アンタとはもう戦闘ってられんわ!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第25話(2)筋を通す

「うっ⁉」

 

 ビバ!オレンジ号の艦体が揺れる。セバスティアンがアレクサンドラに報告する。

 

「攻撃を受けました!」

 

「どこから⁉ 周辺に反応は無かったわよね?」

 

「かなりの遠距離からの砲撃……いや、射撃でしょうか?」

 

「遠距離射撃⁉ ピストレイロ・マゴイチについては一応は撃退したってカナメから報告があったばかりでしょ⁉」

 

「……別に遠距離攻撃はあの方だけの特殊能力ちゅうわけとちゃうからなあ」

 

 そう言って、ビバオレンジのモニターに、空中に浮かぶ黒い着物を纏ったような独特のフォルムの機体が映り、更にその機体の搭乗者である黒髪ロングで前髪をパッツンとした、黒い狩衣に白い袴というこの場にはそぐわない格好をした女性が映る。

 

「幽冥! パイロットは『播磨の黒い星』、明石屋浪漫!」

 

「へえ、知ってはるの……自己紹介をする手間が省けましたわ」

 

「自己紹介だなんて随分と余裕ね」

 

「……一応筋は通さんとアカンなと思いまして」

 

「筋?」

 

 アレクサンドラが首を傾げる。

 

「ええ、この戦いがこちらの勝利に終わった暁には、京都含め畿内の大半が真大和国のものとなる。無駄に戦闘を長引かせるのはこちらにとっても好ましくはない……よって、そちらには速やかな投降をお願いするかたちになるかと思います」

 

「……何が言いたいの?」

 

「まあ、聞きなはれ……その際に疾風大洋の身柄を拘束し、うちと夫婦になってもらいます」

 

「はあっ⁉」

 

 アレクサンドラが大声を上げる。

 

「まあそんなんでひとつよろしく……」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい! わたくしのご主人さまよ!」

 

「せやから断りを入れたんやないか」

 

「断りって! はい、分かりましたって言うと思って⁉」

 

「そもそも正式な婚姻というわけではあらへんやろ?」

 

「ま、まあ、それはそうだけど……」

 

「なら問題あらへんな」

 

「問題大ありよ!」

 

「思うたよりやかましいお嬢様やな……『光矢』!」

 

「ぐうっ⁉」

 

 幽冥の周りに八枚浮かぶ木目色の大きな板状のものからレーザー光が次々と発射され、ビバ!オレンジ号にことごとく命中する。

 

「デカいから良い的やな……人員のいるブロックは意図的に外してある。これは警告や、さっさと投降するか、尻尾を巻いて逃げ帰る方が身のためやで」

 

「だ、誰がそんなことを! セバスティアン、反撃よ!」

 

「お、恐れながら、お嬢様! この距離の砲撃をあのサイズの機体に正確にあてられるほどの練度がこの艦のクルーにはまだ足りません!」

 

 セバスティアンの言葉に艦長のマクシミリアン斉藤も渋い表情で頷く。

 

「~~! ならばもっと艦を前進なさい!」

 

「お、落ち着いて下さい! それこそ相手の思うツボです!」

 

「ではこのまま、あの訳の分からない女の言いなりになれと⁉」

 

「元気だけはまだあるようやな、ブリッジ付近を狙うか……それ!」

 

「はっ⁉ あ、当たる⁉」

 

「アミューズパフォーマンス!」

 

「ええっ⁉」

 

 鋭く飛ぶレーザー光を、ジャンプしてきたシーサーウシュがその拳で豪快に弾き飛ばす。

 

「レ、レーザーを拳で弾き飛ばした……? ど、どういう理屈や……?」

 

 首を傾げる浪漫にも男女の話し声が聞こえてくる。相変わらずシーサーウシュの回線はオープンのままである。

 

「む、無茶しますね、大星さん。レーザーを弾くなんて……どうやったんですか」

 

「山田ちゃん毎回同じこと聞くね。う~ん、『弾けたらいいな~』って思ったら出来たさ~」

 

「またそんな……聞くだけ無駄でした」

 

 山田いつきの諦めたような声が聞こえてくる。大星修羅が逆に尋ねる。

 

「それってそんなに大事なこと?」

 

「この謎めいた機体を研究する為にこうして危険を承知で同乗しているんです! 出来ればもっと有意義な情報が欲しいんですよ!」

 

「大変だね~大学生さんも」

 

 修羅が笑う。浪漫が叫ぶ。

 

「……呑気なフィールドワークに付き合うている場合やないねん!」

 

「よっと!」

 

「なっ⁉ 複数のレーザーをあっさり躱した⁉」

 

「そんなヒョロヒョロレーザー当たらないよ~もっとマシな攻撃してくるさ~」

 

「お、大星さん、挑発しないで……」

 

「お望み通りやっちゃるで! 『光砲(こうほう)』!」

 

「!」

 

 八枚の板が四枚ずつ繋がって二つの円となる。さらにその円が繋がって大砲の筒のようになり、そこから光の砲弾が放たれ、シーサーウシュに直撃する。

 

「威力も速さも段違いやろう! ……なんやと⁉」

 

 浪漫は目を疑う。シーサーウシュがほぼ無傷で立っていたからである。いつきが戸惑う。

 

「ま、また、『耐えられたらいいな~』とか思ったんですか?」

 

「い、いや、流石にこれはやっけーと思ったさ~」

 

「各数値が急上昇している? 搭乗者の危機を察知して能力アップしたということ?」

 

 いつきがモニターを見ながら首を傾げる。

 

「なんか、よく分からんけど、『ピンチの後にチャンスあり!』とは良く言ったもんさ~。今度はこちらが攻める番だね!」

 

「は、はっ! 耐久力が異様に高いようやけど、それだけや! その機体は空中戦には向いてないのは分かっている! 空からもう何発か光砲をお見舞いして終いや!」

 

「『縮空(しゅくくう)』!」

 

「はあっ⁉」

 

 浪漫は驚愕する。かなりの高度を取っていた自らの機体のすぐ側に、シーサーウシュが迫ってきたからである。

 

「懐に入ったさ~!」

 

「ちょ、ちょい待ち! 『縮地』は知っているけど、『縮空』ってなんやねん⁉」

 

「『縮地』の空バージョンさ~」

 

「わあ! アホみたいな答え!」

 

「もらった!」

 

「ちいっ!」

 

「板がバリアを発生させた⁉ これが電磁護符の力!」

 

 いつきが驚く。浪漫が胸を張る。

 

「せや! うちしか扱えん代物やで! どんな攻撃でも防ぐ!」

 

「『シーサーナックル』‼」

 

「むっ⁉」

 

 シーサーウシュが幽冥に向かって拳を振るう。電磁護符のバリアによって阻まれるが、修羅はそこに大きな捻りを加え、バリアを粉砕し、幽冥を殴りつける。思わぬ攻撃を喰らった幽冥は地上に落下する。

 

「『……コークスクリュー』!」

 

「いや、絶対後付けですよね⁉ 思い付きで拳を捻ってみただけですよね⁉」

 

「まあまあ、結果オーライさ~」

 

「ぐっ……ここは退く……覚えておれ! 疾風大洋はうちがもらうで!」

 

 幽冥が地面に広がった黒い穴に吸い込まれていく。アレクサンドラが渋い顔になる。

 

「どんな捨て台詞よ……シーサーウシュを一旦回収して! 次の局面に備えるわ!」

 

 気持ちを即座に切り替えたアレクサンドラが指示を飛ばす。

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