかんだで丸いのが良いって何よ!」

 

 殿水は正直過ぎる感想を口にする。小金谷が叫ぶ。

 

「とにかく、奴を止めないといかん!」

 

「私が行きまーす」

 

 閃が軽い調子で小金谷に告げる。

 

「電か! 大丈夫か⁉」

 

「ご心配なく、ただの丸に後れは取るつもりはありません!」

 

 閃が電をシン・モモタロウの前に立たせる。シン・モモタロウから声がする。

 

「今の通信、こちらにも聞こえたぞ! 随分となめた口を利くのう!」

 

「あ、そうですか。気にさわったならすみません……」

 

「ただの丸と侮るなよ! 『きび団子フォームチェンジ』を味わってからにしろ!」

 

「き、きび団子フォームチェンジ!」

 

「若干棒読みなのが気になるが……行くぞ! まずは雉フォーム!」

 

「!」

 

 球体から羽が生え、低空飛行で電との距離を詰める。

 

「よっしゃ、ついばめ! ……何⁉」

 

 球体からくちばしが出てきて、電の機体を突っつこうとするが、緑の機体が脇から進み出て、肩部を突き出す。すると、右手から白い煙が勢いよく噴き出す。

 

「くっ! 煙で視界が……」

 

「この『イナウディト・ヴェルデ』はジャミング戦法を得意としている機体よ!」

 

 緑の機体の搭乗者、梅上が声を上げる。

 

「ちっ、援軍がおったか! なんの、お次は猿フォームじゃ! ……何⁉」

 

 羽とくちばしが引っ込むと球体から手足が伸び、電に飛び掛かり、爪で引っ掻こうとするが、またも脇から飛び出した白い機体のブレードによって返り討ちに遭う。

 

「うおっ!」

 

「近接戦ならこの『イナウディト・ビアンコ』、そうは負けん!」

 

 白の機体の搭乗者、竹中が無駄にポーズを決めながら叫ぶ。

 

「な、なんの、お次は犬フォームじゃ! 一旦距離を取る! ……何⁉」

 

 猿の手足が引っ込むと、犬の四本足と口が伸び、電たちから距離を取ろうと走りだすが、またまた脇から飛び出した赤いの機体のミサイル攻撃を喰らう。

 

「ぬっ……躱したと思うたのに、当たった……ホーミングミサイルか……」

 

「火力の高さが売りの『イナウディト・ロッソ』だ。逃げ切れると思うなよ……」

 

 赤の機体の搭乗者、松下が冷静に呟く。

 

「貴様らは……あの『トリオ・デ・イナウディト』か! ふん、相手にとって不足はない!最後はお待ちかねの桃太郎フォームじゃ!」

 

「いや、別に誰も待ってないですけど」

 

 閃が醒めた声で告げるが、それに構わず、シン・モモタロウは動き始める。球体に頭部、腕部、脚部が伸びてきて、人型に近い形になる。シン・モモタロウは剣を振るう。

 

「きび団子爆弾!」

 

「ええっ⁉ 剣を振るった意味は⁉」

 

 流石に閃も驚く。爆弾が複数個飛んできて、派手に爆破する。その爆風によりトリオ・デ・イナウディトが吹っ飛ばされる。

 

「「「き、聞いてないぞ~⁉」」」

 

「続けて行くぞ!」

 

「!」

 

 閃は身構えるが、シン・モモタロウは沈黙する。

 

「あ、あれ……? どうした? ……きび団子爆弾射出機構に異常発生⁉ ど、どうにかせい! え、どうにもならん? そ、そうか……」

 

「……ガトリングガン発射」

 

「うおおおっ⁉」

 

 電の射撃でシン・モモタロウは頭部と腕部と脚部を正確に撃ち抜かれ、崩れ落ちる。

 

「黒鳥と白鳥、ボウフウノスサノオ、ごんたくれ、シン・モモタロウを一応回収……まあ、時間稼ぎくらいにはなったか……」

 

 志渡布が頭を抱えながら呟く。


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