アンタとはもう戦闘ってられんわ!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第5話(1)次戦に向けて

 宿舎の食堂の丸テーブルを大洋たち三人が囲んでいる。

 

「大会期間中はこうして文字通り缶詰にされるって訳だな……」

 

 大洋の言葉に隼子が同調する。

 

「そうやな。個人所有の情報機器等も没収されるとは、徹底しとるな……」

 

「外部との連絡を取れなくするためだから仕方がないね、八百長防止の一環でもあるし」

 

「八百長防止?」

 

 大洋が閃に尋ねる。

 

「そう、ロボチャンは大人気の公営ギャンブルでもあるからね~」

 

「そ、そうだったのか……」

 

「こんなご時世やからな、なんでもかんでも娯楽の対象や……」

 

 隼子がテーブルに頬杖をついて、やや呆れ気味に呟く。

 

「ひょっとして、コックピットにカメラが据え付けられていたのは……?」

 

「ネット中継用のカメラだね~観戦者はコックピットの様子も確認出来るんだよ~」

 

「ネット中継されるのか⁉」

 

 大洋が驚く。

 

「だから服を着ろっちゅうてんねん、全国、下手すりゃ全世界にアンタの半裸が晒されてるんやで?」

 

「まあ、それは別に良いんだが……」

 

「ええんかい!」

 

「むしろもっと見て欲しい!まであるな」

 

「変態やないか!」

 

「……照れるな」

 

「褒めとらんわ!」

 

「ただ……」

 

 やや俯く大洋に閃が尋ねる。

 

「中継されると、何かマズいのかな~?」

 

「自分でもよく分からんが、あまり良くはない……ような気がするな」

 

「とは言っても、もう一回戦は中継されてもうたしな……」

 

「まあ、今更言っても致し方ないな……」

 

「ただ、ウチも自分の中継での映り具合はちょっと気になるな」

 

 そう言って隼子は冗談っぽく笑った。大洋が尋ねる。

 

「ネット中継を俺たちは見ることは出来ないのか?」

 

 閃が首を横に振る。

 

「大会参加者は期間中他の試合を見ることは出来ないんだよ~。ミーティングなどに使用する情報端末も一旦大会運営に提出して、使用許可申請を受けなきゃならないんだよ。ネット中継のサイトにはアクセス制限を掛けられてしまうしね」

 

「そこまでするのか、何故だ?」

 

「この大会には『技術の革新と向上』の他に『より実戦に基づいた戦い方を経験・蓄積』というテーマを掲げているからね」

 

「実戦に基づいた?」

 

 大洋の問いに閃が頷く。

 

「実戦においては怪獣だったり、古代文明人や異星人の繰り出すロボットの手の内をこちらが把握しているっていう状況の方が稀だったりするからね、臨機応変な対応力かつ柔軟性に富んだ戦い方を磨くっていう狙いがあるのさ」

 

「ネタバレ厳禁っていうやつやな」

 

「要はそういうことだね」

 

 閃が笑った。

 

「ということは、次の対戦相手は分からないのか?」

 

「あ、流石にそれは分かるよ、えっと次は……宮崎県第一代表の(株)大野田(おおのだ)エンジニアリングだね。それじゃこのままミーティングを始めちゃおうか」

 

「ああ、そうしよう」

 

「頼むで」

 

 大洋と隼子の言葉を受け、閃は情報端末を取り出し、テーブルの上に置く。端末の画面に映像が映し出される。

 

「この映像は?」

 

「宮崎県予選の映像だよ。予選等の映像は視聴しても構わないんだ」

 

「予選と変わらずにこの黒い機体で参戦しとるんか?」

 

「そうだね」

 

「変わった機体だな……」

 

 映像を見つめながら大洋が呟く。

 

「そうやな、まるでお馬さんみたいや」

 

 映像にはまるでギリシャ神話に登場する半人半獣の種族ケンタウロスを模したかのような、上半身が人型で下半身が馬型の黒いロボットが映っている。閃が説明する。

 

「この機体の名前は『ダークホース』。四本の脚を生かした機動力の高さやジャンプ力の高さが売りだね」

 

「今日戦った卓越より速いのか?」

 

「いや、データ上はそこまででも無いね。ただ、実際の馬の様に脚力の強さを生かした戦い方が厄介だね。中でも後ろ脚から繰り出されるキックは要注意!」

 

「武装は特にないんか?」

 

「腰部に付いている大型の弓と背部に背負っているこれまた大型の矢を使った攻撃が主な武装になるね。試合映像を見てもらうと分かるけど、機動力の高さを存分に生かして、距離を取ってからの攻撃が主な戦い方のようだね。ただ……」

 

「ただ?」

 

「今日の卓越の様に、何か隠し玉を持っている可能性があるね」

 

「隠し玉か……」

 

「まあ、その辺は考えてもしょうがないかな~」

 

 閃はそう言って、頭の後ろで手を組んだ。隼子が尋ねる。

 

「出撃機体はどうする? 明日も2体で出るんやろ?」

 

「そうだね~別にタイマンする義務はないからね~」

 

「誰と誰が出る?」

 

「迷う所だけど……電と光、私と大洋が出るよ」

 

「ええっ⁉ 何でやねん!」

 

 隼子が不満気に口を尖らせる。

 

「映像を見ていると、ややトリッキーな戦い方をしてくる傾向が見て取れる。真面目なジュンジュンはちょっと相性が悪いかな~って思って」

 

「……一応理由があるんなら、まあええわ」

 

「納得してもらって良かったよ」

 

「心配するな、隼子。俺たちは勝つ!」

 

「……勝敗云々よりもアンタのフンドシ姿の方が心配やわ」

 

「映っちゃいけないものがネットに映っちゃったりしてね~?」

 

 閃の言葉に大洋が驚く。

 

「そ、その場合は反則負けとかになるのか⁉」

 

「そんなことウチが知るか!」


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