アンタとはもう戦闘ってられんわ!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第3話(2)嫌いなこと

 格納庫で大松が不安そうにFS改のコックピットに座る大洋を覗き込む。

 

「大洋~大丈夫と?」

 

「何がです? 大会の戦いぶりは映像で確認しました。それなりに腕のあるパイロットたちだということは承知しています」

 

「いやいや機体のことばい……」

 

「機体?」

 

「向こうのは大会用に特別にチューンアップされた機体ばい。このFS改では、その、なんというか、若干の性能差が……」

 

「……」

 

「い、いや、隼子にも止めておけと言ったと! ただパイロット同士にはパイロットの上下関係というものがあって、オイでも容易に口を挟めんと……ましてやあの二人は我が社の数少ない正規パイロットやけん……すまん、何を言っても言い訳になるか……」

 

「……大松さん、一つ思い出しましたよ」

 

「な、何を思い出したと⁉」

 

「俺が嫌いなことです」

 

「嫌いなこと?」

 

「疾風大洋、出撃します!」

 

 大洋がFS改を起動させる。

 

 

 

 一方、隼子は呼び出された第二格納庫の裏にやってきた。そこには閃が立っていた。隼子は警戒しながら声を掛ける。

 

「な、なんや、オーセン、ウチに用事っちゅうんは?」

 

「あ、来たね~ジュンジュン。医務室でお休みのところ呼び出しちゃって悪いね」

 

 振り返った閃に隼子は思わず身構える。

 

「なんでファイティングポーズ?」

 

「い、いや、こういう建物裏に呼び出すっていうことはアレやろ? 生意気なウチを〆ようっちゅうことやろ⁉ そういうもんやって大体相場が決まってんねん!」

 

「ジュンジュン、何時代からきたのさ……」

 

 閃が呆れ顔で呟く。

 

「ちゃうんか⁉ ならば……もしかして愛の告白か⁉ い、いやその気持ちは嬉しいし、ありがたいよ⁉ で、でもな、女の子同士っちゅうんはその……」

 

「案外考え方が古いな~保守的というべきか……」

 

 閃が隼子に向かってゆっくりと歩いてくる。隼子は思わず後ずさりをして壁に背を付ける。閃は右手をドンと隼子の顔の横に突く。

 

「こ、これは噂に聞く壁ドン⁉ い、いや、そんな、ちょい待ち、オーセン! ま、まだ心の準備が……」

 

「だから何時代の人間だよ、ジュンジュン……」

 

 閃は再び呆れ顔になる。

 

「こ、こういうのはもっと段階というもんを踏んでからやな~?」

 

「まあ、ある意味告白ではあるけどね~」

 

 閃が壁の取っ手を引っ張ると、コントロールパネルのようなものが現れる。数字とアルファベットが並んだキーボードをいくつか押して、最後に『ENTER』と書かれたボタンを押す。

 

「こういうとこもアナログなんだよな~。まあ、これも機密保持の為かな~」

 

「はっ⁉」

 

 隼子が戸惑っていると、しばらくして、目の前の地面がゆっくりと動き、地下への階段が現れる。

 

「階段⁉ こんなものが……」

 

 閃が階段を降りようとして隼子の方に振り返る。

 

「色々検討したんだけど、この際ジュンジュンでも良いかな~って思ってさ。もう結構知り過ぎちゃってるしね~。大分非科学的な言い方だけど……これも運命ってことで」

 

「は、話がさっぱり見えへんのやけど……」

 

「……落ちぶれていると感じている現状から抜け出したいのならついてきて」

 

 そう言って閃は階段を降りていく。しばし呆然としていた隼子だったが、やがて意を決して閃の後に続いた。

 

 

 

 演習場では3体のFS改が向かいあっていた。

 

「はっ、逃げずによく来たな」

 

「……」

 

「さっきデータ検索したらよぉ、お前シミュレーションで飛燕に負けなしだってなあ?」

 

「……俺の十戦十勝位ですかね」

 

「へぇ、やるもんだな、アイツ、シミュレーションだけはやたら強いのによ」

 

「ただよ、シミュレーションはあくまでシミュレーションだ。実戦とは訳が違う」

 

「実戦?」

 

「そうだ、俺たちは先週ロボットチャンピオンシップ、通称ロボチャンの長崎県予選を勝ち抜いて九州大会進出を決めた!」

 

 軽薄そうな男が胸を張る。大洋が冷ややかに返す。

 

「それは知っています。さっきも聞きましたよ、鈴木さん」

 

「っ! 俺は佐藤だ!」

 

「おいおい、落ち着けよ……経験値ってもんが違うんだ、それをたっぷり教えてやるよ」

 

 チャラい男がやたら上から目線で言ってきた。大洋は淡々と答える。

 

「是非ともご教授お願いします、佐藤さん」

 

「っ! 俺は鈴木だ! お前わざと間違っているだろ!」

 

「というより覚えていません。正直どっちがどっちでもどうでもいいので」

 

「てめえ! ロボチャン長崎大会ファイナリストの実力見せてやるよ!」

 

 軽薄男の言葉を大洋は聞き逃さなかった。

 

「ファイナリスト? ああそうだ、優勝はしてないんですよね?」

 

「そ、それは……」

 

「出場権は確保したんだ、文句あるのかよ!」

 

 少し口ごもった軽薄男の代わりに、チャラ男が答える。

 

「別に文句はありません……くじ運と組み合わせに恵まれ、本命や有力チームが潰しあってくれたお陰の棚ボタ的な決勝進出だったこと、消化試合とはいえ、決勝はほぼ何も出来ず、良い所なく相手に完敗したこと、自分だったら恥ずかしいなとは思います」

 

「「!」」

 

「て、てめえ……怪我で済まなくても後悔すんなよ、エンジニア!」

 

「お前らのお陰で一つ思い出した……」

 

「あん?」

 

「思い出した?」

 

「俺が嫌いなことだ……俺は『曲がったことが大嫌い、疾風大洋だ‼』」

 

 大洋は操縦桿を思い切り倒し、FS改を相手に突っ込ませた。

 

 

 

 二人が地下に降りると、そこには広大なスペースの格納庫があった。階段を降りながら隼子が感嘆した声を上げる。

 

「地下にこんなゴッツい格納庫があるなんて……」

 

「私も知ったのは最近なんだけどね」

 

「会社の皆は知っているんか?」

 

「ここ十五年位はまともに使われてなかったみたいだから、一部の古株の社員やお偉いさんしか知らないと思うよ~」

 

「さ、さよか。それにしてもちょっと暗ないか?」

 

「ちょっと待って、今、主照明を点けるよ」

 

 階段を先に降りた閃が、壁際に向かい、備え付けのパネルを操作する。格納庫全体がパッと明るくなった。

 

「何や? 機体が並んでいるな……おっ、電があるやん、姿見いひんと思ったら、ここに運んでたんかいな……こ、これは⁉」

 

電の隣に並んでいる機体を見て、隼子は驚愕した。

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