アンタとはもう戦闘ってられんわ!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第4話(1)サプライズ

「社長からの呼び出しとはな……」

 

「急になんだろうね~」

 

 大洋と閃が話しながら会社の廊下を歩いている。。

 

「全く心当たりが無いな……」

 

「そうだね~」

 

「いや、むしろ心当たりしか無いやろ……」

 

 二人の後に続いて歩いていた隼子が俯きながら呟く。

 

「隼子、分かるのか?」

 

 大洋が振り向いて尋ねる。

 

「昨日の戦闘のことやろ、他に何があんねん?」

 

「ひょっとして勝手に電光石火に合体しちゃったことかな~?」

 

「オーセン、今、“勝手に”って言うたよな? ほら見ろ、絶対その件で呼び出しやって! ああ、絶対お叱りを受けるんや……」

 

「お叱りで済めばいいけどね~」

 

「怖いことを言うな! なんでそんな呑気で居られんねん!」

 

「まあ、緊急事態だったしな、その辺の事情は汲んでくれるんじゃないか?」

 

「前向きやな……」

 

「以前も少し話したが、二辺弓子(ふたなべゆみこ)社長だったか? 優しそうな印象を受けたが……」

 

「それは多分たまたまやって。毎年この時期……ロボチャンの期間中は大抵ピリついとんねん……」

 

「何故だ?」

 

「そりゃ例年我が社の結果が芳しくないからやろ……先代や先々代の社長の頃は全国大会に出場して当たり前やったんやから」

 

「今年は九州大会出場を決めたじゃん」

 

「それはそうやけども……」

 

「着いたぞ」

 

 三人は社長室の前にたどり着いた。

 

「ああ、とうとう着いてもうたか……」

 

「そりゃあ着くでしょ」

 

「入るぞ」

 

 大洋がドアをノックしようとする。隼子が慌てて止める。

 

「ああ、ちょい待ち! まだ心の準備が……」

 

「ジュンジュン、ビビり過ぎだって~」

 

「いや、ビビるやろ普通! 社長やぞ! なんぼウチの会社が地方のアットホームな中小企業と言っても、社長に呼び出されるなんてよっぽどのことやぞ!」

 

 大洋は取り乱す隼子を無視して、ドアをノックした

 

「……疾風大洋、飛燕隼子、桜花・L・閃、以上三名、参りました」

 

「……どうぞ、入りなさい」

 

「失礼します……」

 

「ああっ……」

 

 大洋たちが部屋に入ると、部屋の中は真っ暗であった。

 

「……?」

 

一瞬の間が空いて、部屋の電気が点いたかと思うと、パンッと大きな音がした。

 

「おめでとう~♪」

 

 そこには発射したクラッカーを手に持つ、ショートボブと左目の泣きぼくろが特徴的な女性、(有)二辺工業の三代目社長、二辺弓子の姿があった。

 

「……?」

 

 大洋たちは戸惑った。その様子を見て、弓子も戸惑った。

 

「ええっ、まさかのノーリアクション⁉」

 

「い、いや……」

 

「な、なにがおめでとうなんでしょう……?」

 

 隼子が恐る恐る尋ねる。弓子は自身の側に立つ、黒いスーツ姿の男性に声を掛ける。

 

「吉川、貴方まさか伝えてなかったの?」

 

「ええ……」

 

「何でよ⁉」

 

「いわゆる一つのサプライズです……」

 

「ああ、なるほどサプライズね~。って、アタシもそれを把握してなかったら意味がないじゃない⁉」

 

「申し訳ありません。本日の社長のラッキーシチュエーションが“自他ともに驚く”でしたもので、そういう状況を作りだすならここしか無いだろうと思いまして……」

 

「そっか、それならしょうがないわね」

 

(納得した⁉)

 

(ラッキーシチュエーションって何やねん⁉ しかもあまりにも限定的過ぎるやろ!)

 

 弓子が軽く咳払いをして、改めて大洋たちに話し掛ける。

 

「疾風くん、飛燕さん、桜花さん、おめでとう」

 

「は、はあ……」

 

「えっと……せやから何がおめでとうなんでしょうか?」

 

「貴方たちがロボットチャンピオンシップ九州大会に出場する我が社代表パイロットに選ばれました!」

 

「「ええっ⁉」」

 

 突然のことに驚く大洋と隼子。一方、閃は冷静に質問する。

 

「正規パイロットの二人はどうしたんですか~?」

 

 弓子が顔を背けながら呟く。

 

「実は……今朝方に佐藤くんと鈴木くん、二人から辞表が届いたの」

 

「ええっ⁉ どうしてですか⁉」

 

「えっと……『昨日の戦闘で自信を無くしました、半裸になる価値も無い自分はおとなしく実家に帰ります』、『怪獣マジ怖い、後あのエンジニアの言っていることが意味分かんない、あの人とはちょっと無理です』……っていうことらしいわよ」

 

「いや、そんな⁉ まさか受理したんですか⁉」

 

「数少ない正規パイロットですもの、そう簡単に辞めてもらっては困るから取りあえず休業扱いということにしたわ。ただ、相当自信を失っているようね……」

 

「一体どうしたんだろうな?」

 

「いや、原因の四割位はアンタやろ!」

 

 不思議がる大洋に隼子が思わず突っ込む。

 

「……まあ、そういう訳だから来月種子島で開かれる九州大会には三人に出場してもらうわ! あの機体、何だっけ? そうだ、蛍光ピンクで!」

 

「……?」

 

「……社長、電光石火です」

 

 吉川が訂正する。

 

「……それで!」


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