アンタとはもう戦闘ってられんわ!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第8話(1)呼び出されたのでウザ絡みした

「……来たわね」

 

 古代文明人からの襲撃を受けた翌日、軍港にある整備用工廠を訪れた大洋たち3人の姿を横目に見ながら殿水が呟いた。

 

「昨日はどうもありがとうございました」

 

大洋が頭を下げる。

 

「別に感謝されるようなことじゃないわ、弱者を助けるのは強者の当然の責務よ」

 

 椅子に座ってネイルの手入れをしながら殿水が事もなげに答える。

 

「弱者……?」

 

 大洋がややムッとした様子を見せたため、脇にいた隼子が慌てて話題を変える。

 

「そ、そういえば、昨日の巨大ロブスター型ロボットに乗っていた敵のパイロットたちを捕えることが出来たそうですね!」

 

「そうね……私たちも極力殺しはしたくないから、脱出していてくれて良かったわ……」

 

「はははっ、極力ですか……」

 

「それで、敵さんの狙いは分かったんですか~?」

 

 閃が間の抜けた調子で尋ねる。殿水がため息まじりで答える。

 

「尋問は私の仕事じゃないわ。大して興味もないしね」

 

「ほお……」

 

「私の仕事はFtoVに乗って人類の平和を守ること。その平和を脅かすもの……つまり敵がいたら戦うだけよ」

 

 ネイルの手入れを終えた殿水は、そう言って大洋たちに向いて座り直した。

 

「カ、カッコええ~! 流石は歴戦の強者! オーラがちゃいますわ、オーラが!」

 

「あらやだ、漂わせちゃった、オーラ?」

 

 殿水が髪をかき上げる。

 

「ええ、それはもうムンムンと!」

 

「関西弁の貴女、やっぱり見どころあるわね……それに比べてそっちの二人よ」

 

 殿水がテーブルに左手で頬杖を突きながら、右手で大洋と閃を順に指差す。

 

「え? 俺たちがなにかやりました?」

 

「戦い方が奔放過ぎるってやつ~?」

 

「それも多少あるけど、まずは心構えよ」

 

「心構え?」

 

「そう、今回の大会映像をさっきチラッと確認したけど、なんでアンタたち二人パイスーを着ていないのよ?」

 

「パイスー?」

 

「パイロットスーツのことや」

 

 隼子が大洋に小声でささやく。

 

「ああ……」

 

「なんでフンドシ一丁と白衣姿なのよ?」

 

 殿水の問いに閃が一瞬間を置いて答える。

 

「……個性を出したいからかな~」

 

「右に同じ」

 

「もっとまともなこと言いなさいよ……」

 

 大洋と閃はそれぞれ腕を組んで首を捻って考えこみ、口を開く。

 

「服を着ているときよりもテンションが段違いなので……」

 

「白衣を着ていると集中力がレベチなので……」

 

「段とかレベルとかじゃなくて場違いなのよ!」

 

「上手いこと言いますね」

 

「感心するところじゃないわよ!」

 

「……お言葉ですが、電光石火のコックピットの安全性は十分に保証されています」

 

 閃が急に真面目な口調で話す。

 

「それでも実戦には万が一ということもあるでしょう⁉ 耐久性や耐ショック性に富んだ戦闘服を身につける方が絶対良いに決まっているはずよ!」

 

「まあ、一理ありますが……その個性的が過ぎる戦闘服を着る度胸はありません」

 

「う、うるさいわね!」

 

 閃が殿水の恰好を指差す。殿水は赤青黄緑桃の五色が混ざった派手なカラーリングの戦闘服に身を包んでいる。隼子が慌てる。

 

「い、いやミニスカート、よお似合ってはるやろ!」

 

「トップスもそうだけど色使いがちょっと大胆過ぎないかな~?」

 

「あえて白のブーツを際立ててはんねん!」

 

「肩パッド尖り過ぎじゃないか?」

 

「もしもの時のショルダータックル用に尖らせてはんねん!」

 

「どんな時よ! 貴女のフォローも微妙に的外れなのよ!」

 

 殿水がたまらず立ち上がって声を上げる。

 

「私だってこんなの着たくて着ている訳じゃないのよ! でもしょうがないのよ! この専用スーツを着ないとFtoVを動かすことが出来ないんだから!」

 

「逆に言えば、そのスーツを着れば動かせると……?」

 

 大洋の呟きに隼子がハッとする。

 

「そうか! 恥じらいさえ捨てれば、ウチもFtoVのパイロットに?」

 

「いやいやジュンジュン、その恥じらいを捨てるのが難しいんだって~」

 

「む、難しいもんやな~」

 

「恥とか言うな!」

 

 殿水が叫ぶ。

 

「色々な適性試験をパスしないと乗れないの! 専用スーツを着れば、それではい、OK!っていう訳じゃないのよ! あんまりFtoVを舐めないでちょうだい!」

 

「まあまあ、少し落ち着いて下さい」

 

 大洋が興奮気味の殿水を宥める。

 

「誰のせいでこうなったと思ってんのよ!」

 

「前置きはこの辺で……そろそろ本題に入って貰えませんか?」

 

「アンタが人の戦闘服にケチつけてくるからでしょうが!」

 

 閃の言葉に殿水が苛立つ。隼子が頭を下げる。

 

「す、すんません、後でこいつらにはきっちりと言い聞かせときますから……」

 

「ま、まあ良いわ、全然良くないけど……それじゃあお望み通り本題に入るわ」

 

「本題ですか?」

 

 隼子の問いを受けてから殿水が一呼吸置いて話し出す。

 

「ここにアンタたちを呼び出したのは他でもないわ……疾風大洋、飛燕隼子、桜花・L・閃……以上、電光石火のパイロット三名、本日は緊急特訓よ! このザ・トルーパーズの若きエース、殿水仁美が直々に相手してあげるわ! ありがたく思いなさい!」

 

「「「ええっ⁉」」」


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