アンタとはもう戦闘ってられんわ!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第27話(1)夜の京都にて

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 暗くなった京都の町を進む、複数の影がある。

 

「……ふむ、この道はこちらで間違いないようだな」

 

 中肉中背の金縁眼鏡をかけた女性が端末を確認する。端末の画面には、地図が二つ重なったものが映し出されている。

 

「おい……」

 

「次は……こちらか」

 

「おい!」

 

「……なんだ?」

 

 金縁眼鏡の女性がうんざりした様子で振り返る。そこには銀縁眼鏡をかけたこれまた中肉中背の男性が立っている。

 

「何故、俺たちがこんなことをやらねばならない?」

 

「……こちらは人手不足だから仕方あるまい」

 

 金縁眼鏡の答えに銀縁眼鏡がため息をつく。

 

「とはいってもだな……奴の式神とやらにでもさせれば良いのではないか?」

 

「式神の使役には体力を使うと言っていただろう。奴に負担をかけ過ぎるのは私たちにとっても得策ではない」

 

「だからといって……京都の警戒はただでさえ高まっているんだ。今俺たちが直接動くべきことなのか?」

 

「目的を達成次第、京から速やかに離れる。その手筈は確認済みだろう?」

 

「それはそうだが……」

 

「まだなにか気になるのか?」

 

「例の話だ。本当にそんなことがありうるのか?」

 

「怪獣がそこかしこに出現したり、古代文明が復活したりしている現状で、今更な疑問だな」

 

 金縁眼鏡は端末を確認しながら笑う。銀縁眼鏡は頭を抑えながら呟く。

 

「まあ、それはそうかもしれんが……」

 

「とにかく、先を急ぐぞ。ここで固まっていたら目立ってしまう」

 

「目立つねえ……」

 

「そもそも余計な私語は慎め。変に騒ぐと見つかるぞ」

 

「見つかる……」

 

「ああ、通報などされたらマズい」

 

「通報……」

 

 銀縁眼鏡は自らの後ろを振り返って、首を傾げる。

 

「おい、早く行くぞ、こっちだ」

 

「ああ……」

 

 銀縁眼鏡は金縁眼鏡の後に続く。

 

「……着いた。ちょうどこの辺りだ」

 

「……ごく普通の通りのようだが?」

 

 銀縁眼鏡が周囲を見回して呟く。

 

「古地図と照らし合わせた結果、ここで間違いない」

 

 金縁眼鏡が端末を見せる。画面に映し出された赤い丸が点滅している。

 

「そもそも、約二百年前の京都の古地図が何故必要なのだ?」

 

「あちらではまだ有効なのだろう……」

 

「どういうことだ?」

 

「こちらとは時の進み方などが違うのではないか?」

 

「そうなのか?」

 

「いや、全然知らんが」

 

 金縁眼鏡の言葉に銀縁眼鏡が軽くずっこける。

 

「し、知らんのか……」

 

「私にとっても専門外のことだからな」

 

「まあいい、それでどうするんだ?」

 

「奴からもらったのはこれだ」

 

 金縁眼鏡が懐から小さな瓶を取り出す。銀縁眼鏡が怪訝な顔をする。

 

「……中身はなんだ?」

 

「水だ」

 

「水?」

 

「ただの水ではない、とある秘境で湧き出る霊験あらたかな水だそうだ」

 

「とある秘境ってどこだ?」

 

「それは聞いていない」

 

「そんなオカルト話を信じるのか?」

 

「異星人や異世界人がうろうろしているこのご時世、極めてナンセンスな疑問だな」

 

 金縁眼鏡が小瓶をわざとらしく振る。銀縁眼鏡がため息をつく。

 

「分かった……それをどうする?」

 

「これを、このように垂らすと……」

 

 金縁眼鏡が小瓶のふたを開け、中の水を垂らそうとする。

 

「そこまでよ」

 

「⁉」

 

 金縁眼鏡が声のした方に視線を向けると、艶のある黒髪をおさげにした少女が立っている。垂らした右の前髪と切れ長の目が印象的で、整った顔立ちをしている。

 

「何を企んでいるかは知らんが、どうせロクでもないことだろう……」

 

 黒髪を短髪にまとめた少年が呟く。髪型が異なる以外は、顔は少女と瓜二つである。二人とも年ころは13、14歳程に見える。金縁眼鏡が睨みつける。

 

「貴様らは……」

 

「先の事変では大変お世話になったわね。私はユエ、こっちの無愛想がタイヤンよ」

 

「だ、誰が不愛想だ! そ、そうじゃなくて、なにも名乗る必要はないだろう⁉」

 

「……どうせ本名ではないんだろう?」

 

「ふっ、そうかもね。ただ、それはお互い様でしょう? それよりもこんなところで一体何をしているのかしら、『真大和国』の幹部とも言える方々が……金縁眼鏡の金花子(こがねはなこ)さんに銀縁眼鏡の銀一郎(しろがねいちろう)さん?」

 

 銀がユエの問いかけに笑みを浮かべて答える。

 

「答える義務はないな」

 

「それはそうね」

 

「そもそもこれからなにが起こるか、俺たちも分かっていないからな」

 

「わ、分かっていないのか……」

 

 銀の言葉にタイヤンが戸惑う。金が銀に注意する。

 

「余計なことは言わない……」

 

「す、すまん……」

 

「しかし、よく私たちに気付いたわね? 行動には細心の注意を払っていたのだけど」

 

「細心の注意? それが?」

 

 ユエが金たちの背後を指差す。そこには黒髪のロングで前髪をパッツンとしており、黒い狩衣に白い袴を着た美人の女性が同じ年頃の女性たちに囲まれている。

 

「インフルエンサーの明石家浪漫(あかしやろまん)さんですよね⁉ 握手して下さい!」

 

「いつも占い動画見てます! うちの恋愛運も占って下さい!」

 

「ああ、どうもおおきに。ただ、今取り込み中やから……」

 

「あ、通報のあった怪しげな二人組やな! ちょっと交番まで来い!」

 

「あ、怪しげとは失礼な! これが俺らの正装や! なあ、ガムテ?」

 

「ああ、その通りや、包帯」

 

 顔を含めた全身を真っ白な包帯で包み込んだ小柄な男とこれまた顔を含む全身を黒いガムテープで包み込んだ大柄な男がお互いの顔を見合わせる。ユエが呆れる。

 

「真大和国に与する連中ね……隠密行動するには多少人選ミスだったんじゃない?」

 

「言うほど多少か?」

 

 タイヤンが首を傾げる。

 

「そ、そんな馬鹿な⁉」

 

「いや、十分予想出来ただろう!」

 

 愕然とする金に銀が突っ込みを入れる。

 

 

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